私は射命丸 文。妖怪の山に住む鴉天狗です。実は私、悩み事があるのです。
それは……
「文ちゃん、結婚を前提にお付き合いしてください」
「お断りします。」
「そこをなんとか」
「お断りします。」
「デレ期はまだですか」
「死ね。」
これです。しつこいんです、こいつ。数日前に初めて出会ったのですが、それから何度断っても求婚してきます。
「はあ…今日もだめだったかぁ。」
溜め息をつく彼を見てみる。
……ふむ。顔は悪くないのになぁ……しつこさがすごいので『残念なイケメン』というやつでしょう。
「お?そんなに見つめてとうとう俺に惚れたk 痛い!ちょ、いたいいたい分かったから殴らないで下さい!」
殴ってやりました。何度か。安心してください。顔しか殴っていませんから。
「ちょ、それだめな奴ですよね」
「ちょっと黙ってて下さい。」
「ア、ハイ。」
はあ……疲れたから帰りますか……
「文ちゃんの部屋……ハァハァ……」
「ちょっとー。自警団さーん。ここに変態g
「すみませんでした。」
そう言って土下座を披露する彼。ふむ。これは素晴らしい土下座ですね。……ぐぬぬ、高得点です。仕方ないので今回は許してやりましょう。
「お、ということはお付き合いをしてk
「却下。」
「即答ですか。んじゃ文ちゃんまた明日。」
「できれば明日はお会いしたくないですね。さあとっとと行ってください。残念野郎。」
「俺の扱いひどくないですか!?」
最後に彼が何か言っていた気がしますが……変ですね。ちゃんと返事してあげたのに。まあいいです。帰りますか。
さて。帰宅しました。部屋には私一人。まあ一人暮らしなんで当たり前ですが。さっきまでうるさい残念鴉がいたのですが、そんなのが居ない我が家。とても静かです。
……さて、あの残念鴉どうしましょうか……そういえばいくらしつこいとはいっても引き際は心掛けてるみたいですね。あっさり帰って行きましたし。
「ふぁぁ。」
んー。あくびが出ました。眠いです。睡眠時間削ってまで考えることでもないですし、今日はもう寝ますかね。
しかし本当に静かですねえ……
「ふぁぁ。」
どうやら朝になったようです。窓から入り込む日光が教えてくれました。
今日はお仕事はお休みです。今私が決めました。だって疲れていますし、許してくれるでしょう。
さて、今日はお買いものにでも行きますかね。
さて、今日は久しぶりに色々なものを買いました。
……おろ?今前見えるのは椛と……アイツですかね?
なんで2人が並んで歩いているのでしょうか。私、気になります。でも何故ですかね。なんで私は苛立ちを感じているのでしょうか。本当になんなのでしょうか。この気持ち。
「あれ、文ちゃんこんにちは。」
「こんにちは。」
んー。並んで立っている二人を見ていると……。
「文様は何をしていたのですか?ってああ。買い物ですか?」
「はい。少しほしいものがあったので。そちらは?」
「私たちも買い物です。」
む。デート……なのかな?。 少し胸が痛くなりました。何故でしょうか?。
「というわけで……文ちゃん結婚してください!。」
なにがというわけなのか分かりませんが……少し意地悪したくなってしまいました。
「いいですよ。」
「やっぱり無理ですか…ってあれ?本当に?」
「ただし条件があります。私に似合っていて、そんでもって綺麗な花を持ってきてください。そしたら考えます。」」
「わっかりました。では行ってきます。」
そう言って彼はどこかへ飛び去って行きました。
うん。私は考えますとしか言ってません。結婚するとは言ってません。
「さて、椛。さっきから空気になってますが大丈夫ですか?」
「文様って……つんでれ、ってやつなんですか?」
「椛、次それ言ったら怒りますよ?」
「す、すみません。」
むう、何故だ。何故椛まで私の事をツンデレというのですか。
……まあいいです。暗くなってきましたし帰りますか……
「では椛、暗くなってきたので私は帰りますね。さようなら。」
「あ、さようなら。」
そういって今日は解散した。なんだったんでしょうかね。あの気持ち。まあいいです。今日はもう寝ますか。おやすみなさい。
む、こんな夜中に扉を叩いているのは誰でしょうか。アイツでしょうか。だったら殴り飛ばさないといけませんね。
そう考えながらも私が扉を開けると少し息を切らした椛が居ました。どうしたのでしょうか。
「文様、文様大変です!」
「とりあえず椛、落ち着いて。どうしたの?」
「実は……
椛の言葉を聞いた瞬間、私は家を飛び出ていた。一刻も早く目的地にたどり着けるように。
「あ……文ちゃん……?」
見えたのは傷だらけのアイツ。左腕と右足が無く、傷が体中にある。そして右手にはひまわりの花。まさか……あの花畑に……?
「文ちゃんはいつも元気で太陽みたいな笑顔で周りを明るくしてくれていた。だからこの花がいいと思ってこれが沢山咲いている花畑にいって、そこの幽香さんって人から貰えるように頼みに行ったんだ。そして交渉してこのひまわりを譲って貰ったんだ。 なあ、これが俺が一番文ちゃんに似合っていると思った綺麗な花だ。結婚してくれますか?」
「どうして!どうして私なんかの為にそんな命を脅かすようなことをするの!」
彼は……この傷では……妖怪でも……
「いつも言ってたよ。」
彼は体中の傷をなんともないように笑顔で……
「文が好きだからだ。」
そう言った。
ああ、なんだ。私、好きになってたんだ。ヒントは沢山周りに転がっていたのに自分の気持ちすら分からないなんて。
「嫌……です。あなたが死んでしまうのは嫌です……」
「すまない、文ちゃん。もうダメみたいだ。」
「そんな……そんな……」
「せめてこの花だけは貰って。」
「はい。」
「文。俺の分まで生きてくれ。最後のお願いだ。」
そう言って彼は動かなくなってしまいました。なんで私は気がつかなかったのでしょうか。
涙があふれてきました。今やってきた椛が、私を抱きしめて、何も言わないでくれました。ありがとう。
これが私の初恋でした。
大切なものを自覚できないで、失って気付いてしまいました。
でも私は前を見続けます。そりゃ最初は現実逃避もしましたし、自殺しようともしました。しかし、彼の最後のお願い。生きてほしいと言う事。私はそのお願いを聞いて、生きていきます。彼の分まで。
読んで下さり、ありがとうございました!