遊戯王 振り子使いの少年と連鎖使いの少女 〜番外編〜 作:DICHI
遊輝 side
「お〜い桜、何処にいるんだ?」
車椅子を腕で動かし、部屋の中を駆け回る。リビングとかの細かい段差は勢いとブレーキの技術を使って乗り越えていく。
「桜〜・・・・あっ、そう言えば奏の店に行くって言ってたな」
リビングを1周して見当たらないと考えていたら、今朝言われたことを思い出した。確か『奏の店に行く』って・・・・
「昨日病院行くから手伝ってくれって言ったのに・・・しょうがねぇか。えっとスマフォっと・・・アリアも用事があって無理って言ってたし、奏も店だろ、響は助っ人でレミと茜は仕事、となると・・・・」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「で、俺に頼んだわけか」
「悪いな、本当ならアリアか桜に頼んでいるんだけど」
「気にするなよ。まだ両足完治してないんだろ?それに今日は俺も休みだったし」
俺の家に来てくれたスバルが俺に乗っている車椅子を押し、一緒に玄関を出る。これからリハビリのために病院に行かなくちゃならない。一人でいけなくもないけど、時間がどうしてもかかってしまう。なのでサポートをお願いした。
「まったく・・・桜は何で奏の店に行くんだろ・・・」
「アレじゃねぇか?明日バレンタインって言っていたし」
「んあ?ああ・・・そういえばそんな時期か」
もうそんな時期なのか、早いなあ・・・・それでスーパーでチョコの特売とかやっていたのか。そんな事思いつつ、エレベーターに乗って下に降りる。
「ってことはアレか?今チョコでも作っているのか?」
「そうじゃね?奏の店で」
「良いのかそんな事して、店営業中だろ」
「俺に聞かれても知るかよ。よっと、じゃあ病院まで行くぞ」
「頼むから走らないでくれよ〜。この状態で走られたらマジでビビるから」
そんなたわいもない会話をしつつ、俺とスバルは病院に向かう。とりあえずそうだな・・・明日はアリア辺りの付き合いが大変になりそうだ。
〜(翌日 放課後)〜
「うっす〜」
「お疲れ〜遊輝」
今日も授業が終わって放課後、いつもの部室に向かう。足はまだ治ってないが、手は動かせるのでギターの練習だけはしておこうと思う。こういうの1回離れたらすぐに忘れるから。
「そうそう、これ全部遊輝宛〜」
「ん・・・・!?な、何だこの量!?」
レミが俺の後ろの方を指差してきたので車椅子を回転させる。そこに飛び込んできたのは大量に積み上げ・・・いや、さすがに大量ではないな。机いっぱいに積み上げられた小袋の山だった。
「何コレ!?どういう事!?」
「それ全部遊輝のチョコ」
「いや、多すぎ!?何で!?アカデミアの生徒から!?」
「違う違う、遊輝のファンが郵送で私の会社に送ってそれを今日、アカデミアに持ってきてくれたわけ。私たちの分もあるけど遊輝が一番多かった」
「何で!?奏とかの方が人気あるだろ!?」
「あれだよ。『早く元気な姿を見たいです』とか『一日も早く治してください』とかそういう事」
あ、ああ・・・・励ましの言葉ね。ありがたいんだけど、俺、こんなにチョコいらないぞ・・・
「っていうかどうやって持って帰ろう・・・さすがに運びきれんぞ」
「後ろの鞄は?」
「無理、いっぱいいっぱいだし、なんならギターケース背負ってる」
「ああ、じゃあ桜ちゃん辺りに連絡したら」
「・・・・しゃあないけどそうするか、桜に電話しよう」
ガラガラ〜
ブレザーのポケットからスマフォを取り出して桜に電話をかける。それと同じタイミングで部室の扉が開き、スバルや響達が入ってきた。
「お〜す」
「つっかれた〜、今日も授業終わったよ」
「そこに皆宛にチョコ来ているから持って帰って」
