新米支援系魔法士(エンチャンター)の日常   作:ぬえと

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第二話 アイム村

 

 ーアイム村クエスト依頼所ー

 

 私はじ〜っと掲示板を眺めていた。

 イーリス大陸に来てから五日目が経ちました。

 この五日間オリガさんに教えて貰ったようにアイム村周辺でモンスター狩りをしていたのですが困った事が一つ。

 

 そう! お金がヤバイー!

 

 五日間もモンスター狩りをしてこまめにクエスト報告を繰り返したりモンスターを倒した時に出現(ドロップ)する素材などを商店で買い取って貰ったりしていたけどなにせアイム村周辺の弱いモンスターから簡単に入手できてしまう為、買い取り価格がはんぱなく低いという事。

 

 宿代も結構かかるし全然お金が貯まらなかった。

 はぁ…… こんなんじゃいつまでたっても装備が買えないなぁと私はしみじみ感じていたのもあってもう少し報酬がいいクエストを探していた。

 

 掲示板を見ると報酬がすごくいい物はその分危険があるしモンスターの強さを考えると今の私にはかえって効率が悪いという事。

 

 あぁー!どうしたらいいのー?! 他の村に行こうにもモンスターの強さはここよりは格段に違うと思うし、しばらくはこの村でお金を貯めてもっと良い装備を買うのが一番なのだろうけど、体力回復薬や、その他もろもろを買う事を考えると割りに合わないクエストだった。

 

(ちょっと試しにこれやってみようかな)

 

 私が手に取ったのはアイム村からちょっと北にある草原に出没するリザードマンを倒すクエストだった。リザードマンの情報をモンスター図鑑で調べて見ると、緑色の(ウロコ)のような皮膚を持ち見た目はトカゲみたいな二足歩行のモンスター。

 

(なんか見た目から強そうなんですけどこれ!! )

 

 とりあえず私は試しにうけてみる事にした。

 もし危なかったら逃げよう、というか絶対逃げる!! そう思いながら私はアイム村を出ました。

 

 

 ーアイム村北草原ー

 

 私は草原に着くと辺りを見回してみた。

 遥か彼方まで続く広大な草原、心地よい風が吹き日差しが丁度良いくらいに照らしている。

 

「んー、図鑑を見ると結構身長高そうだからすぐに見つかりそうなんだけどなぁ」

 

 辺りを見回しても全然見つからない。

 おかしいなぁと私が図鑑を見ながら探索していると何やら背後のほうからガサガサっという音と共に何か唸り声のような物が聞こえてきた。

 

(え? 気のせいだよね?)

 

 私は恐る恐る後ろを振り返ると、両手に巨大な斧を持ったリザードマンが四体、雄叫びを上げた。

 

 《グウォォォォ!!》

 

「え? 今まで見当たらなかったのになんで急に!」

 

 リザードマンは雄叫びを上げながら私に向かって飛び掛かってきた。

 私はリザードマンの攻撃をかわし、ひとまず距離をとろうとリザードマンから離れた。

 魔法職業にとって相手と距離をとり戦うのは基本中の基本。

 接近攻撃が得意ではない魔法職業では魔法を発動する詠唱時間も踏まえて相手と距離をとらなければいけない。

 

「魔法発動! 支援魔法(エンチャント)物理攻撃防御(シールドアーマー)!」

 

 この魔法は詠唱と同時に瞬時に自分の体の周りに物理攻撃を防御するバリアを形成する事ができる速攻魔法。

 私はすぐさまシールドアーマーを発動して、戦闘態勢に入る。

 

「第三魔法発動! 支援魔法 風属性付与(ウインド)!」

 

 支援魔法には第一から第四までの基本的魔法が存在する。

 第一詠唱は火属性付与、第ニ詠唱は水属性付与、第三詠唱は土属性付与、そして第四詠唱は風属性付与。

 これらが発動すると一時的にその属性の物理、魔法攻撃の威力が上がるという支援魔法。

 

 私は持っている杖をリザードマンに向け風属性速攻魔法、ウインドストームを放つ。

 ウインドストームはまだ転職していない私が唯一使える二つの攻撃魔法の一つ。

 杖から放たれた無数の竜巻がリザードマンの体を切り裂く、はずだった。

 リザードマンに多少なりダメージは与えているものの全く倒れる様子はなく、すぐさま私に突進してきた。

 

「え……? 嘘….…でしょ?」

 

 私はリザードマンの突進を辛うじてシールドアーマーのおかげで防ぐも効果がなくなりあたふたしていた。

 まずい、これはヤバイ! 一体ならまだなんとか時間をかければ倒せるかも知れない。

 でもリザードマンの数は四体、これはかなり絶望的な状況だった。

 私の頭の中で打開策を考えるも、身体が逃げろと反射的に動いていた。

 

「いやぁぁぁ! 死にたくない……誰か助けて……」

 

 私は追いかけてくるリザードマンから必死に逃げていました。

 

 

 ー同時刻アイム村北草原ー

 

「なぁ姐さん(ねえさん)ーまだ着かないのかぁ……? 」

「もう少しで目的の場所よ」

「俺もう疲れたよぉ……少し休もうぜー?」

 

