「もう、何度言わせるんですか?いいですか、神童君。まだ1年生で、今年2年生になる、と言っても、生徒会の一員です。手加減は致しません」
「はい・・・グズ・・・」
雷門中学校のとある一室―――生徒会室から、そんな厳しい声と涙声が聞こえてくる。
「如月、少しぐらいいいじゃないか。神童は、サッカー部のキャプテンd―――」
「三国君は黙りなさい!そんなこと、知っています。ですが、もうすぐで三送会です。準備がる事、説明しましたよね?それなのに、部活に行くなんて・・・まったく・・・」
涙声の副会長、神童拓人をかばうように、同じく副会長の三国太一が、さっきからグダグダと、正論を述べる、模範生に抗議するも、失敗。そんな模範生―――彼女が、今期生徒会の会長である、如月麗子だ。
元はすごく美人なのだが、笑いもしないし、性格もきつい。支持率は高いものの、生徒会一同、その厳しさにはまいってしまっていた。
「麗子ちゃん、少しぐらいいいんじゃないかしら?拓人君だって、1年生ながらの両立は、大変なはずだし」
セミロングの絹のような茶髪を揺らす、麗子とは違いおっとりとした感じの美人。それが、会計の西原みかん。麗子とは、ある意味正反対な女の子だ。
「西原さん、そんなことじゃいけないのよ!」
ビクッとしたみかんのそばにいったのは、書記の1人である阿部健司。
「西原、大丈夫か?如月、ちょっと言い過ぎじゃないか?」
しかし、麗子はひるみもしない。彼女は、とことん強く、頭もよく、運動もそこそこできる、模範生だからだ。
「だったら、阿部君は・・・サボった神童君の肩を持つのですね?そんな甘い考えの、西原さんの肩を持つのね?そんな甘い考えの人間、この生徒会には不必要です。今日はお帰りください」
「如月、それはいいすg―――」
「いいよ、阿部君。もう帰るから。阿部君も、一緒に帰ろっか」
目を真っ赤にして、みかんと阿部は退室した。
ドスン、と音を立てて会長のイスに座った麗子を見て、三国も神童も困惑する中、1人だけは笑った。
「さすがだな、麗子」
「・・・篤志に褒められても、全く嬉しくもないのはなぜでしょう」
麗子をからかったのは、書記の南沢篤志。麗子と南沢は、小学校のころからの付き合いだ。
ギロリ、と南沢を睨む麗子。そんな視線に、南沢だけは動じない。つまり、もう慣れてしまったということだ。
「あの・・・会長・・・」
「・・・なんですか、神童君」
机に突っ伏していた麗子に、神童は恐る恐る声をかける。その低い声に、神童がビクッとした。
「いや、あの・・・すいませんでした!三送会なのはわかっていました。でも・・・サッカー部のほうでも、三送会があって・・・」
すると麗子は、小さくため息をつく。
「そういうことなら、早く言ってくださればよかったのに。そういうことなら、わかりました
。私も怒ってしまい、すいませんでした」
すると神童をはじめとする、残りの2人も笑顔がこぼれた。しかし、麗子は笑わない。
―――これが、今期生徒会。
麗子とみかんは、相性が悪いように見えて、実は親友だったりする。
みかんは麗子の性格を、しっかり理解しているため、この2人の関係は成り立っているのだ。
「・・・にしても、麗子って性格、治んないものかな?」
―――麗子がいない、とある生徒会室。
入室早々、南沢はそんな事をいう。そのことに、皆が同意する。
「そうですね・・・まぁ、それが会長なんですが」
苦笑気味の神童。
「でも、1年生のころはこんなんじゃなかった気がするぞ?」
首をかしげる三国に、阿部も同意する。
「確かにな。西原や南沢は知ってるか?」
その問いかけに、みかんは首を横に振る。
「私は中学校からだから。でも、南沢君は小学校からだよね?」
南沢は、無言で首を縦に振る。
「小学校の頃は、かなり柔らかかったんだけどな。まぁ、原因の大方の見当はつくんだがな・・・麗子、何でも1人で抱え込んだりするから」
椅子に座って1人語る南沢。南沢を見つめ、皆の声がハモる。
『何があったんだ(ですか)!?』
すると南沢は、瞳を閉じて語る。
「―――親子の問題、かな」
※此処からは、南沢sideです。
アイツ―――麗子と俺は、小1からの付き合いだった。小さいころのあいつは、無邪気でよく笑った。今からは想像できないよな?
クラスでも人気者で、男女かまわず好かれていた。俺もそんな麗子に、惹かれたんだろうな。
あいつの周りには、いつだって人がいた。
―――麗子の家はちょっと複雑で、母親しかいなかった。その母親も、実の父親の再婚相手だった。しかし、実の父親は死んでしまったため、要するに、お母さんと麗子は、全く血がつながっていなかったんだ。
でも、そのお母さんも麗子も、お互いのことを愛していた。でも、そんな関係は終わってしまったんだ。
あれは、そう・・・麗子が、小4の時だ。
麗子が家に帰ると、家に知らない人が来ていたんだってさ。高級そうなスーツを着ていて、いかにもお金持ち、って感じだ。
でも、そういう奴に限って裏があるもんだ。―――その男は、裏では麻薬の密輸をしていたんだ。
そのことを知ったお母さんは、麗子からなんとかして遠ざけようとした。
そして・・・遠ざけたはいいけれど、自分が殺されてしまったんだ。やがてその男は警察に捕まった。
でも、麗子の心には、大きな傷が残った。
―――それ以来だ。麗子は、周りに来るやつを皆拒んだ。事情を知る、小学校の頃の同級生は、なるべく関わらないようにした。それが、あいつに対する“優しさ”だった。
その中でも、麗子と仲が良かった俺は、皆の期待を受けて、麗子とわざと接した。そして、なんとか今の関係を築いた、って感じだ。
でも、事情を知らない中学からの同級生は、きつい奴、ってイメージらしい。でも、支持率が高いのは、あいつはすべてを自分でしようという、責任感が強すぎる奴だからだ。
でも、強すぎるから、すぐにぽきっといってしまうんだ・・・。
(ここまで南沢side)
「・・・そんな感じだ。わかったか?」
南沢が語り終わった生徒会室は、重い空気に包まれた。
「麗子ちゃん・・・辛かったんだろうなぁ・・・」
みかんが沈黙を破ったものの、会話は続かなかった。―――そのときだった。
「・・・ごめんなさい、先生の話が長引いてしまって・・・って、皆さん?どうかされました?」
いつものように、ちょっときつい態度の麗子が入ってきた。その姿を見て、南沢はつぶやく。
「麗子がこうなれたのは、皆のおかげだな」