ネプテューヌVA' 番外編〜from.Hameln〜 作:紅蓮龍蒼
あとゴースト意外とカッコいいね、うん!
はい、というわけでやっと完成!
ソルヒートさんとのコラボ小説プロローグ!
前にコメントで貰ったありがたい指摘を意識しながら書いたのとギャグがやっぱり多くなった仕上がりです。
まあ指摘通りに出来てるかあんまり自信ないですが……。
はいじゃあ気を取り直して、久々のコラボ小説を、バッチリミナー!
Chapter 1/3
─────世界は無限に広がっている
─────世界に数の限りなどありもしない
─────あらゆる世界は何処かで繋がっている
─────頑固な壁で覆われているようで意外と脆い
─────それ故に、一つの世界の枠を超え、様々な世界を歩む者が数多存在する
─────その中には、世界中の人々を守るために戦う勇敢な戦士がいた
─────それとは逆に、世界中を絶望へと染め上げようとする、全ての諸悪の根元もいた
─────その名は”ゼ・オ”
─────全ての世界を生み出した全知全能の神にして、絶望の体現者。
─────そんな強大な悪が従える組織
─────ダークトゥダークネス
─────そしてそのダークトゥダークネスへ真っ向から挑む戦士
─────仮面ライダー
─────二つの存在同士はぶつかり合う
─────片方は世界を守るため
─────片方は世界を絶望に染めるため
─────両者の戦いは長い間、幾度となく続いていた
─────たとえ終わりの見えない戦いだろうと、仮面ライダーは決してダークトゥダークネスの野望を打ち砕くまで諦めない
─────人間の自由と平和の為に戦う
─────大義名分など求めず、人々の明日を守る為
─────仮面ライダーは、たとえ偉大で強大な敵であっても屈する事なく進み続ける
─────それがたとえ
─────愚かで無謀であろうと
……
………
…………
そこは一つの異世界、ゲイムギョウ界に存在する四つの国の一つ。
女神パープルハートが治める、革新する紫の大地、プラネテューヌ。
そんな紫の大陸のとある郊外、ダンジョンのギリギリ範囲外のそこにヒッソリと建てられた施設。
表向きは環境保全関連の施設と称しているが、それは全くの嘘っぱち。
施設内の地下、そこでは黒い覆面を被った複数人の研究者が集い、最新鋭のコンピューターが設置され、いくつもの配線が所狭しと伸びている。
極め付けは、手術台の上に横たわる、この世に存在する生物とは考えられない異形の怪物が、数人の科学者によって”改造”を施されていた。
何を隠そう、ここは悪の秘密結社、”ダークトゥダークネス”が管轄している、”怪人を製作する研究所”なのだ。
そんな研究所では日夜、自身が所属するダークトゥダークネスの悲願達成の為に、エッサホイサとさらなる怪人を生み出す事に専念している覆面研究者達。
休暇などロクに取る事なく時間の全てをダークネスのために捧げる彼ら。
全ては自分たちの首相、”ゼ・オ”の意志に従い、精魂込めて怪人製作を────、
「なあ?お前最後に休暇取れたの何時?」
「ええっ?………………あぁ〜、確か半年前だったかな〜?1日だけ休暇取れたよ」
「うわっマジで……!半年に一回って労働基準法ガン無視じゃん……」
「いや秘密結社に労働基準法守る義務とかないだろ……。……でもだからって休み全然無いのは酷いよな?」
「まったくだよ……。はあ……せっかく大学出たのになかなか就職先見つかんないから、丁度研究者募集してたここに就職したの、やっぱ間違いだったな〜」
「いや違うって。完璧凡ミスだよ」
────……………………前言撤回。
一部真面目に働いてない社畜がいました。
ラクダ型怪人の製作に取り掛かっている班の、その内の二人の覆面研究者が、自分が所属する組織のブラックを通り越してダーク過ぎる労働基準に鬱憤を漏らしあっている。
ダークトゥダークネスだけに労働基準がダーク真っしぐら……ってやかましいわっ。
「あぁ〜もうやってらんねぇよ〜。こんなんじゃ次に休暇取れるの1年後とかだったら洒落になんねぇし……」
「って言ってもさぁ、今ダークネスって”仮面ライダー”と”女神”のせいで結構怪人倒されてるじゃん。俺らが怪人作んないと戦力がドンドン減ってくし、そう簡単に休暇なんて取れないって」
「だよな〜…………はあ……もういっそ仮面ライダーが攻めて来てここの研究所壊されたら休みにならないかな〜?」
憂鬱の込められた深いため息を吐く覆面研究者は、そんな叶いっこない願いを漏らした。
彼はおそらく、ただ何気無くそんな冗談を口にしたのだろう。
この研究所はそう簡単にはバレない。
上の階はカモフラージュ代わりに何の変哲もない環境保全施設の内装を装っており、ここへ来るにも警備怪人が入り口を守護しているのだから、仮面ライダーや女神が攻め込んでくる事はまず無いだろうと確信していた。
だが、人はそれをフラグと言う。
────ッッッッッズドオオオォォォォォンッッッ!!!
