ネプテューヌVA' 番外編〜from.Hameln〜   作:紅蓮龍蒼

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ヒロム「お前前回のアレ何?」

ヒロミ「いやだってこのコラボで私出番が全然ないからさ?少しでも印象残そうかなと」

ヒロム「いやまあ確かに印象には残るよ?でもだからってぶりっ子はどうよ?」

ヒロミ「はあ、しょうがないなぁ。じゃあ次は路線変更で行くから」

ヒロム「まだやる気かよ……」

やっべぇ……コラボだっていうのに投稿スピードが落ちてきてる……。仕事も忙しくなってきたし、新作ゲームもやらないとだし、でもこれソルヒートさんの本編と繋がってるから早めに書かないとだし。あぁ……こんなんで大丈夫かな……?

………………とにかく前回の続き、どうぞ〜。



Chapter 2/3

とある森のダンジョン。

幾つもの木々が生い茂る緑豊かな森に敷かれた獣道をスタスタと歩む茶髪の青年が居た。

 

「はじ〜ま〜り〜は〜いつもと〜つぜ〜ん〜♪運命をぉつぅれ〜てい〜く〜タ〜イムトゥイン、リ〜ダ〜♪」

 

不意に頭に浮かんだ懐かしのアニソンを口ずさむその青年の名は、『ヒロム』。

 

ゲイムギョウ界で今日も何気無く人外ライフを満喫している異世界人。

三ヶ月ほど前に二つの次元が存亡の危機に陥った際に活躍したり、最近は古代の女神様を見つけたり、”転換期”で困っている女神達を手助けしたりと、中々忙しい毎日だったりする。

 

「いいじゃん、いいじゃん、スゲーじゃん♪いいじゃん、いいじゃん、スゲーじゃん…………っと、この辺りかな?」

 

若干ノリノリでアニソンを口ずさんでいたヒロムは、そう言ってプチカラオケを解くと立ち止まる。

 

「イストワールさんが探知したっていう次元転移反応。一体何が次元を超えて来たのかねぇ……」

 

誰もいないというのに、いやだからか語り口調に呟きながら周囲を見渡す。

しかしヒロムの視界内にはこれといった特徴的な存在は確認出来ず終い。

小鳥が木の上で囀っていたり、リスがせっせと頬袋にドングリを詰めていたり、熊とアナコンダがドッグファイトを繰り広げているくらいでいつも通りな光景ばかりだ。

 

「はあ……この前変な組織の奴倒した後だってのに、不吉極まりないなぁ〜……」

 

ため息と共にこれでもかという倦怠感を醸し出しながら項垂れる。

しかし、そんな自分の不憫さを悲しくも自覚しているヒロムは、長年のキャリアに物を言わせてドヨンとした雰囲気を物理的に粉砕して搔き消した。こう、背後の淀んだ空気に裏拳をぶつける感じである。

 

「うーん……大雑把な範囲しか断定されてないから、何処に目標が居るのかわかんないってなると面倒いなこれ……」

 

本日、ヒロムは午前中の前半に最早本業と化してきている、教会での家事や書類整理などを片付けていた。国のトップでもなんでもないのにプラネテューヌの女神達と一緒に同じ仕事を片付け、小休憩としてコーヒーを飲んでいた時(ちなみにヒロムが砂糖とミルクをギリギリカップから溢れないくらいまで注いだ事で他のみんなドン引き)、イストワールがやってくると浮かない表情で述べてきた。

 

なんでも、別の次元の何かが自分達の次元へ転移した反応、つまり次元転移反応を突然探知したとか。

そんな機能があったのかと尋ねると、一応自身に搭載されていたが、今までずっと機能を発揮することなく、っというか機会が全くなかったのだが、何故か先程いきなり次元転移反応を探知したらしい。

しかも反応を確認した場所まで絞り出せており、Nギアにデータを転送して表示。そこはプラネテューヌ付近の森ダンジョンであった。

 

ここまで来たら最早調査へ向かうのは必然。

申し訳なさげなイストワールに頼まれたヒロムは素直な二つ返事で了承した。

女神達もついて来ようとしたが、書類整理もろくに終わってないので拒否り、コーヒーを一気に飲み干してから(『……やっぱガムシロ入れないとまだちょっと苦い』っと言ってまたその場のみんなにドン引きされたが気にせず)一人指定された場所へ向かったのだ。

途中でファーストフード店に寄ったり、バイクに乗った男がお年寄りから手提げバックを奪って逃走しようとしたのでラリアットを決めて沈めたりしてから街を出て、森ダンジョンに入ってから時々飛びかかってくるモンスターを蹴散らしながら進み、そして今に至る。

 

「まあとりあえずしらみ潰しに探してみるか。見つからなかったらもう移動してる可能性も………………んっ?」

 

気を取り直すように言いながら視線を正面に向けていたヒロムだが、唐突にピタッと静止する。目を凝らしてジッと獣道の先を見つめ出した。何故かと問われれば、視線の先から光る何かがこちらへ向けて迫っていたからだ。

 

「なんだ……?何かが飛んできて……るぅ!?」

 

迫る何かを肉眼で捉えようとするヒロムに、まるでその姿を自分から見せに来るように何かは迫ってきた。しかも超高速なまるで銃から撃ち出された弾丸の如きスピードで。

 

「────うおわぁっ!?」

 

素っ頓狂な声を上げながら、猛スピードで接近してくる何かに対しヒロムは腰を思いっきり逸らして避けるという、見事なマトリックス避けを実現し、突撃してきた何かはヒロムに命中する事なく風を切りながら素通りした。

 

「あっぶね……!?ってか何!?小型ミサイルか何か!?」

 

体勢を立て直して過ぎ去った何かへ見開いた目を向けるヒロムだが。

 

「うわっ旋回してきたぁ!?」

 

言った通り何かは軌道を変えて旋回、再びヒロムに向けて特攻してきた。

そのままヒロムへ向けて激突するかに思えた、しかし頭の中がこんがらがったせいか、無謀にもエネイブル奥義の一つ、弾丸掴みを再現しようと構えを取る中、謎の飛来物Zは空中でキキィーッ!と急ブレーキを掛けて突然停止した。

 

「……………………えっ?」

 

ロクに成功するわけもない弾丸掴みが無駄に終わったヒロムは茫然とする。

が、目の前で突然停止した謎の飛来物Zの全容が明らかとあると、信じられない物を見たように目を見開いた。

 

「────ウソッ!?”シグナルマッハ”!?」

 

それは見た目、白を基調とした玩具のミニチュアバイクのような物体。

だがそれはヒロムにとっては懐かしく、そしてここにある事が許される筈のない物だった。

 

なんといったって、それはあの大有名な特撮ヒーローシリーズの内の一人の変身アイテムだからだ。

 

