新米支援系魔法士(エンチャンター)の日常   作:ぬえと

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第一章 イーリス大陸編
第一話 始まりの日


 

 支援系魔法士(エンチャンター)別名バッファーと言う職業(クラス)がある。

 戦闘において有利に戦えるように色々な支援魔法を仲間、自分に使うかなり有難い職業だ。

 

 一チーム八人前後で行われるダンジョンやボスでの集団戦闘(パーティー)ではバッファーはなくてはならない存在である。

 仲間の能力を一時的に引き上げる支援系魔法、敵の能力を一時的に下げる支援系魔法、様々な魔法を使いこなし更にはその上位職、最上位職に至っては底知れぬ力を持っていると言われている。

 

 

 ーヴァイス島中心部記念塔前ー

 

「あぁー. 緊張するよー……」

 

 そこには一人の女の子が記念塔を眺めて立っていた。

 

「えーっと、見習いの杖は持ったし、傷薬も買ったし……」

 

 私が指をおり一生懸命数えていると背後からボソっと声がした。

 

「おや? アルシェさんまだ出発してなかったのですか?」

「ーーひょあああーー?! 」

 

 私は声が裏返ってしまい、ゆっくり後ろを振り向くとそこにはニヤニヤしながら私を見ているルイズ先生の姿がありました。

 ルイズ先生は私が通っていたシャロット魔法学校の先生で、年齢はたしかー……

 

「三十五ですよ、アルシェさん」

 

 え? 今なんでわかったの?! 私、口に出して言ってなかったんだけどなぁ…… まぁ、 こんなふうにいつも簡単に考えている事がバレてしまう訳で 本当に恐ろしい方ですが……あっ! でも普通に優しい先生ですよ?

 今日は魔法学校を卒業した私が生まれて初めて島から定期船に乗り隣のイーリス大陸に向かう日なんです。

 

 先生は私がまだ出発してなかったのを見て心配して声をかけてくれたみたいです。

 といってももう少しましな声のかけかたがあるでしょうに…… トホホ。

 

「先生も昔この島を出て色んな大陸を冒険してきたんですよね?」

「ええ、かれこれ二十年前くらいになりますかね」

 

 先生は空を見上げながら私に色々教えてくれました。

 大陸での冒険の事、時には辛いこともあったけど、それよりもたくさんの仲間と出会えたこと。

 その話を聞いて私はワクワクが止まりませんでした。

 

「先生、私もいい仲間の人達に出会えますかね?」

「きっとアルシェさんにとっていい出会いがありますから気をつけて行ってきてくださいね」

 

 あぁー! 先生はやっぱり優しい方だなぁと改めて思えた時でした。

 私は先生に別れを告げ定期船が来る船着場まで歩いて向っていました。

 道中、(ウルフ)を従えたモンスターテイマーの方や武器や防具などを運んでいる商人(マーチャント)の方、私の知らない色々な職業の方にすれ違いました。

 

 私は何が向いているんだろうなぁ…… 職業につくにはそれ相応の力と転職試験みたいのがあるらしく、私のような駆け出しの冒険者は初心者(ノービス)と呼ばれてるみたい。

 とりあえず大陸に着いたら頑張って力をつけて私も転職しなきゃ!

 

 私は船着場に着くとまだ定期船がくるまで時間があったのでちょっと遅いけど朝ご飯にすることにしました。

 

「えーっと、たしか地図はっと…… 」

 

 私が朝ご飯を食べながら地図を見ていると1人の冒険者さんが声をかけてきました。

 その方は背の低いドワーフ族のお爺さんで、私が地図を見ているとこれから大陸にいくのかい? と聞いてきました。

 私はそうだと答えると、楽しい旅になるといいな! と笑って答えてくれました。

 本当に冒険が楽しみすぎです!

 

 

 ー定期船内ー

 

 私は船の中に入ると真っ先に海が見える場所まで行きずっと眺めていました。

 

「わぁー! 海が綺麗!」

 

 透き通った青い海の色に見惚れながら大陸に渡ったらまず何をしようか考えていました。

 とりあえずはお金(ルピア)も貯めないといい装備も買えないしなぁ…… とりあえず武器はこの見習いの杖で何とか頑張るとしても防具だよねぇ…… 私は自分の服装を見るなりため息が出てしまいました。

 

 私の今の服装は島でお金を貯めて買った木綿服(コットンローブ)だし、島のモンスターとの戦いくらいならまだなんとかギリギリ大丈夫だったけど大陸のモンスターはきっと強いんだろうしまずは防具を買わないとなぁ……。

 

 私が悩んでいると近くにいたエルフ族の女性が近づいてきました。

 エルフ族は耳の先端が尖ったように長いのが特徴で、髪は白く顔立ちはすごく美人だった。

 うわぁ、綺麗な人だなぁと私が見ているとエルフ族の女性は私にこう言いました。

 

「あなたも冒険者さん?」

「あっ、はいっ!これから大陸に向かうんです」

「そうなのね、じゃあ一つ教えておくと装備は自分にあったのを買わないとだめよ?」

「え? そうなんですか?」

「そうそう、例えばあなたは人間族(ヒューマン)でしょ? 人間族はエルフ族の装備は着れないし、後は職業にもよるわね!」

 