「御用だ御用だぁー!あたし達の目を盗んで怪人を作ってるダークネスの研究所はここかぁー!」
地下施設内への入り口のドアが爆音と共に吹き飛び、軽快でテンションの高い声が響き渡る。
そしてドアが無くなり開けっ放しな状態の入り口から一人の人物が堂々と入り込んでくる。
その姿は、白い装甲と白を基調としたアンダースーツに身を包み、腰にバイクのエンジンをモチーフとしたベルト、”マッハドライバー炎”を装着し、赤と白のストライプ色のスカーフを靡かせ、そしてバイクレーサーのヘルメットに近い形状をした”仮面”を被っている。
その戦士の名は、”仮面ライダーマッハ”。
敵を音速で追跡し、そしてまた音速で撲滅するいずれもマッハなハイスピード戦士。
このゲイムギョウ界で活躍する仮面ライダーの一人である。
「か、仮面ライダー……!?な、なんでこの研究所に……!?」
「ふっふ〜ん、プラネテューヌの諜報部をなめてもらっちゃ困るよ!ここでダークネスが怪人をこそこそ作ってるって情報をあいちゃんが持って来てくれたから、こうしてやってきたってわけなのだ!」
突如として敵対している仮面ライダーが豪快に現れた事で慌てふためきながらも問いただす、さっきまで愚痴を垂れ流していた研究者。
対するマッハは右手に携える、バイクの前輪タイヤが取り付けられた銃、”ゼンリンシューター”の銃口を研究者へと向けながらそう得意げに説明する。
このマッハ、何やら口調が女々しいがそれもそのはず。一見すれば男性だと判断するだろう出で立ちをしているが、中身はれっきとした”10代女子”なのだから。
「え、絵美ちゃん……!そんな一人で先に進まないでってばぁ……!」
「まったく……、私達が下っ端怪人の相手をしてるのにスルーして本陣に突っ込まないでほしいわ……」
「あっ、ごめんごめんネプ姉、ぎっちゃん。プルちゃんのお仕置きからやっと解放された嬉しさでつい……」
っと、後方からマッハの変身者の名前を呼びながら声を掛ける新たな来客が二人姿を現し、振り向いたマッハは申し訳なさそうな声で応答しながら仮面の後頭部に手を添える。
その二人こそ、この秘密の研究施設が建てられている国、プラネテューヌを治める女神姉妹。
疲労感がこもった表情で肩を上下させ、胸に手を当てて呼吸を整えようとするライラックのロングヘアー美少女、”パープルシスター”。
ぎっちゃんこと”ネプギア”。
右手に携えた長剣を肩に担ぎ、はあ……っと呆れるように溜め息をつくヴァイオレットのロングツイン三つ編み美女、”パープルハート”。
ネプ姉こと”ネプテューヌ”。
どちらも身体にピッチリ張り付くコンバットスーツに身を包み、身体の周囲に浮遊する各部武装を纏っている、ガチ戦闘モードの”女神化”状態である。
では、人物紹介も済んだところで、なぜマッハの後にパープルハートとパープルシスターが遅れてやって来たのか説明しよう。
まず最初、上の階からこの地下の施設内へ続く入り口をこっそり探していた三人。
しかし通路への入り口を見つけたと同時に発見&取り押さえられそうになる。
隠密行動スキルがほぼ皆無なメンバーばかりなせいではあるが、見つかってしまっものは仕方ないと、その場で三人同時に変身した彼女達は強行突破する事に。
迫り来るダークネス戦闘員を退けながら進む中、パープルハートとパープルシスターに『先に行くね!』と短く断りを入れたマッハは、自身の驚異的スピードに物を言わせて戦闘員を瞬く間に横切り突き進んだ。
待ったをかけるパープル姉妹をスルーして。
結果マッハだけが先に研究施設の入り口に辿り着きそのまま特攻、第一声でその場の研究者達に戦慄を走らせた。
そして置いて行かれたパープル姉妹は戦闘員を二人で倒しながら遅れて追いつき、そして今に至るわけである。
「あーあ、お前が不吉な事言うからホントに仮面ライダー来ちゃったじゃん……」
「いやでもさぁ、マジで来るとは誰も思わないだろこれ!」
「っていうかどうすんの?俺らが担当してたラクダ型怪人、さっき仮面ライダーが吹き飛ばした扉に巻き込まれてペシャンコだよ?」
「うっげぇ……あぁやばいって……俺らのノルマ振り出しじゃん……尚更休暇が遠のくじゃんこれぇ……」
仮面ライダーが研究所に攻め込んで来た事よりも、自分が担当していた怪人が仮面ライダーに吹き飛ばされた扉によってペシャンコとなり、それが己の休暇が遠のくという思考へ繋がった覆面研究者は両手を頭に当て嘆いた。
あぁちくしょうガッデム、神は死んだ……。
っと心の中で血涙を流しながらそんな言葉を綴った彼。
しかし敢えて言わせてもらおう。
君の目の前に神様二人いるよ、と。
そんなこの危機迫るといった雰囲気の中で完全アウェーな研究者二人のトークは、バッチリ奇襲側の耳に届いていた。
「……お姉ちゃん?なんだか凄く場違いな雰囲気を醸し出してる人が……、っというかダークネスって、労働基準法守ってない……?」
「ネプギア、相手は全世界に喧嘩売ってる秘密結社よ。普通の法律なんて守るわけないわ」
「……………でも、なんだかあの人達、可哀想に思えてきたかも……」
「ダメだよぎっちゃん!相手はダークネスなんだから、一々気にする必要なんて────」
「おのれ仮面ライダーと女神!性懲りも無くまた我々の邪魔ばかりしおってからに!」
ダークネス研究者の真っ暗な労働事情を前に、不憫な気持ちが募ってきて複雑な表情を浮かべる優等生系女神のパープルシスター。
マッハが情け容赦無用と言わんばかりに気持ちを切り替えさせようとする途中で他の声に遮られた。
その声が発せられた方向へ三人は視線を向ける。そこに立っていたのは二体の怪人。
片方は鷹が人型になったような姿をした茶色を基調とした獣型の怪人。ちなみに左肩に本物の鷹がそのままくっついてるような武装が取り付けられている。
もう片方は両肩にぶっといキャノン砲を二挺担ぎ、二本の鎌が鎖で繋がれた武器、鎖鎌を手にしている赤を基調とした、何処のモビルスーツだよと言いたくなるような機械型の怪人。
その二人のうち、先程マッハ達に向かって声を張り上げたのは鷹の怪人。
表情などは全く読めないが、明らかにご立腹な様子である事は明白だった。