「な、なんで……シグナルマッハが………っていうか、自律行動してるって事は……”ホンモノ”!?」

 

ガクガクと動揺を隠せないヒロムが上ずった声で、ホンモノの部分を誇張しながら途切れ途切れに言葉を繋いだ。

彼が知るシグナルマッハなる物は、合成CG映像の向こう側か、または子供用の模造玩具しか目にした事がない。しかし、今目の前に浮くこのシグナルマッハからは、CGでも玩具でもない確かな存在感を抱かせる。

まさしく本物だと、ヒロムは確信した。何より飛んだり宙に浮いたりしてる時点で玩具なわけが無い。

 

さらにシグナルマッハは浮いたまま、『パラリラパラリラッ♪』っとヒロムが知るヤンキーホーンの音に似た基本サウンドを鳴らしてくる。

 

「えっ……?助けて欲しいって……………まさか!装着者に何かあったのか?」

 

するとなんという事か。ヒロムはシグナルマッハが伝えたい事を読み取ってしまった。

そしてヒロムが翻訳した通り、シグナルマッハは助けを求めている。自分の主人に危機が訪れており、どうする事もできないままでは居られないとせめて助けを求めて周囲を飛び回っていた。そこで見つけたのがヒロムであり、今こうして自分の主人を助けて欲しいと伝えて来ている。

 

ヒロムが自分の言葉を他のシグナルバイク以外に理解できている事にシグナルマッハも驚くが、逆に好都合でもあった。何せ自分達は一般的な言葉を発する事が出来ないため、時間は掛かるがこのミニチュアバイクの体を使いジェスチャーで伝えなければならないと諦めていた。

その手間が一気に省かれる事が何より奇跡的である。とんでもない大当たりを引いたという高揚感を抱いた。

 

「うん、分かった!案内してくれシグナルマッハ!」

 

しかも目の前の男性は自分の救助願いを即座に快く引き受けてくれた。ここまで来たら最早、宝くじで一等を当てる程の幸運だ。

何故自分の事を知ってるのかはこの際置いておくとするシグナルマッハは軽快にサウンドを鳴らして応答。獣道から外れて林の中へ突入し、ヒロムが素直にその後を追い掛ける。

 

「にしてもシグナルマッハが居るってことは、間違いなく”仮面ライダーマッハ”が居ることになるよな…………って事は、”詩島剛”さんに会えちゃう?御本人に会えちゃう!」

 

高速で目の前を飛翔するシグナルマッハをダッシュで追いかけながら思考を巡らせる。

彼が口にした仮面ライダーマッハとは、今まさに彼を何処かへ導くシグナルマッハと特別なベルトを使用して変身する、怪人と戦う正義のヒーローの事であり、仮面ライダーマッハに変身する中の人の名前が”詩島剛”なのである。

 

「うっはーやべぇ!一人の仮面ライダーオタクとしちゃ歓喜物じゃん!”宗谷”に再会できたら自慢出来るぜぇ!」

 

創作物の中の登場人物、もっと言ってしまえば二次元の存在に今から会えると思うと期待で胸が一杯になるヒロム。

中でも彼の知る仮面ライダーマッハはお気に入りのライダーだった上に、市販のなりきり変身アイテムを大人買いする程のオタクなのだ。

 

あぁ、あの頃が懐かしい………一体何回変身アイテムで遊んでポーズを真似たりした事か……。

 

っと、そんな若気の至り全開な思い出が駆け巡っていたりした。

 

「きゃっはぁどないしよどないしよ〜!やっぱ握手してもらう?サイン貰っちゃう?あっでも今ピンチそうだし、助けてからじゃないと駄目だよね〜……………って、んっ?」

 

ウキウキ気分フルスロットルな若干女々しい口調で喋りながら頬に手を当ててブンブン頭を左右に振るその様。誰が見てもキモイと感想を述べてもおかしくない状態、なのに目の前に大木があったら華麗に避けるという人外並みの身体能力の無駄遣いをしながら駆け足で進んでいると、不意にシグナルマッハより先の向こうで何かを捉えた。

よく目を凝らして見ると、

 

「……ッ!?アレって……!?」

 

ヒロムはさっきまでのウキウキ気分を吹き飛ばすように表情を強張らせ、愕然とした。

その捉えた物は、自然に溢れた緑豊かな森から完全に浮いている存在。

しかも状態までもが異常だった。

 

「女の子……!?まさか怪我してるのか……!?」

 

言った通りヒロムが視界に捉えたのは、”うつ伏せに倒れている女の子”。

何故女性と断定出来たかと言えば簡単だ。

明らかに女性物の服装であり、何よりスカートを履いているからだ。あとその下にスパッツも着用している。

だが他に最優先しなければならない問題がある。それは………その倒れている女性の服の所々が破れ、下の素肌には多少なり傷がついていて流血しているのだ。

 

「ちょっと、大丈夫か!」

 

明らかに大丈夫ではないが人命救助では定番な第一声を掛けながら駆け寄り、地面に膝を着いてなるべく優しく抱き上げ、うつ伏せから仰向けに体勢を変えた。

その女性………いや、少女と言うべきだろうか。幼さが残る可愛らしい顔立ちで茶色のショートヘアーの少女は瞳を固く閉ざし、さらには額から下へ向けての流血がこびり付いていており、脈はあるが完全に気絶している。

 

すると、シグナルマッハがヒロムの肩に降り立ち、サウンドを鳴らして何かを伝える。

 

「えっ……?”海相絵美”……?………………………まさか、この女の子がお前の所有者なのか……?」

 

そしてヒロムはまたしても読み取った。

本当になんで自分の言ってる事が分かるのか不思議で、こんな状況下ではありがた過ぎて逆に怖いくらいであった。

だからヒロムが問い掛けてきた質問に、ミニチュアバイクの体を上下に動かして首肯する。

 

するとヒロムは、信じられないといった感じに息を呑むが、シグナルマッハが腰に目を向けるように伝えると、ヒロムは素直に腰に視線を移す。

 

「……確かにこれは、”マッハドライバー炎”………しかも間違いなく玩具ではなくモノホンの変身ベルト……」

 

少女の腰には、青を基調としてバイクのエンジンがモチーフとされている物が装着されていた。それはマッハが変身する為に使用する、ネクストシステムが搭載された変身ベルト、マッハドライバー炎で間違いなかった。

 

だからヒロムは、この海相絵美ちゃんという少女が、仮面ライダーマッハに変身しているという事実を叩きつけられた。

 

ご本人では無く、全く知らない……いや少し詩島剛さんに似てるような気がする少女が、自分の知る仮面ライダーマッハに変身している事に驚き、同時に疑惑の気持ちを抱く。

 

「詩島剛さんじゃなかったのか……。っにしても、こんなまだ若過ぎる女の子が、負担のでかいマッハに変身してるなん────ブッ!?」

 

