ネプテューヌVA' 番外編〜from.Hameln〜 作:紅蓮龍蒼
ヒロミ「いいじゃんあれくらい。サービスサービス、だよ♪」
ヒロム「サービスにも限度あるわ!?俺まで恥ずかしくなるだろおい!?」
ヒロミ「まあまあ、コラボ回ラストなんだしもっと気楽に行こうよ?No不謹慎、No激怒」
ヒロム「だ・れ・の・せ・いっ、だと思ってんだゴラァァァァァ!!」
ふう……リアルの仕事上残業が増えてきて疲労する中、やっとこさ出来たゼェ……。
ソルヒートさんには悪い事してしまって……自分から企画しといてなんてこったい……。
とにかくこれが最後!
そしてなんとビックリ(すること?)!!例によってオリジナルなパワーアップが出る!!
詳細は小説本編で!
あっ、やべっ。気合入れすぎて書き過ぎたなこれ……。
そこはすでに所有者を失った洋館の地下の、さらに使用者が居なくなり、見るも無残な有様で放置されたボロボロな研究所が広がっていた。
周りは天井が崩れて出来た大穴に、瓦礫や機械の残骸が散らばっている。悲しいほど空虚な空間が続く中。突然、怒鳴り声が響き渡る。
「ちぃっ!一体どうなっている!」
銀色の戦士は苛立だしげに転がっている何かの機械の残骸を蹴り飛ばす。
「なぜ”アカザキ”が居ないどころか、奴が管理していた研究所がこんな有様なのだ!」
周りを見渡しながら、自身の協力者が管轄していた研究所の有様に動揺を隠せない銀色の戦士。
「くっ…………奴に依頼していた私のさらなる力となる”アレ”が無ければ、私の悲願への道が遠ざかるというに……!」
顔は仮面で隠されているが、表情が見えたのなら間違いなく歯を噛み締め、険しい表情を浮かべていることだろう。
「………おそらく、アカザキは何者かの襲撃を受けてこの施設ごと葬られたのかもしれん。しかし…………だとしたら誰がこんな────」
「それは俺がここをぶっ壊したのさ」
苛立ちながらも冷静に分析していると、突如として自分以外の声が響いた。
銀色の戦士はハッと声が発せられた方へ視線を向けた。
「────なっ!?何故ここに人間が………っ!貴様はっ!」
視線の先に立っていたのは青年一人とさらにもう一人、見知った女性が佇んでいた。
「まさか本当に居るとはね……。でも、これであんたにリベンジ出来る!」
「小娘……!…………くそっ、性懲りも無く生きていたのか……!」
銀色の戦士を、取り逃がした獲物を再び見つけた狩人のような鋭い眼差しで睨む女性、絵美。
対する銀色の戦士は、仕留めたはずの敵が生きていてまた自分の元に姿を現したことに不快感を込めた愚痴を吐く。
そんな因縁の両者が対峙する中、青年ことヒロムは目の前の銀色の戦士の姿に興味を惹かれ、その実態を分析していた。
「(アレはドライブのタイプハイスピード?……いや待て、タイヤ部分のあの形状は……?)」
自分が知る仮面ライダードライブの知識をフル動員させる。色を見たらまず特別番外編に登場した形態を浮かべたが、あの袈裟懸けに巻かれているパーツの形と複眼の色。
何よりあの車のエンジンメーターをモチーフにしたような黒いバックルのベルト。
「(…………成る程、そういうわけか)」
内心で結論が出たヒロムは納得したように口角を僅かに吊り上げる。
そして自分の結論を完全にする為、ヒロムは目の前の敵に向かって喋りかけた。
「どうやら、お前が絵美ちゃんを酷い目に合わせたダークライダー…………”シルバドライブ”ってところか?」
「─────なっ!?……貴様、何故私の名を!?」
「お前のその姿、それは”蛮野天十郎”が変身する”ゴルドドライブ”と色違いだからな。……あともしかして、お前はその蛮野天十郎をコピーしたロイミュードだったりするのか?」
「────ッ……!?」
銀色の戦士改め、シルバドライブは狼狽したように息を詰まらせ、取り乱してか数歩ほど後退する。
その行動によって、ヒロムの結論と仮説は的をど真ん中に射抜いたことが明白だった。
「バンノテンジュウロウ?……………あっ!それって確か、ロイミュードの生みの親だっていう……!」
「そう、108体のロイミュードを作り出し、そのロイミュードに命を奪われたけど、データの存在になってから自分の野望を実現する為に同僚や家族すらも陥れた悪逆非道のマッドサイエンティスト。それが蛮野天十郎だよ」
語るヒロムの声には明らかな軽蔑が込められている。
それもそのまず、彼にとっては仮面ライダードライブの登場人物の中で、”ニラ屑男”の次に嫌悪するキャラだったのだから。
故に声音と喋り口調で即座に蛮野天十郎だと判断したのだ。中身がロイミュードだという所は当てずっぽうではあるが。
「絵美ちゃん、ここは最初っからデッドヒートマッハで行くんだ。相手はドライブのストーリーの中で2番目のラスボスであるゴルドドライブがモデル。簡単には倒せない」
「う、うん……!……でも、ヒーくんはどうするの?そのまま戦うのは危ないよ?」
「心配ご無用。絵美ちゃんは気にせず変身してくれ」
後ろ髪を引かれる思いはあるが、ヒロムの自信と信頼のある応答を絵美は信じる事にする。
取り出したマッハドライバーを腰に当てベルト、”ドライバーウェビング”が出現しオートで装着される。
バックルに搭載されているパネル、”シグナルライディングパネル”を斜め上に持ち上げ、何処からともなく飛んできたシフトデッドヒートを手に取ると、赤い車の窪んだ部分に白いバイクを畳み込んで一つの形に変形させ、そのままパネルにスライドして装填する。
『シグナルバイク!シフトカー!』
疾走感溢れるサウンドが鳴り響く中、絵美は両手の親指をパネルの上に重ね、勢いをつけながら押し戻した。
『ライダー!デッドヒート!』
「レッツ、変身!」
「レッツ、アクセス!」
独特なポーズ(説明が困難な為省略)を取りながら変身の掛け声を放つ絵美。
その隣ではヒロムも掛け声を放ちながら絵美とは向きが違うが同じポーズを取っており、目の前に光り輝く電源マーク、”シェアクリスタル”が出現する。
そんなヒロムに気付くことなく、絵美の周りをエネルギーフィールドが包み、マッハの基本ボディはそのままに、上半身の胸部と左肩は赤と黒を基調とした装甲、右肩にメーターが表示された小型のタイヤが装備され、白と赤のラインが走った黒タイヤが胸部の装甲に袈裟掛けで埋め込まれる。
仮面もベースを保ちながら、車のリアウイングが逆さに取り付けられたような赤い装甲のチンガードが取り付けられる。
隣のヒロムは、目の前のシェアクリスタルが胸の中へ溶け込み全身が光に包まれる。
黒を基調としたアンダースーツが全身を包み込み、身体の各箇所に赤を基調としたプロセッサアーマーと、背中に浮遊する一対の機械翼が装着され、そして頭を覆い隠す4本のツノを施した赤い仮面が装着された。
「……………って、えぇっ!?ヒ、ヒーくん何その姿!?」
変身が完了してからやっと気付いた絵美が、隣のヒロムの姿が豹変している事にビックリしながらそう尋ねる。
「これこそが、俺がはぐれ魔神と呼ばれる所以、女神と似て非なる存在、”魔神バニシングハート”。女神にして女神に在らぬ者。故に俺は自身を、魔神と称しているのだ」
「……………えーっと、つまり……どゆこと?」
返ってきた応えに首を傾げて混乱する絵美。
女神に似ているというのはどういうことなのだろうか。っというかさっきから喋り口調や佇まいが冷静で雄々しくなっており……まるで武士道精神に溢れる猛者のようは雰囲気を醸し出している。
絵美が困惑していると、さっきから傍観していたシルバドライブが声を掛けてくる。
「………まさか貴様、女神メモリーの特異適合者か……!」
「その発言、この研究所を統括していた青髪でメガネを掛けた白衣の男も口にしていたな」
「ッ……!………やはり、貴様がアカザキを……」
シルバドライブはその時悟った。自分のこの”強化型バンノドライバー”の開発に協力してくれた同僚が、目の前の特異な存在によって葬られた事を。
仮面の下から憎悪と憤怒が篭った視線をヒロムに向けて放つ。しかし当の本人はそれに臆する事なく、絵美へ顔を向ける。
「絵美。おそらく奴はゴルドドライブと違い”シフトアップ”を使用し高速で動くのだろう。俺は攻撃と防御に特化しているが、奴のスピードに追いつく自信がない」
素早くブリーフィングを行うヒロム。
仮面ライダードライブの知識と敵の武装を確認し、ゴルドドライブと違って左手に装備されている”シフトブレス”に、ドライブシリーズの仮面ライダーの変身、補助アイテムである”シフトカー”が装填されている事から、シフトカーの能力を発揮するシフトアップを行うだろうと判断する。
魔神化した事で更に補正がかかる常人を超えた視力によって、そのシフトカーが黒い”シフトスピード”である事を確認し、シフトアップが高速化の能力である事を断定する。
「デッドヒートは過剰にブーストアップすればタイヤがバーストしてしまう。だからなるべくブーストアップの使用回数を最小限に抑えた上で、シルバドライブの素早い攻撃に対応してくれないか?」
だから、スピードがあまり出せない自分に変わって、スピード、パワー、テクニックが満遍なく高いマッハに変身する絵美に頼みかける。
しかし、今の絵美は目の前でスラスラ語るヒロムに唖然としていた。
なぜかと言われれば、
「…………ヒーくんってさ、ネプ姉達みたいに性格がガラリと変わるんだね……」
ヒロムが魔神化した事によって先程までと性格がガラリと変化した事に困惑しているのだ。
