遊戯王 振り子使いの少年と連鎖使いの少女 〜番外編〜 作:DICHI
このお話はフィクションです。実在する人物も存在しますが、作者の妄想を膨らませただけのエイプリルフール企画です。
年に一度のエイプリルフール、怪盗アリアと遊輝の出番がやってきました。
今回は2004年に発売されましたPS2のゲーム、『ルパン三世 コロンブスの遺産は朱に染まる』を元に所々改良しております。YouTubeに流れていますが、非常に面白い作品です。
そのおかげでだいぶ長くなりました(汗)。これでも元の話から2〜3割削りましたが、まさかの前中後編の三部作です。多分、これから先これ以上長くなることはありません・・・・・
怪盗アリアと遊輝
孤児院生まれの貧乏育ちの世界最強の怪盗コンビ。
アリアは魔法使いで盗みのスペシャリスト、遊輝は刀を操り、ハッキングのプロ。
普段はコンビで活動している二人だが、今回の任務はどうやら単独のようで・・・・
怪盗遊輝
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怪盗アリア
【挿絵表示】
氷川絢刑事
日本人の女性刑事、数年前から怪盗アリアと遊輝のコンビ専門刑事として日夜二人を追っている。過去に二人に助けられた経験が?
遠藤桜刑事
期待の若手女性刑事、氷川刑事を師と仰ぎ、並々ならぬ思いで怪盗アリアと遊輝を捕まえようとしている。
それは、あり得たかもしれないパラレルワールドの世界・・・・
もし、前世で孤児院暮らしをしていたアリアが遊輝と一緒だったら、もし二人が亡くならず転生していなかったら・・・・・・・・
アメリカ、カリフォルニア州キングス郡にある刑務所。
ここには強盗や殺人などで凶悪な犯罪者が収監されている。その特徴は最新鋭のセキュリティを備えたアメリカでも優秀な警戒度・・・・・レベル5の刑務所だ。
ゴロゴロ・・・・・
時刻は夜の9時、集団監獄の入り口の扉が横に開く。こんな時間だが今日もまた、新たな収監者がやってきた。制服を着た看守に囲まれて、猫背で身長が低い40〜50代の男のようだ。髪の毛は黒いがぶっきら棒にはやしている髭は少し白い。
「ほら、入れ」
看守たちに連れられて、男は自身の牢屋へと入る。看守は扉を閉め、セキュリティに電子ロックをかける。
「明日から仕事についてもらうからな」
「へいへい、看守さんや。トイレは何処だ?」
「その隅だ。シャワーは毎日5時からだ。まぁ今日の分は終わっているが」
「へいへい」
「んじゃな。ったく、爺があの歳で銀行強盗でこの監獄とは、世間は狂ってるな」
看守たちはその男性との会話を軽く切り上げる。集団監獄の入り口の扉に鍵が掛けられる。看守たちが監獄が出ていったのを確認した男はニヤリと笑い、右耳に右手を当てる。
「・・・・おう、アリア。潜入したぜ」
『センキュセンキュ。助かるわ、次のお宝は兎にも角にも情報が必要だから』
男は右耳に隠された通信機を使い、外にいる者と連絡を取る。
『どう?セキュリティのレベルは?』
「何の何の、俺を誰だと思ってる。これくらいのレベルは余裕だ。それより、あいつの居場所はわかるか?」
『残念ながら詳しい場所は分からなかったわ。ただ、独房に入れられていることは分かった」
「独房か、なら大丈夫だ。この監獄の独房はこの建物の上にしかない。入所前に説明を聞いたからな」
『行ける?』
「今からだったら行ける。明日の夜にはまた連絡できる」
『了解』
通信を切った男は猫背の状態から背筋を伸ばす。そしてカツラを取り、トイレの手洗い場で顔を洗う。男の本来の姿に戻った。男の名は怪盗遊輝、彼はとある目的のため、この刑務所に犯罪人に偽装して侵入した。
「さて・・・・・やりますか」
牢屋に閉じ込められている彼は何の苦労もなく、牢屋の電子ロックに触れて解除する。忍足で歩き、周囲を観察して牢屋から出る。
「(目標は・・・・屋上の独房、『善意の間』)」
刑務所の最上階、善意の間。
ここに一人の男が囚人として入れられている。彼は数年前、とあるタワーに侵入して捕まってしまった盗人のリーダーだ。彼はベッドの上で座禅を組み、精神を集中している。そんな彼の目の前に女性の姿が写った写真が写真立てに入れられている。
「・・・・・・・・・・・誰だ」
「さっすがアメリカのスパイダーマン、グール。俺の存在に一瞬で気づくとは」