 ええ?! 装備ってそうなの?! 私は内心泣きたかった。

 大陸に行ったら絶対可愛い服買うんだー! と決めていたからなんです。

 私が泣きそうになっているとエルフ族の女性は同じ女性として察してくれたのか、共通種族装備なら着れるし可愛い服もあるよ! と教えてくれました。

 

「あなたお名前は?私はミリスって言うの」

「わ、私はアルシェっていいますっ!」

「アルシェね! 良かったらお友達にならない?」

 

 ミリスさんは何かあったらいつでも呼んでねと私に通信小型装置(テレパシア)と呼ばれる指輪型の小型装置を渡してくれました。

 何でもそれをつけていると登録した相手と通信ができるらしいです。

 なんか、こんな高価な物貰ってもらよかったのかなぁと私が思っているとこれは大陸のアイテム商店で安く買えるから心配しなくて大丈夫だよと言っていました。

 色々話を聞くとミリスさんはヴァイス島に転職試験で来ていたみたいでこれから大陸に戻って試験官に報告すると転職できるらしいです。

 

「ミリスさんは何の職業に転職するんですか?」

「私は短剣使い(ダガーマスター)よ」

 

 短剣使いとは接近戦に特化した職業で、自分の姿を消したり瞬間移動で敵の背後に回り込み致命的な一撃を与える暗殺系の職業らしいです。

 冒険者からすると絶対戦いたくない職業の一つになっているみたい。

 私はミリスさんを絶対怒らせちゃだめだと肝に命じた瞬間でもありました。

 

 ー定期客室ロビーー

 

 私はミリスさんと別れ自室に戻ろうとすると二人の冒険者さんに出会いました。

 一人は私と同じ人間族の男性、もう一人はダークエルフ族の女性でした。

 ダークエルフ族はエルフ族と同じ耳が長いのが特徴でエルフ族よりも背が高く豊満な胸に肌が灰色なのが特徴です。

 

 (ダークエルフの女性って本当に胸が大きいんだよねぇ…… ハッ?! 私は今いけない事を想像していたような! )

 

 私が頭を抱えガーン! という仕草をしていると二人が私に話しかけてきました。

 

「あら?あなたも冒険者さんかしら?」

「は、はいっ、私はアルシェといいます」

「礼儀正しいのね〜私はオリガよ、こっちはレイク」

「レイクだ、よろしくな」

 

 レイクさんは戦士(ファイター)から転職できる騎士(ナイト)さん、敵の攻撃を自ら受け仲間を守る盾職業(タンカー)と呼ばれる職業、オリガさんは魔法職業から転職できる回復職業(ヒーラー)さん、仲間の体力を回復したり、状態異常回復を得意とする集団戦での生命線、闇の回復者(ダークレズナー)と呼ばれる職業みたいです。

 

 オリガさんの杖、かっこいいなぁ! 身の丈程ある黒い杖。

 杖の先端には青色に輝くひし形のクリスタルに両側から鎌ような突起物がある。

 もしかして接近戦になったらあれで殴るのかな? 私は色々妄想してしまいニヤニヤしていると

 

「イーリス大陸は初めてなのかしら?」

「あっ、は、はいっ 初めてで緊張します〜……」

 

 私があたふたしているとオリガさんが優しく微笑みました。

 

「大丈夫よそんなに緊張しなくても、初めはみんなそんな感じだからね。

 レイクなんて最初はねぇ?」

「おい!オリガその話はなしだぜ?!」

 

 レイクさんが慌てているとオリガさんはお腹をかかえて大笑いしていました。

 本当に仲がいいお仲間さんなんだなぁと私は二人を見ていて思いました。

 オリガさんから大陸に渡ってからのまずする事、三カ条なる物、一に最初は街の周辺で狩りをするべし! 二にヤバイと思ったら逃げるべし! 三にこまめに体力回復魔力の回復をするべし! を学びました。

 私はこんなに色々教えてもらえるのは幸せ者だなぁ、頑張らなきゃと心に誓った瞬間でした。

 

 ーイーリス大陸定期船船着場周辺カルデラ地域ー

 

 オリガさんとレイクさんに見送られ船着場を後にし、私は近くの村を目指していました。

 私は地図を開き、村への行き方を見ていると辺りにはやっぱり見た事のないようなゴブリン族や狼族の気配がたくさんしました。

 

 うわぁー、これ大丈夫なの?! 大量に襲ってくるとかないよね?! とビクビクしていると全く襲ってくる気配はなく、ただ普通に野良猫のように辺りを徘徊しているだけでした。

 

 私はモンスター図鑑を開いて情報を見てみるとこれはモンスターと言われるものらしくこちらが下手に刺激しない限りは攻撃してこないみたいです。

 私はホッとしながら村に向かっていると、だんだん道が開けてきて辺りは一面草原のような場所に出ました。

 

「うっわー! すごい! 島にはこんな所なかったよー!」

 

 私はくぅ〜! っと杖を握りしめながら大喜びしていました。

 辺りには綺麗な花々が咲き乱れ、その中心には長い石橋がありその先には大きな村がありました。

 

 その村の名前はアイム村、別名始まりの村と呼ばれる村でした。

 

 そして私が冒険者としての一歩を踏み出した記念すべき日でもありました。

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