「おっと、怪人のお出ましだね……。ネプ姉とぎっちゃんはそっちのキャノン背負った奴をお願い!あたしは……あの”ニワトリ”を倒す!」
口頭で各自の分担を振り分けたマッハは、マッハドライバーの上部に搭載されているボタン、”ブーストイグナイター”を素早く4回叩いた。
『ズーット、マッハ!』
独特な音声とともにバイクのマフラーに似た部分から勢い良く炎が噴き出す。
するとマッハはその場から駆け出した。だがその突発的スピードは尋常ではなく、瞬間移動にも匹敵する加速力で、数人の研究者を跳ね飛ばしながら鷹の怪人の目の前に急速接近すると、勢いそのまま鷹の怪人に体当たりして巻き込んだまま、壁を突き抜けて隣の施設内へ行ってしまった。
「えっ!?絵美ちゃんその怪人どう見ても鷹なんじゃ…………って、行っちゃった……」
「はあ……今日の絵美はいつにも増してゴーイングマイウェイって感じね……」
何処から見ても鷹であるあの怪人をニワトリと呼称していたマッハにツッコミを入れようと手を伸ばしたパープルシスターだが、すでに豪快なエリア移動を行ったマッハには届くことはない。
そんな中でパープルハートはまたも呆れたように溜め息。本日のマッハのテンションに若干ついていけていないようだ。変身前ならともかく。
「うん……。……やっぱり、プルルートさんのお仕置きという名の拷問から解放されたのが嬉しいのかな……?」
「ネプギア、あんまりあの地獄のような時間を思い出させないで……。……それに今は」
言って、サッと左手を振り抜く。
すると目の前に二つの魔法陣が展開、と同時にシェアエネルギーで構築された信仰の聖剣、パープルハートの得意技の一つ”32式エクスブレイド”の小型版が放たれる。
その放たれた32式エクスブレイドは、パープル姉妹に向かって飛来した”砲弾”とぶつかり相殺され、小規模な爆発が起きた。
「怪人との戦闘中よ」
「あらら……あのままガールズトークに花を咲かせてくれてれば、ちょちょいと倒せなのになぁ〜」
パープルハートが鋭い眼差しを向ける先、そこには鷹の怪人と共に現れた機械の怪人、”キャプテンキャノン”が面倒くさそうに発言ながら、砲口から煙が登っているキャノン砲を担いだ肩を竦めていた。
鷹の怪人が真横でマッハに突き飛ばされるシーンをただ視線を送っただけで特に気にも留めないといった感じで流したキャプテンキャノンは、仲間の奇行によって残された女神二人に対し、とりあえず隙だらけだったのでキャノン砲を二挺同時に発射した。
「なら残念ね。私達はそう簡単に倒される程ヤワじゃないわよ」
しかしなんという事か。
パープルハートはキャプテンキャノンが攻撃した事を妹との会話中に察知、対応した。それもクールに。
いくら女神とはいえ不意打ちへの対処は困難と見たキャプテンキャノンだが、どうやら簡単には倒さないようだと内心で残念に思う。
「そして貴方たちを倒してこの研究所も壊せば”メテオ”が褒めてくれるかもしれない。なら俄然ヤル気が出るわ」
そんな事を言うパープルハートの目は、確かにやる気の炎が灯っていた。
だが、そのやる気に繋がる理由が、自身が好意を抱く相手からの褒美を得るが為にという、何とも私利私欲な物だった。
国を治める女神が、自国と国民の平和ではなく自分の私欲を第一に優先するとは、これいかに?
「なるほどねぇ。まあでも、こっちはこっちで命かかってんだ。俺だってやられたくはないから…………別嬪さんと可愛子ちゃんだろうと容赦しないぜ!」
「望むところ。ネプギア、連携で一気に畳み掛けるわよ!」
「うん!私も”メテオ”さんに褒めて貰えるように、全力でいきます!」
両者ともに臨戦態勢を取る。
片方はこの場で死を迎える事を拒む為。改造人間にされたとはいえ死ぬ事は許容できない彼は、生きる為、そしてダークトゥダークネスの崇高なる目的の為に鎖鎌をブンブン回す。
そしてもう片方は、目の前の怪人を倒し、この研究所を今日で閉鎖するため。そしてその功績を彼に伝えて褒めてもらう為。具体的に言えば頭ナデナデとか、彼が作る絶品プリンをたんまり食すとか、あと欲張るなら膝枕もいいかな、などなどなんとも私欲に満ちた事ばかりを思い馳せる国のトップ(笑)。
ちなみに妹も姉と似たような事を思考しているのは最早言うまでもない。
そんな今日も何気にいつも通りで平常運転なパープル姉妹、パープルハートは長剣を、パープルシスターは銃剣”M.P.B.L”をそれぞれ構える。
生死と欲のぶつかり合い。
今、ここに火蓋が切って落とされる。
側から見るとなんだかパープル姉妹の方が悪に見えるが、そこは敢えて突っ込まない方向で。
よろしく!
……
………
…………
一方、エリア移動を行ったマッハと、全力で巻き込まれた鷹の怪人はというと。
隣の研究室で起こった爆発音と、放送用スピーカーからけたたましい程鳴り響く警報アラームによって、すでに我先にと大慌てで逃げ出した覆面研究員はすでに一人として居らず、そんな無人の研究室内の壁を突き抜けて豪快に入室したマッハと鷹の怪人。
マッハは鷹の怪人を突き飛ばしてその場で華麗に着地するが、懐に体当たり…からの背中に壁がド直撃した鷹の怪人はマッハに突き飛ばされると研究室内の床をゴロゴロと、周りの装置や備品を巻き込んで転がる。
また壁に直撃する前に何とか停止する事が出来た鷹の怪人は、意外とタフだったようで素早く立ち上がった。
そんな鷹の怪人に対して、マッハは気にすることなく張り切って掛け声を上げるのだった。
「さぁてとぉ!それじゃあいくよニワトリさん!いずれもマッハでローストチキンにして上げる!」
「誰がニワトリだ!?私は”バンデッドホーク”!正真正銘、鷹の怪人だ!」
「鳥は合ってるんでしょ?ならニワトリでもタカでもどっちでもいいよ!」
「全然違うわ!?ニワトリはただ喰われるだけの家畜で鷹は狙った獲物は逃がさない空の狩人!ニワトリ何ぞとは天と地の差が────」
自分をニワトリと勘違いするマッハに猛抗議する鷹の怪人バンデッドホーク。
しかしその途中で上半身に幾つもの衝撃が襲いかかり火花が散る。
「グホハアアァァァッッッ!?!?」
堪らずバンデッドホークは苦悶の叫び声を上げながらたじろぎ、床に片膝をついた。
