「ここに戻るのも久しぶりだなぁ…」
―――とある孤島にある、とある港に、とある人物がおりたった。
青色の長いウェーブのかかった髪。
前髪は流すように両サイドに分けられている。
大きくてくりくりとした茶色の瞳に、驚くほど小さな顔。
さくらんぼのようなつやつやの唇や、形のいい鼻がバランスよくその顔の中におさまっている。
頬をバラ色に染めて、その島の頂上にある建物を見つめる。
「神威大門統合学園…か…」
―――この少女は、かつてこの学園の生徒会長を務めた。
大きな戦いの後、とある少年と一緒に旅に出た彼女こそ…
「この大空ミクが帰ってきたよーっ!」
―――プロのLBXプレイヤーでモデルの大空ヒロの妹でもある私、大空ミクであるっ!
若干、モノローグを語ってみたよ!
自分の事、美化しすぎたよ!
こういうところは、昔から変わってないんだよ!
私だけじゃなくって、島の様子は全然変わっていなかった。
しいていうなら、船の数が増えたようなきがするだけかな。
「にしても、誰もいないなぁー。
まぁ、今は授業中だし、当然かー…」
軽やかな足取りで緩やかな坂道を登る。
今着ている白のニットのワンピースのすそが揺れるのを見て、思わず制服を思い出す。
あれを最後に着たのは14歳だったから…今は18歳で…
「…4年かぁー…早いなぁ、この4年間」
うん、しんみりするなぁ…。
あっという間にあの、かつて“神の門”とよばれた門の前まで着く。
変わってないなぁ…。懐かしい。
あの事件の後、この学園は大きく変わった。
入学条件もなくなって、ただ純粋にLBXを学びたければ、誰でもはいれるようになった。
仮想国もなくなって、ウォータイムもなくなった。
制服は、あの事件までに入学した人は、今までどうりの制服を着ているらしい。
それ以降に入学した人は、クラスごとに制服の色が違うらしい。
例えば各学年1組は、元ロシウスの制服を着ているらしい。
ちなみにジェノックのやつは、各学年5組だって。
生徒会制度も大きく変わったみたい。
私たちの時に、私のわがままで発足した生徒会。あれが一応、初代なんだ。
でも、あの生徒会は、執行委員はいないようなものだった。
会長は私、副会長はムラクだったけど…私たちも、事情が事情だったし。
ってことで、私の任期をムラクが終えた後、改めて生徒会が発足したらしい。
事情なんかない、公平な生徒会。
グレゴリー先輩が会長を務めて、それ以降今まで続いている。
新たな“神威大門統合学園”を頭に入れて、門をくぐる。
「毎日通ってたのに、懐かしいな…!」
不思議な感傷に浸っちゃいそうだよ。
皆も高校3年生になって、校舎が変わっていた。
あまり入ったことのない高等部の校舎は、ちょっと新鮮。
クラス替えがないのは相変わらずみたいで、“6年5組”って書いてある教室をめざす。
…皆、どうなってるかなぁ。
私の事、覚えてるかな?
ドキドキだけど、とっても楽しみなんだ。
静かに授業を受けている5組の教室に、盛大なドアの開く音が響く。
一斉に向いた目は、どれも見覚えのあるもので。
「ミク!」
「えっ、ミク!?うそっ、ミク!?」
「いつ帰ってきたのよ!?」
―――皆のはしゃぐ声が、ものすっごく懐かしいよ。
その瞬間、チャイムが鳴り響いて、同じくらいの身長の少女が私に抱きついてきた。
一瞬わかんなかったけど、これは…!
「きゃ、キャサリン!帰って来てたの!?」
「そうよ!高校入学とともに、戻ってきたの!」
キャサリン・ルース。
かつて一緒に戦った、気の強いけど頼れる、可愛い女の子。
いつの間にやら私と同じくらいの身長になっちゃってる。
クリーム色の髪はポニテにされてて、大人っぽくなってるけど、あの可愛らしい瞳は相変わらず。
「キャサリンだけじゃないのよ、ミク」
「ユノ!それに、キヨカ!」
鹿島ユノに仙道キヨカ。
ユノもキヨカも色々、さらに成長してる、うん、笑。
ユノはあの特徴的な髪形から、降ろしてお嬢さま結びにしてて可愛い。
キヨカはなんとボブ。また一段と、女性になってる!
女子はこの3人に加え、リンコとバネッサがいた。
一方男子は、懐かしいメンツが勢揃い!
「ハルキ、ヒカル、サクヤ、セイリュウ、ブンタ、タダシ、ムラク、カゲト、ミハイル…。
それに、リクヤとコウタまで!懐かしーっ!」
「お久しぶりです、ミクさん。
私と朝比奈君は、高校入学を機にまた戻ってきたんです。
ロイさんとアカネさんは、世界を旅しています」
「そーなんだ!
アラタとは、今ちょっと別行動してて、ここに帰ってきたの!
また会えるかもしれないね!」
リクヤ…雰囲気が大分、優しくなったな…。
お父さんの事、乗り越えたんだね。
その次の授業は、なんと偶然猿田教官の授業だった。
「おぉ、ミクじゃないか!びっくりしたな!」
「えへへ、お久しぶりです!」
「本当だ!そうだ、この時間はもう…自由にしよう!」
―――なんて猿田教官の厚意に甘えちゃって。
レッツ、トーク!
―――変わらない仲間、変わらない友情、変わらない青春がここにある。
これは…
世界をめぐる長旅に疲れた私をいやした、神威島での5日間の思い出。