「えっ!?チョコ!?マジ!?」
「あ〜本当だ。誰から?」
「ファンの方々から」
「へぇ〜、ありがたいな」
「私はちょっと・・・・」
「?どうしたの?」
「いや・・・昨日チョコケーキの試作をたくさん・・・(汗)」
あぁ、そういえば試作の時期か。いつもは俺と一緒だけどいるけど、こんな状態だから試食もいけないし。
「とりあえず各自で持ち帰ってね〜、手紙とか付いているのもあるから」
「よっと。リュックの中に詰め込めるかな?」
「袋持ってくるべきだったわ〜」
「じゃあ練習入るわよ。えっと、遊輝行ける?」
「まぁ何とか感覚は戻った。ただ、下半身が不安定だから激しいスライドとかカッティングは無理」
「そんな物そんな状態で求めないわよ。基礎さえできていれば良いわ。じゃあ久しぶりに合わせてみましょうか。響、3番の新曲」
「はいは〜い」
荷物を置いて、奏や茜はギターをかけ、スバルはドラムの前に座り、響はシンセサイザーに立つ。そのままシンセサイザーの設定をしてBGMが流れる。そのBGM途中でギター音を入れる。
♪♪♪〜〜〜♪♪♪〜〜〜♪♪♪〜〜〜
「(う〜ん・・・・・何かなぁ・・・・・)」
「ごめんストップ」
音を合わせている途中、レミがすぐにストップをかけて俺の方を見てくる。
「どうしたの遊輝、何か音迷ってるけど」
「いや〜・・・・なんか違うな〜って、何だろう、こう・・・・最初にやった時とこの曲のイメージが違う気が」
「アァ・・・・そう思ったら沼にハマるわよ。深〜い沼にハマって抜け出せなくなるわよ」
「えぇ〜・・・・・」
音合わせに感じた違和感をレミにそのまま伝えると、沼にハマったと言われた。いや、まぁ・・・2ヶ月近く離れていたからそう思っても仕方ない部分はあるかもしれないけど。
「けどなぁ・・・じゃあこのモヤモヤを今取り除けるかっていうと」
「まぁ良いわ、この曲はまだアルバムに入れるつもりないしお蔵入りにしておくわよ。何か思いついたらまた教えて」
「悪い」
「じゃあ気分転換にカバーの練習でもしましょう。ほうね〜・・・・歌える?」
「まぁ歌えるけど」
「桜会」
「それなら大丈夫」
「じゃあギターっと」
奏がエレキギターからアコースティックギターに持ち変える。俺もエレキギターを外してっと・・・
「・・・ごめん、アコースティックギター貸して」
「持ってきてないのね・・・・はい」
「悪い」
お気に入りのブルーフラワーを外して茜からアコースティックギターを手に取る。軽くチューニングをして音と弦を確認する。
「・・・・よし」
「良いわよ」
「じゃあ桜会から」
♪♪♪〜〜〜♪♪♪〜〜〜♪♪♪〜〜〜
バン!!!!
「遊輝ちゃん!!!」
「!?な、なに!?」
「ア、アリア!?ビックリした!!!」
桜会の伴奏が始まってまもなく、突如部室の扉がバンッ!!と大きく音を立てて開く。俺たちはビックリして扉の方を見るとアリアが立っていた。
「ってか何でお前ここにいるんだよ!?アカデミアの来客は許可いるんだぞ!?」
「許可なら校長から顔パスで通ったわ!私はツアースタッフですって言って!」
「平気で嘘つくな!」
「嘘じゃないもん!!私次のツアーから衣装アーティストとしてスタッフ入りするから!!」
「校長先生・・・・・」
アリアの言葉を聞いたレミは頭を抱えている。こういう奴を一人でも通すと次から次へと雪崩やのように人がやってくる(主にマスコミ)ので、レミは校長に誰にも通さないように話を通しているのだが、相手が悪かった。
「っで、何できたんだ?」
「そうそう〜!はいこれ!バレンタイン!」
アリアは鞄の中からピンク色の包装紙を取り出して俺に渡してきた。俺はそれを受け取る。
「バ、バレンタインって・・・わざわざここまで来て渡すものか?別に帰る時でも家でも良いじゃねぇか」