「あっ、ゴメンゴメン。ガラ空きだったもんだからつい……てへっ♪」
エネルギーの光弾を撃ったゼンリンシューターの銃口を向けたまま、そう悪戯する子供のように声を掛けて可愛らしく小首を傾げるマッハ。ちなみに仮面の下ではテヘペロ顔を浮かべているが、そんなのは誰にも知られない事である。
あと中身が女性だと知らされていない人が見たら絶対に何か勘違いしてしまう事も否めないのである。
「……き……きぃさぁまぁ……………調子に乗るなよ下等生物の分際でぇぇぇぇぇぇ!!」
ワナワナと震え、そして一気に怒りを爆発させたバンデッドホーク。
表情は全く変化していないが、今の彼を見たら誰でも、『あっ、怒ってるこの人』と断言できてしまうほどの怒りのオーラを放っている。
まあ同情しないでもないが、相手を下等生物と罵る辺りやはり悪の怪人だ。
マッハに自身の指に生えた鋭利な爪を向けると、その爪を小型ミサイルのように発射した。
合計10発の爪ミサイルは高速でマッハへと襲いかかる。
だが、マッハはこの程度で怯まない。
『ズーット、マッハ!』
「当たらなければ意味は無いってね!」
マッハはブーストイグナイターを叩くことで一時的に自身の性能を上げる事が可能で、4回叩くと限界稼働状態へと移行する。
どれくらいかというと、殺到する爪ミサイルを音速の如きスピードで全て余裕、しかもアクロバティックに避けてしまうほどである。
「この、チョコマカと……!?ならばこれはどうだぁぁぁぁぁぁぁ!!」
いとも容易く自分の攻撃が避けられた事で苛立ちが高まったバンデッドホークはさらに、手の爪だけでなく足の爪もミサイルとして発射する。
ちなみに爪ミサイルを発射した後は即座に新たな爪が生成され装備される為簡単に弾切れを起こす事はない。
だから雨の如く爪ミサイルを降らせる事も可能なのであった。
今まさにそんな状況。
「そう来るなら、こっちは!」
これはさすがに避ける事は困難だと判断したマッハは、マッハドライバーのパネルを上げて装填されていた白いミニチュアバイク、変身アイテム”シグナルバイク”の一つ、”シグナルマッハ”を取り出すと、新たに青いミニチュアバイク”シグナルカクサーン”をパネルに装填し、即座にパネルを下ろす。
『シグナルコウカーン!カクサーン!』
音声とサウンドが流れると、マッハの右肩に施されたタイヤ、”シグナコウリン”に矢印が拡散する標識が表示される。
シグナルカクサーンを装填し終えたマッハは、爪ミサイルの雨に向けてゼンリンシューターを構え、光弾を発射すると、今度は一回ブーストイグナイターを叩いた。
『カクサーン!』
っという音声通り、光弾は拡散し、拡散光弾となった。
拡散光弾は爪ミサイルと相殺され、全てがマッハに届く前に爆ぜた。
「ちぃっ……!ならば、行くがいい我が半身”リトルホーク”よ!」
爪ミサイルの乱れ打ちまで防がれたバンデッドホークは何かに指示するように声を張り上げる。
するとどうだろうか。バンデッドホークの左肩に装備されている鷹の武装に変化が起こる。
翼が伸び、首が立ち、脚が胴体を持ち上げ、そして尖ったクチバシを大きく開け、高らかな雄叫びを上げた。
バンデッドホークの左肩にくっ付いていた鷹、リトルホーク。それはただのプロテクターではなく、バンデッドホークと共に戦うユニットだったのだ。
指示を受けて稼働したリトルホークは、バンデッドホークの肩から飛び立つと、真っ直ぐにマッハへ飛翔し、鋭く尖ったクチバシで刺し殺さんといわんばかりに特攻する。
「うわっ!?ちょっ!?あぶなっ……!?」
バンデッドホークの武装がいきなり生き物のように動き出した事に目を惹かれたが、その直後にその動き出した鷹が自分目掛けて特攻して来るものだからマッハは慌てて側転などを行いながら避ける。
空間の限られた研究室内であるにもかかわらず縦横無尽に旋回し、四方八方からマッハを襲い続けるリトルホーク。
実はリトルホークの脚と翼にはブースターが内臓されている為、普通の鷹より機動力が高いのだ。
故にマッハが撃つゼンリンシューターの光弾も、さらにはカクサーン!する光弾も紙一重で避けてながら攻撃を続ける事が可能なのだ。
「あぁもう!君と遊んでる暇は無いの!だからこっちで遊んでて!」
このままでは埒が明かない、っというか鬱陶しい思いが募ったマッハはシグナルカクサーンを赤いシグナルバイクと入れ替えた。
『シグナルコウカーン!キケーン!』
危機感を煽るようなサウンドと、さらに何かからの危機を知らしめるような標識がシグナコウリンに表示される。
『キケーン!』
再びシグナルコウカンを果たしたマッハは、ブーストイグナイターを一回押してからゼンリンシューターのトリガーを引いて光弾を発射。
すると光弾が途中で空中停止し、シグナコウリンと同じ標識が浮かび上がると、その標識から何かが這い出てきた。
それは言葉で言い表すと、体長1mはある鮫のような弾丸であった。鋭い眼は大きく、あんぐりと開いた口は鋭く尖った牙が並んでおり、物凄く獰猛そうな鳴き声を上げる。
シグナルキケーンによって召喚された魔獣は、リトルホークに標的を定めると、ギランと眼と牙を光らせ、まるで空中を泳ぐように目標へ向かって突撃した。
リトルホークはいきなり現れた魔獣に驚き、そして思わず逃げる。それを魔獣は追う。
空中で始まったリアル鬼ごっこ。高速で飛翔するリトルホークを弾丸の魔獣が追い続ける。
勝敗はどうなるか、答えは意外と早く決定された。
リトルホークは魔獣のスピードに負け、キルゾーンまで接近した魔獣は口を大きく開け、リトルホークに思いっきり噛み付いた。
胴体を噛み砕かれ、悲痛の鳴き声を上げるリトルホークは、そのまま魔獣の自爆に巻き込まれ、爆散した。
「なっ!?リトルホォォォォォォォォォォーーーーークッッッ!?!?」
目の前で爆ぜたリトルホークに向けて手を伸ばし嘆きの叫び声を上げるバンデッドホーク。
その声音は、まるで大事な物を破壊されて泣き叫ぶダンディなおっさんのような雰囲気を感じ取れるような物であった。
「おのれ貴様ぁ!!よくも私の相棒を面妖な怪物で……!!」
「怪人が面妖とか言うのおかしくない?」