瞑想中の男は目を開き、自身が囚われている部屋の入り口を見る。決して開けられることのない扉には腕組みをして壁にもたれかかっている遊輝の姿がいた。
「フン・・・・新しく入ったと噂を聞きつけたらお前だけか。あの女は?」
「今回のお宝の情報を集めている。無論、俺もあんたに用事があってここにきた」
「若造が老いぼれに何のようだ」
「分かるだろ・・・・あんたが潜入したタワーと獲物についてだ」
「・・・・・・・ゲートタワーとコロンブスの航海日誌か」
「せいか〜い!!!!」
遊輝はポケットから超小型の記憶媒体プレイヤーを取り出し、それを壁に映し出す。そこに映し出されたのは数百メートルまで貫くタワーの地図だ。
「あの日、『仮面の斥候』はコロンブスの日誌を盗むため、リーダーのあんたがゲートタワーに潜入。外から操作するセキュリティビルにも潜入してゲートタワーを登り詰めた。そう、何もかもが完璧な計画だった。だが、屋上の一歩手前、あんたは待ち構えられていた警備兵に捕まってしまった・・・・・・・俺が聞きたいのはここだ。完璧だった計画、あの日、何があった?」
「・・・・・・・・フン、つまらないミスだ。口にしたくもない」
遊輝は真剣な表情で男に問いただしたが、男は軽く鼻息を拭いて顔を背ける。その表情、仕草を見た遊輝は複数の考えを頭に浮かぶ。
「(・・・・・内部の裏切りか)良いぜ、俺もそういう人に言えないミスは沢山してきたんだ。あんたのその答えだけで充分だ。これは礼だ」
記憶媒体プレイヤーの電源を切った遊輝はポケットに入れ、かわりに紙を取り出して男に渡す。
「・・・・・・・・・・」
「ここから出た時に銀行に行ってくれ。最低限の金は用意した」
「そうか・・・・なら俺もお前に対価を渡そう」
男は立ち上がり、写真立ての前まで移動する。写真立てを手にとり、裏側のロックを解除して一枚の紙を取り出し、遊輝に渡す。
「・・・・・これは?」
「弱者の館に行ってみろ。全てわかる」
男は写真立てを元に戻し、扉の方を見る。そこに遊輝の姿は既にいなくなった。男は写真立てに写った女性を見る。
「・・・・・・・・お前は、まだ操り人形のままなのか?」
「アリア、情報を得た。今から脱出する」
『OKOK、道具は?』
「現地調達。そんな事しなくてもなんとかなりそうだけど」
『警備全てを電子ロックに頼るなんて馬鹿だよね〜。人間がいなくなったら終わりだよ』
「それじゃ・・・・3時間後」
『了解』
情報を得た翌日の夜、遊輝はアリアとの通信を終えて牢屋の入り口の電子ロックに手をかける。時刻は深夜0時を過ぎたところ、見張りの警察官はいなくなり、このエリアは防犯カメラと電子システムによる警備に変わっていた。
「さて・・・・赤外線センサーは無し、廊下あたりで出そうだな」
赤外線センターが見えるゴーグルをかけ、遊輝は電子ロックのかかった牢屋の扉を開ける。そのまますり足で牢屋を出る。
「(この時間のザルは・・・・・・警備棟の真下、旧ゴミ焼却炉だ)」
ここに潜入する前にこの刑務所の地図、また刑務所の時間や警察官の一人一人の習性を徹底的にたたき込んだ遊輝は己の記憶だけを武器に脱獄にかかる。多くの囚人が寝ているエリアを抜け、囚人達と廊下を繋ぐ扉の電子ロックも解除、廊下へ抜ける。
「(・・・・赤外線センターは無し、防犯カメラに頼りっきりか。これで世界最高峰の刑務所か、聞いて呆れるぜ)」
不適な笑みを浮かべた遊輝は少し駆け足で駆けていく。防犯カメラの位置も頭に入っているのか時々走る場所を変えながら走り抜けていく。そして、牢屋練と外の境界の扉が目に入る位置に入る。曲がり角の角に立ち、扉と近くにある防犯カメラを見る。
「(・・・・確かここが最難関だったな。普段はなんて事ない暗証番号だが、警備がザルのこの時間だけ指紋認証に変わるって、結局、その指紋が誰か分からないままだったが・・・・・)まぁここまで来れば駆け抜けたらいいか」
そう呟いた遊輝は軽い身のこなしで扉の前まで移動、すぐにポケットに入れている小さなタブレット端末を取り出し、コードを取り出して扉横の暗証番号を打ち込む機会に差し込む。タブレット端末に緑色の画面が映り、様々なコードが読み込まれ、扉のロックが解除された。
「ニシシシ、チョロいチョロい。さて、30秒後に警報機が鳴るな」
・・・・ウィーーン!!ウィーーン!!
