シークレットゲーム 勇者長沢   作:火金星人

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第5話 嵐の前のプレリュード

「まずは武器でも探さないとな」

 

長沢は地図を頼りに歩き回った。あの中から3人を殺せばゲームクリア……つまりここにいる人間のうち、3人と戦闘して勝たなければならない。そのためには素手では心もとなく、相手のPDAによっては自分が攻撃されることも十分にある。身を守るためにはやはり何か武器が必要なのだ。

 

しかし、探索ついでにいろいろな部屋を探し回ったものの、そのような物は見当たらない。

辛うじて武器と呼べそうなものは棒きればかりで、良くて角材程度のものだった。椅子も武器になるかもしれないが持ち歩くには不便すぎる。

 

結局、どこの部屋も似たようなものだった。それにただでさえ迷路のように広い建物だ。全てを見て回ってたら時間がいくらあっても足りないだろう。

 

「クソッ! ここもハズレかっ!」

長沢は途中の部屋で拾った棒きれを振り回しながら、思い通りにならない結果にいきり立った。探索も飽きてきたせいか、つい機嫌が悪くなる。だんだん足取りも重くなったその時、長沢はひらめいた。

 

――あ、そうか!

 

ゲームのダンジョンでは奥に行くほど強力な魔物が出てくるが、その分強力なアイテムが手に入る。ということは、上の階へ行けばなにかあるのかもしれない。

 

幸いPDAの地図には階段の場所も記されていた。一つのフロアに数ヶ所あり、長沢は今の場所から最も近い位置にある階段を目指した。とりあえず上に行ってみよう、と思ったまではよかったが――

 

 

「……この! バカにしてぇぇ!!」

 

 

階段の前にはたくさんの瓦礫、コンクリートの塊が積まれていた。とても動かせるような代物ではない。参加者を通れなくするための障害物なのだろう。

 

「ふざけんなっ!!」

 

――バキッ!

 

「あっ……」

 

カッとなった長沢が棒きれで目の前のコンクリートを思い切り叩くと、せっかく手に入れたそれが音を立てて真っ二つになってしまった。こういう時に限って悪い癖と言うのは出てくるものだ。そう、無意味なことだとわかっていながらどうしてもやってしまう。ゲームで腹が立つことがあるとコントローラーで床を叩いたり、ソフトをぶん投げたり。その後、データが飛んだり傷物になったりして、深い後悔に陥るのは毎度のことだった。それは今回も同じか。

 

だが、少し落ち着いてPDAを見てみるとこの階段には×印が付いていた。それもここだけではなく、×がついてない階段は一箇所だけだったのだ。長沢はその階段を目指し、しぶしぶ引き下がるしかなかった。冷静にしていればこの程度のことなど気づくはずだが、期待と興奮で感情が高ぶっているとそうもいかなくなるものだ。

 

一人で行動していると、自然と考え事が多くなる。誰を狙うべきか?

 

はっきり言えば誰でもいいのだが、今のところは弱そうな漆山や咲実、特徴のない総一あたりがいい。いくら自分の身体が小さいとは言え、咲実ならば正面から殴りかかっても互角以上に戦えるだろう。武器があれば尚更心強い。自分と同じく運動も苦手そうだし、メインターゲットは彼女で決まりだろう。漆山なら素手では無理かもしれないが、武器を使えば何とか勝てるような気がした。思い切り殴ってダウンさせればこっちのものだ。総一も不意打ちさえ成功すれば……とにかくこの3人である。

 

なにか危険な感じがする郷田や手塚、うるさそうな文香は次点……そしてまだ会ってない奴や麗佳に奇襲をかけるのもいい。何か武器が手に入ればいけるはずだ。この時、長沢は無意識のうちに優希を対象外にしていた。その気になれば一番簡単に殺せる相手だというのに。

 

 

どれくらい歩いただろうか、目の前に階段が見えたその時である。

 

――ピロリン、ピロリン、ピロリン。

 

無機質な電子音がPDAから鳴り響く。長沢はすぐにPDAを取り出し画面を確認した。

 

『開始から6時間が経過しました。お待たせいたしました。全域での戦闘禁止の制限が解除されました!』

 

「お、おい! ちょっと待てよ、俺、まだ何も見つけてねえじゃんかよ!」

 

PDAを見て長沢は青くなった。武器探しに夢中になり過ぎて時間が経つのを忘れていたのだ。最初はゲームに乗り気だったとは言え、いざ自分が危険な状況になると笑ってはいられない。これからは誰が襲ってきてもおかしくはないのだ。

 

「た、確かに、ゲームの主人公は最初、不利だけどさぁ……」

 

不安げに周囲を見回すと長沢は階段を一目散に駆け上がった。

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