「自覚はある。しかしこの……堅物キャラというものは抑えられないのでな。申し訳ないが慣れてほしい」
そう言われてもすぐには慣れないよ……。
絵美は心の中でそう呟き、仮面の下で苦笑を浮かべる。
そんな絵美の心境を感じ取ったヒロムだが、気を取り直すように、
「とにかく、奴は一人で倒すことが困難。しかし二人なら勝てるはず。期待しているぞ」
そんな言葉を口にする。その言葉に込められた期待の想いは本物。仮面ライダーマッハとして過酷な戦いを潜り抜けてきた絵美だからこそ、ヒロムは気持ちを言葉にして口にしたのだ。
「………うん、了解。期待に応えるよ!」
そんな想いに応えるように、絵美は弾むような声で言葉を発し、仮面の下で口に笑みを浮かべる。
今日出会ったばかりでお世話になりっぱなしな自分を頼りにしてくれる事に嬉しく思い、自信を向上させる。
自分も、隣に居る魔神の戦士を頼りに思いながら。
「おのれ、この私の邪魔をするとは……!タダで済むと思うなよガキ共!!」
「負けるつもりなどさらさら無い。夢にまで見た仮面ライダーとの共闘で、俺の心は熱くたぎっているのでな」
「戯言をっ!後悔しても遅いぞ!」
言いながらシルバドライブが右掌を突き出すと、そこを起点に衝撃波が発生する。虹色の輝きを含んだその衝撃波がヒロム達に接触すると、一瞬だけ身体が静止する。
しかしその静止は即座に解かれた。
”絵美とヒロム、両方が”。
「なっ……!?なぜだ!マッハはともかくなぜ貴様まで重加速の中を動けるのだ!」
コレには驚愕を隠せずにいるシルバドライブ。それは絵美も同じで、重加速に耐えられるのはコア・ドライビアを積んでいる仮面ライダーに変身しているか、シフトカーやシグナルバイクを持っていなければならない。
なのになぜ、平然とヒロムは動けるのか。そんな疑問が脳内に浮上する。
しかし当の本人、拳を握っては開き握っては開きを繰り返して動作確認を取るヒロムは、
「理由など些細な事。況して、貴様に教える義理などない」
答えを明かす事なく、はぐらかしながら相手を愚弄するように言葉を投げかけた。
「ッ……!何処まで私を侮辱するか……!」
そんなヒロムの言葉に怒り心頭となるシルバドライブは右手に武器を召喚する。それはまるで、メリケンサックと銃が合わさったようなハンドガンに、長身の刃が装着されたような片手剣であった。
「(アレはダークドライブのブレードガンナー?所持武器まで備えてるとは……)」
ヒロムの記憶から、あの武器がドライブの劇場版に登場した、”ブレイクガンナー”と”ハンドル剣”を合体させた”ダークドライブ”の専用武器であるブレードガンナーであると断定する。
「(…………だがまあ、別人とはいえマッハが居るのだ。あの程度苦でも無し。そして”アレ”を搭載しているのであれば、使用される前に排除する)」
敵がもし、ゴルドドライブと全く同じスペックであるなら特に警戒すべき機能が存在する。
それを使用されたら形勢を一気に覆される可能性が大いにあるため、ヒロムは内心で短期決戦で仕留める事を決定し、そして自分達がシルバドライブに勝つイマジネーションを思い浮かべる。
「さあ行くぞ。守護者なれど、暴れるぜ」
腰に差した鞘から爆炎丸を抜刀するヒロム……バニシングハートは冷静でありながら熱い闘志を秘めた掛け声を放ち、絵美……マッハもその声に喚起されるように闘志を燃やす。
爆炎丸を構えるはぐれ魔神、バニシングハート。
ゼンリンシューターを構える音速ライダー、デッドヒートマッハ。
今ここに、交わるはずの無い奇跡のタッグが組まれた。
「調子に乗るなよ下等生物風情がぁぁぁ!!」
荒々しい声を上げると共に、シルバドライブはベルトのキーを捻りシフトブレスのレバーを3回倒した。
「絵美、ブーストアップ四連続だ。とにかく防御に専念しろ」
「うんっ!」
すぐさま指示を出すバニシングハートに速攻で応答したマッハはブーストイグナイターを4回叩く。
『バースト!キュウニ、デッドヒート!』
限界稼働状態となり、身体中に赤い紫電のエネルギーを纏うマッハ。
シルバドライブがその場から姿を消すように前進すると同時にマッハもロケットスタート。
互いがゼロ距離まで接近すると、シルバドライブの放つ剣撃をゼンリンストライカーとぶつけ合い相殺するマッハ。
「ドラララララララララララララァッ!!」
「ゼリャリャリャリャリャリャリャァッ!!」
どんよりとした世界の中で巻き起こるハイスピードな攻防戦。マッハは指示通り反撃する事なくシルバドライブの攻撃を全て捌くのみ。
やがて両者が己の武器を激しくぶつけ合い同じタイミングで後方へ飛び距離をとり、両方の限界稼働状態が解除される。
「上出来だ」
突如として頭上から放たれた声に反応したシルバドライブはバッと視線を上に上げた。
しかしその時にはすでに、飛翔し爆炎丸を振りかぶったバニシングハートが飛来しており、落下と同時にシルバドライブの胴体へ向けて袈裟懸けに振り下ろされた。
「────ぐぉっ!?」
「追加オーダーだ。受け取れ」
回避もままならないまま一閃を喰らい火花を散らすシルバドライブに追撃するバニシングハート。防御体勢を取る暇を与える事なく二閃、三閃と剣撃を浴びせ、最後の剣撃でシルバドライブを後退させるとバックステップで距離を取りマッハの元へ。
「絵美、俺が合図をしたら背後に飛べ。それまで足留めを頼む」
「了解!」
次なる指示を出し、それを受けたマッハは従い再び飛び出す。
ダメージを受け怯んでいたシルバドライブは接近するマッハに反応し、迫るゼンリンストライカーによる打撃をブレードガンナーで防御する。
「ふっ!はっ!せぇあっ!」
「ぬぅっ……!でらぁっ!」
激しくぶつけ合う武器と武器。時折マッハがゼンリンシューターから光弾を発射するもシルバドライブは身を逸らして避けるかブレードガンナーで斬り捨てる。
やられまいと反撃するが、それはマッハも同じであるため、やられまいと防御する。
なるべく反撃は行わない、自分は言われた通り時間稼ぎに徹する。それが何に繋がるかは不明だが、彼の考えを信じるマッハ。
「絵美、飛べ!」
「ッ……!」
突如後方から発せられた声にマッハは即座に反応し、シルバドライブの剣撃を弾くと後方へ向けてバックジャンプ。
そしてマッハに意識を集中させていたシルバドライブは今やっと気付いた。
「んなっ!?」
マッハの後方に隠れていたバニシングハートが、いつの間にか”巨大な瓦礫の塊”を片手で持ち上げており、まるでドッジボールの如くそれを、シルバドライブに向けて思いっきり投げたのだ。
「デタラメにも程がある……!?」
これには驚愕不可避だと言わんばかりに声を上げるシルバドライブだが、アレが直撃してはマズイと危機を感じ、ブレードガンナーから光弾を連射する。
放たれる光弾が全て瓦礫に命中していくと、シルバドライブに直撃する途中で木っ端微塵に砕け散った。
その時、一瞬ではあるがシルバドライブは安堵した。
しかし、その一瞬の油断がミステイクへと繋がる。
『ゼンリン!』
「貰ったぁ!!」
「ッ!?しま────」
響く音声と叫び声がシルバドライブに届く。
砕け散った瓦礫から放出された砂煙りからマッハが飛び出す。
今のダイナミックな投擲はあくまで相手の注意を逸らす囮。本命は見事なバック転を決め、通り過ぎて粉砕された瓦礫の後方に着地したマッハの反撃。
砂煙りが煙幕の様に目眩しとなった前方を駆け、途中でゼンリンストライカーを回転させてエネルギーを集中させた。
対応が間に合わないシルバドライブへ目掛けてマッハは、
「どりゃあぁっ!!」
身体全体を回転させての勢いでゼンリンストライカーを振り抜いた。
「ガッ!?」
胸部装甲に直撃して火花を散らしながら仰け反るシルバドライブ。
「まだだ」
しかしその発せられた言葉通り終わらない。
横に逸れたマッハの隣にバニシングハートが躍り出ると、マッハは左脚、バニシングハートは右脚を突き出し、
「「せぇいっ!」」
シルバドライブの腹部目掛けて鋭いミドルキックを同時に並べて叩き込んだ。
「ぬぐああああぁぁぁぁぁっっっ!?」
威力が二人分に倍増された蹴りをもろに受けたシルバドライブはその場から後方へ吹き飛ぶ。
打ち合わせ無しのヒットアンドアウェイな戦法。驚く程に息の合ったコンビネーションによって圧倒するマッハとバニシングハート。
だからマッハは、一人では手も足も出なかった相手を押している事に気分を高揚させる。
「よし、これならいける!このまま一気に畳み掛けるよ!」
「ッ……!待て絵美、無闇に突っ込むな!」
バニシングハートが制止の声を上げるが、調子を上げるマッハに届かず、相手に追撃するべく走り出してしまう。
「ぐぅ……!調子に乗るなよ小娘がぁ!!」
床の上を転がり受け身を取って立ち上がるシルバドライブは憤怒の声を上げ、再びベルトのキーを捻った。
また加速してくるのだろうかとマッハは予想したがそれは外れる事となる。
キーを捻った瞬間、シルバドライブの袈裟懸けに装着されたパーツから”禍々しい金色の衝撃波”が放たれ、マッハはそれを避ける事なく浴びてしまう。
「うあぁっ!?な……なに……これ……!?」
するとどうだろうか。
突如としてマッハはその場で立ち止まってしまった。否、正確に言うならば、まるで金縛りに見舞われたように身体の自由が利かなくなったのだ。
「”干渉波”……!やはり使えるのか……!」