マッハドライバーから視線を爪先へ移し、全体的に少女の全容を確認していたヒロムだったが、丁度胸部分に視線を向けたと同時に勢いよく息を吹き出し赤面した。

さらに素早い動きで少女が着ているピンクのパーカーを下のTシャツを隠すように覆い、少女の身体に両手を回す形でパーカーのチャックを一気に閉め上げた。

 

「………………………くそぅ……なんでこんな時に俺はこう………あぁもう……!///」

 

顔を手を当て赤面したまま自虐的に呟く。

何故いきなりヒロムがこんな態度をとっているかと言われれば、見てしまったからだ。

何をかと問われればこう説明しよう。

 

全体的にボロボロな少女の服装。

その中でTシャツのある部分と下のインナーらしき物のある部分が破れ、ある部分のアレがチラッとヒロムが見る角度から確認できてしまっていたのだ。

 

具体的に言うのも生々しいので敢えて省くが、一瞬だけ捉えたソレは容赦無くヒロムの脳内に刻まれた。

 

「………っとにかく、怪我が酷いしプラネテューヌ総合病院に運ぼう」

 

もうこれで見るの何回目だよと自分を咎めてながら、心中で初対面の少女に対して懺悔するヒロムだが、今は一刻を争う事態。

さっきからヒロムの頭にコツコツと体当たりしながらプンスカと憤りの気持ちを伝えるシグナルマッハを、取り敢えずスルーする。

ヒロムはコートの内側に手を突っ込むと、携帯端末であるNギアを取り出し起動。タッチ画面をタップして電話帳を開き一人の友人の電話番号を選択。

通話モードに移行し、Nギアを縦に持ち変えて耳に当てる。数回の呼び出し音の後、求めていた声へ繋がった。

 

『はいです。ヒロムさん、どうかしたですか?』

 

「コンパ、悪いけど怪我をしてる女の子を見つけたんだ!すぐそっちに向かうから治療の準備をしててくれないか!」

 

電話の相手は友人で同じく教会に住んでいるコンパ。なぜ彼女に電話したのか、それは元々彼女がプラネテューヌの総合病院に勤めるナースだからである。

現在は絶賛出勤中な上、忙しい時間帯だったら申し訳なかったが、声だけ聞いて今は比較的問題無さそうだったので捲したてるように要件をぶつけた。

すると電話の向こうで呆然とした声を漏らすコンパだったが、時間経過と共に頭の中の整理がつくと声を上げた。

 

『……ふえぇっ!?怪我をしてる女の子ですか!?』

 

「そっ!出来ればタンカーも用意してくれてると助かる!」

 

『わ、分かったです!すぐに準備するです!』

 

「よろしく!俺もすぐ連れて来るから!」

 

突然のヒロムの申し出に戸惑いながらも素直に対応してくれるコンパに今日も感謝し、速攻で病院に行く発言を決めると通話を切る。

 

「シグナルマッハ、今からこの子を病院へ連れて行くから一緒に来てくれ!」

 

Nギアをコートの内側に戻しながらシグナルマッハに言葉を掛ける。シグナルマッハがそれに応えるようにサウンドを鳴らすのを確認したヒロムは、なるべく身体に負担をかけないように心掛けながら少女を抱き上げだ。

 

所謂、お姫様抱っこで。

 

「ちょっと飛ぶけど我慢してくれ……いくぜ!」

 

掛け声を発し、少女を抱き上げシグナルマッハが肩に乗ったまま地面を踏みしめる。

ヒロムの周りを不可思議な風が纏うと、ダッと勢いよく上へ跳躍し、森の木々を軽く飛び越えた。

 

 

 

そしてヒロムは、プラネテューヌ総合病院へ向かって、”空を駆けた”。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……

………

…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────ふんっ、まさかここまでついて来るとは……なんと愚かな。

 

 

────うるさい!!勝ち逃げされたまま見逃すかっての!!

 

 

 

────何を言う?幾ら私に挑もうと勝利する事などありもしない。貴様のような弱者なら特にな。

 

 

 

────黙れ黙れ黙れ!!あたしは弱くなんてない!!あんたを倒して証明する!!

 

 

 

────………はあ……。最早醜すぎる。これ以上は見るに堪えん…………だから。

 

 

 

────ッ!?な、なに……!?か、身体が……う、うご…か……!?

 

 

 

────今すぐ朽ち果てるがいい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────うあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!?!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────ふんっ、呆気ない。わざわざついて来た意味など無かったというに……。では、私は用事があるのでな。せいぜいそこで惨めに野たれ死ね、脆弱な小娘よ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────………あっ…………あぁ……………ネプ、姉……ぎっちゃん……プルちゃん……………メテ……メテ、兄……………。

 

 

 

 

 

 

 

────いや……だよ…………こんな、ところで……………死にたく……ない…………………助…けてよ………メテ兄……………。

 

 

 

 

 

 

────……メテ兄……。

 

 

 

 

 

 

 

────メテ兄……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……

………

…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………うぅ……………メテ……メテ、兄……」

 

絵美は朦朧とする意識の中、途切れ途切れに自分の兄の名前を呼んだ。

血が繋がらないがそんな事関係ない、最近になってやっと再会出来た最愛の兄を、絵美は呼び求めた。

すると、

 

「ゴメンね。俺はメテ兄って名前じゃないんだ」

 

「…………………………………へっ……?」

 

返答が返ってきた。しかしその答えた声は絵美が求める声に有らず。

疑問に思った絵美は、重い瞼をゆっくりと開いていき、開眼された瞳がまず捉えたのは、真っ白な天井だった。

 

「………あ、あれ……?ここ、は……?」

 

「プラネテューヌの総合病院だよ。そしてここはその内の個人病室の一つ」

 

横から説明するように声が発せられた。

絵美は首を動かして声の主を探すと呆気なく見つける事ができた。

見た目は自分と同じ茶色ですこし長い髪に、中性的で男よりな顔立ちに紅い瞳。

何処か自分の兄に似てるような気がする男性が、椅子に座って自分と対面していた。

 

「………………えっと…………誰……?」

 

「もっともな疑問だね。俺の名前はヒロム。好きに呼んでいいよ」

 

率直な疑問に対して冷静に応答する男性は、自分の名前を素直に名乗りマイルドな笑みを浮かべた。

人当たりの良さそうなヒロムに若干戸惑う絵美だが、その前に確認しなければならない事があった。

 

「…………あの、もしかして………あたし生きてる……?」

 

そう、それは自分の安否である。もしかしたらここは死の間際稀に見るという幻覚で構成された空間で、目の前のヒロムの名乗った男性も神の使いか何かかも知れないと。

 

まあすぐに、んなわけないだろうと開き直るが。

 