そう言った遊輝はそそくさと扉から出る。その数十秒後、刑務所に警報機が鳴り響く。暗く染まった刑務所が一気に明かりが着き、当直していた刑務官が慌ただしく廊下を走る。
「一体どうした!?」
「おい!!南門の扉が突破されている!!」
「大変だ!!昨日収監した爺が脱走しやがった!!」
「何だと!?すぐに探し出せ!!」
ウィーーン!!ウィーーン!!
刑務所内、そして外にも鳴り響く警報機。刑務官が慌ただしくなる。牢屋にいる囚人たちも何事だと起き出し、騒ぎだす。
「うるせぇ!!!」
「眠れねぇじゃねぇか!!」
「テメェらは黙ってろ!!全員黙って座ってろ!!」
一部の刑務官は騒ぎ出した囚人を大人しくさせる。残りの刑務官は逃げ出した囚人を探し出す。日付を跨いだ深夜0時、多くの照明が照らし出す。その様子を警備棟の屋上から見ている奴がいる。
「クソ!!どこに逃げやがったあの爺!!」
「向こうの倉庫は!?」
「いねぇ!!グラウンドは!?」
「・・・・馬鹿だな〜。俺はもうここにいるんだよ。さて、それじゃここから出ますか」
そう言って遊輝は簡易的のカイトを手に取る。二、三歩下がった後、走り出して、壊して台と化したフェンスから飛び出す。その飛び出したタイミングで刑務所のライトが彼を当てる。
「ヒャッハー!!!」
「おい!!!あれ見ろ!!!」
「あれは・・・・怪盗遊輝!!!」
「じゃあな税金無駄遣い者!!!お前ら良い夢見ろよ!!」
そう言った遊輝はポケットから取り出し、何かを投げつける。それが地面に着いた瞬間、爆発を起こして煙が上がる。
「ゴホッ!!ゴホッ!!」
「く、くそ・・・目、目が見え・・・・」
「な、何だ・・・急に眠気が・・・・」
煙を浴びた刑務官がバタッ、バタッと倒れていった。
『おはようございます。さて、本日のトップニュースです。今日深夜0時過ぎ、カリフォルニア州キングスのコーコランの刑務所から囚人一人が脱走する事件が発生しました。当局の発表によりますと、脱走した犯人は捕まった当時、ダーレル・クリムゾン容疑者53歳としていましたが、一部の刑務官の話によりますと脱走したのは変装した怪盗遊輝だと話しており、混乱を極めております。カリフォルニア州警察は・・・・・』
「ふわぁ・・・・」
「おはよう遊輝ちゃん。朝飯作ったわよ」
「センキュセンキュ。いや〜拘束時間27時間はブラック企業だわ。」
カリフォルニア州サンフランシスコ、郊外の住宅街が並ぶエリア、ここに豪邸とも呼べる一軒家に二人の若い男女が住んでいる。歳不相応の若さで過ごす二人は一見普通の夫婦にしか見えない。男性の方は白Yシャツにネクタイをして、少しグリーンの入った会社の制服っぽいズボンを履いている。一方、女性の方はジーンズに白のシャツを着て赤いライダージャケットを着ている。
彼らは怪盗アリアと遊輝。世界中を跨ぐ怪盗コンビとして世間に知られること早10年近く経つ。彼らの実績は本物、ある時はホワイトハウスの金庫から、ある時は世界一の警備と言われる銀行から、ある時は悪徳成金から美術品と悪行を盗み出したりと、折り紙付きだ。
「それで、弱者の館だったっけ?」
「そう、隠語だと思うんだけどな、そこに行ってこの紙の暗号を解けってよ。弱者ってどういう立場なのか」
「ふ〜む・・・・弱者・・・負け組ってことかしらね・・・・社会的負け組・・・・・」
「社会的負け組だとしたらアレか?この辺だと貧困層が多いイーストエリアとかあるが」
「あの辺でそんな怪しいものは無いわよ。負け組・・・・・・社会的負け組・・・・・孤児・・・・」
「孤児?何で孤児なんだよ?」
「いや・・・私たちの奇遇を考えたらそうじゃない。孤児の私たちは社会的弱者でしょ?それにこの近くにそれっぽいものがあるじゃ無い、孤児院が」
「・・・・・確かに、そう言えばそこのオーナーって」
『続いてのニュースです。世界一の警備会社、キング・オブ・セキュリティのゲート・セキュリティが所有している世界一の警備タワー、ゲートタワーに世界的大富豪、ハリソン財閥のオーナー、ハリソン・ポーターJr氏が飛行船で到着、チャリティオークションに向けての準備を始めました』
