1
この世の中は不条理だ。醜くて、力が無ければ何も為せない。かといって力があっても人は媚び諂い、本当の関係を築けない。
不運―――そんなものいいわけにはしたくないが、俺のこの
折角手に入れた関係なんて、本当は脆いもんなんだって判ったんだ。人は俺を疫病神だなんて呼ぶ。
厄介事が舞い降りて、仲間は皆傷ついて、俺は厄介者扱い―――もうこんな世界は嫌だ。俺から歩んでも、人は離れていく。誰かが近づいてきて、俺が傷つくのなら俺は―――――一人でもいい。
異能なんて、どの世界に行っても一緒だ。
例えそれが超能力が一般である学園都市でも、超能力以上に異常な俺は学園都市でも除け者だった。
日々頭の開発に追われる日々、俺自身理解しえないこの力にどう研究すればこの不遇な状況が変わるって言うんだ。
2
東京西部を切り拓いて作られたこの学園都市では、”超能力開発”が学校のカリキュラムに組まれており、二百三十万人の人口の実に八割を占める学生たちが頭の開発に取り組んでいる―――
「―――なんて、聞こえはいいが見方変えりゃ頭ン中いじくりまわしてるだけじゃねぇか」
ありとあらゆる所に陳列されている学園都市のパンフレットの一つをビリビリに破り捨てる。たちまり菓子に群がるアリの様に自動清掃ロボットが、紙片へと群がり吸い終わると違う場所へと過ぎ去っていく。
「……くっだらねぇ、科学だけが最先端。人間はどこにいこうが本質は変わりはしねぇ」
ニット帽を被り直す。この学園都市に来てもう何年が経ったのかなんて忘れてしまったが、ここに来てやってきた事は濃密で、空虚だ。何も無い、文字通り……俺には友達という者がいない。
不運を手繰り寄せてしまう、研究者曰く
「オイコラ、何ガン垂れてんだよ」
そして今もこうして、たまたま此方を睨んできていたいかにも不良してますよといった金髪野郎を見つめ返しただけでこれだ。
「あぁ? 自意識過剰の度が過ぎてんじゃねぇかボケ」
「はぁ? 舐めてんのかクソ野朗!」
「オイオイ、この人数わかってる? お前一人でこっちは五人だぜ」
ニタニタと顔にへばり付いた気持ち悪い笑みに反吐が出る。
たかが五人で何を強気になってるんだ。アリみたいにうじゃうじゃ群れた所で何か特別な事が出来るワケがねぇってのに。
「しかも、こっちには
「―――――………、」
これだから、この学園都市は嫌だ。
何かと超能力を出したがる。そんなに特別なのか超能力ってヤツは。特別な力を持ってるだけで何が変わるってんだ。
「おやおやだんまりでちゅかぁ?」
周りを通る学生達がヒソヒソ話しながら遠ざかっていく。厄介事に巻き込まれたくなくても勝手に降って来るんだ、ホント嫌いだこの右手。
「うざってぇな……喧嘩するならさっさと来いよ、人数で囲って脅しだけで終わらねぇんだろ」
「コイツ……好き勝手言わせておけばっ!」
ギリッと歯軋りする金髪。きっとコイツが強能力者で間違いないハズだ。
「へっへへへへ……コイツぁなぁんだ!」
―――思った通り、金髪が両手を挙げるとサッカーボール程の火球が発現した。
周りの野次馬から悲鳴が上がる、誰かわからねぇヤツが携帯を取り出して通話している。
あぁ……
「さっさと飛ばして来いよ、五人纏めて来てもいいぞ―――今無性にイライラしてんだ」
イライラと言っても、いつも通りなんだが。ストレス発散にはちょうどいいだろう。
「こん、の……大怪我してもしらねぇからなぁぁぁ!!」
「人の心配するとは、何とも優しいヤツだ。バカすぎて涙が出ちまうよ」
轟々と燃え盛る火球が、金髪の手元から発射された。不思議な軌道を描いて飛来する火球。着弾すれば人一人なんて容易いだろう、見るだけで伝わる殺傷力を剥き出しにした火球に
キュインッ! 掃除機の起動音の様な甲高い音と共に、火球は一瞬で右手に
「っは?」
誰かの気の抜けた声が聞こえる。だけど、そんなモンは関係ない。
一度俺に敵意を見せて、攻撃してきたんだ。正当防衛は成立した。
「……こんだけ殺傷力の高ぇ攻撃してきたって事は判ってんだろうな?」
「はっ、あぇ? く、くそっ。演算ミスか! もう一発―――」
硬直していた金髪が火球を作り出し投げてくる。
「何回やっても同じだ」
その火球をもう一度吸収する。そのまま勢いよく金髪へと走る。
「くっくそ! もう一発!」
「―――遅い」
金髪が火球を作り出すより早く、そのがら空きになった懐へと肉薄する。
返答と共に左拳を金髪の鳩尾へと繰り出す。
「ごはっ!?」
唾液を撒き散らし体を痛みから、九の字に曲げる。体を逃がさない様に、次は右手で金髪の顔面を掴んで左手で首元を押さえてロックする。
そして―――走った事による勢いと体重を乗せて飛び上がりながら右膝を鳩尾へと叩き込む。
「がっ……あ」
まず一人。両手で掴んだ金髪の体から力が抜けるのを確認してから手を離す。
「……リーダー格が倒れちまったみたいだが、お前らどうすんだ」
「はっ、え? ち、ちくしょうが! たたんじまえ!!」
「そう、か。まだやるか……お前らホントに―――」
此方へと走ってくる一人の顔面に、握り締めた右拳をぶち込む。
ずるりと倒れふす姿を見ながら、右手に視線を落とし鼻で笑う。
「―――――