だって自分の身体の至る所に包帯が巻かれて白いベッドに仰向けで寝ているし、この独特な消毒液の香りが漂う質素な室内。

彼が言った通りここは病院の病室で、自分は運び込まれた患者として今ここにいるんだろう。

 

「生きてるよ、君はこうしてちゃんと生きてて俺と話してる。……”海相絵美”ちゃん」

 

「へっ……?…………えっと、あたしまだ名前は……?」

 

「君からは聞いてないよ。教えてくれたのはこいつさ」

 

上体をゆっくり起こしながら、まだ名乗ってもいないのに自分の名前を知っている事に疑問をそのままぶつけると、ヒロムは微笑みを浮かべたままそう言って掌を広げると何かが乗ってきた。

いや、その何かは絵美が一番良く知る仲間であったため即座に反応する。

 

「あっ、シグナルマッハ……!…………ってえっ?教えてくれたって………シグナルマッハが何言ってるか分かるの……?」

 

「あぁうん、なんか伝えたい事が頭に入って来てね。動物と話せるからか分かるんだ」

 

「へっ!?動物と話が出来るの!?そんな人ホントにいるんだ……」

 

動物と話せる人間、そんなの実際に存在するわけがないと思っていたが、意外にも居た。しかも自分の目の前に。

そんな事実に唖然とし、ほへ〜っと興味深そうにヒロムを見つめる絵美。

簡単に信じる辺り素直すぎるのではと思うだろうが、絵美はヒロムが嘘をついてるように見えなかったから疑うように問いたださなかったのだ。

 

何よりヒロムはさっきからシグナルマッハに対して、『よかったな、お前のご主人が目を覚まして』と声を掛けシグナルマッハがサウンドを鳴らすと、『いいっていいって。困った時はお互い様だろ?』っと応答している。

 

この光景を見たら疑うのも申し訳ない気がして、それになんだか微笑ましく見えてしまう。絵美はそう呑気に思考していた。

 

っと、そんな時。

病室の入口ドアが横スライドに開かれると、明るいクリーム色のロングヘアーで柔らかく可愛らしい顔立ちをした一人のナースが入って来る。反射的にヒロム達が顔を向けると、そのナースの女性はヒロムに対して口を開いた。

 

「あっ、ヒロムさん。女の子が起きたんですね」

 

「ああ、おかげさまで。ありがとなコンパ、突然電話した上に治療してくれて」

 

「いえいえ、困った時はお互い様です。それにお怪我してる女の子を放ってなんて置けないです」

 

なんとも朗らかで輝くほどの笑みを浮かべながらそう口にするナースの女性こと、コンパ。

彼女はこの病院に勤めるナースの中で特に有名で人気のある美少女ナースだったりする。

彼女の知らない所では、コンパちゃんファンクラブなる物まで設立されているほどだ。

 

因みに会員番号0番が彼女の親友でプラネテューヌ教会の諜報員を勤めている女性だったりするのは、また別のお話。

 

「…………?あのさ、”コンちゃん”って”ヒーくん”と知り合いなの……?」

 

突如、ヒロムとコンパが会話をしている間に入り込むように、絵美はコンパにそう尋ねた。

しかも怪訝そうな表情を浮かべながら、ヒロムとコンパを愛称で呼んだ。ヒロムはさっき好きに呼んでいいと言ったので問題は無いが、絵美はコンパにまで愛称を使った。

まるで良く知る友達のように。

 

「ふえっ……?………あの、もしかして何処かでお会いした事あったですか?」

 

だが、対するコンパは絵美に愛称で呼ばれた事に首を傾げ、こちらも怪訝そうな表情を浮かべた。そんなコンパの反応に、今度は絵美の方が首を傾げる事となる。

 

「えっ……何言ってんの?今朝も一緒に朝ご飯食べたじゃん」

 

「………………えぇっと…………多分人違いだと思うですが……?」

 

申し訳なさそうな心境が含まれた苦笑いを浮かべるコンパ。彼女は先程自分が手当てした患者である絵美の顔を見つめ、必死に思い出そうとするが、結果は惨敗。頭の中の隅から隅まで探ったがやはり以前会った記憶が無い。

そんな様子のコンパに、信じられないと言った面持ちで困惑する絵美。

すると見兼ねたヒロムが溜息をつくと、コンパに対して口を開く。

 

「あぁ〜……コンパ?悪いんだけど席を外してくれないか。今からちょぉ〜っと話について行き辛い会話するから」

 

「えっ……?………………なんだか仲間外れにされてるみたいですけど、分かりました。でも、何かあったら遠慮なく呼んでくださいね?」

 

「うん、ありがとう」

 

ヒロムの申し出に最初こそ不満気な表情を見せたが素直に応じてくれ上に気遣いも欠かさないコンパに微笑むヒロム。

 

さすがはシリーズ通して”お嫁さんにしたい美少女ランキング”ぶっちぎり1位を完走するコンパ。この子を嫁に貰った奴は人生の勝ち組真っしぐらだな。

 

っと余計な思考を浮かべたまま病室を後にするコンパを見送ると、ヒロムは改めて絵美と対面する。

 

「さて。それじゃあさっそく、絵美ちゃんが今置かれている状況を説明するけど、心の準備はいいかな?」

 

「……う、うん……」

 

ヒロムの真剣な表情と声音によって思わず息を飲む絵美。しかし、今の自分の状況を把握する事が最善であるので、ヒロムから視線を逸らさず真っ直ぐに見つめる。

絵美の聞く体勢が整った事を認識したヒロムは、自分の中にある推測を口に出した。

 

「絵美ちゃん。君はこことは違う、別の次元のゲイムギョウ界から、このゲイムギョウ界に次元転移してしまったんだと、俺は推測する」

 

「別次元って…………だからコンちゃんはあたしの事を知らなかった……?」

 

「そう。そして君がコンパに面識があるという事で、別のゲイムギョウ界から来たと断言できた」

 

ヒロムの常軌を逸した推測を絵美は疑念を抱く事なく、あぁやっぱり……っと内心で納得していた。

本来なら何を突拍子も無い非現実的な事を語っているのかと、普通の人間なら即座に思うだろうが、絵美は決してそうはならない。

 

何故なら、元々絵美は”ゲイムギョウ界の人間では無いからだ”。

 

「……………でも、どうやら絵美ちゃんが住むゲイムギョウ界は、このゲイムギョウ界とは環境が違うみたいだ」

 

付け加えるように言ったその発言に疑問符を浮かべる絵美。するとヒロムは、スッと自分の斜め前方を指差したので絵美がつられて指が示す方に視線を向けると、そこには自分がさっきまで装着していたマッハドライバーが置かれており、シグナルマッハ以外のシグナルバイク、”カクサーン”、”トマーレ”、”マガール”、”キケーン”、さらに赤い車と白いバイクがサイドカーのように繋がったミニチュアカー、”シフトデッドヒート”が並んで待機していた。

 