いきなり動けなくなったことに驚愕しているマッハと同じく、驚愕しているバニシングハートだが、彼はこの現象を知っている。
”干渉装置ゴルドコンバージョン”。
ゴルドドライブが持つ最も危険な機能であり、ドライブ達が苦戦を強いられる原因となった機能なのである。
その能力は文字通り、相手に干渉する能力。
具体的例を上げると、《相手の動きを封じる》事と、《相手の武器を奪う事》であり、
「あ…あたしの……武器、が……!?」
マッハが携えていたゼンリンシューターが手元から離れ、シルバドライブの元へ浮遊して行く。
「貰ったぞ………貴様のオモチャをなぁ!!」
取り返す事も出来ないままゼンリンシューターはシルバドライブへと向かいそのまま手に取ると、ゼンリンシューターの銃口をマッハに定め、トリガーを引いた。
「っああぁぁぁ!?」
ゼンリンシューターから発射される光弾を防ぐ事も出来ず滅多撃ちされるマッハは、光弾を受けたボディの箇所から火花を散らしながら後退し、ダメージに怯んで膝をついてしまう。
「くっ……!やはりデッドヒートマッハは干渉波に対応出来ない……。……しかし、仮面ライダーではない俺ならば問題あらず!」
干渉波によって追い詰められたマッハに代わり、バニシングハートは意気込みの掛け声を上げながらシルバドライブへと攻め立てた。
「ふっ……。それはどうかな?」
「なにっ?」
不敵な声を発したシルバドライブに疑問を抱いたバニシングハートだが、その意味は再び発せられた干渉波を受けた事で知る事となる。
マッハと同じく身体の自由を奪われ身動きが封じられた事で。
「ッ……!?ぐっ………な、なぜ…だ……!?コア・ドライビアを持つモノしか……干渉出来ないはず…じゃ……!?」
「それでは汎用性にかけるだろう?何せ我々ダークネスは様々な次元の様々な戦士と戦うのだからなぁ」
バニシングハートが言った通り、干渉波は元々ドライブに関係する仮面ライダーと怪人以外に通用しない筈である。
であるなら、仮面ライダーとは全く関係もヘッタクレもないはぐれ魔神であるバニシングハートに影響があるわけがない。
「ゴルドドライブの干渉装置ゴルドコンバージョンは、”ドライブ”と”マッハ”と”チェイサー”が使用する武器とシフトカー、シグナルバイクに干渉し支配下に置き、さらに本体の動きを封じるという性能だった」
語るシルバドライブの口からバニシングハートが良く知るライダーの名前が飛び出す。
そこで思い当たる。やはりこのダークライダーには原作通りの知識があるのだと。もしかしたら蛮野天十郎の記憶をそのままコピーしているのだと。
「だが私のこの”シルバコンバージョン”は、武器を奪い本体の動きを封じるだけに限定した。ただし、おかげで仮面ライダー以外全ての敵を容赦無く干渉できるがなぁ。このように……」
シルバドライブは両手に携えていたゼンリンシューターとブレードガンナーをその場に投げ捨てる。
そしてすぐ、バニシングハートの背中に浮遊していた一対の機械翼が装着者から勝手に離れていく。シルバドライブの元へ飛んで行く機械翼は途中で変形、合体し一本の大剣、”烈火大斬剣”へと様変わりした。
「お、俺の武器まで……!?」
「ほほぉ……中々良い大剣だ……なぁ!!」
干渉し奪い取った烈火大斬剣を物珍しそうに見つめてその後、シルバドライブは重量感溢れる大剣を両手で握りバニシングハート目掛けて振り抜いた。
「────ぐっ!?がぁっ!?」
マッハと同じく干渉波の影響で防御出来ないバニシングハートは否応がなく自分の武器で斬り裂かれ火花を散らす。
「そぉら吹き飛べぇぇぇぇぇ!!」
「ごおぉあっ!?」
渾身の一撃を込めた横一文字の剣撃が命中したバニシングハートは吹き飛ばされる。
────ズドオオォォォオォォンッッッ!!
ここは空間の限定された廃墟。故に背後には当然壁が存在する。だから、豪快に吹き飛ばされたバニシングハートは豪快な衝撃音を立てながら激突する事となった。
「ヒーくん!?ッ……よくも……!!」
バニシングハートがシルバドライブに打ちのめされた光景を目の当たりにしたマッハは、ダメージとデッドヒートの負担を無視するように無理矢理立ち上がると、
『バースト!キュウニ、デッドヒート!』
ブーストイグナイターを四度叩き限界稼働状態へ移行したマッハはダッと飛び出す。
「でりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃあぁっ!!」
紅い稲妻が迸る拳を何度も何度も音速の如き威力で叩きつける。
しかし対するシルバドライブは、奪った烈火大斬剣を盾の様に掲げ、マッハの打撃を全て防ぐ。それでもマッハは間髪入れずに打ち出し続けるが、そのどれもがシルバドライブに届かない。そんなマッハを、無駄な足掻きだと言わんばかりに呆れたため息を吐く。
「はあ……無駄だと言うに、学習能力の無い奴だ」
「うっさい!!無駄かどうかなんて簡単に決め────」
────ビービービービービービービービービービービービーッッ!!
一旦バックステップで後退し再び攻め立てようとするマッハだが、右肩に着いてる”DH-コウリン”に表示されたメーターが限界値に達して警戒アラームが鳴り響いた。
「────ッ!?しまった!?」
立ち止まり焦燥の声を上げるマッハ。さらに突然、”ブラストカウル”に袈裟懸けに装着されたデッドヒートタイヤが火花を散らせながら回転を始め、突如白と赤のライン部分が弾け飛んだ。
その下から赤黒い、歪でギザギザなラインが現れ、ヘッドライドのような複眼が激しく発光する。
タイプデッドヒートは、全身に莫大な熱エネルギーをまとって爆発的に攻撃力を高められる反面、DH-コウリンのメーターがレッドゾーンに達するとタイヤがバーストし、システムの制御が困難になって本人の意志に逆らって敵味方関係なく暴走する危険な状態に陥ってしまう。
「う、あ……あぁ………ぐぅっ……!?」
いつの間にか限界値に達していた事に気付かなかったマッハは、バーストモードへと移行した事でシステムの制御が出来なくなり、エラーを起こしたロボットの様に正常ではない動きを始める。
「…………ほお、貴様は詩島剛の様にバーストモードを制御出来んようだな?」
バーストモードとなったマッハを見てそう口にするシルバドライブ。彼の言う通り、オリジナルのマッハである詩島剛はこの制御が困難なバーストモードを気合と根性で克服し、なんとか戦闘に活かしていた。
「こん…のぉ……!!こんな時に……身体が、自由に…………あああああぁぁぁぁあぁぁっ!?」
しかしオリジナルのマッハと違い、絵美はバーストモードの制御にまで達しておらず、自分の意思とは無関係に無茶苦茶で乱暴な動きを取りながらシルバドライブに突貫してしまう。
「くっ……絵美……!」
シルバドライブに吹き飛ばされ壁にめり込んだバニシングハートは、目の前でマッハがバーストモードに移行し暴れまわっている光景に唖然としていた。
恐れていた事態が起こってしまった。形勢が一気に覆された。このままでは絵美が危ない。
様々な思考を巡らせるバニシングハートは壁から抜け出し、ヨロヨロとその場に立つが、突然バリンッと割れる音が響くと何かが床に落ちた。
「……ちっ、仮面が……」
視線を下に向けると、そこには自分が被っていた仮面が真っ二つに割れていた。
先程の一撃の衝撃で割れたのだろう。
それによって、仮面で隠されていたバニシングハートの頭部……緋色に染まった髪と電源マークが浮いたルビー色の瞳が露わとなった。
顔には額から下へと出血が流れており、口の中は鉄の味がする。加えて斬り裂かれた胸部装甲が割れ、下のアンダースーツのさらに下の身体に出来た裂傷から出血が垂れている。
あまりにもボロボロ、普通なら立っていることも不思議なまでの有様。しかしバニシングハートの忍耐力は人外レベル。
況してや、目の前でマッハがピンチに陥っているというのに、黙って見ていることなど出来るわけもない。
「ふんっ!」
「うあぁぁぁっ!?」
メチャクチャな動きで暴れるマッハの攻撃を軽々と避け、烈火大斬剣を振り抜く。マッハは当然の如く回避も出来ずその一撃を貰い吹き飛び、床の上をゴロゴロと転がり停止する。
すると突然デッドヒートマッハのボディが消え、元の絵美の姿へ戻ってしまう。急激なダメージの蓄積によって強制変身解除してしまったのだ。
「憐れだなぁ。あの時大人しくくたばっていれば二度も辛い思いをせずに済むというに」
「ぐっ……!誰、が………簡単に、やられるかっての……!」
変身が解除された絵美を憐れな眼差しで見下ろすシルバドライブ。
絵美はタイプデッドヒートの負担とダメージによって身体がヨロヨロになりながらもなんとか顔を持ち上げ、鋭く睨みつける。
しかしそんな絵美の態度を物ともせず、というよりさして気にも留めず、シルバドライブは心底呆れるように溜息を吐く。
「まあいい。今度は確実に息の根を止めてやろう」
その言葉に慈悲などなく、あるのは冷徹なまでの残虐な悪意のみ。
不敵な薄ら笑いの声を漏らすシルバドライブは烈火大斬剣を上段に振り上げる。
「くたばれ……脆弱な仮面ライダーの小娘ぇぇぇぇぇぇえええぇぇぇぇぇっっ!!」
「────ッ!?」
力を込めた一撃が振り下ろされる。
今の絵美は生身。そんな状態でマトモに大剣の一撃を受ければ、確実に死ぬと容易に断言出来る。
容赦なく迫り来る大剣に、絵美は恐怖のあまり思わずグッと目を瞑った。
────ガギィィイイィィィンッッッ!!
