長沢勇治 3 7.8 3人の殺害
矢幡麗佳 ? 5.2
色条優希 ? 10
漆山権造 ? 6.9
手塚義光 ? 3.5
陸島文香 ? 6.1
郷田真弓 ? 4.8
御剣総一 ? 4.3
姫萩咲実 ? 8.6
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葉月克巳 7 7.4 全員との遭遇
綺堂渚 J 6.7 24時間一緒にいた人間の生存
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長沢は悔やんでいた。自分に割り当てられたPDAを。ダイヤの3……首輪の解除条件は3人以上の殺害。最初は人殺しが出来ると胸を躍らせていたのに、今は素直に喜べなかった。もしも渚や葉月のような条件を引いていたら、それこそ二人と協力してゲームをクリアする、そんな何度もプレイしたRPGの登場人物のようになれたと言うのに。
自分を認めない奴らを殺す。
敵を倒す。
馬鹿にする奴らを血祭りに上げる。
どうせここにいる人間なんてみんな学校にいる奴らと同じだ……そう思っていた。
でも、それは違っていた。それならばどうすればよいのだろう。このままではいずれ時間切れになってゲームオーバーとなる。やっぱり、葉月たちから離れるべきじゃなかったのかもしれない。しかし、一緒にいれば首輪の解除は不可能だろう。
「渚の姉ちゃん……葉月のおっさん……俺、一人でクリアしてみせるよ。そしたら、もう一度……」
長沢はひとり呟いた。ちょうど涙が乾いて心が落ち着き始めた頃だった。
「さて、と。そのためには武器を探さないとな!」
大きく深呼吸すると普段の調子を取り戻した。ゲーム開始からは9時間が経過している。
PDAを見てみると生存者数は13人のままだった。大きな変化はない。長沢は今のうちに2階を探索しつつ3階を目指すことに決めた。そこでもっと強力な武器があるようならば、さらに上の階を目指す。何にしろさっき襲われたことを考えれば、クロスボウのような遠距離武器は必要だろう。
地図を頼りに一人で探し回ろうとしたものの、自分がどこにいるかを判別するのに時間がかかる。GPS機能のツールボックスを葉月に譲ってしまったのを今になって後悔した。
だが、それでも少しずつ当たりをつけていくと、大体の位置をはじき出すことができた。皮肉なことに、普段引きこもってやっていたゲームで得た勘や知識が、役に立つことになったのだ。
「へへ、どうだ。アイテムゲットだぜ!」
長沢はその途中で、新しいPDAのツールボックスを見つけた。排気ダクトの見取り図らしく、この通路を使えば大幅に移動距離を稼ぐことができる。いくつかの部屋を確認してみたところ、そのようなダクトが天井に設置されていた。
「でも、あまり役に立ちそうじゃないな……まあ、こっちが手に入ったからいっか」
長沢は右手にスタンガンを握り、試しに何度か放電させるとポケットにしまい込んだ。
――そろそろ3階へ行った方がいいな。PDAに目を落として再び歩き出す。
「……はぁ~、せっかくのゲームなんだからよう、もうちょっとこう、刺激ってもんが欲しいところなんだがねえ。ガキの遠足じゃねえんだからさ、オリエンテーリングやりに来たんじゃねえっての」
その頃、手塚義光は2階の通路の一角で煙草をふかしながらぼやいていた。そしてPDAの地図を物憂げに眺める。ここから壁をいくつも隔てて正反対の場所に点滅する地点があり、それが彼にとっては頭痛のタネのようだった。
「この配置にこの迷路。こいつを作った奴は間違いなく嫌がらせの才能あるぜ。ま、しゃーねえ。まだ時間はあるし、のんびり行きますか」
煙草の火を消して進み出そうとしたその時、近くの部屋から物を倒すような音がした。
人が物に当たったような、それでいて机と椅子が倒れたような感じの音だ。
「ん? 何の音だ?」
音からしてそう遠くない場所だ。手塚は念のためこの階で手に入れたコンバットナイフに手をかけ、音がした部屋へ静かに寄っていく。そこはわずかながらにドアが開いていた。そのまま手塚は隙間から中の様子を窺った。
「はぁっ……漆山さん……そんな、いきなり……」
「ご、郷田さん!! いや! 真弓さん!! 俺は……俺はぁ!! あ、ああ、あんたのことがぁっ!」
見ると漆山が郷田に鼻息荒く迫り、押し倒していたのだ。一方的に迫っているのかと思いきや、郷田の方も満更ではないように見える。いや、おそらく裏があっての無抵抗であることは想像に難くない。
そんなタマでもなきゃ会社の社長など勤まらねえだろ……手塚は思った。それに郷田の放つ雰囲気はどうにも自分と似ている――裏社会に通ずるような、そんな気がしたのだ。
そうは言えども、この情景には流石の手塚も感心すると同時に呆れる他なかった。
――お前ら状況を考えろよな。
漆山はともかくとして、郷田の首輪解除条件はおそらく殺人がらみではないのだろう。それならとっくに漆山を殺しているはずだ。もっと得られる情報はないものかと、手塚はそのまま聞き耳を立てる。
「漆山さんのお気持ち、大変嬉しく思います……でも……この首輪があるうちはこうしているわけには参りませんの……」
「ど、どうすればいい! あんたの首輪を外すには!! はぁっ……はぁ、はっ」
「そんな……漆山さんのようなお優しい方に、このようなことはお願いできませんわ……」
「いや! 言ってくれ!! あんたのためになら、俺は! 俺はぁぁっ!!!」
手塚は郷田の演技がかったものの言い方に歯が浮いた。そしてそれを真に受ける漆山にも。
……いや、呆れてる場合じゃねえ、ここが大事だ。
手塚は耳に神経を集中させたが、結局、郷田が漆山に何かささやいたのが見えただけで内容まではわからなかった。
「……チッ、聞こえねえ。となると長居は無用か。厄介事に巻き込まれる前においとましますか」
手塚は帽子をずらしながらドアから離れて行く。彼にとって二人がなぜこうなったのか、そしてこの後どうなるかと言うことはどうでもよかったのだ。
大分離れたところまで来ると、後ろを振り返る。そして特に異常がないことを確認すると、堪えていた笑いが一気に飛び出た。
「クックック……ハハハ!! オッサンよお、あんたどんだけ女に縁がなかったんだよ? 会ってから間もない女がそんな簡単に心を開くようなタマかっての……!」
二人の情事の様子を思い出し、誰にでもなく言うと歩きながら笑う。
「それにあの血走った目に、必死のツラときたらねえぜ……こいつは傑作だ! ハッハッハ!! オッサン、芸人にでもなった方がよかったんじゃねえのか?」
手塚の乾いた笑い声が通路に響き渡る。
「いや、そいつは違うか。せっかく首輪が付いてるんだもんな、飼い犬って方がお似合いか? ハハッ……ますます面白くなってきやがったぜ。郷田さん、いや、真弓さんっ、てか! 名前で呼びゃいいってもんじゃねえだろっての! ククッ……ハハハハハ!!」