マッハドライバーと他のシグナルバイク達も無事だった事に安堵した絵美だったが、その安堵は速攻で消し飛ばされる事となる。

 

「それはマッハドライバー炎で間違いないよね?」

 

「ッ……!」

 

「続けて質問だけど、そのマッハドライバーとシグナルマッハを使って、君はあの仮面ライダーマッハに変身して戦ってる?」

 

「……なんで……なんで知ってるの……?」

 

何故知っているのか、そう尋ねずにはいられなかった。マッハの存在は絵美の知人や家族以外知る者はいない筈。

なのにヒロムはスラスラと語った。当たり前のように知ってる感じに。

 

すると絵美の表情が強張り、僅かに身構えた。

もしかしたら、この男は自分が敵対してる組織の一味なのかもしれない。だからマッハの事を平然と知っている。

そんな考えが浮かんだ絵美に対し、ヒロムは自分を警戒しだした絵美にあらぬ誤解を植え付ける前に、自分の素性を語る事にした。

 

「俺は元々、”地球”って世界からゲイムギョウ界に召喚された者でね。地球に住んでた頃は、君が変身する仮面ライダーを………特撮ヒーロー物のコンテンツとして見てたんだ」

 

「……………?」

 

警戒は解いたものの、今度は意味が分からないといった感じにキョトンとする絵美。

これでは説明不足なんだなと判断したヒロムはさらに付け加えて語る。

 

「つまり言ってしまえば、本来想像の産物でしか無い物って事。仮面ライダーなんてリアルに存在してるなんてありえない。俺はそう思ってたんだけど……」

 

改めてマッハドライバーを見つめ、そして絵美を病院に運んだ時の出来事を思い返す。

出迎えてくれたコンパが引いて来ていたタンカーに乗せ、治療に入ろうとしたが、この大きなバックルが付いたベルトは先に外した方がいいという事で、取り敢えず引っ張ってみたら呆気なく外れ、しかも巻かれていたベルト部分がバックル内に自動で収納された。

その時のヒロムは思わず瞳を輝かせ歓喜の声を漏らし、外装の精密さと全体の質量を感じ、それが玩具などでは無い。本物の変身ベルトであると改めて確信した。

 

「どうやら、仮面ライダーは存在していたみたいだな。それに君にとって仮面ライダーは存在して当然なものなんでしょ?」

 

っと問いかけられ、絵美は数秒程困った様に沈黙するが、間違ってもいないので首肯した。

 

「いやいやホントにビックリだよ〜。まさか本物の仮面ライダーに会えるなんて。一人の仮面ライダーオタクとして感激だ♪」

 

するとヒロムは軽快な笑みを浮かべながら喜びの声を口にした。

彼は元々重度の二次元オタクであるため、二次元の存在に会える事は至極の奇跡なのだ。それが昔、自分が地球で生きていた頃にハマりまくっていた仮面ライダーなら尚更。

御本人ではなかった事には今も心の隅でガッカリしているが、そこはスルーする。

 

「……………あのさ、ヒーくん」

 

「んっ?何かな?」

 

先程から黙り込んでいた絵美が唐突にヒロムを呼ぶ。この子って人を愛称で呼ぶのが好きなのかなと改めて認識し、何だか新鮮な呼ばれ方なのでそのまま受け入れるヒロム。

 

「ヒーくんって、仮面ライダーの事について詳しいの?」

 

「あぁ…………もう”20年”くらい前から見てないけど、仮面ライダーは大好きだったからある程度は覚えてるよ」

 

「……じゃあマッハの事も?」

 

「もちろん。平成ライダーは特に覚えてる」

 

何処か真剣な眼差しと声音で尋ねる絵美に、サラッととんでも発言を挟みながら得意げに答えるヒロム。

 

すると、絵美は突然身を乗り出してヒロムに急接近した。

 

「なら教えて!出来ればマッハに関する事は全部!今すぐ!」

 

「えっ……?」

 

「お願い!あたしは確かにマッハに変身して戦ってるけど、知らない事が多いの!だから────」

 

切羽詰まったような面持ちで迫られ思わずたじろぐヒロムに、さらに絵美は身を乗り出して頼み込もうとした。

 

しかしその途中、全身に電流を流されたような痛みが駆け巡った。

 

「────っつぅ!?」

 

「ああぁぁぁ!駄目だって全身の所々の骨にヒビ入ってたんだから!今は回復魔法で治ってるけど痛みはまだ残ってるし……」

 

一瞬ではあったが痛烈な痛みに体勢を崩しそうになる絵美をヒロムが両肩に手を置いて支える。そして絵美はヒロムが口にした言葉にゾッとした。

全身の所々の骨にヒビ……。まさか自分がそんな大怪我をしていたなんてと驚愕している。

 

ヒロムも症状を聞いた時は、『仮面ライダーってやられて強制変身解除した時どれくらいダメージ入ってるのか分からなかったけど、まさか全身の骨がボロボロになってたのか……?』っと衝撃の真実を目の当たりにした。

 

しかしゲイムギョウ界の医療技術には、魔法による治療も可能なのである。しかもコンパはこの病院内ではトップクラスの回復魔法使用者であるため、彼女の頑張りのおかげで全身の骨のヒビを修復出来たのだ。

ただし蓄積ダメージは幾らか残るので、そのダメージが無くなるまでは入院する事となる。

 

「とりあえず落ち着いて、俺が知ってる範囲での事ならいくらでも教えるから。なっ?」

 

「〜〜〜ッ!……で、でも………こうしてる間にも……あいつは────」

 

 

 

────グウウウゥゥゥゥゥゥゥ……。

 

 

 

その音は突然鳴り響いた。

痛みによって涙目になる絵美と、絵美の危機迫るといった感じの勢いに困った表情を浮かべるヒロムは、同時に硬直する。

 

そして先に沈黙を破ったのは、

 

「………………………あうぅ……///」

 

絵美であった。いやそれも仕方ない事だろう。

何せ今鳴ったのは自分の腹の虫の音だったのだから。

さらに目の前には今日知り合った異性が居て、どっ直球にみっともない腹の鳴る音を聞かれた事が彼女に羞恥心を抱かせるには十分過ぎた。

熟れたトマトのように赤く染めた顔を俯かせる絵美に、ヒロムは少し間を空けてから。

 

「…………何か急ぎの用事があるみたいだけど、とりあえず何か食べて、お互いの情報を交換し合ってからでもいいんじゃないかな?」

 

宥めるようにそう言って、絵美の両肩から手を離すとコートの内側に手を入れ、ガサガサと一つの紙袋を取り出した。

 

「丁度ハンバーガーを10個程買っていたんでね。良ければ一緒に食べない?」

 

優しく言いながら紙袋の中身を絵美に見せる。中には包装に包まれたハンバーガーがギッシリと詰められており、ファーストフード独特の香ばしい香りが絵美の鼻腔を擽る。

 