 そこには二人の人間族の冒険者の姿があった。

 

 人間族の少年は小さな岩の上に腰掛け、疲れたーというような表情をしている。

 

「あなたが転職試験を手伝ってくれって言うから付きあってるのよ? リズ」

 

 人間族の女性は呆れたような表情で少年に言った。

 

「こんなに大変なのかー?転職試験って」

「そうねぇ、なんの職業なのかにもよるけど、魔術師(ウィザード)の転職試験はまだ簡単なほうだと思うけど」

「え?! まじ?! 」

「うん、私の支援系魔法士(エンチャンター)の試験とか頑張っても三日はかかったしね」

「うわぁ…… 本当マゾ職なだけあるわー……」

 

 少年が後ろに仰向きに倒れうなだれていると視界にある物が写った。

 

「あれ? 姐さんあれ見てよ」

 

 少年が指をさした先にはリザードマンから追われて逃げている人間族の少女の姿があった。

 

「あれヤバくないっすか?」

「リザードマンに追われてるって間違いなく初心者よね」

「ですよねぇ? アイム村にきた初心者がまず洗礼を受けるのがあのリザードマンっすからねぇ」

 

 少年がやれやれという仕草をしていると女性は少女に向かって走って行った。

 

「まぁ、どうせお金に困って上のって、あれ? 姐さんー? っていねええええ!」

 

 

 ーアイム村北草原ー

 

「はぁ……はぁ……ここまで逃げれば」

 

 私は後ろを振り返るとリザードマンがまだ追ってきていた。

 ええ?! どんだけ追っ掛けてくるの?! だんだんスタミナもなくなってきたし、そろそろ本当にヤバイよー! 私が泣きそうになりながら逃げていると近くから誰かの声がした。

 

移動速度向上(ムーブメント)!」

 

 その声を聞いた途端私の足元に風のような渦がわき、移動速度が格段に上がっていた。

 

(なに……これ、 身体が嘘みたいに軽くなってる)

 

 私は立ち止まり声のした方を見るとそこには人間族の女性が次の魔法を発動している姿があった。

 

「!」

 

 魔法が発動されると手のひらから光の鎖がリザードマン達の身体を縛り付け動きを封じていく。

 す、すごい!一瞬でリザードマン達の動きを止めているのを見た私はただただ戦闘に見入ってしまいました。

 女性の方が、ぐっと鎖を引っ張るとリザードマン達は地面に倒れこみ動かなくなりました。

 

「速攻魔法発動、威力倍増効果(ダブルアビリティ)! 支援魔法発動、風属性付与!」

 

 私は女性からかけてもらった魔法の効果により魔力が上がっているのがはっきりわかった。

 す、すごい! 威力倍増効果、魔法学校にいるときにルイズ先生のを見たことがあるけどあれは支援系魔法の中でも高度な魔法の一つ! それをしかも詠唱破棄でって、ルイズ先生ですら詠唱に多少は時間のかかる魔法だって言っていたのに…… この人、次元が違いすぎる!

 

「今あなたに風属性付与の威力を倍増する支援魔法をかけたわ! 今なら攻撃は効くはずよ!」

「は、はいっ!」

 

 私がウインドストームを放つとリザードマン達はうめき声をあげながら消えていった。

 こ、怖かった……まさか四体に襲われるとは思ってもいなく私は緊張の糸が切れたのか泣きながら地面によたよたと座り込んでしまった。

 

「ふぅ……」

 

 助けてくれた女性がホッとした表情をしていると遠くから少年が手を振りながらやってきました。

 

「お〜い!姐さん終わったのかー?」

「遅いわよリズ、支援魔法士に前衛で戦わせておいて魔術師のあなたが見物ってありえないわ」

「わ、悪かったって…」

 

 女性は、はぁ……っとため息をつきながら私に近づくと大丈夫?と声をかけてくれました。

 

「は、はいっ! あ、あの! 助けて頂いてありがとうございました!」

「気にしないで? 初めはみんなここのリザードマンで絶対こうなるんだから」

「そ、そうなんですか…」

「君、初心者だろ? 最初は絶対お金に困ってここのリザードマンを倒しに初心者はくるんだよ」

 

 トホホ…… リザードマンに来る人はお金がないってバレてるみたいです!

 色々話を聞いていると、ここのリザードマンはアイム村のクエストの中でもなかなか難しい部類らしく、リザードマンの尾は需要が高く数匹倒すだけで高額な報酬が貰える反面、群れをなして茂みに隠れ背後から襲ってくる奇襲タイプのモンスターであることから初心者潰しのクエストと呼ばれていたみたいです。

 

 ちゃんと調べてからクエストを受ければ良かったと後悔するのと同時に次からは絶対同じ失敗はしないと心に誓った日でした。

 

「あなた、名前はなんていうの?」

「ア、アルシェです!」

「私はフィオナよ、こっちはリズ」

「リズっす! よろしく!」

 

 フィオナさんは私にそっと手を差し伸べ優しく微笑みながらこう言いました。

 

「本当に無事でよかったわ、いらっしゃいイーリス大陸へ!」

 

 ーーそしてようこそ、始まりの村 アイム村へ!

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