「────なにっ!」
だが、響いたのは肉が裂ける音ではなく、硬い金属同士がぶつかり合った甲高い物と驚きの込もったシルバドライブの声だった。
疑問に思った絵美は、恐る恐ると閉じていた瞼を開いていき視界に映ったのは、
「…………ヒ…ヒーくん……?」
映ったのはバニシングハートの後ろ姿。
しかもよく見れば、彼の左肩にはシルバドライブが振り下ろした烈火大斬剣がぶつかっており、火花が飛んでいる。
バニシングハートは絵美がシルバドライブによって斬り裂かれようとする前、寸でのところで飛び込むと間に割り込み肩と左手で受け止めた。
そして今に至る。
「ぐぅっ……!!……絵美は………やらせないぞ、この外道が……!!」
「えぇいっ!!邪魔をするな小僧ぉぉぉぉぉ!!」
絵美を守らんとするバニシングハートに対し、絵美を仕留め損なった事に苛立つシルバドライブは、赤い複眼を発光させ再びシルバコンバージョンから干渉波を発生させる。
焦りを抱いたバニシングハートだが、干渉波に抗える事もなく受け止めていた力が激減する。
押し込まめる烈火大斬剣がショルダーアーマーと激しくぶつかり合い、徐々にアーマーがヒビ割れていく。
そして、
────グギャッ!!
アーマーが砕かれ、下の肉体に到達した大剣の刀身がバニシングハートの肩に叩きつけられた。
「────ガァッ!?」
「ッ……!?ヒーくん!?」
悲鳴にも近い声を上げる絵美の目の前で、バニシングハートの肩に大剣が突き立てられ血飛沫が飛ぶ。
「ぐっ……………ぐおぉっ……!!」
あまりの強烈な痛みに、ダメージを無視する余裕も無く苦悶するバニシングハート。
だが、このままでは大剣がさらに振り下ろされ、最悪左腕とおさらばする事となる。
それだけは絶対に許容出来ないバニシングハートは歯を食いしばり、
「……ぁぁぁああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」
金切り声の混じった叫びを張り上げ、干渉波によって動きを制限されているにも関わらず左手にさらなる力を込めた。
限界を超えるほどに筋力をフル活用してギリギリと烈火大斬剣の刀身を握り締める。
バニシングハートはただ肩から刀身を抜こうとしているのではなく、最大の目的は、
────バキィィンッッッ!!
烈火大斬剣を粉砕する事だ。
「な、なにぃっ!?」
まさか片手で大剣を真っ二つに割るとは予想だにしていなかったシルバドライブは素っ頓狂な声を上げ、体勢を崩して前のめりに倒れかけるがバニシングハートは空いた右拳をシルバドライブの懐に向けると、
「ゼロ距離……バニシングショットォー!!」
拳から幾つもの火炎弾を至近距離で連射した。
「ぬおぉああああぁぁぁぁぁぁぁぁああああぁぁぁぁぁぁぁ!?」
火炎弾がクリティカルヒットしたシルバドライブはその場から勢い良く吹き飛ばされ、凄まじい衝撃音と砂煙りを立てながら、背中から壁に激突して行った。
「はあ…はあ…はあ…はあ……ぐっ、かはぁっ!?」
割れた上半分の烈火大斬剣の刀身を抜き無造作に投げ捨てたバニシングハートは肩で息をするが、口内から大量の吐血を吐き出すと身体が光に包まれ、一瞬のうちにして元のヒロムの姿へと戻ってしまった。
魔神化が強制解除させたヒロムは力無く仰向けに倒れようとするが、咄嗟に起き上がった絵美がヒロムを抱き留めた。
「ヒーくん!?なん、で……なんで、庇って……!?」
余りにも無茶な行動を起こしたヒロムに震えた声で問う絵美だが、彼の左腕に目が行くと絶句した。
「やだ……ヒーくん、腕が……!?」
「………あぁ、ちょっとこれはまずったなぁ……。フルに、使い過ぎて……ズタズタだ……」
人の身体に掛けられたリミッターは100%の力までしか発揮出来ない。リミッターは生きているかぎり外す事は不可能。外してしまって限界以上の力を発揮してしまえば肉体は耐えきれず崩壊してしまう。
バニシングハートはあの状況下で無理矢理そのリミッターを解除する程の筋力を行使した事により、筋肉が膨張し皮膚が裂け、血管や筋が断裂。服の下から滲み出るほどの出血を流しており、ピクリとも動かず垂れ下がっている。
肩の裂傷に加え、余りにも目が当てられない状態が絵美の視界に映っていた。
「……ごめんな、絵美ちゃん」
「…………なんで、ヒーくんが謝るの……?」
「だって、絵美ちゃんを守ろうとしてこのざまだぜ?こんなんじゃ……俺完全に足手まとい状態じゃん……」
薄っすらと軽快な笑みを浮かべながら申し訳なさそうに言うヒロムだが、その笑みが無理をしている事が明白であった。
「………ちが、うよ……。あたしが……あたしが足手まといになったせいで、ヒーくんがこんな怪我を……!」
「気にしないでくれ……。女を守るのは、男の使命みたいなもんだから……。だから、絵美ちゃんが無事ならそれで────」
「全然よくないよ!!」
絵美は声を張り上げ、ヒロムの言葉を遮る。
「あたしは……あたしは仮面ライダーなのに……。メテ兄と同じ、怪人と戦う戦士なのに……なのに……、命の恩人である、ヒーくんを……こんな目に合わせて……!」
嗚咽混じりな声で自分を卑下する絵美の目尻から、悲しみの込もった涙が流れ、ポタリとヒロムの頬に落ちる。
「ひっく………やっぱり………あいつの言う通りだ……!あたしが、弱いから…………弱いまんまだから……えぐっ……!そのせいで────」
自虐的に言葉を紡ぐ途中、絵美は突然頬に痛みを感じた。
「────いひゃっ!?」
短い悲鳴を上げ痛がる絵美。一体何が起こったのか理解出来ていない彼女だが、視線をヒロムに向けた事で解決した。
「ヒ、ヒーふん……?」
「自分が弱いだと?お前は何馬鹿な事言ってんだ?」
自分に顔を向けるヒロムの表情は、先程までの無理に飾った軽快な笑みと違い、怒りが籠ったものとなっており、無事な右手で絵美の頬をつねっていた。
しかも喋り口調まで柔らかい感じから棘のある容赦ない厳しいものへ変化している。
突然の豹変に呆気にとられる絵美に対し、ヒロムは気にも留めずさらに口を動かす。
「お前は仮面ライダーとして戦っている。だっていうのに弱いだなんて、贅沢にも程がある」
仮面ライダーは人々を悪から守る戦士。ただ守られるだけの弱者を、強力な力の行使によって守る勇敢な強者達。
「仮面ライダーは確かに強い。みんなが憧れる英雄、子供の将来の夢候補になりやすいヒーローだ」
強い者に憧れるのは世の常。それが子供から大人までのハートを掴むヒーローなら尚の事。
しかし、仮面ライダーはただカッコいいだけの存在に非ず。
「でも、仮面ライダーがやってる事はいつも命懸けの戦いばかり。中には命を落とした仮面ライダーだって沢山いる」
ヒロムが見てきた作品の中、数えるだけで多数のライダーがストーリー内で命を落として消えていった。
”カイザ”しかり、”斬鬼”しかり、”サソード”しかり、”バロン”しかり、”チェイサー”しかり。
まだまだ多くのライダーが自分の世界の戦いの中で帰らぬ人となっていった。
「そんな生存率の低い戦士となって戦う奴が、弱いだなんて言うな。お前は仮面ライダーとして戦ってる時点で、弱くなんてない」
いくら脚本と演出で作られた紛い物の世界だろうと、映像の中で繰り広げられた彼らの勇姿は本物に等しい。
彼等は最後まで諦めず、苦難を乗り越えながら強い敵に立ち向かって突き進んでいた。そんな彼等が弱いなどと言い切れない。ヒロムの持論はそんな物だった。
「………でも……それでも────」
「それでも弱いと思うか?じゃあ簡単だ。その弱さを受け入れればいい」
ヒロムの持論に納得出来ない絵美の頬から手を離し、今度は抓った部分を優しく、痛みを和らげるように手を添え、そっと撫でる。
「弱さを……受け入れる……?」
「ああ。弱い自分を受け入れることもまた、強さに繋がる道だ。弱いままでいたくない、もっともっと、1時間前、1分前、1秒前の自分よりも強くありたいと思う事も大切だ」
人は誰もが完璧に強いとは限らない。否、言ってしまえば完璧な人間なんて存在しない。
「人は努力次第で、何処までも強くなれる。続く限り進化していく事が出来る。……それが、人間の一番の魅力だ」
だからこそ弱さを受け入れ、強さへと進化させていく。努力次第で人は何処までも高みへと登る事が可能である。
弱いまま停滞する程、人間は柔な造りをしていないのだ。
「それに……仮面ライダーって、意外とちょっとしたキッカケでパワーアップするもんだぜ?」
不意に説教じみた口調からフランクなモノへと変化する。
きっかけは多種多様で、昭和ライダーと違い平成ライダーは物語が進む中で様々なパワーアップを成していた。
闇の力の制御、選ばれた者にだけ与えられる強化カード、絆の力、パワーアップ用の強化アイテム。
形は違えど、必ず主役ライダーは最終形態へと進化していた。
「…………そして、今回は俺が……そのキッカケを作る時だ」
ヒロムが口にしたその言葉に疑問を抱く絵美。
ヒロムは絵美の頬から右手を離すと、コートの内側から何かを取り出した。
それを見た瞬間、絵美は驚愕のあまり目を見開く。
「ッ……!?これって…………”シフトカー”!?」
ヒロムの取り出したそれは、シフトデッドヒートと全く似た形状をした、灰色一色のシフトカーだった。
「なんでヒーくんが……!」
「実はなぁ……この研究所潰した後でたまたま無傷だったコレを見つけてさ。戦利品代わりに持って帰ったんだ。……まっ、これのおかげで重加速の中でも動けたんだけどさ……」
それは3日前この研究所を管理者ごと葬った後、その場から去ろうとしたヒロムは自分が破壊した一つの部屋の中から、偶然にも無傷のまま透明なボックスに保管されていたシフトカーを発見した。
