「三送会、について話し合いましょう」
ホワイトボードに大きく“三送会”と書き、麗子は机をバンッと叩いた。その音に、思い思いのことをしていた皆が、いっせいに反応する。
「三送会・・・って、終わりましたよね?」
戸惑いがちに神童が尋ねると、麗子ははぁ・・・とため息をついた。
「終わったからです。つまり、反省会」
それならそういってください、というまなざしを麗子に注ぎつつ、4人は納得する。
「にしても、三送会って学校中を使って、逃○中しただけじゃなかったか?」
「反省なんて、何も・・・なぁ?」
「うん・・・」
麗子が、急に持ってこられた資料に目を通している中、三国、阿部、みかんはこそこそと話していた。
学校中で逃走○をして、けが人が1人も出なかったのだから、反省なんてすることがない。
「強いて言うなら、ハンター役の人ですかね」
神童も合流した。
「なぜだ?ハンター役は、足が速かったぞ?」
阿部が聞くと、神童は首を横に振る。
「違います。ハンター役の人だって、逃げたいと思います。それに、陸上部ってことにして、3年生もハンターになってました」
そう指摘すると、皆は確かに・・・と納得する。
「神童の言うとおりだな。3年生がハンターだと、確かに楽しんでもらえたかどうかは、わからないな」
「でも、いまさら言っても、しょうがないと思うんだけどなぁ・・・」
―――4人は、再び黙りこくった。
「これは・・・あぁ、関係ないですね・・・これは・・・予算が少ないなら、顧問の先生に相談してください、と・・・」
一方の麗子は、1つ1つの資料に目を通しながら、丁寧な字で答えをかいていた。筆ペンで書いているというのに、奇麗なのだから驚きだ。
「麗子・・・いいのか?言いだしっぺが、話しあわなくて」
麗子とともに仕事をしていた南沢が、腕を高く突き上げて、麗子のほうを見る。麗子は、資料を見つめたまま、
「これも立派な仕事ですよ、篤志」
とだけ言った。
必要最低限のことしか言わないから、南沢は参っていた。少しくらい、普通に話したい、と思ったりもする。
「そうだな・・・」
でも、そんなことは無理か、と思い、南沢も仕事に移る。
「―――でも、○走中って、ハンター役が楽しいんじゃないのか?」
「いやいや、逃走者でしょ?」
「私は、ハンターだなぁ」
「俺は、逃走者です」
一方、4人は・・・一体ぜんたい・・・。
「何してんだ?」
仕事が終わった南沢が、4人のところへ向かう。すると4人は、目を輝かせて聞く。
「逃○中って、ハンターが楽しいんですか?逃走者が楽しいんですか?」
しばしの沈黙。そして、南沢のため息だけが、生徒会室に響く。
―――とある1日。
「今日は意見を聞きます」
麗子は、生徒会室のドアの前に立ち、まとまってやってきた5人にいう。
「1年生は神童君と三国君、2年生は西原さんと阿部君、3年生は私と篤志です」
そういうと、ご丁寧にメモ帳と黒のシンプルなボールペンを差し出して、生徒会室の鍵を閉めた。
「十分に聞き終えたら、もう帰っていただいて結構です」
そう言い残すと、麗子と南沢は消えた。
「私たちも行こうか、阿部君?」
「お、おぅ」
やがて、みかんと阿部も消え、
「じゃあ、行きますか」
「そうだな」
神童と三国も消えた。
―――今日の仕事が、スタートした。
「なぁ、麗子。仕事って言ったって、3年生に今更聞くことなんて・・・」
「何言ってるんです、篤志。今だから聞くんです」
まるで天井から糸でつるされているように、ピンとした姿勢の麗子と、若干だるそうな猫背ぎみの南沢は、3年生の廊下を歩く。
「・・・あと数カ月したら、俺たちの教室も此処だよな」
ふと思った南沢は、そう呟くと、麗子が南沢を見つめていう。
「あなたがそんなことを言うなんて、ちょっと驚き。先輩としての自覚、とでもいったところでしょうか?」
南沢は若干カチンと来たが、次の瞬間、思わず目を見開いた。―――麗子は、ほほ笑んでいた。
まぁ、しかし、すぐに普段のポーカーフェイスに戻ってしまったが。―――その頬は、若干紅く染まっているわけで。
「麗子もだろ?あ、そんな自覚はないか?」
「ッ!うるさいです!」
麗子の調子を狂わせる、ただ1人の存在が、南沢篤志だ。
一方、2年生組・・・
―――阿部は、恋する相手・みかんとのこの展開に、胸のドキドキが止まらなかった。一歩のみかんは、全く気が付いていない。
「に、西原。部活の奴とかで、話せそうなの、いるか?」
「部活・・・私は吹奏楽部だけど・・・行ってみる?」
「お、おぅ」
いつものように、照れてはっきり言えない返事をして、2人は音楽室へと向かった。
そして、1年生組はというと・・・
「此処しかない」
「そうですよね」
―――サッカー部部室前。つい先日入った神童たちも含め、ファーストチームの部室の前にいる。
「失礼します・・・」
「おぉ!神童!仕事終わったのか?」
そういいながら、神童に近づいたのは、
「いや、これが仕事なんだ・・・霧野」
ピンクのツインテール、中世的な見た目だが、イケメンで、男女ともに人気がある彼は、神童の幼馴染で親友、霧野蘭丸だ。
彼等、サッカー部に事情を話すと、霧野が真っ先に答える。
「集会が少ない。放送で済ませすぎ」
―――的確な指摘だった。