「良くないよ!帰るときは遊輝ちゃん囲まれるし、家には桜ちゃんがいるから!私のチャンスはここしか無いの!」
「ここしか無いって・・・あのな、俺一応遠距離恋愛の彼女がいるんだが」
「関係ないね!私は遊輝ちゃんを振り向かすから!!じゃあね!!」
そう言ったアリアは部室から出て行った。なんだあの嵐みたいな去り方は・・・・
「もう〜ビックリした〜」
「心臓に悪いぞ・・・ああ・・・」
「集中力切れた〜、ちょっと休もう〜」
「そうね・・・・合わせは後にして個人練習にしましょうか」
レミのその掛け声で響は「やったー!」と声を出してキーボードから離れた。個人練習ねぇ・・・どうせアコースティックギターかりたんだからそのまま適当に練習して何か詞でも考えるか。そう思った俺は鞄を取るため車椅子を動かす。
「よっと・・・・・ほっと」
「ところで遊輝の足って今どんな状況?」
「ん?えっと・・・もう1週間くらいしたら松葉杖に変わるかな〜?」
「ほへ〜、あんな大怪我で両足切断だったかもしれないのに、相変わらず遊輝っちの回復力は異常ね」
「これでも今回は大分参った。生命力自体が弱まったから回復するのに時間がかかってしまった」
いつもの感じで考えたら1週間〜10日ぐらいだけどなぁ・・・まぁ医者から焦らないようにって言われて、ライブも何もないから俺自身もゆっくりしようと考えたし。
ガラガラ〜
「・・・・お兄ちゃん」
「?・・・・桜?」
鞄からノートと筆箱を取り出したタイミングで再び扉が開く音が聞こえる。そっちの方に振り向くと今度は桜が立っていた。
「どうしたんだ?」
「これ、プレゼント」
桜がトコトコとやってきて俺の膝の上に白い包装紙を置く。
「・・・・これは?」
「バレンタインのチョコ。お姉ちゃんが『好きな男の人に愛しているという気持ちを込めて渡すもの』って言ってた」
「・・・・・・・はっ?えっ?」
「私にとってお兄ちゃんは大切な人。だからチョコ渡す」
それだけを言って桜は部室から出て行った。
「・・・・・・・・・・・」
「hu〜hu〜!!モテる男は違うね〜!!」
「遊輝を本命と思っている人が3人もいるなんて羨ましいわね〜」
「・・・・・いや、桜は絶対意味分かってないだろ?」
「そうか〜?案外本気かもしれないぞ〜」
後ろでからかってくる響は置いといて、俺は率直なことを言ったらスバルにそんな事を返された。
「いや、でもな〜・・・・・あいつのことだからホワイトデーの時に倍返し要求されそう・・・」
「そんなこと言ってないで早く桜ちゃんの開けてみたら?」
「えっ?ここで?」
「良いじゃん良いじゃん!早く中をみよう!」
レミと響に急かされる形で俺は桜から貰った白い包装紙を解く。上に結ばれた白いリボンを取り外すと中にはチョコのカップケーキが入っていた。
「へぇ〜、桜ちゃん良いセンスしているわね。これ、奏が手伝ったの?」
「そうよ。最初はぎこちなさそうだったけど」
「良いねぇ良いねぇ!」
「お前は何様だよ、ん?」
カップケーキの横に白い小さな紙があったのでそれを手に取る。チョコのケーキで少し汚れた紙を広げる。
「・・・・・・・・・・・・」
「何!?何書いているの遊輝っち!?」
「いや・・・・お前らには見せねぇよ」
「えぇ!?何で!?」
後ろから茜が覗き込もうとしたが俺はそそくさに紙を畳んでポケットに突っ込んだ。
「見せてよ〜」
「うるせぇ!!さっさと練習に戻るぞ!!」
「お前が練習って口にするあたり、よっぽどのことが書かれいたんだろうなぁ」
「うるせぇスバル!!」
ニヤついた顔で俺に向かって言ってくるスバルに俺は喝を入れた。
お兄ちゃん、今までありがとう。これからもよろしく
そして・・・・・・・好きです。 桜より