だってあんたら存在自体面妖だし。
っという気持ちを込めながら肩を竦めるマッハ。相棒を葬られた怪人の悲しみなどこれっぽっちも共感していないようだ。
「ええいこうなれば貴様をさっさと葬ってくれるわ!!見るがいい、私がバンデッドホークと呼称される怪人の真髄!!今こそ解き放────」
「前置きが長いアンドまたまた隙ありぃ!」
言いながら走り出したマッハは、長ゼリフを放つバンデッドホークに対してゼンリンシューターの前輪パーツ”ゼンリンストライカー”を叩きつけた。
「────ドホックゥッ!?」
それによってセリフを中断されたバンデッドホークは、独特な奇声を上げながら後退する。
「……き、貴様………私が今からとっておきの必殺技を発動するシーンだというのに……!?」
「そんなの黙って見過ごすわけないでしょ?これはアニメじゃないホントの事なんだから!」
『ゼンリン!』
その容赦なさ、一体どっちが悪役なのか忘れてしまいそうになるが、そんな事など軽々とスルーするマッハは、ゼンリンストライカーを手動で回転させ威力を上昇させると、バンデッドホークにもう一度叩きつける。
「────ゲバブッ!?」
今度は威力が高い為、先程よりも多く火花が散り乱れ、軽く吹き飛んだバンデッドホークは、最初この研究室へ入室した時と同じようにゴロゴロと床を転がった。
「お……おのれ……特撮のお約束を守らないとは…………貴様それでも仮面ライダーか!?」
「お約束なんて無視無視!大事なのは攻める時に攻める事なんだから!っというわけでトドメいくよ!」
ヨロヨロと立ち上がるバンデッドホークはメタ発言に近い言葉を口にするが、やっぱりマッハには問答無用な事でしかなかった。
『ヒッサツ!フルスロットル!』
ゼンリンシューターのトリガーの上のパネル部分にシグナルマッハをセットし、すかさずゼンリンストライカーを回転させる。
この動作によって、ゼンリンストライカーに高圧縮されたエネルギーが纏われ、その威力は、まさに必殺の一撃となる。
「はあああぁぁぁぁぁ!!どっせええええぇぇぇぇぇぇいっ!!」
ダメージの蓄積によってその場に立ち尽くすバンデッドホーク目掛けて駆けるマッハ。
ゼンリンシューターを身体ごと回転させながら振りかぶり、そしてバンデッドホークとの距離がゼロになった瞬間、ゼンリンストライカーでバンデッドホークを斬り裂いた。
「ぐあぁぁっ!?……………す……すまない、リトルホークよ……………仇を取る、前に……私、までぇ……ッッッ!?」
ゼンリンストライカーによる必殺技『ビートマッハー』を見事決め込み走り抜けたマッハの後方で、断末魔の叫びと最後まで相棒思いなコメントを残しながら、バンデッドホークは身体のあちこちから火花を散らし、そして爆発した。
怪人といえば、必殺技を叩き込まれたら爆発するのが当たり前とは特撮のルール。
最後までお約束を守ったバンデッドホークというある意味真面目な怪人が爆炎と共に消え去った方を向くマッハは、怪人を倒し終わった後に行う決め台詞を言おうとした。
「いい絵だったで────ッッ……!?」
しかしその時、世界が停止した。
……
………
…………
「はっ!せぇい!」
「んおっとぉ!」
パープルハートは持ち前のバランスに優れた機動力を生かしながら長剣をキャプテンキャノンへ向けて振るう。
しかし負けじとキャプテンキャノンも携えている鎖鎌の鎖をグッと伸ばして迫り来る長剣をガードする。
「ッ……!なかなかしぶといわね貴方……!」
「そいつは褒め言葉として受け取っとくぜぇ!!」
何度もパープルハートの攻撃を防ぐキャプテンキャノンは隙をついて鎌を横薙ぎに振るう。
パープルハートは咄嗟に後方へ退避するがその直後、長剣に何かが巻きつく。
「ッ!?しまった……!」
「捕まえた。そしてお次はこうだ!」
それはキャプテンキャノンが投げつけた鎖鎌の片側で、まっすぐに放たれたそれはパープルハートの長剣に絡みつき捕らえ、拘束した長剣を取り上げようと引っ張り、反射的にパープルハートも長剣を取り上げられないように歯をくいしばって踏ん張る。だが、それはパープルハートの動きが封じられた事になる。
さらに動きを封じた間にキャノン砲の銃口をパープルハートへ定め放とうと、
「────んおっ!?」
したがそれは叶わなかった。
何故なら突如、二挺のキャノン砲の先が横合いから走った光の奔流に貫かれ、そして爆発を起こす。
至近距離で起こった爆発によってたじろぐキャプテンキャノン。そこをパープルハートはチャンスと見なし、長剣に鎖を絡めたまま飛び出す。
「ヴァリアブルエッジ!」
「ズアァッ!?」
渾身の力を込めた横一文字の一閃を鎖が絡まっていない長剣の上半分で叩き込む。
痛恨の一撃を貰ったキャプテンキャノンは衝撃で鎖鎌を手放し後方へ吹き飛ぶ。
「いっつつつ……。参ったねぇ、二対一だとホントにやり辛いぜ……」
床を転がる途中で受け身をとって停止したキャプテンキャノンは、片膝立ちのまま視線を左側面に向ける。
「不意打ちでゴメンなさい。でも……貴方たちダークネスの怪人相手に、手加減なんて出来ませんから」
そこにはM.P.B.Lの銃口をキャプテンキャノンに向けて構えるパープルシスターが佇んでいた。
彼女はパープルハートの動きを封じられキャノン砲の照準が定まろうとする前にキャプテンキャノンの側面へ移動し、M.P.B.Lをキャプテンキャノン本体ではなくキャノン砲に狙いを定め、トリガーを引いた。
狙いは完璧、放たれた魔力のビームは二挺のキャノン砲を纏めて貫き、発射を強制停止させたのだ。
一人がピンチに陥ればもう一人が援護する。そんな連携プレイによって武装が破壊され、無事な武装は今相手が長剣に絡まった鎖を外してポイッと投げ捨ててしまった。
キャプテンキャノンは内心焦りを抱き、どう対処するか模索しようとする。
「お姉ちゃん、このままいけば私達が圧勝できるよ。だからドンドン押していこう!」
「ええ、そうね。…………でもネプギア?そういうセリフって相手の形勢逆転フラグが立っちゃうからあまり言っちゃ────」
近寄ってきたパープルシスターの自信に満ちた表情と声に応答するパープルハートは、肯定するがフラグの予感を抱いて苦笑を浮かべながらパープルシスターに注意する。