遊輝とアリアは何気なく流れている朝のニュース番組を見る。そこには年老いた白髪の穏やかなお爺さんがガタイが良い、パツパツのスーツ姿で金髪のおじさんと握手をしている。
『ハリソン氏は石油王として石油売買で多額の富を産んでいて、ゲート・セキュリティのオーナー、アンドリュー・ゲート氏とは友好関係を築いており、ハリソン氏の数々のコレクションをこのタワーに保管しています。今回はそんなハリソン氏の一部のコレクションがチャリティオークションとして出品されるということで非常に注目を集めています』
『今回、このようなチャリティオークションをするようになったきっかけとは?』
『私ももう70を超える歳だ。下手したらもう手で数えるほどしか生きていられない。今までは自分のためにとお金を稼いできたが、これからは子供達の未来に投資しようと思った。数年前から色々な場所に寄付してきたが、今回のオークションを通じて、多くの子供たちに夢と未来を持ってもらいと思ってな、それでオークションをすることにした』
『ハリソン氏はこのように発言しております。中でもこのオークションで目玉とされているコロンブスの航海日誌は既に一千万ドルを超える価値が付いており、ハリソン氏はこの金額全てを自身が経営する孤児院に寄付するとのことです』
ニュース番組にはオークションの目玉とされているコロンブスの航海日誌が映し出されている。中央には光り輝く透明な鉱石がエンブレムがある。
「コロンブスの日誌、ね・・・・そのマークとこのマークが一体どんな関係を持っているか・・・」
そう言って遊輝は一つの新聞を取り出す。日付は今より一月前の新聞、その新聞のトップは衝撃的なものだった。アメリカのホワイトハウスの地下にある原爆をも耐える核シェルターが謎のドリル付きミサイルによって粉々に破壊されて、貫通された写真だった。よく見ると、そのミサイルのマークと今回のコロンブスの日誌のマークが同じになっている。
「・・・・・ハリソンハウス、石油王、ハリソン・ポーターJrが運営する孤児院の一つだったな。なるほど、秘密が隠されていてもおかしくなさそうだ」
テレビを見て、ハムエッグを食べた遊輝はそう言い、コーヒーで流し込む。アリアはサラダを食べながら遊輝と話を続ける。
「可能性は高いでしょうね。実際、あの事件の前、ハリソンハウスにはグールの部下が侵入したって形跡があったしね」
「おっしゃ、じゃあ次はハリソンハウスって事だな」
「ハリソンハウスには私が行くわよ。遊輝ちゃんはこっちお願いね」
「えぇ・・・・またあの何ちゃってセキュリティ会社のコントロールセンターに会社勤めかよ」
「頑張ってねサラリーマン♪。それじゃ、私は先に行くから」
先に朝飯を食べ終えたアリアは食器をキッチンのシンクに持っていき、洗い物をして乾燥機に入れる。
「さて・・・・・お仕事を始めますか」
「ここがハリソンハウスね・・・・・また随分豪華な孤児院ことね」
サンフランシスコ郊外にある大きな建物、ハリソンハウスの駐車場に一台のオープンカーが入る。その運転席から出た女性、アリアはサングラスを外して、孤児院とは思えない豪華な建物に舌を巻いた。車から降り、長い駐車場を歩いて建物の入り口へと入る。大きく明るい受付には沢山のソファがあり、数人の大人が座っている。奥のエリアには多くの子供が走り回り、彼・彼女らを世話するスタッフが慌てるように追いかける。
「私たちもこんなに立派なところだったら人生変わってたんだろうな・・・・」
「ハリソンハウスへようこそ。里親になられるのは初めてですか?」
入り口に入り、ポツリとつぶやくアリア。そんなアリアに事務員のような服を着た女性スタッフがアリアのところに近寄ってくる。
「えぇそうよ。私も昔は孤児でね、今はお金があるから私のように苦労をかけさせないようにしようと思ってね」
「なるほど」
「その前にこの施設見学して良い?どんな子がいるのか見てみたいわ」
「かしこまりました。では初めにこちらの建物のご紹介をさせていただきます」
事務スタッフの事務的な言葉にアリアはうなづき、孤児院の中へと入っていく。