「………………い……いただきます……///」

 

空腹には逆らえない絵美は、その魅力的な誘いに恥ずかしがりながらも受けた。

 

そんな絵美に、ヒロムは内心で『あらやだこの子可愛い……』っと余計な感想を述べるが、絵美はそんな事知る由もなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……

………

…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っとまあ、つまりマッハは”ロイミュード”を倒す為に、”ドライブ”よりも高スペックに造られた仮面ライダーって事。負担がデカくて制限時間が設けられてるけど、鍛えてれば制限時間は伸びるらしいよ」

 

一通りの説明を終えたヒロムは、ふぅ……っと息を漏らした。

あれから、絵美と共にハンバーガーを食べながらマッハに関係する設定を、20年のブランクがあるとは思えない程、専門用語混じりにスラスラと語るヒロムに絵美は興味津々に耳を傾け続けた。

 

ちなみにヒロムが持っていた10個のハンバーガーは全てチキンバーガーであった。

元々一人で食べるには多すぎる量な上同じ種類で食べ切れるのかと絵美が疑問をぶつけると、ヒロムはただ平然としたまま『俺は魔力を回復するのに鶏肉が一番効率いいからな。あと単純に好物だからいくらでもいける』っと言ってのけた。まあ絵美も嫌いではないので、空腹という事もありヒロムと半分ずつ食した。

 

「そっか……。マッハは重加速を起こす怪人、ロイミュードと戦う為のライダーなんだ……」

 

「うん。マッハに積まれてるNEX-コア・ドライビアっていうシステムは重加速を相殺できるからね。リミッター解除すればマッハでも重加速を起こせるらしいけど、使わない方がいいって事だけは言える」

 

念を押すように言いながらコップに注がれたオレンジジュースを飲むヒロム。

これも余計な事だが、ヒロムがコートの内側から2リットルのペットボトルに入ったオレンジジュースと紙コップを取り出した時は絵美も仰天した。

コートの内側が四次元になっているのか聞いたが、ヒロムは『世の中には、知って得する事と、知って損する事がある。………その質問の場合は後者だ』と言ってはぐらかされた。

 

「あたし……今までずっとロイミュードとは関係ない、改造怪人としか戦った事なかったなぁ……」

 

「いや、マッハに変身して戦ってる時点で凄すぎるからね?しかも俺と同じで地球出身な上、まだ16歳なんでしょ?尚更すごいよ」

 

ヒロムが仮面ライダー情報を提供する一方で、絵美も自分の今までの境遇を掻い摘んで説明した。

自分が元々地球出身で、幼少の頃に自分が住んでいた孤児院が残虐な組織に襲われ、唯一生き残った自分は謎の女性によってゲイムギョウ界へ飛ばされた。それからずっとプラネテューヌ教会でプルルートによって育てられた。

しかし自分の家族を奪った組織がまた襲って来た。だが逆に敵が持っていたマッハドライバーを奪って変身し、そのままプラネテューヌを守護する仮面ライダーとなった。

現在は自分が住むゲイムギョウ界とは違う別の次元のゲイムギョウ界に目的があって訪れていて、そこで組織に攫われた兄、メテ兄こと”メテオ・ソルヒート”と再会した。

 

絵美の境遇を聞いたヒロムは、メチャクチャ波乱万丈な人生送ってるんだなこの子…….っと愕然していた。

 

っというか絵美ってプルルンに育てられた?神次元のアイエフとコンパとピー子と同じ状況って事か?それにその残虐な組織がマッハドライバーを……コア・ドライビアシステムを複製した?技術力高すぎだろ?あとメテオ・ソルヒート?仮面ライダーメテオとなんか関係あんの?いや聞く話によると改造人間で変身した姿がバッタの仮面らしいし、多分初代のあの人に似てるんだろうか?

 

っと様々な疑問が浮かぶが、あまり図々しく問い詰めるのは不躾だろうし、今の絵美はあまり心境が宜しくない感じなのでオタク魂をぶつける事を我慢する。

 

「……あたしはただ……ずっと守られっぱなしなのが嫌だったから、ダークネスからマッハドライバーを奪って、それからずっと……」

 

ずっと、仮面ライダーとして戦い続けた。

16歳という若過ぎる年齢で、生死を賭けた戦いに身を投じてる絵美を、ヒロムは憂いな気持ちを抱いた。

きっと他に平和な生き方が出来たはず。しかし彼女の運命の歯車は異常な噛み合わせで回り出し、そのままあの人間の自由のためならどんな敵とでも戦う戦士となってしまった。

その運命はカッコいいが、同時に残酷だ。ヒロムが見てきた仮面ライダーでは、何人かのレギュラーキャラや主人公が命を落とす展開がお約束だった。中でも”ゴースト”は放送開始早々初っ端から死んでいたし。

 

そんな危険極まりない平和維持活動を行う命知らずの内の一人と同じ仮面ライダーに変身して、この子は怪人と戦っているのか。

 

「でも…………あの銀色の仮面ライダーに、あたしは手も足も出なかった……。せっかく、戦う力を持ってるのに……」

 

絵美は、自分がここに運び込まれる前の出来事を思い出したのだろう。

ヒロムもその話は聞いた。絵美が敵対する組織が秘密裏に設立していた改造人間の研究所に攻め込んだ時。

銀の仮面ライダーと称される……おそらくダークライダーであろう敵と対峙したが手も足も出ず、この次元まで粘り強く付いて来たがそれでもやはり勝てなかったと。

 

仮面ライダーは世界平和を守れる程の力を持つというのに、呆気なく軽々と負けた。相手は最後まで自分の事を見下していたが、それ程の実力差を叩きつけられた絵美は、悔しくて悔しくて……そして辛かった。

 

銀の仮面ライダーに言われた罵詈雑言や受けた痛みを思い出し、ギュッとベッドのシーツを握り締め、強く唇を噛み締める絵美。

瞳からは、今にも熱い雫が落ちようとしていた。

 

「こんな弱いままじゃ………メテ兄と並んで、”ダークトゥダークネス”を倒す事なんて……!」

 

「………はっ?今ダークトゥダークネスって言った?」

 

しかし絵美が嘆いているという時に、ヒロムは気になる単語を耳にして思わず問い返した。

 

「………うん。あたし達が相手にしてるのは、全次元を滅ぼそうとする超迷惑で………あたしから大切な物を奪った組織。……”ダークトゥダークネス”」

 

心の底から湧き上がるような憎しみが込められた声で、絵美は自分が敵対する組織の正式名称を口にした。

家族を奪った組織なら憎むのは当たり前だが、ヒロムは別の方に気を取られていた。

 

それはダークトゥダークネスという組織名。

 