しかしその途中、世界が一瞬だけ停止した。
「「────ッッッ!?!?」」
その一瞬に満たない全ての停止によって思わず体勢を崩し息を詰まらせるパープル姉妹。
さらに異変は続く。何故か二人の身体がスローモーションビデオのようなゆっくりとした動きを体現しているのだ。
「な、何なのこれは……!?か、身体が……ゆっくりとしか動かない……!?」
「なのに何故か声は普通に出て普通に聞こえる!?一体これは────」
身体が思うように動かず、だというのに声だけ普通に発する事ができる。まるで世界から自分達だけ切り離されたような正体不明な現象に驚愕し、動揺が抑えられないパープル姉妹。
そんな中、怪奇はまた起こる。
「────キャアッ!?」
「ッ!ネプギ────ッアァ!?」
パープル姉妹は強い衝撃を受けてその場から吹き飛ぶ。謎の現象の影響で受け身もろくに出来ない二人は、吹き飛ばされるスピードだけ何故か速いまま容赦なく壁に吸い込まれ、背中から激突した。
一体何が起こったのか。何が自分と妹に襲い掛かったのか、その答えはパープルハートが見開いた瞳に映っていた。
「まったく……一体どういう事だこれは……?」
そこには、銀の装甲で覆われた、”仮面”の戦士が平然と立ち尽くしていた。
……
………
…………
「………何?今一瞬、身体が重くなったような……?」
突如起こった不可解な出来事。まるで自分の周り全てが止まってしまったかのように身体が重くなったマッハ。
しかしそれはすぐに治まり、現在は全く支障なく動ける。
だが、もしかしたら向こう側で戦っているはずのパープルハート達にも何かあったかもしれない。っと不安を抱いたマッハは、撃ったり爆発したりで見事な火災現場と化したその場を、自分が破壊した壁を通って退出する。
「ッ……!?ネプ姉!?ぎっちゃん!?」
そして隣の研究室に戻ったと同時に目を見開き、動揺した声音でパープルハートとパープルシスターに呼び掛けた。
マッハの視線の先には、壁に叩きつけられてスローモーションで落下していくパープル姉妹が。
そしてそこに一層目を引く人物が立っていた。
全身を覆う黒のアンダースーツに銀の装甲、腰に車のエンジンを彷彿とさせるデザインをした黒いベルト、腕にレバーが搭載されている黒のブレスレット。袈裟懸けに取り付けられた幾つもの部品が組み合わさっようなパーツ。
そして、まるでスポーツカーのような形状に、赤いヘッドライトの複眼が怪しく光を放っている、”仮面”を被っていた。
マッハはその人物を見て、唖然とし、そして即座に判断した。
あの銀ピカの人物は、間違いなく”仮面ライダー”であると。
「んっ……?………ほう、貴様か?我々ダークネスからマッハドライバーを奪った盗人は?」
「盗人……?確かに間違ってはいないけど、あんた達ダークネスがコレを使うよりはよっぽどマシでしょ!」
銀の仮面ライダーがマッハを視界に捉えると、マッハに対し興味深そうに声を掛ける。それに対してマッハは自分を盗人と呼ぶ事に否定せず、かつ敵意を込めた視線と声で応戦した。
今の話は事実であり、元々マッハに変身する絵美は、ダークネスが開発していたマッハドライバーを奇跡的に奪い変身。そのまま自分の所有物として管理、ダークネスへの対抗手段として、大切な家族や友だちを守る為の唯一の武器として愛用しているのだ。
「す、すいません局長……。俺とバンデッドホークが仮面ライダーと女神の相手をしていたんすけど、バンデッドホークはその仮面ライダーにやられたみたいで……」
マッハと銀の仮面ライダーが対峙する中、パープル姉妹と同じく身体がスローモーションに動くキャプテンキャノンが、そう申し訳なさそうに銀の仮面ライダーに声を掛ける。
どうやら銀の仮面ライダーはキャプテンキャノンにとってこの研究所の局長であり、上司のようだ。つまりこれで、この仮面ライダーが、ダークネスの一員である事が判明された。
「あぁ、本当に迷惑だな……。人様の管轄する研究所に殴り込み、剰え私の部下まで葬るとは……まあ部下の代わりなどいくらでもいるからさして気にはしないが」
部下を失った事に嘆いたかと思ったらすぐ、ケロッとした態度でどうでもいいかのように言ってのける。
その有様は、誰がどう見ても性根の腐った外道であると感想を抱くだろう。マッハはすでにその感想を抱き、たとえ怪人といえど仲間を駒のように扱う銀の仮面ライダーに嫌悪感を募らせるが、その前に確認しなければならない。
自分以外にいまこの場で普通に動けるこの銀の仮面ライダーに、問いたださなければならないのだ。
「それより!ネプ姉とぎっちゃんはなんであんな”ドンヨリ”ってなってんの!」
「……?………貴様、マッハに変身しているというのに、まさか”重加速”を知らんのか?」
パープル姉妹を指差し、今の現象の率直な形容を言葉にして問い詰める。
すると銀の仮面ライダーは、一瞬呆気にとられたのか沈黙し、さも知ってて当然の内容を口にするようにして一つの気になる単語を提示した。
重加速……それが今自分と銀の仮面ライダー以外が受けている現象の正体なのだろう。
だが、銀の仮面ライダーにとって常識であるかのようなその名称を、マッハは今日この日初めて耳にした。
その重加速がマッハに関係する物なのか否か、思考を巡らすマッハが黙り込むと、銀の仮面ライダーは呆れたように溜め息をつき、失望したかように首を左右に振る。
「やれやれ、マッハがどのような存在でどのような能力を兼ね備えているかも無知とは……。なんと愚かな事か……」
「ッ……!?……愚かかどうかは、あたしに勝ってから言えっての!!」
銀の仮面ライダーの蔑みが込められた言葉に触発され、頭に血が上ったマッハは駆け出した。
「はあっ!」
そして距離を縮めると同時に拳を突き出す。
しかし、その拳が仮面に届く前に、銀の仮面ライダーがサッと腕を動かし、掌を迫り来る拳に向けるとそのまま、バンッ!と強い衝撃音を立てて受け止めた。
そのまま、仮面ライダー特有のデタラメな馬力によるマッハの拳を微動だとさせず受け止め続ける。
「くっ……!ふっ!せぇあ!」