「こちらハリソンハウスは孤児院ですが、それだけではなく、病院や子供預かり施設を併せ持つ総合福祉施設であります。オーナーであるハリソン氏の『子供たちに苦労をかけさせない』という思いから、家庭を持つ子供から孤児の子まで多くの子供たちの家になることを目指しています」
「へぇ〜」
「きゃっ!!」
「こら!!走らないでよ!!」
元気な子供達はスタッフを困らせながら遊んでいる。その様子を見てアリアの表情はとても穏やかになる。
「(良いわね。子供達が苦労を掛けずに大人になるっていうのは分かるわ。あんな苦労、私たち二人だけで充分だし)」
「・・・・・と、このようになっております」
「ふぅ〜ん、凄いわねこの施設。じゃあ、見学させてもらいますね」
「はい、ぜひ、里親になっていただくのを心待ちにしております」
事務員は45度の角度で頭を下げて私から去っていった。
「・・・・さあて、仕事しますか。グールちゃんのメモっと・・・・・」
アリアはライダースジャケットに入れた小さな紙切れを取り出し、開く。そこにか書かれていた内容を頭の中で何度も復唱する。
「(エデンの園に禁断とされる果実あり・・・か、エデンの園に禁断の果実と聞けば間違いなくアダムとイブね。エデンの園か・・・・・・)」
アリアはキョロキョロしながら近くにあるこの孤児院の地図を見る。大きな平家の建物で、西側は子供達が生活をするエリア、東側は病院としての設備があるエリアとして分けられている。そしてその二つの建物をつなぐ廊下の間、ここに中庭がある。
「(・・・・ここがエデンの園かしら?とりあえず聞き込みをしながらここに向かってみましょうか)」
「ここがエデンの園か・・・・・確かに陽の光が入って素晴らしい中庭ね」
建物の中央にできた中庭を見渡すアリア。周りをキョロキョロとしながらまるで何かを探すような視線で見つめる。
「(さっき言っていた男性の言葉が気になるわね・・・・一箇所だけ床がガタガタとしていて、そこだけは絶対に直されない)ん?」
考え込むアリアは不自然な箇所を一つ見つけた。誰もこの場にいないかを確認してその場所にアリアは近づき、しゃがみ込む。そこは建物の壁だが、地面と接触する場所、ここに小さな正方形の切り込みと鍵穴らしいものが見つかった。
「ここね・・・・あとは禁断の果実か・・・・床がガタガタとしているって言うけど、この広い施設の中探すのは苦労するわね・・・・誰か詳しい人はいないかしら?」
「あ〜めんどくせぇな床掃除・・・・他の奴らは遊んでいるのに何で俺だけなんだよ・・・・」
立ち上がったアリアは中庭に入ってくる一人の男の子を見つける。ブツブツと呟くその男の子は凄い不満そうな表情をしている。アリアはその男の子の服を見つめる。
「(あの服はこの施設の寝巻きね・・・・ってことはこの施設のことを詳しく知ってそうね)」
「ったく・・・・床汚したのは俺のせいじゃねぇつうっの・・・」
「ねぇ僕、良かったらお姉さんが床掃除してあげるよ」
「えっ?」
「その代わり条件があるんだけど良いかしら?」
アリアはその男の子に近づき、代わりに掃除をしてあげると言った。普通、こう言う怪しい言葉には誘わないのが常識だが、この男の子はアリアの言葉に簡単に乗ってしまった。
「条件って何?」
「簡単な話よ。この施設に不自然にグラつく床が一箇所あるって聞いてね。その場所を教えて欲しいんだ」
「それだけ?それだけだったら良いよ。はい、これ雑巾とバケツ。床のぐらつく場所は西側の奥の方、遊具が入っている倉庫室の近くだよ」
「ありがとう、じゃあみんなと遊んでおいで」
「うん!!」
男の子はアリアにバケツと雑巾、そして情報を教えて笑顔で中庭から出ていった。アリアは入ったバケツと雑巾を中庭に置いた。
「西側の奥の遊具倉庫の近くね・・・」
「ここね。確かに不自然にグラついているわね。よっと・・・・」
男の子に言われた場所にたどり着いたアリアは不自然にグラつく床を見つけた。その場所の床を外す。その中にリンゴのマークがついた鍵が見つかった。
「これが禁断の果実ね。さて、エデンの園に向かいましょうか」