さっきから残酷な組織とかダークネスとかで呼ばれていて気付けなかったが、今はハッキリと理解出来た。

っと同時に、最近の出来事を思い返す。具体的に言えば、3日前に自分が殲滅したあの研究施設と破壊兵器、そして青鬼好きな青髪メガネ白衣の男の事を。

 

「……………ありゃぁ……。これはもう繋がっちゃったかな……」

 

関係ないようで関係していたピースが揃ってしまった事で、脳細胞がゆったりとトップギアへ移行したヒロムは、そう言葉を漏らした。

そしてその言葉はしっかりと絵美の耳に届き、嘆きを中断して疑問をそのままぶつける。

 

「えっ……?繋がっちゃったって………何が繋がったの?」

 

「…………あのさ、絵美ちゃんが追ってるっていう銀の仮面ライダーが向かった所、俺知ってるかも……」

 

歯切れの悪い物言いでそう口にするヒロムに、絵美は数秒ほど呆然とするも、その言った意味を正確に理解してしまうと、彼女は血相を変えまた勢いよく身を乗り出してヒロムに迫った。

 

「ホ、ホントに!?何処!あいつは何処に向かったの!」

 

「ちょいちょいちょい!落ち着いて落ち着いて!もしかして今聞いたら速攻で行くつもり?」

 

この結果を薄々予想していたヒロムは、ドオドオと再び両肩に手を置いて押し迫ろうとする絵美を抑える。

しかし絵美はそう簡単に止まらない。自分を侮辱した敵組織の一人の行方が分かるかもしれない。そんな可能性という燃料が注がれたエンジンは、アラブールばかりなのだ。

 

「当たり前だよ!だってあいつ何か企んでたみたいだから、それを止めないと……!」

 

「だからってそんな状態で行く気なのか?今戦えばマトモにやりあえない上に返り討ち間違いなしだぞ!」

 

「それは…………でもまだデッドヒートで戦ってないし────」

 

「尚更ダメだ!マッハよりも負担のでかいデッドヒートじゃ身体が持たない。それにバーストモードになったらただじゃ済まないぞ!」

 

無謀に挑もうとする絵美をヒロムが叱りつけるように専門用語をぶつける。

 

ヒロムは絵美に対し、さり気なくデッドヒートの使用回数を訊いたが、頻繁には使っていないらしく、それに加えバースト状態に移行すると誰かに止めてもらわないと解除出来ないと発言していた。

だとしたら、彼女は詩島剛がやっていたバーストモードでの戦闘は現時点では不可能。

っというかあれ、タイヤがバーストしただけでホントにパワーアップしてるのかヒロムにとっては疑問で仕方なかった。バトライドウォーでも究極形態として扱われてたけど。

 

チェイサーマッハならデッドヒートより強力ではあるが、絵美はシグナルチェイサーを持っていない上、アレは友情の力によって生まれた奇跡の変身だから簡単に変身できるわけがない。っというか、簡単に変身されたらなんかムカつく。

 

「でもあたしがやらなきゃ…………あいつはあたしが倒さなきゃダメなの……!!」

 

絵美は必死に訴えかけた。仮面ライダーを倒せるのは仮面ライダーだけ。さらにあのダークライダーを逃してしまった責任感や、別の世界にまで来てしまった焦燥感などが彼女を駆り立てる。

 

そんな絵美の迫力に、ヒロムは冷静に絵美を見据えながら静かにため息をつく。

 

「はあ……………わかった」

 

「ッ……!じゃあ────」

 

「ただし俺も行く。これが最低条件だ」

 

許しが出たことでパッと表情に明るみが出た矢先、付け加えるようにヒロムは提案した。

一瞬、絵美は呆気にとられてポカンとするが、すぐに否定の声を上げる。

 

「ダ、ダメだよ!?あいつは仮面ライダーであるあたしが相手にしないと危な────」

 

「問題ない。こう見えて”魔王を倒した勇者”で、”はぐれ魔神”である俺なら戦えるはずだ」

 

自分を助けてくれた恩人を危険な目に会わせたくないという想いの絵美に対して、ヒロムは自信ありげに自分の肩書きを口にした。

 

「………………へっ?魔王を倒した勇者……?はぐれ魔神……?………えっと、どゆこと……?」

 

「深く考えなくていいよ。ただ君と一緒に戦えるくらいの実力は持ってるって事を認識してくれればいい」

 

目を白黒にし、頭上に疑問符を浮かべながらキョトンと首を傾げる絵美。ヒロムが口にした単語の理解に頭の処理が追いついておらず困惑しているが、当の本人は詳しく説明することもなく椅子から立ち上がると、病室の隅に置かれているカゴに近づき何かを取り出した。

 

「とりあえず、行くのならちゃんと着替えよう。絵美ちゃんが着てた服、綺麗にしといたから」

 

そう言って絵美に差し出したそれは、絵美が病院に運ばれる前に着ていた服一式であった。

現在は簡素な入院服を着ているため、確かにこのままでは外に出られないと思考した絵美は素直に自分の服を受け取る。

ちなみにボロボロだった服はヒロムが修復したおかげで新品同様の物となっていた。

 

「俺は病室から出て扉の前で待機しとく………っとその前に」

 

病室から出ようとする前に、ヒロムは絵美に向かって掌を向けると、緑の魔法陣が展開する。

 

「ケアルド」

 

詠唱を唱えると、絵美を温かな緑色の光が包み込む。

すると絵美は、何だか倦怠感が全て消えたかのように身体が軽くなったような感覚を抱き、ついでに身体に残る痛みも感じなくなった。

 

「オッケィ、これで完全に回復した。痛みで着替え辛くならないはずだ」

 

ヒロムが唱えたのは回復魔法。この場合は傷ではなく蓄積ダメージを自分の魔力を媒介にして癒し、HPをMAXにしたのだ。

 

「じゃっ、着替え終わったら声掛けてくれ」

 

回復魔法を唱え終えたヒロムは、今度こそ病室の扉を開けて廊下に出ると、ピシャッと扉を隙間無く閉めた。

 

「……………なんだろ……メテ兄並かそれ以上に親切だな、ヒーくんって……」

 

しかも細かい気配りなども怠らず、献身的に尽くしている感じだった。

本当に彼は何者なのだろうか?只者ではないことは確かだけど、とにかく自分に優しくしてくれるから悪人ではないし、騙している雰囲気も全く感じない。

それに何だか、こういった状況に慣れているようにテキパキとしていた。

 

ヒロムに対しての様々な疑問を抱く絵美は、ベッドから降りると入院服を脱ぎ、さらに身体中に巻かれた包帯も解く。

傷が完全に塞がっていたため、問題無く全て解いてから服を着用していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……

………

…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おぉ…コンパちゃんぐっどあふたぬーん。今日もえくすとりーむに可愛ええのぉ……」

 

「うふふ、ありがとうです。おじいさんは今日もお元気さんですね〜」

 