その時は魔神化していたにも関わらず少年のようなキラキラした瞳で見つめ、コレクター魂に火が付いたヒロムはそれを黙って持ち帰ったのだ。
ちなみに保管されていた透明なボックスを粉砕して証拠隠滅した。
「でも……これはきっと、マッハであるお前が使うべき物なんだと思う」
結果的にこのシフトカーを肌身離さず持ち歩いていたおかげで、シフトカーに内蔵されたコア・ドライビア-Sによってシルバドライブの重加速を相殺出来たから普通に戦闘を行えた。
「今は灰色一色で自律行動もしないから完成してないんだろうけど、必ずこのシフトカーは応えてくれるはず。絶対にだ」
だが、持っているだけでは宝の持ち腐れ。
重加速を相殺出来たのであればこれはまさしく本物のシフトカー。ならば今ここにいる絵美、マッハなら使えるはずだとヒロムは断言する。
根拠など無い、もしかしたら未完成のまま反応しないか、システム外のパーツを受け付けないかもしれない。
しかし、それでもヒロムは信じていた。
この名無しのシフトカーは、必ず絵美に応えてくれると。
「それと、最後に約束してくれ」
「………?」
「…………必ず……必ずあいつに勝ってくれ。”絵美”」
それは遠慮を捨て、信頼を込めた上でヒロムは絵美を呼び捨てにした。絶対に勝ってほしい、その想いを抱きながら。
っと同時に。
《あぁ、なんかこれ……剛さんとチェイ兄の別れのシーンに似てるな〜……》
っとあの心に残る涙不可避な名シーンを再現した事に感慨したりしているが、まあほんの少しである。
「…………………………ッ………うん!」
涙を袖で拭い力強く首肯した絵美はヒロムの右手を右手で包み込み、そっとシフトカーを受け取ると、ヒロムの身体がスローモーションのようにゆっくりとした動きを体現する。
シフトカーを手放した事で重加速に対応出来なくなったヒロムを、絵美は壁際まで運び壁に背を預けるように座らせた。
「(……あたしは仮面ライダーだけど、それでもやっぱり弱い。メテ兄と比べたら尚更)」
ヒロムに背を向け立ち上がる絵美は思考する。
彼の言葉は絵美の心を揺れ動かした。しかしだからといって直ぐに受け入れられない。
いや、簡単に受け入れるのは正しくない。
「(でも、だからって何こんな所でへこたれようとしてんのよ。あたしは……あたしはあの時決意して仮面ライダーに変身した。弱いまま、ただ見ているだけなのが嫌だったから)」
絵美は悠然と歩みを進める。
心境の中で思い返すのは、血の繋がりなど関係無い大好きな孤児院の家族がダークネスに殺され兄が攫われた時。別次元に飛ばされた先で自分を育ててくれた女神様がダークネスとの戦いを強いられた時。
ただ見ている事しか出来なかった絵美だったが、マッハドライバー炎を偶然奪った時、苦悩の末に決意した。
守られるだけのか弱い少女ではなく、強敵に立ち向かう戦士となることを。
もう、大事な物を失わないために。
「(弱いなら、もっと強くなればいい。弱い自分を克服して、強い自分を目指す!)」
ただ思うだけなら簡単だ。しかし実現に移せなければ意味が無い。彼女はそれを理解した上で前に進む。
今日初めて知り合い、最後まで自分を命懸けで助けてくれた不思議な彼に託されたシフトカーをグッと握りながら。
「クソッ……!まさか己の武器を粉砕して至近距離から撃ってくるとは……!」
瓦礫を払い退けながらシルバドライブが飛び出す。
予想外の事態と反撃に愕然し不覚にも吹き飛ばされたが、大した損傷には至らず五体満足に動ける状態である。
「んっ……?なんだ小娘、まだ私とやり合おうと言うのか?弱い貴様では無駄だというのに」
目の前に先程トドメをさし損ねた絵美が立っており、しぶとく挑んでくる姿勢に嫌気を感じながら愚弄する。
「あんたの言う通り、確かにあたしは弱い。でも、だからって諦めるつもりはない」
「なに……?」
絵美の言葉にシルバドライブは呆気にとられる。絵美の表情は真剣そのもの。この戦いの中で一番引き締まっているとも言える。
「あたしは……あんた達ダークネスを、メテ兄達と一緒に倒すまで諦めない。その為なら、弱い自分から強い自分になれるように進み続ける!だから!」
一喝と共に両手で灰色のシフトカーを胸の前に掲げ握り締める。
「お願い………あたしに力を貸して!」
確固たる覚悟と願いを込め、絵美はシフトデッドヒートと同じ動作でシフトカーを変形させる。
「……なっ!?貴様それは!?」
シルバドライブは絵美が持つシフトカーを見た瞬間、喫驚したように声を上げるが、絵美は気づく事も無くマッハドライバーのパネルを上げるとそのままシフトカーを装填する。
『シグナルバイク!シフトカー!』
反応した。マッハドライバーは未登録のシフトカーを拒否する事無く受け入れた。
さらに続け様、荒ぶるようなエレキギターのサウンドが鳴り響く。
「レッツ………変身!!」
変身の掛け声を溜め気味に発した絵美は、グッと握った拳でパネルを押し倒す。
『ライダー!』
その瞬間、シフトカーに変化が訪れる。
灰色だったボディが、車部分が白を基調とし、バイク部分が紫を基調とした色合いとなり、それぞれに黄色のラインが刻まれ、バイクのエンブレル部分には、”V”の文字が浮かび上がる。
そのシフトカーは装填された瞬間、マッハドライバーのシステムを更新し新たなパーソナルデータを構築した。
そして新たな姿、完全となった自分の名を高らかに名乗り上げた。
『”ヴァルキリー”!!』
名乗りを上げてすぐ、絵美の周りを四つのタイヤが回転するエネルギーフィールドが包み、新たな形態が装着されていく。
マッハのライダースーツは赤いラインが消えた以外はそのままであるが、各部のアーマーの形状がどこか刺々しい物へと変化し、肩は大きく盛り上がるような形となり、両肩の外側の側面にそれぞれ”シグナコウリン”が取り付けられ、赤と白のストライプ色のスカーフが無くなっている。
そしてマッハの仮面”V-ヘルム”の”イノベイトバイザー”は、こちらも刺々しさが感じられる形状へ変化したが、一番特徴的なのは。
煌めき、そして靡く、先端がパーツで束ねられた紅色の長髪がV-ヘルムの後頭部から伸びていた。
今ここに新たなるマッハ。
戦場を駆ける音速の戦乙女。
《仮面ライダー”ヴァルキリーマッハ”》が誕生した。
新たな姿へ変貌したマッハを前に、シルバドライブは面食らったように息を詰まらせた。
何を隠そう、絵美が使用したシフトカーこそ、シルバドライブがわざわざこの次元まで訪れた最大の目的の品だったからだ。
「馬鹿な…………何故貴様がそのシフトカーを……!?それは私がアカザキに依頼していたパワーアップ用の……っ!」
途中で言葉を止めたシルバドライブはサッと視線をマッハからヒロムに向ける。
「そうか……あの小僧はこの研究所を破壊したと言っていた。つまり奴がここから持ち去ったということか。だから重加速に対応を……!」
ここに来てようやく重加速に対応出来ていたヒロムに納得したシルバドライブ。シフトカーを持っていたのならコア・ドライビア-Sによって重加速の影響を受けないのは当然だ。
想定外の出来事続きで思考能力にエラーが生じたせいなのか、気付くのが大幅に遅れたせいで最悪の事態が起こってしまった。
それは、敵である仮面ライダーマッハがあのシフトカーを使ってしまった事がである。
「とにかくそれを返せ!それは私が……私が蛮野天十郎の意志を継ぎ、すべての次元を巻き込んだ”インフィニティグローバルフリーズ”を実現する為に、必要な物なのだぁぁぁぁぁ!!」
己の内に秘めた野望を暴露し、脱兎の如く飛び出すとマッハに向かって渾身の右ストレートを叩き込む。
悠然と立ち尽くすマッハに、シルバドライブは唸り声を上げながら拳を突き出す。
「ふっ、はぁっ!」
「────がっ!?」
しかし、マッハはシルバドライブの右ストレートを素早く左手で払い退けると、腰を落とし逆にシルバドライブの鳩尾部分にボディーブローを叩き込んだ。
その一撃でシルバドライブは苦痛の呻き声を漏らし、受けた部分を抑えながら後ろ歩きに後退する。
「返すわけない。だってコレはもうあたしの物なんだから」
ジャイアニズム的な言い回しだが、事実なのだから仕方がない。
マッハは右手をスナップさせ腰を低く構えると、
「さあ………腹ぁ括れぇ!!」
声高に、そして堂々と、自分が慕う兄がよく使う言葉で啖呵をきった。
「ふざけた事を……!ならば力尽くで取り返すまでだぁ!!」
荒々しく宣言した瞬間、シルバドライブは右手に銀色のエネルギー体を収束させると真上に放り投げる。
放り投げられたエネルギー体は空中で分裂し、一つ一つが高エネルギー弾と化してマッハに降り注ぐ。
「撃ち落とす!!」
対してマッハは肩のアーターをガバッと展開すると、内部に装備されたレールガン”ヴァリアブルカノン”を上空に向けて構え、シグナコウリンが高速回転すると共に高圧縮された伝導光弾が左右同時に発射される。
撃ち出された伝導光弾と高エネルギー弾が激しくぶつかり合い盛大な爆炎を巻き起こす。
「そして一気に攻める!!」
全ての高エネルギー弾を撃ち落としたマッハは開放した肩のアーターを閉じると、ブーストイグナイターを勢い良く四回叩いた。
『バースト!メッチャァ!ヴァルキリー!』
限界稼働状態へ移行すると、デッドヒートとは違う白銀の稲妻が身体中から放出される。
グッと床を踏みしめると、コンクリートが砕ける程の勢いで、仮面の後ろから伸びた髪を靡かせながらその場を飛び出した。
シルバドライブは応戦のパンチを放ち直撃したかに思えた。しかしそれは残像であり空振りに終わる。