鍵を手にしたアリアは床を戻し、中庭へと戻る。中庭に入り、誰もいないことを確認したアリアは、先程の鍵穴の場所に鍵を入れる。カチッと音が鳴った鍵を時計回りに90度回し、壁を開く。その中に古くなっている紙を1枚があった。アリアはその神を手にして広げる。そこには巨大タワーの大きな見取り図があった。
「へぇ〜、ゲートタワーの地図ね。こんなものこんなところに隠していたのね。グールちゃんやるわね〜、うん?」
広げた紙を見て感心したアリアは広げた紙から落ちる一枚の小さな紙を見る。そこにはシュバインタワーの入り口の小さな建物に赤字で丸がされていた。
「ははぁ・・・・ここが入り口ね。こりゃ想像以上の収穫だわ」
ホクホク顔のアリアはその紙をジャケットのポケットに入れる。目的の物を手にしたアリアはそのままこの施設から離れることを決意、すぐに施設の入り口に戻る。その受付は多くの警備員が立っていた。
「(・・・・あれってゲート・セキュリティの警備員じゃない。何でこんなところに来たのよ?)」
「来た・・・・キャサリン令嬢よ」
「令嬢?」
入り口から一人の若い女性が入ってきた。施設の職員が女性に頭を下げて、そのまま施設の中に入っていく。女性が奥に入っていくにつれて、警備員もついていく。やがて警備員が全ていなくなり、受付はいつもの通りになる。
「凄い綺麗ね・・・さすがハリソン氏の令嬢だわ」
「ねぇ、あの人って誰?」
「えっ、ああ、初めての里親の人ですね。あの人はキャサリン・ハリソンであのハリソン氏の令嬢何ですの。ハリソン氏以上に孤児を大切にする人でとても優しいお方ですわ」
「ふ〜ん・・・・・」
「ところでお客様、里親の件は・・・・」
「すみません、施設を見学しましたが、私にはまだ子供を育てる自信が「そうですね。まずは罪を償うところから始めないと行けないですから」そう、まず罪を償うところ・・・・えっ?」
シュッ!!バシン!!
「捕まえましたよ怪盗アリア!!」
施設の職員と話していたアリアだが、途中で第三者からの声に驚く。次の瞬間、アリアの右手に手錠が掛かった。その先を見つめると黒スーツの服を着た女性二人組がアリアを睨みつけていた。周りはこの事態に追いつける野次馬が集まってきている。
「あれま、氷川刑事に桜刑事じゃない」
「ようやく見つけましたよ。犯罪者がこんな所で何をしているのですか?」
「何って里親になるかを考えていたからここにいるんじゃない。私何も悪いことしてないよ?」
「よくもまぁそんなことが言えますね。ここであなたの罪状言ってあげましょうか?」
「おい!あの女、怪盗アリアらしいぞ!!」
「マジかよ!?じゃあアイツら警察か!?」
「んもう、折角良いことしていたのに・・・・」
「大人しくしなさい!!貴方には署で聞きたいことがあるのよ!!」
「はいは〜い!!それじゃここにいる皆さんに特別ショーを見せてあげるよ〜!!」
『おおおう!!!』
「ここにただの木の杖があります!これをこうして振ると・・・・」
「!?桜!!」
「はい!!」
「えい!!」
アリアが左手に出現させた木の杖を横に振る。二人の刑事は私が何かすると感じ、桜刑事が走り出したが時すでに遅かった。
「!?ワアアアアアア!!!」
「!?桜!?」
『おおう!!消えた!!』
『どこに行ったんだ!?』
「きゃああああ!!!」
「!?さく」
ドオオオオンンン!!!!
杖を振ったことで走り出した桜刑事の足元に黒い穴が開いて、その中に落ちる。みんなが驚いた表情をして、氷川刑事だけが悲鳴を聞いて上を向ける。上には足元に開いたのと同じ黒い穴が開き、そこから桜刑事が落ちてくる。二人は頭から激突して倒れてしまい、桜刑事は気絶してしまう。
「で、この繋がっているロープ外して・・・・・こうやって投げると・・・・・」
アリアは右手首に挟まった手錠を左手に持っていた木の杖で鍵穴にさして外し、それに繋がっていたロープを回し、二人に向けて投げる。ロープは不可思議な動きをして二人まとめてぐるぐる巻き、マミィケーションにしてしまった。
「ちょ!?こ、これは!?」
『おおう!!!!』
「じゃあ今日のマジックショーはこれまでね〜」
『ワアアアアアア!!!』