マッハは咄嗟に拳を放し、間髪入れずゼンリンシューターから光弾を撃ち、接近するとゼンリンストライカーを叩きつける。
しかしそのどれもを銀の仮面ライダーは身を逸らして避けるか軽く払いのけてしまう。
「はあ……。やはり装着者が未熟……いや小娘であるせいでか……………とにかく”弱い”」
最後の単語をわざとらしく調教する銀の仮面ライダーは、仮面によって表情が確認できないが、その声音は相手を格下に見る上から目線で呆れが大いに込められた物であった。
その一つ一つの攻撃は常人を遥かに超えるパワーで放たれている。であるにも関わらずこの銀の仮面ライダーはマッハが弱いと、中身が女であるから弱いと罵った。
だが悲しき事に、それ程の暴言を吐いてしまう技量を、銀の仮面ライダーは所持している。
「────がぁっ!?」
マッハはハイキックを繰り出すがこれも片腕で止められ、逆に振り上げた脚を返された瞬間鳩尾にローキックが直撃。
ライダースーツ越しに伝わるダメージに思わず鳩尾を抑え後ずさってしまう。
「ッ……!!………ならこおだぁ!!」
『ズーット!マッハ!』
痛烈な痛みに怯み、仮面の下で若干涙目になるマッハはそれでも諦めを抱かず果敢に攻めに行く。
シグナルマッハを再び装填し、ブーストイグナイターを4回叩き限界稼働状態へ移行。超高速戦で一気にカタをつけに行こうとする。
そんなマッハを、やはり何処までも呆れっぱなしなため息を吐く銀の仮面ライダーは、ベルトに搭載されているキーを捻ると、左腕のブレスレットのレバーを三回倒した。
その動作に何の意味があるのか知らないマッハは構わず音速のラッシュを叩き込む。
しかし、マッハはここに来て又もや驚愕する事となる。
何故なら、音速に近いスピードで打たれる怒涛のラッシュに、銀の仮面ライダーがほぼ同じ速さで全て捌いているのだ。
「ウソッ!?マッハに追いついてる……!?」
「いや違うぞ?追い越しているのだ!」
驚きの声を上げるマッハにそう自身に溢れた言葉を放った銀の仮面ライダーは、その言葉通り徐々にマッハのスピードを超えていく。
マッハの高速ラッシュを高速で防御し続ける中、拳とゼンリンシューターが離れた一瞬にジャブをマッハの仮面にぶつける。攻撃を強制キャンセルされたマッハに銀の仮面ライダーは追い打ちを注ぐ。
残像が残る程の両拳による容赦無い豪速のラッシュが、マッハの上半身にこれでもかと襲い掛かる。
攻撃に押され防御体制に移行出来ないマッハは降り注ぐ鉄拳を受け続ける。
幾分かラッシュが叩き込まれると、最後と言わんばかりに銀の仮面ライダーが唸り声を上げると共に、力を込めて振り抜いた拳が、マッハの胸部部分に打ち込まれた。
「うあああぁぁぁぁぁッッッ!?!?」
悲鳴を上げ、その場から後方へ勢い良く吹き飛ぶマッハはそのまま背中から壁に激突。
しかも壁にヒビが幾つも走る程の衝撃がマッハを否応がなく襲い、そのまま受け身も取れずうつ伏せで倒れた。
そしてマッハを沈めた銀の仮面ライダーは、それでも呆れと蔑みの感情をマッハに向け、パッパッと手と手の汚れをはたき落とするように打ち鳴らしていた。
まるで汚物を触った後かのように。
「ふう……話にならんな。キャプテンキャノン、この場はお前に任せる。戦闘員の使用も許可する」
「は、はあ……?局長は何処かに行くんですか?」
「さっき行こうとした時に警報が鳴ったのでな。仕切り直して今から、依頼していた物を別次元まで取りに行ってくる」
「えっ、自分からですか?」
「そうせざるを得ないのだ。何故か向こうと通信が全く繋がらないのでな」
はあ……っと、今度は呆れてではなく面倒くさそうにため息を吐く銀の仮面ライダーが少しだけ項垂れていると、突然目の前に”灰色のオーロラ”が出現した。
それは、ダークトゥダークネスの構成員の一部、特に怪人や幹部などが使用する、あらゆる世界や次元を超える力の現れである。
その灰色のオーロラが出現した事が示すのは。銀の仮面ライダーは何処か、此処とは違う別の世界へ行こうとしているということだ。
「では、そこの雑魚共は任せたぞ」
キャプテンキャノンに向けてそう端的に指示を出した銀の仮面ライダーは、灰色のオーロラに向けて歩き出す。
その光景を、うつ伏せのまま顔だけを銀の仮面ライダーへ向けているマッハが見ていた。
先程の痛烈な連撃を受け、ライダースーツ越しの身体の至る箇所に激痛が走り、仮面の下の顔には赤い液体が一筋流れていた。
朦朧とする意識をギリギリで保つ中、仮面の内側に表示されるIAナビゲートが身体ダメージ量が過剰蓄積された事で赤い警告表示を示す。
これ以上戦ってはならない、そう伝えている。
しかしマッハ……絵美は歯を食い縛り、グググッと拳を握り締める。
銀の仮面ライダーに向ける眼差しには紛れも無い怒りが込められていた。
「………ぐっ………!……い、行かせる…………もんかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
叫ぶと同時に立ち上がった。
その瞬間に襲い掛かる激痛は計り知れない物ばかり、外傷だけでなく骨にヒビが入っている可能性もあるかもしれない。
だがそんなものは些細な事と傷みを無視する絵美は駆け出す。目指す先はもちろん銀の仮面ライダー。
絵美の叫び声に反応した銀の仮面ライダーは不意に振り返ると、まさかあそこまで痛みつけた相手が立ち上がって接近してくるとは予想出来なかったのか、対応が遅れて飛び掛ってくる絵美と取っ組み合いになった。
「なっ……!?しぶとい奴が……!!」
「あたしは弱くない!!弱くなんてない!!だからあんたを倒してやるんだから!!」
「くっ、この……!?脆弱な人間の分際でこの私に楯つくなどってぬおっ!?」
必死なあまり理性が働いていないように突っかかってくるマッハを銀の仮面ライダーは何とか払いのけようとするも苦戦する。
しかし、自体はさらに予想だにしない展開へと運ばれてしまう。
絵美と銀の仮面ライダーが取っ組み合う中、銀の仮面ライダーが体勢を崩し後方へ傾く。
そこを絵美が押し込んできたせいで無理やり後退させられた銀の仮面ライダー。
そして彼の背後には灰色のオーロラが出現していたため、