その直後、
「せりゃあ!!」
「がっ!?」
背後から衝撃を受けたシルバドライブは仰け反るとバッと振り返る。そこにはいつの間にかマッハが立っており、苛立ち気にもう一度パンチを放つがまたもマッハが姿を消す。
だが今度は二の舞になるまいと反射的に振り返るが、それよりも先にマッハの拳がゼロ距離に迫っていた。
「だららららららららっしゃぁぁぁ!!」
「ぐあぁっ!?」
連続で叩き込まれた怒涛のパンチが全て直撃するとシルバドライブは吹き飛ばされ、背後にそびえていた特大の瓦礫にぶつかる。
「くぅ……!?馬鹿な……ゴルドドライブを倒したチェイサーマッハよりもスペックが上なこの私が圧されている……!?」
攻勢の勢いを再び取り戻したマッハに愕然とするシルバドライブは有り得ない現実に頭を抱える。
自分は蛮野天十郎ことゴルドドライブが敗北した相手、チェイサーマッハの戦闘データを元にさらなる改良が重なった超強化型。
戦った経験は無いがチェイサーマッハに負ける事などない筈の自分が未知の形態と化したマッハに追い詰められた。
「やはりあのシフトカーの力か……!ならば是が非でも取り返す!!」
マッハが自身を上回る力を発揮出来るのも、全てはあのシフトカーが原因。
だったら、アレを自分が使えば必ず最強の力を身につける事に繋がる。上手くいけば”神殺し”の仮面ライダーすら超えるやもしれない。
そんな思惑が浮かんだシルバドライブは何が何でもシフトカーを取り返そうと躍起になり、マッハが迫り来る中ベルトのキーを捻り、シルバコンバージョンから再び干渉波を放った。
「────うあぁっ!?」
干渉波を受けたマッハはまたもやその場に立ったまま全身を縫い付けられたように硬直してしまう。
さらにシルバドライブは床に転がっていたゼンリンシューターとブレードガンナーを干渉波で手元まで浮遊させると両手に携える。
「そのまま動くな……徹底的に撃ち砕いてやる!」
言った通り干渉波によって動けないマッハへと歩み寄りながらゼンリンシューターとブレードガンナーから光弾を発射するシルバドライブ。
光弾を全て受けるマッハは仰け反る事も出来ず固まったままであり、シルバドライブは至近距離まで近づくとブレードガンナーの刃を振り下ろそうとした。
「ぐっ………ぬぁぁぁ……!」
だが、ここで黙って攻撃を受け続ける程、今のマッハは大人しくはなかった。
「はああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
腹の奥から押し出すような咆哮を上げるマッハの身体全体から衝撃波が放たれ、干渉波を”打ち消した”。
「なにぃっ!?」
干渉波を打ち消されるとは全く思っていなかったシルバドライブは驚愕し、衝撃波を受けて後ろのめりに体勢を崩す。
その隙をマッハは、”咄嗟に握った何か”を振り抜き、シルバドライブを”斬り裂いた”。
「────ガァッ!?」
ボディから火花を散らして吹き飛ばされるシルバドライブ。
マッハは干渉波を打ち消す事に驚く事も忘れ、いつの間にか右手に携えていた物を確認した。
「ッ……?コレって……?」
それは見た目、バイクのハンドル部分の片方のグリップが柄、メーター部分が鍔、もう片方のグリップをブレードの峰部分に構築された形状をしている一本の機械剣だった。
マッハがその機械剣を興味深そうに観察していると、機械剣から音声が流れる。
『アクセルスラッシャー!』
まるで自分の存在を証明するように発せられた音声。アクセルスラッシャーと呼称された機械剣、それはシフトカーが与えたもう一つの新たな力の具現である。
「そんな…………まさか私の干渉波すら打ち消してしまうとは……!」
「……成る程、専用武器ってわけね。んじゃあ遠慮無く!」
アクセルスラッシャーを得意気に構え、再び飛び出したマッハは接近すると共に剣撃を浴びせる。
「はっ、やっ!でりゃぁっ!」
「ちぃっ、このぉ……!」
負けじとシルバドライブもゼンリンシューターとブレードガンナーで応戦。
互いの武器が激しくぶつかり合い火花を散らす中、マッハの上段の振り下ろしをシルバドライブがブレードガンナーの刀身で防御した体勢で硬直状態となる。
「返してよ……それはあたしの武器なんだから!」
言いながらマッハは柄部分のグリップを握っていた両手の内、左手を峰部分のグリップへと素早く移動すると、グリップをグイッと捻った。
『アクセール!』
アクセルスラッシャーは峰部分のグリップを捻ることで、刀身が淡い光を纏い高周波振動状態へと移行することが可能なのだ。
つまりそれは切れ味が一気に倍増するというわけであり、
────バギィィィィィィィンッッ!!
「づあぁっ!?」
ブレードガンナーを刀身ごと砕き折り、シルバドライブ目掛けて痛烈な剣撃を叩き込んだ。
大きく仰け反りながら後退する合間、衝撃によって手放され宙を舞うゼンリンシューターを、マッハはパシッとキャッチする。
「それじゃあこっから……ラッシュタイム!!」
両手にゼンリンシューターとアクセルスラッシャーを携え、マッハはゼンリンストライカーをアクセルスラッシャーの峰部分のグリップに乗せ、勢いをつけながらゼンリンストライカーを引いた。
『ゼンリン!』
『アクセール!』
同時にエンジンが掛かった二つの武器がうねりを上げる。激しく回るゼンリンストライカー、猛烈に振動するアクセルスラッシャーを左右に振り被り走り出すマッハ。
体勢の直しきれていないシルバドライブへ向けて、荒れ狂う嵐の様な連撃を叩き込む。
「がはぁっ!?」
時にアクセルスラッシャーで斬り捨て、
「ぬぐおぉっ!?」
時にゼンリンシューターで撃ち抜き、ゼンリンストライカーを刻み込む。
休む暇を与えない多大で圧倒的な一撃の数々。一つ一つが必殺に匹敵する威力。マッハは容赦の欠片も無くありったけぶつけた。
「ぐがあああぁぁぁぁぁぁっ!?」
最後のアクセルスラッシャーによる袈裟斬りを喰らい吹き飛ぶシルバドライブ。
ゴロゴロと惨めにも床の上を転がり、途中で受け身をとって立ち上がるが、すでに許容範囲外なダメージの蓄積によってフラフラである。
「……そ、そんな……!?この私が………いずれは世界全てを管理下にし、”ゼ・オ”すらも支配するはずの私が……こんな………こんな小娘程度に……!?」
ノックアウト寸前の影響か己の内に秘めた野望を曝け出すシルバドライブ。
次元全てだけでなく、己が主君までもを支配下に収めると豪語するその様はまさに汚れている。だが今の彼が口にすると、それは余りにも惨めで救い用がない物であった。
「許さんぞ…………許さんぞ小娘ぇぇぇぇぇ!!」
自分を貶めた格下の存在に向けて怒鳴り散らすシルバドライブ。
どこまでいっても惨めな仮面の戦士に対し、マッハは憐れみはしない。
何故なら憐れみよりも、
「こっちのセリフよ。あんただけは……絶対に許さない!」
怒りが勝っているからだ。
散々自分を蔑み、ヒロムに大怪我を負わせたあのダークライダーを許しておけない。
ダークネスの一員にも関わらず主人に刃向かう気満々で傍迷惑な計画を企てている。
ならば後は単純明快。
ここでトドメをさすだけだ。
そう決定付けるとマッハはアクセルスラッシャーとゼンリンシューターを手放し、ドライバーのパネルを上げブーストイグナイターを押し込む。
『ヒッサツ!』
そして左右の手を重ねながらパネルを押し戻す。
『バースト!フルスロットル!ヴァルキリー!』
超必殺技発動状態へ移行したマッハ。すると両肩のシグナコウリンからエネルギー体のタイヤが四つ、マッハの目の前に浮遊する。
「おりゃぁっ!」
それをマッハは回転蹴りでシルバドライブ目掛けて飛ばすと、四つの内二つはシルバドライブの周りを高速回転しながら浮遊し、残りの二つはシルバドライブへと直撃した。
「ぐっ、がっ、ごっ、ぎぁっ!?」
直撃した二つのタイヤはバウンドし、シルバドライブの周りで高速回転するタイヤにぶつかってバウンドすると再びシルバドライブへ直撃する。するとまたバウンドしタイヤとバウンドしシルバドライブへと。
まるでホッケーのように幾度もバウンドするタイヤ。シルバドライブを四方八方から不規則に止めどなく襲い、その場に拘束する。
「はああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
シルバドライブがタイヤに翻弄される間、マッハは右脚を前に、左脚を後ろに引いて腰をゆっくり落とす。
身体全体に迸る稲妻を纏わせ、高密度のエネルギーを外側に解放する。
今までで一番、コレが最後となるであろう一撃を放つため、マッハは闘気を滾らせる。
そして最高潮に達すると、マッハはその場から勢い良く跳躍し空中に躍り出る。
右脚をグッと引き、一瞬の静止から彼女は必勝の槍を穿つ。
バッと右脚を伸ばした瞬間、銃から放たれた弾丸の如きスピードで斜めに急降下。
轟く稲妻を纏ったその姿は、まさに閃光の流星が如く煌めいた。
伸びた紅の髪を激しく靡かせながらマッハは撃進する。
シルバドライブを拘束していたタイヤはマッハが迫るタイミングに合わせ、正面からくるマッハの攻撃と直角三角形に挟み込むように軌道を修正する。
そして、
「どっせえええぇぇぇぇぇぇぇぇいっ!!」
「ぐぎゃあああああああああああぁぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁぁっ!?」
無防備なシルバドライブの土手っ腹に流星の如き跳び蹴りが命中。さらに二つのエネルギー体のタイヤが左右斜め後ろから直撃。
ヴァルキリーマッハの超必殺技、『ライトニングキックマッハー』が見事決まった!