「ま、待ちなさい!!」
アリアは笑顔で子供達に手を振り、施設から出てしまった。子供達は拍手と歓声を上げる。氷川刑事は声を上げるだけで何も出来なかった。
「は〜い遊輝ちゃん♪そっちの調子はどう?」
『昼休憩中に電話かけてくるな。折角の昼飯の時間を台無しにするな』
孤児院から車に乗って逃げ出したアリアは運転しながら遊輝に電話する。
『まぁほぼセキュリティセンターの構造やゲートタワーに繋がるシステムは把握した。後は起動時に誰もいないようにするだけだな。ザル警備で助かるぜ〜、パスワードは副社長の不倫相手だし、サボりばっかでパスワードの解読法盗めるし」
「こっちと違って順調そうね〜」
『ん?何かあったのか?』
「働き者の刑事が孤児院まで来てね〜、お陰で無賃でマジックショーしなくちゃいけなくなった」
『あ〜、それは確かに大変だな』
「その代わりちゃんと目的の物は手に入ったわよ」
『ああそうだ、思い出した。目的のものといえば、ゲートタワーに侵入するときにはセキュリティカードが必要なんだけど、そのカード、こっちでは手に入らなくてさ』
「えぇ〜、それが本当の目的なのに空振りなんて〜」
『その代わり、朝出社する前にグールの部下を捕まえて聞き込みした。グールのアジトにセキュリティカードを残しているらしい』
「おっ、ナイス遊輝ちゃん」
『イーストの低所得者が住む地域の廃屋がグールの元アジトでそこにセキュリティカードが隠されているらしい、ヒントは祝福の鐘だとよ』
「祝福の鐘、ね。了解」
『そんじゃ俺は昼飯に戻るぞ』
「ありがとうね」
ピッとボタンを押し、電話を切ったアリアはそのまま急ハンドルを切り、車を180度回転、反対車線に入り、エンジン音を鳴らして走り出す。
ギュルルルルルル!!!!!!
「ここが元アジトね、完全に廃墟だけど建物はまだまだ綺麗ね」
ウェスト地区の外れ、人々がいない木々の中にポツンと建てられた木屋の建物。ここに車が停車、アリアは運転席から降りた。
「さて・・・・何処から探そ、ん?」
人の気配がする。そう感じたアリアはすぐに物陰に隠れ入り口を見つめる。廃墟の門の扉が開き、そこに一人の女性が花束を持って入ってきた。アリアはその女性を見てすぐに頭を巡らせる。
「(あれは・・・キャサリン令嬢?何でこんなところに?)」
「・・・・・・・・・」
廃墟に入ってきた女性、キャサリン令嬢は何も語らず、寡黙に廃墟の中央にある何かのモニュメントまで歩き、膝を折る。そのまま花束を置いて祈り始める。
「(こんな汚いところに何で・・・・・ん?)」
サササササ
何か、足音の忍足の音が聞こえた。キャサリン令嬢が振り向くと、謎の武装集団6人が大型銃をキャサリン令嬢に構えていた。キャサリン令嬢はそれを驚いたような表情をした後、何かを悟ったように顔を下に向ける。
「裏切り者には制裁を・・・・」
ドドドドドドドドドド!!!!!!!!!!
武装集団は無防備なキャサリン令嬢に銃を乱射する。辺りは土埃と煙で見えなくなる。風が吹き、煙と土埃が晴れる。そこにいたのは驚いた表情をしたキャサリン令嬢と目の前に立っているアリアだった。
「なっ!?」
「レディ一人に向けて何やってるのよ、『仮面の斥候』」
「き、貴様・・・・」
「さ〜て・・・・ちょいとお仕置きしないといけないね!」
右手にピストルを持ったアリアはそのまま近くにいた武装集団の一人にツッコミ、腹に右足で蹴りを入れ、反対側の武装した人に銃を二発放ち、右足と右手に命中させる。
「ゴホッ!?」
「ガハッ!?」
「くそっ!!この女も始末しろ!!」
「フリージングブレス!」
アリアは左手に現れた木の杖を持ち、振る。武装集団の二人の足元から氷付き、やがて氷の像が出来上がる。
バン!バン!
バババババン!!!!
「はあ!!!」
「グハッ!!」
アリアは二発放ち、正確にその氷の像の左手の銃を破壊する。その間に残りの武装集団二人がアリアに向けて銃を乱射するがアリアはすぐに駆け抜けて銃を回避、そのまま一人の頭を殴りつける。男はすぐに倒れ、アリアはその男から大型銃を盗み、残りの男に照準を合わせて銃を乱射する。
バババババ!!!!!