「ッ……!?待ちなさい絵美!?」
「絵美ちゃん!?」
重加速の中で必死に体を動かそうとするパープル姉妹。壁に激突して床にうつ伏せで倒れてからなんとか顔を上げた時に映った光景に思わず絵美に向けて制止の声を上げる。
しかし時すでに遅し。パープル姉妹の声は効果を成すことなく、絵美は銀の仮面ライダーと共に灰色のオーロラに飛び込んでしまった。
そして灰色のオーロラは効力を失い虚空へ消える。そこに、銀の仮面ライダーはおろか、絵美の姿は何処にもなかった。
「そんな、絵美ちゃんが……!?ど、どうしようお姉ちゃん!?絵美ちゃんが……!?」
「分かってるわ!……でも、私達にはあの灰色のオーロラを行使できる力はない……」
銀の仮面ライダーが消えた瞬間、重加速が止み通常通りの動きが出来るようになったパープルシスターが焦りの表情を浮かべながら姉に問いかける。
問いかけられたパープルハートは妹を冷静に宥めるが、その内心はパープルシスターと同じくらい焦燥感が募っており、頬には冷や汗が伝っている。
「(なんて事なの……!あの銀ピカの話からしたらおそらく別の次元に向かったのかもしれない……………だとしたら、絵美も一緒に……!)」
しかも、自分達が重加速という現象の影響で動けない中、絵美だけが銀の仮面ライダーと対峙したが、相手は相当の実力者だったのか手も足も出ず大ダメージを受けていた。
そんな状態で無理矢理銀の仮面ライダーに立ち向かっていたが、あのままではすぐに限界となり負けてしまう。
それがこの場であったらまだ助かる見込みはあった。しかし、別の世界でもし絵美が力尽きたら、自分達は助けに行く事すらできない。
二度と、戻ってこれないかもしれない……。
そんな事になってしまったら、自分達だけじゃなく、プルルートやアイエフ達。
そして何より、絵美の兄である彼が、どれだけ悲しむだろうか。
想像しただけで胸が張り裂けそうな痛みを感じるパープルハートだった。
「(このまま絵美が帰ってこなかったら、”メテオ”になんて言ったら……!)」
「……はあ……。取り敢えず仮面ライダーは局長と一緒に行っちまったけど、あんな余裕そうだった局長なら心配無用か」
そんな言葉が発せられた。パープル姉妹は焦燥感を抱き続けたまま顔を向ける。
そこには自分達と同じく重加速の拘束から解放されたキャプテンキャノンが立ち上がっており、その背後からふたたび灰色のオーロラが出現すると、その向こう側から全身黒タイツ姿のダークネス戦闘員がワラワラと飛び出してくる。
どうやら銀の仮面ライダーに言われた通り、戦力を増強したようだ。
「ほんじゃまっ、俺は言われた通り、残りの女神を片付けるとすっか」
一人の戦闘員から鎖がついた鉄球を手渡されながらそう気怠そうに声を出すが、上司の命令にはちゃんと従う辺り真面目なようだ。
そんなキャプテンキャノンの声に呼応するように『イーッ!!』とその場にいる戦闘員が声を合わせて叫んだ。
「……!ネプギア、絵美を心配する事もそうだけど、今はこいつらを倒す事が先決よ!」
「でも……!」
「何より、ここで負けてしまったら元も子もないわ。だから今は目の前の敵に集中しなさい!」
戦闘態勢を整える相手側に対してパープルハートは立ち上がり再び長剣を構える。
パープルシスターが同じく立ち上がりながら納得出来ないといった感じで声を掛けてくるがそれを強い声音で諭すように黙らせる。
絵美を心配する気持ちは当たり前だが、それで目の前の怪人を無視する事は許されない。
相手はこちらを殺しにかかる勢いなのだ。大切な友達が消えてしまって意気消沈していようと容赦なんて決してしない。
「……………うん、わかった。まずは目の前の敵から。でないと絵美ちゃんを助ける方法を探る事も出来ないよね」
数秒程沈黙したパープルシスターは頷き、決意する。まずは怪人達を全員倒し、そして倒し次第絵美を救う方法を模索すると方針を立てた。
たとえ絵美を助けることが不可能に近い確率だろうと決して諦めない。何が何でも方法を見つけ出すと自分を鼓舞する。
生憎にも、彼女達女神は何かとしぶとい。
だが、しぶといからこそ今まで”彼”と一緒に死線を乗り越えて来れたのだ。
”彼”がいない今だろうと、それは揺るがない。
「その通りよ。さあ、そうと決まったら速攻で片付けるわよ!」
心のエンジンにギアが入ったパープルシスターを見届けたパープルハートは口元に微笑みを浮かべ、そしてもう一度怪人達に強靭な意志を込めた眼差しを向ける。
それだけで戦闘員の何人かが軽く怯む。
諦めの色など全くない闘志に溢れた佇まいを見せる、麗しき戦乙女二人が各々の武器を携え構えている。
多勢に無勢などに臆する事はない。大事なのはただ一つ、絵美を助けることのみ。
パープルハートとパープルシスターは視線を合わせ頷き合うと、バッと視線を前にし、グッと床を踏み込み、ダッと飛び出した。
「(待ってて絵美。必ず……必ず助けるから。だから貴女も無事でいて……!)」
その思いを胸に、パープルハートとパープルシスターは、敵陣へ特攻した。
……
………
…………
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借りてるキャラをここまでコテンパンにしてしまう俺は悪なのか……っと思ってしまったほどやっちまった……。
くっ……これも最近始めたFGOで全然金レアのサーヴァントが出ないせいだ!そうに決まってる!!まあセイバーオルタ当てたけどさ!!でもネロかタマモキャット欲しかったよ!!
プロローグからすでに敗北確定真っしぐら、消えた絵美ちゃんを助ける為に怪人達に立ち向かうパープル姉妹。
そして舞台は、あのはぐれ守護魔神の次元へ。
あっ、ちなみにプルルートはお仕置き疲れでぐっすりおねんねしてます。白銀の嵐の彼は絶賛地獄巡り中なので皆無。
っというわけで、次回は初っ端から看板息子の出番!
絵美ちゃんとのファーストコンタクトは、果たしてどんなハプニングを起こすのか!
ラッキースケベは伊達じゃない!!
ヒロム「えっ!?なにっ!?そういうこと起きるの!?」
では、次回も刮目せよ!!
ヒロム「スルーすんじゃねぇよ!?」
【挿絵表示】