その瞬間、断末魔の叫びを上げるシルバドライブを起点に爆発が起こる。
マッハは立ち込める爆炎から離れた位置に着地すると、肩に掛かった髪をサッと華麗にかき上げながら振り返る。
視線の先では、身体中から火花を放つシルバドライブがよろよろと立ち上がろうとする。
「そ……そん、な……!?わた、しは………また、仮面ライダーにぃ…………ッッッ!?!?」
しかしそんな後悔の念を含ませた呟きを漏らす途中、シルバドライブのベルトが爆散し、途端に姿が歪んだかと思うと銀色が主体の怪人へと変貌する。そのすぐ後にその怪人は盛大に爆散した。
爆炎の昇る中から、”SSSと称されたナンバー”が空中に浮かび上がり、バリンッと砕け散った。
「はあ…はあ…はあ…はあ……っ……!」
シルバドライブの最後を見届けたマッハは肩で息をしながら、V-ヘルムのイノベイトバイザーをガバッと上げる。
その途端、仮面からだけでなく全身のパーツの排熱口から蒸気が噴き出し、溜まりきった激しい戦闘による熱を逃がしていく。
ある程度蒸気が抜けると、バックルのパネルを上げシフトカーを取り出す。
ヴァルキリーマッハのボディが粒子となると次の瞬間にはボディが消え失せ、元の絵美の姿へ戻る。
『メッチャ、オツカーレ』
気の抜けるような音声が鳴る中、変身を解除した絵美は息を荒げながら新たな力と化したシフトカーを見つめる。
「はあ…はあ…はあ……こ、これ………かなり、疲れ…るぅ……」(フラッ)
途切れ途切れに呟く途中で、立っていることにも限界がきた絵美は力なく仰向けに倒れようとする。
しかし背中に硬い衝撃は訪れず、逆に優しく抱き留められたような感覚が包み込む。
不思議に思った絵美は首を後ろに回すと、
「…………あっ、ヒーくん……」
「お疲れ、絵美。見事に倒せたな」
そこにはヒロムがいた。
ヒロムはシルバドライブが撃破されたことで重加速の呪縛から解放され、目の前で絵美が倒れそうだったため慌てて飛び出し、ギリギリ受け止めることに成功。
しかし満身創痍なせいもあり、立ったまま支えることができず絵美を受け止めるとその場に尻餅をつき、絵美を後ろから抱き締める体勢となった。
ちなみに左腕は傷を塞いで止血したが今だにぶらんぶらんである。まあ一週間もすれば完治するが。
「………うん、ヒーくんのおかげだよ。このシフトカーがあったから……」
「俺はただ渡しただけ。そのシフトカー……”シフトヴァルキリー”を完成させて、シルバドライブを倒したのは絵美自身の、強さのおかげさ」
原作には存在しない新たなシフトカー、シフトヴァルキリーを興味津々に見つめるヒロム。
あの灰色だったボディが嘘のように、現在はマッハとチェイサーを彷彿とさせるような色合いを見せている。
使えるかどうかは運頼みだったが、運は自分達に味方した。いや、それは運だけでなく、絵美の心の強さと真っ直ぐな意志にシフトヴァルキリーが応えてくれた事も大きいのではないだろうか。
「強さ、か……。…………ねえ、あたしさ……、強くなれた、かな……?」
自信なさげに問いかける絵美に対し、ヒロムはその謙虚な思いを叩き割る勢いで、
「もちろんだぜ。絵美はさっきよりもずっと強くなった。弱い自分から強い自分へ進化したんだ。俺はそう断言する」
笑顔と共にそう自信たっぷりに言って、褒めるように優しく頭を撫でた。
「えへへ……。そっか……、あたし……ちゃん、と…………強、く………………」
頭を撫でられ気持ちよさそうにする中、不意に絵美は黙り込んでしまう。
「────ッ……!絵美……!」
思わずヒロムは動揺するが、その危機感がすぐに無駄な勘違いとなる。
「……すぅ………すぅ………すぅ………すぅ……」
「…………なんだ、疲れて寝ただけか……」
聞こえてくる細やかな寝息。顔を確認すれば絵美は瞳を閉じている。
どうやら疲れに限界が来たようで眠ってしまったようだ。それも仕方ないといえば仕方ない事。なにせ先程まで仮面ライダー同士による激闘を繰り広げていたのだから。
だが、こんな可愛らしい寝顔を見せる少女がマッハとして戦っていたとは、何ともびっくりドンキーな話である。
「……にしても、絵美が消える気配が全くないな?」
自分の腕の中で眠る絵美を見守る中、ふとヒロムはそんな言葉を口にする。
「俺の時はあのモンスターを倒して、少し時間が経ったらいつの間にか元の次元に戻ったけど…………やっぱり境遇が違うからそうはいかないってわけか?」
それは”10年前”、自分がゲイムギョウ界に呼ばれて間もない頃に起きた奇跡。
自分と同じで異世界から別のゲイムギョウ界に飛ばされた親友でありかけがえのない同士と出逢ったあの時。
なんやかんやあって、自分と一緒にその同士が住むゲイムギョウ界に飛ばされたモンスターを、あっちの女神と大きくなってた教祖と共に倒した後、同士に別れも告げる前に勝手に元の次元へ戻り、そのまま長い時間が過ぎた。
そして、絵美はその時のヒロムと境遇が似ている。しかし話によれば絵美はシルバドライブと共にこの次元へとやってきた。
ヒロムはいつの間にか次元を超え、いつの間にか元の次元に戻った。一体何故そんな事になったのか、誰かが仕組んだ事なのかどうなのか最後まで不明のままである。
しかし絵美の場合理由がはっきりしているが、だからと言って解決にはならない。なぜならこの次元に来る原因となった敵を倒してしまったのだ。
自分から帰る手段を絶ったようなものだが、元からシルバドライブの有無は帰る手段に繋がらない。だって絵美を連れて帰ってくれるなんて、格安の釣り餌と釣竿でクジラを一本釣りするくらいあり得ない事なのだから。
「となれば一時は教会で預かって、イストワールさんとイースンに頼んで絵美を元の次元に帰す方法を探って貰うしか────」
言いかけたその時、
『いいえ、その必要は無いわ』
その声は突然響いた。
「────ッッッ!?」
あまりに突然過ぎて度肝を抜かれたようにビクッと震えたヒロムは、すぐさまバッと声がした方向、右へ顔を向けると、
『ごめんなさい。驚かせるつもりは無かったのだけれど……』
そこに一人の女性が”浮いていた”。
その容姿は、その一本一本が黄金であるかのように輝き後ろに流れる金髪に、特徴的で神聖な雰囲気を醸し出す純白の衣を身に纏っている。
「………………あんたは?」
『私は始まりの女神。その子……絵美達を見守る者よ』
そう名乗った。言葉の一つ一つが上品であり神々しさが沸き立つような、まさに真正の女神とも言える女性。
しかしヒロムはそんな女性に対して内心で疑問が浮上しまくっていた。
「(なんなんだこの人……?鎧武のオルタナティヴ舞に似てるけど、何故かパープルハートを連想してしまうような……)」
見た目は間違いなくあの鎧武に出てきた”はじまりの女”にくりそつである。しかし何故だか顔立ちや佇まいがパープルハートに似ている気がする。
なんの前触れもなくいきなり現れた謎の女性。
絵美を見守ると言っていたので敵ではないだろうが、だからと言って味方とも限らない。
ヒロムが目の前の神秘的な女性に対して訝しむような瞳を向けていると、女性はヒロムに向けて慈愛に満ち溢れた微笑みを浮かべる。
『ありがとう、その子を助けてくれて。そして何より、その子が成長するきっかけを作ってくれて』
「……俺はただ偶然絵美を見つけて一緒に戦っただけ。そして絵美がさらに成長出来たのは、絵美自身の強い意志が成し得た結果だ」
注視すると顔の赤面度が急上昇する程の美し過ぎる微笑みに対し、ヒロムは思わず視線を逸らしながらぶっきら棒に応える。
そんなヒロムの反応に、クスッと上品に静かな笑いを漏らす女性は、ヒロムから絵美へと視線を変える。
『その子は私が元の次元に連れて帰るわ。私にはあらゆる次元を行き来する力があるから』
「…………そっか。じゃあこれでお別れか」
女性の申し出にヒロムは素直に受け止める。その言葉に確かな説得力を感じた。それに見ているだけで感じ取れる。
このはじまりの女神さんは只者じゃないと。ネプ子達とは比べ物にならないと。
だから素直に受け止め、絵美との別れを寂しく思う気持ちを募らせる。
「あっ。シフトヴァルキリー、ちょっといいか?」
しかし途中でふとアイディアが浮かびシフトヴァルキリーに声を掛けと、シフトヴァルキリーは絵美の手に収まったままサウンドを鳴らして応答する。
「お前に俺のメッセージを込めた魔力を乗せたい。それで絵美が元の次元で目を覚ましたら、その魔力を絵美に送るようにイメージしてくれ。そうすれば絵美に俺からのメッセージが伝わるはずだ。頼めるか?」
問いかけると、シフトヴァルキリーは返答の気持ちを車体を上下させながら伝える。
遠慮無く引き受けると了承してくれた。
「ありがとう。じゃあさっそく……………」
シフトヴァルキリーを無意識に握る絵美の手に自分の右手を重ねて瞳を閉じ、意識を集中させる。絵美に伝えたい言葉を魔力と共に送り、シフトヴァルキリーに乗せる。
「…………よし、これでオッケー。じゃあ後はよろしくな、シフトヴァルキリー」
メッセージを送り終わり目を開けたヒロムは再度シフトヴァルキリーに頼み込んだ。
これであとは、絵美が自分の次元に戻り目を覚ました時にシフトしてヴァルキリーからヒロムのメッセージが伝わるはず。
『………もう大丈夫かしら?』
「あぁ、すいません。それじゃあ……絵美をよろしくお願いします」
心残りを解消した所で、傍観していたはじまりの女神が確認の声を掛け、ヒロムが応答する。
すると突然、絵美の身体がフワッと宙に浮いたかと思うと、はじまりの女神の元へ浮遊して行った。
おそらく念力の類で浮かしているのだろうと推測するヒロムは、それと同時に元の次元へ帰ってしまう絵美に対して切なげな表情を無意識に浮かべる。