「グハッ!!」
銃を乱射された男は右手を損傷、銃を離してしまう。すぐにアリアはその銃を奪う。これで、相手は丸腰になってしまった。
「クソッ・・・撤退だ!!」
最後に攻撃を受けた男は撤退を命令、生き残った4人はすぐに撤退、凍りついた像はそのまま取り残されてしまう。アリアは木の杖を振り、その氷の像を遠くに放り投げてしまった。
「大丈夫でしたか?」
「はい・・・・・ありがとうございます」
「まさかここでハリソン財閥の令嬢と再会できるとはね・・・・それにしても何でハリソン財閥の令嬢が何故ここに?貴方みたいな高貴な人には関係ない所でしょ?」
「・・・・・私はこの孤児院の育ちです」
「はっ?」
「・・・・・ここは昔孤児院でした。ただ、経営が上手くいかず、潰れそうなところを養父が引き受けてハリソンハウスに引き取ってもらったのです」
「・・・そうか、貴方はラッキーね。今では裕福に暮らせるんだから」
「・・・・確かにそうです。ですが、私みたいな子供には世界に大勢いらっしゃいます。そう思うと・・・・胸が痛くて・・・」
キュルルル
キャサリン令嬢と話すアリア、目の前の道路に高級車が一台到着、門が開かれ、ゲート・セキュリティの警備員が廃墟の庭に入ってくる。
「お嬢様、お時間です」
「迎えが来たみたいよ」
「・・・・・はい、そう言えば貴方は何故ここへ?」
「ん?ああ、ちょっと探し物をね。ここに祝福の鐘があるって聞いてきたの」
「祝福の鐘?・・・・あっ、もしかしたら教会の鐘のことかしら?」
「教会の鐘、ね。情報をありがとう」
「いえ・・・・これくらい先程の」
「大丈夫大丈夫。ほら、行きなさい」
「はい・・・・・・」
キャサリン令嬢はアリアに頭を下げ、門から出て高級車に乗り込む。警備員は運転席と助手席に乗り込み、車は動き出した。それを見たアリアは廃墟の方を見る。
「さて・・・・祝福の鐘を見ますか」
キャサリン令嬢を見送ったアリアは早速廃墟の中へと入る。中は荷物が散乱として蜘蛛の巣が貼っているが人は簡単に通れるくらいにある程度は整っていた。アリアは何の苦労もなく奥にある教会へと行き、鐘の前に着く。
「こいつね・・・・とりあえず鳴らしてみましょうか」
・・・カーン、カーン・・・・・
廃墟に鐘の音が鳴り響く。すると金の反対側の壁が動き出し、機械のスイッチが現れる。アリアはそのスイッチのところまで歩き、ボタンを押す。
・・・・・ゴゴゴ
スイッチを押すと上から天井が降りてくる。そこには上に行く秘密の階段があった。アリアはその階段を登る。階段を登った先には6畳ほどの小さな部屋があり、ボードには多くの紙が貼り付けられ、机の上には本が置いてある。
「なるほど、グールちゃんの隠し部屋ね・・・・おっ、セキュリティカードみっけ」
アリアは机の上に置いてあるカードを手にする。それはグールが作ったであろうゲートタワーの偽セキュリティカードだ。
「これで必要な物は揃った・・・・オークション日は5日後、その3前に再びハリソンJrの飛行船がくる。決行日は3日後ね」
「ただいま〜、あ〜疲れた・・・」
「お帰り遊輝ちゃん」
時刻は夜7時、制服姿の遊輝はビジネスバッグを置いて冷蔵庫からペットボトルのお茶を取り出す。
「必要パーツは全部揃ったわよ。3日後に決行するわ」
「OKOK、じゃあ上手くやって主要な従業員以外は来ないようにする」
「センキュー」
「それとアリア、気になるもの見つけたぞ」
「気になるもの?」
ペットボトルのお茶を飲んだ遊輝はビジネスバッグから一つの書類を取り出す。アリアはその書類を手に取り、一枚一枚を目に通す。
「・・・・これは?」
「オークションの参加者だ。一部は反アメリカ国家の軍人や政府役人、ほとんどは武器密輸商人に極悪犯罪者、反政府組織などだ」
「これ、本当なの?今回のオークションって歴史的遺産の物ばかりでしょ?」
「そんなの一部だ。ハッキングしたらオークションするのは武器や重要機関の施設の地図だ」
「・・・・・・・・・」
「チャリティオークションだと思ったけど、どうやらハリソン財閥とゲート・セキュリティ、ゲートタワーぐるみで何か隠しているぞ」
「・・・なるほどね。そうなると目玉のコロンブスの日記も何かあるわね」
「そういう事。グールが捕まったのもゲートタワーの秘密を知ったからかもしれんな」
「ふむ・・・・まぁ関係ないわ。予告上してくるね」
遊輝との話を終えたアリアはクルッと足を返し、リビングから出た。
次の日の新聞、全ての新聞のトップニュースはとあるニュースで飾った。
『ごきげんよう、ハリソン財閥とゲート・セキュリティ様。
去る△月○日、チャリティオークションに出品するコロンブスの日記を頂戴しに参ります。
怪盗アリアと遊輝』