「ふぁっふぁっふぁ、まだまだ若いもんには負けんよぉ。まあ病院に入院してる時点で負けてるんじゃが、しかしコンパちゃんが看病してくれるならおーるおっけー、むしろうぇるかむじゃわい」

 

「んもう、そんな事言っちゃダメですよ?ちゃんとお病気を治して退院出来るように頑張らなきゃです」

 

「おっとぉ、こいつははーどに厳しいのぉ。じゃが、コンパちゃんが看病してくれるのじゃったら、まっはでなおってしまいそうじゃ。かっかっかっ〜♪」

 

病院内の廊下にて、コンパは高齢者の患者であるおじいさんの相手をしていた。

今日も今日とてこの病院の天使とも言えるコンパはおじいさんに対してとても朗らかで優しく、そして親身になって会話をしている。

対するヨボヨボなおじいさんは、いつも通りコンパと他愛も無い話に花を咲かせ、そしてナース服越しからでも分かりやすく目立つたわわに実った巨乳やら、スラッと細くしなやかに伸びる太ももをさり気なくチラ見して内心鼻の下を伸ばしている。

変態ジジイ、ここに極まれり。

だがコンパはそんな変態ジジイのエロい視線やら何やらに気づく事はなく、普通に笑みを浮かべながら応答しているだけ。

 

だから彼女は殆どの男性患者達から性的な視線で見られている事に気づいていない。

ある意味、無自覚で鈍感な魔性の女。それがこの病院の天使、コンパなのである。

 

 

 

 

 

コンパがおじいさんの相手を終え、カルテを両手で持ちながら廊下を歩いていると、前方から見知った友人であり、さっき別れたばかりのヒロムが近づいてきていた。

 

「あっ、ヒロムさ────」

 

「ごめんコンパ!ちょっと急用が出来たから絵美ちゃんを連れて行ってくる!」

 

「治療してくれてありがとねコンちゃんってわわわっ!?ヒーくんそんなに強く引っ張んないでぇ!」

 

「あぁゴメンゴメン!転ばないように気を付けて!」

 

ピュ〜ッ!っと駆け足で駆け抜けていくヒロムと、ヒロムに引っ張られるようにして手を引かれている絵美。

去り際に捲し立てながら伝える事を伝えて、返事も待たずに廊下を走っていった。

 

「────………………って、ヒロムさーん!病院内の廊下は走っちゃダメですー!」

 

「次回から気をつけるから許してヒヤシンス〜!」

 

表情を固めたまま呆然とするコンパは、遅れてハッと我に返ると後ろへ振り返り、自分を横切って行ったヒロムに向かって典型的な病院での注意の言葉を投げかけた。

が、当のルールブレイカー野郎はコンパの真面目な言葉を間抜けな言葉で相殺すると、そのまま絵美を引き連れてコンパから離れて行くのだった。

 

 

 

 

他の患者にぶつからないように廊下を駆け、絵美が転ばないように階段を登り、目の前の扉を勢いよく開け放ち通り抜けると、澄み渡る青空とポツポツと浮かぶ雲、そしてサンサンと照りつける太陽の下。

落下防止の鉄格子に囲まれた病院の屋上へヒロムと絵美は足を踏み入れた。

 

「屋上に来てどうするの?」

 

「もちろんここから飛んでく!っというわけでちょっと失礼!」

 

「へっ────ひゃあっ!?」

 

屋上へ到着早々、ここに向かって絵美を引っ張ってきたヒロムが早口に断りを入れると、流れるような動作で絵美を、お姫様抱っこで抱き上げた。

当然、いきなりお姫様抱っこされた絵美は素っ頓狂な声を上げ顔を赤らめる。

 

「しっかり掴まっててくれ!振り落しはしないけど飛ばして行くからな!」

 

だがそんな絵美の反応をスルーするように言葉を掛けるヒロムを、突如として不自然な風が纏われていく。

その不自然な風に困惑し、オドオドする絵美をさらにスルーするヒロムは、グッ!とコンクリートを踏みしめ、そしてそのままダッ!と跳躍した。

 

「えっちょっ!?えぇっ!?」

 

絵美は驚愕する。何故なら常人のレベルを遥かに上回る程のジャンプ力でその場から上へ飛び出したかと思うと、”何も無い空中を蹴って前進したのだ”。

さらに絵美を抱き抱えるヒロムは真下に落下せず空中を滑空していき、ものの数秒で病院から離れて行く。

 

「これは浮遊魔法”エアログライド”で飛んで、高速移動魔法”アクセルダッシュ”を脚に集中させて、爆発的な脚力で空気を蹴って加速してるんだ!」

 

絵美が訊くよりも早くヒロムが説明する。

さっき回復魔法を使ったこともそうだが、ヒロムは様々な魔法を行使出来る程の力量を備えているのだろうかと、次なる疑問が絵美の脳内に浮かび、独特で新鮮な飛び方に唖然とする。

 

「大丈夫、ちゃんとこのまま”あの場所”まで速攻で飛んで行くから!」

 

「……あ、あの場所って……?」

 

「3日前、クエストで訪れたプラネテューヌ郊外にある古い洋館。そこにきっと……絵美ちゃんが追ってるダークライダーが居るはずだ!」

 

ヒロムには確信があった。きっと絵美を傷付けたダークライダーは、あの元”青鬼の館”の地下に居るはず。もしかしたら既に諦めて帰ってしまっているかもしれないが、それでもヒロムはあの場所を目指す。

 

そんなヒロムの確信に満ちた声に対し、絵美は返答を返さず、前方を見続けるヒロムの顔を上目遣いに見つめる。

何を根拠にしてその目的地へ飛ぶのかは分からない。でも、何故だかヒロムのその想いを信じられた。

 

最愛の兄とはまた違った異性の男性。

 

野垂死にそうになった自分を助け、仮面ライダーの事を語ってくれて、おまけに手助けしてくれる。

 

何処までも優しい彼に、絵美は安心と何か熱い想いを胸に、運ばれるがままに空を駆け抜けていくのだった。

 

 

 

 

 

……

………

…………

 

Go Next Chapter !!

 




ファーッ!?また詰め込み過ぎた〜!?
っというわけで、ヒロムは絵美ちゃんを助けそのまま流れるままに共闘することに!
目指すは前回のあの洋館!既に気付いてる人がいるでしょうが改めて言います。前回のあの青鬼パニックのお話しとこのコラボは繋がっております!今更でしょうけど!

っというわけで次回!マッハとバニハのコラボタッグ!敵は今だ謎の多い銀の仮面ライダー!
銀の仮面ライダーの正体、そしてこのコラボを持ちかけた大元の理由が明らかとなる!

ヒロム「ここまで来たら行け行けドンドンだ。別人とはいえ、マッハと一緒に戦えるなら、燃えるぜぇ!!」


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