もしかしたらもう会えないかも知れない。そんな想いを抱いたから。
『そんなに悲しむことも無いわ』
「えっ……?」
しかし、まるで見透かされているかのように口にしたはじまりの女神の言葉にヒロムは唖然と固まる。
『きっとまたこの子に……それに、貴方の親友である赤い勇者の子にも会えるわ』
「ッ……!?待て!あんたなんで”宗谷”の事を……!」
思わず愕然とするヒロム。はじまりの女神は確かに言った。赤い勇者でヒロムの親友と言えば、それはヒロムの次元を超えた絆で結ばれた同士、”天条宗谷”以外に該当しない。
では何故、はじまりの女神は宗谷を知っているのか、何故自分と宗谷が親友同士なのを知っているのか。
新たに疑問が浮上する中、はじまりの女神は慈愛に満ちた微笑みに加え、ヒロムに懇願するように言葉を紡ぐ。
『私は貴方の事も見守っているわ。そしてもし、私の妹達と、彼に脅威が迫った時、赤い勇者の彼と………貴方にも力を貸して欲しいの』
「…………それで絵美と……宗谷にまた逢えるのなら……こんな俺が役に立つなら………………やってやる」
その脅威というものがどれ程強大なのかは分からない。見知らぬ謎の女性に検討し辛い願いを求められては普通なら簡単に引き受けないだろう。
だがヒロムの場合は違う。その頼みを受ければまた宗谷と絵美に会える。ならば受けるに値する。そう判断した上で回答した。
そんなヒロムの返答を受け取ったはじまりの女神は満足そうに笑みを浮かべると、突如として背後に灰色のオーロラが出現する。
ヒロムはそのオーロラを見て目を見開く。アレは間違いなくディケイドからずっと登場する、世界や次元を超える際に使用されるオーロラだった。
『本当にありがとう。貴方が絵美を助けてくれたこと、心から感謝するわ』
はじまりの女神は何処までも慈愛に満ちた微笑みで感謝の言葉を述べるとヒロムに背を向け、灰色のオーロラに向かって浮遊して行き、そのまま潜ると絵美と共に姿が沈み込み、オーロラが消えるとその場から姿を消した。
「……………行っちゃったか……」
自分以外の者が居なくなりシーンと静まり返る空間の中、ヒロムはドッと脱力し、その場に身体を倒して仰向けに寝転がる。
「はあ……。結局、何だったんだあの人?力を貸して欲しいって一体……?」
最後まで謎多き人だったはじまりの女神。
仮面ライダー関連の者が使用出来る灰色のオーロラを使えるわ。何処かで自分の事を見守っているなどと言うわ。絵美の事を相当大事に思ってるわ。
何より”実体のある霊体”というゴーストと似たような状態だった事から、彼女が何か複雑な事情を抱えている事は間違い無い。
「仮面ライダーは普通に存在してた。これでもう、二次元の存在が完全になっちまったなぁ」
一人のオタクとしては歓喜物ではある。しかし関わると厄介なのが殆どである。
まあガチシリアス系やアンチ・ヘイト系に関わらないだけまだマシであると安堵するヒロム。
それにしても、はじまりの女神が言っていた妹と彼とは誰なのだろうか?
脅威が迫る可能性があるという事は、それ程猛烈な戦いに身を投じているのだろうか?
絵美も大いに関わっているようで、宗谷も関係を持っているのだろうか?
全次元を巻き込んでのグローバルフリーズの実現させる野望を持ったシルバドライブのような存在が就く強大な組織に。
「……………絵美………宗谷………。本当にいつか、また逢えるといいんだけどな……」
出来る事なら共闘を抜きにして、笑い合いながら楽しく遊べたらいいのに。
天井にポッカリ空いた大穴から漏れる青空の光景を眺めながら、そんな贅沢な願いを抱くヒロムであった。
……
………
…………
「…………………ぅっ………………んぅ……」
「ッ……!絵美、気が付いたのね!」
朦朧とする意識の中で響いたその声に絵美は反応した。
「……………ん……?………あれ……ネプ姉…………ぎっちゃん……?」
ゆっくりと瞼を開けると、少しぼやける視界に二人の女性、パープルハートとパープルシスターが自分を心配そうに見下ろす光景が映り込んだ。
「よかったぁ……!絵美ちゃん、無事だったんだね!」
「えっ……?…………えっと……あたしは……?」
安堵の表情を浮かべるパープルシスターに対し、絵美は状況の整理が遅れて口籠る。
さらに言うと、自分はどうやらパープルハートに膝枕をされているようで、彼女の豊満な”アレ”が至近距離に佇んでいた。
その時内心で軽く舌打ちしたのはまた別の話。
「貴女があの銀ピカと一緒に消えた後、私達二人で戦闘員と怪人をなんとか全滅させたわ」
「それで教会に戻って、消えちゃった絵美ちゃんを助ける方法を探ろうと思ってたら」
「いきなりあの灰色のオーロラが現れて、増援が来たのかと身構えたけれど」
「出てきたのは、倒れていた絵美ちゃんだったんだよ」
パープル姉妹による状況報告を受け、ここが自分がシルバドライブと最初の戦闘を行った研究施設内であることを認識した絵美は確信した。
自分はいつの間にか元の次元へ戻って来たのだと。
「ねえ絵美、一体貴女の方で何があったの?あの銀ピカがそう簡単に絵美を無事なまま帰すとは思えないのだけれど……?」
「っ……。…………それは……」
説明しようにも何処から説明しようか悩む。
だがそれよりも絵美の心には後悔が残っている。
それはもちろん、ヒロムに別れの言葉を一つも言えずに戻ってきてしまったことだ。
何より感謝の言葉だって言わずじまい。
大きな心残りを抱く絵美が黙り込む中、
「あれっ……?絵美ちゃん、そんなシフトカー持ってたの?」
「へっ……?」
パープルシスターのそんな言葉に絵美は素っ頓狂な声を漏らし、そういえばさっきから右手に何かを握っている事に気付き視線を向けると、
「あっ……シフトヴァルキリー……」
そこには新しい力となり、新たな仲間となったシフトヴァルキリーが確かに存在していた。
その存在は、ヒロムとの出逢いとシルバドライブとの激闘が夢でなかったことを裏付ける。
絵美がシフトヴァルキリーを見つめる中、
「ッ……!」
突如として、シフトヴァルキリーから伝わるように頭の中に何かが送り込まれた。
『絵美。またいつか会おうな?その時は仲間として共闘するんじゃなくて…………友達として一緒に遊ぼうぜ!』
「……………………今のって……?」
確かに聞こえたヒロムの声。しかし周りに彼はいない。それに何だか、心に直接響いたようであり、優しくて温かく、それでいて無邪気な気持ちも伝わったような。
茫然とする絵美はシフトヴァルキリーを見つめる。対するシフトヴァルキリーは軽快にサウンドを鳴らしながら満足気に車体を動かしていた。
もしかしたら今のは、ヒロムが自分に向けて残したメッセージだったのかもしれない。
いつかまた、再会できる事を願っての。
「……………あははっ……」
「………?絵美、どうかしたの?」
何の前触れもなく笑い出した絵美に若干困惑気味なパープルハートが問うと、当の本人は嬉しさに満ちた笑顔を浮かべながら、敢えてこう口にした。
「うん、ちょっとね。…………また会いたい友達が出来たんだ」
……
………
…………
こうして嵐の仮面ライダーの妹である音速の仮面ライダーは。
兄とはまた違った絆を結び。
弱さを受け入れ、強さを高め。
そして新たな進化へと至った。
────ヒーくん。絶対にまた会おうね。お礼はその時に、だよ♪
……
………
…………
Final Chapter The END !!
っというわけで終わりだぁ!!
いかがでしたか?ハーメルンでの自分が書く本格的なコラボというわけで気合を入れましたよ。はいちゃんと入れましたからね!時間はかなーり掛かったけど……。
そして登場シフトヴァルキリーとヴァルキリーマッハ!
ええはい、これがソルヒートさんとコラボした根本の理由なのですよ。
ドライブが終わってから唐突に浮かんだマッハのオリジナルフォームをどっかで出せないかな〜っと思っていました。
そんな中で交流してるソルヒートさんの作品にマッハがいる。しかも女の子。
イメージしたオリジナルフォームにもぴったりだと思い相談。
快く了承。ならば後は簡単。コラボするっきゃない!
っというわけでコラボしました〜。
さて、ヴァルキリーマッハのイメージが出来ない人もいるでしょうしモデルを言います。
ギルティギアのジャスティスです。
最初は名前通り呼び名をジャスティスマッハにしようかと思いましたが、それだとジャスティスハンターと被るし、白宇宙さんとこのクロスジャスティスと被るので、安直にヴァルキリーにしました。戦乙女だから。
あとサウンドについては、新次元ゲイムネプテューヌVⅡのBGM『URANUS』をイメージしてます。だってギルティギアイグザートのBGMと丸被りだし。
髪伸ばした仮面ライダーなんてあんまり居ない上、絵美ちゃんは女の子なんだから変身状態に女性感が出るものがあってもいいじゃないかと思ったこのアイディア。
ちなみに戦闘には出てませんがあの髪、伸縮自在で鋼鉄ワイヤー並みの硬さで蛇みたいに攻撃出来ます。
まあ詳細設定については後でまとめた上、簡単な立ち絵描いて投稿しますので。
それとお気付きの方がいるかは分かりませんが、ヴァルキリーマッハはソルヒートさんの本編にも登場します。っというか最終形態として扱ってくれるそうで。
まあそんなこんなでこれにてコラボ閉幕!
一時は読む専に戻りますので、やっと他の作品に感想が書ける……!
ではでは短いあとがきですがこれにて!
訂正や指摘とか書いてくれるとありがたく、普通の感想を書いてくれるとメッチャ嬉しかったり。
自分の考えた文脈に矛盾や違和感がないか気になるし……。
まあとにかく感想お待ちしております!
読んでくれたあなた!最後まで読み切ってくれて、ありがとうございました!
【挿絵表示】