バトルフィールドは雪山、ややガンタンクに有利なフィールドか。
サイコガンダムのお陰でアニメ機動戦士Zガンダムのキリマンジャロ基地を思わせるフィールドだ。
上級生チームの機体は…ガンダムMk2が三機。
エゥーゴカラー二機と中央に赤い機体が一機、おそらくはクワトロ大尉に渡された機体という設定なのだろう。
「あの赤い機体、僕を呼んでる…」
赤いMk2にレイが反応する。
「ちょっとレイくん、作戦忘れて飛び出さないでよ?」
暴走する気満々のレイをサエコが制する。
「来ます!」
ムサシがMk2の接近を伝える。
「いっけぇっ!」
サイコガンダムとガンタンクが射撃を始める。
作戦とは言ったが大した事は無い。
レイのガンダムが邪魔にならない内に砲撃戦で敵の数を減らすだけの話である。
「やったか?」
地形が変わる程の砲撃にレイが名無しパイロット特有の死亡フラグを口にする。
「なにぃ?」
レイは健在な三機のMk2を見てセオリー通りの反応を示す。
「流石の大火力だ、此方の作戦はもう無茶苦茶だ…だが!」
赤いMk2の合図で各機が散開する。
どうやら個別撃破に切り替えたらしい。
だが散開しようとする動きをガンタンクが牽制、思う様に散らせない。
こういう時の勝負の駆け引きの上手さは流石格闘技経験者だと思う。
「やりたかった事は何となく分かりますが、好きな様にはさせませんよ?」
ムサシの行動に怒りを覚えたのか一機のMk2がガンタンクに向かう。
「だったら、君から処分するだけだ!」
ガンタンクの砲撃を避けつつ加速を続けるMk2の前に突如黒い壁が現れ進路を塞ぐ。
避け切れずに壁に激突したMk2が大破する。
「やったね、ムサシくん」
壁の正体はサイコガンダムの盾であった。
「キシダがやられただと?」
仲間の機体が撃破された事に赤い機体の上級生が驚きの声を上げる。
「だから油断するなとあれ程…」
もう一人の上級生も驚きを隠せないでいる。
そんな二機にビームが襲い掛かる。
痺れを切らしたレイのガンダムが動いたのだ。
「あの赤いMSのパイロット…」
レイは典型的なアニメなりきり型のファイターだ。
赤い機体を見れば黙っては居られない。
「ふん、僕をシャアと認識するか」
リーダー格の上級生はまんざらでもない顔でガンダムに迫る。
「ほう…」
ムカイは彼を勝利の為ならどんな姑息な真似でも笑って行えるタイプの人間だと認識していた。
だが、こうして下級生のファイターとしての矜持に応える姿に彼のファイターとしての魂は未だ死んでいないと確信した。
リーダーの勝利を確信しているのと横槍は不粋であると感じたもう一人の上級生はサイコガンダムとガンタンクの方に向かって動き出す。
「キシダが油断しなければな」
ガンプラ歴十日かそこらの新人に二対一であっても負ける等と言うことはあり得ない話である。
そう確信すればこそ、彼は一人で此方に向かったのだ。
「勝手に殺すな」
キシダと呼ばれた男から通信が入る。
ダメージレベルはレッドゾーンで死にかけは死にかけであるが、未だ彼のMk2は健在である。
「見せて貰おうか、新人パイロットの実力とやらを」
リーダー格の上級生もなりきり型だったのか、レイとの戦い方が芝居がかって来ている。
赤いMk2はガンダムのライフルの一撃を避けて蹴りを入れる。
「うわーっ」
本人へのダメージは無いのだが何となく前後に揺れるレイ。
「このおっ!」
頭部バルカンで赤いMk2を牽制、赤いMk2は堪らず距離を開ける。
「キシダぁぁぁっ」
サイコガンダムを盾にしてサイコガンダムとガンタンクの二機で砲撃戦を行うという作戦に上級生達は為す術なくダメージを蓄積して、遂にはダメージレベルの高かった一方のMk2が限界を向かえて爆発する。
そうは言ってもサイコガンダムもダメージレベルはイエローゾーン、これ以上盾として支えるのも難しい状況ではある。
「目の前をカトンボみたいにチョロチョロするなぁっ」
中々攻撃が当たらない状況にサエコは苛立ちを覚えてきたのか攻撃が少々雑になる。
それが相手の作戦だった訳だが。
「それが通用する程ガンプラバトルは甘くは無い」
サイコガンダムのビームの波状攻撃を楽々と回避しながら接近するMk2、ガンタンクからはサイコガンダムが邪魔で援護が出来ないでいる。
遂にはサイコガンダムの頭部をMk2のビームサーベルが貫く。
一気にダメージレベルがレッドゾーンに突入して爆発するサイコガンダム。
上級生が勝利を確信したその時だった。
「死なばもろともぉっ」
太い二本の腕がMk2を捉え、そのままサイコガンダムの爆発に飲み込まれた。
そこには二機の姿は無くガンタンクだけが取り残された。
「ほう、二年の二人が敗れたか」
リーダー格の上級生が呟く。
赤いMk2とレイのガンダムの戦いは赤いMk2の方が優勢だった。
アニメのガンダムの動きをトレースするだけのレイの動きはガンダムを知る者にとっては予測がし易いのだ。
「せめて君がニュータイプだったらねぇ」
赤いMk2のビームがガンダムのシールドを捉える。
シールドを捨ててライフルで反撃するも赤い機体を捉える事は出来ない。
「ガンプラは実際にはアニメの様には動かないのだよ!」
Mk2がガンダムの背後を突く。
アムロのリックドム数え撃ちのモーションを取ろうとするも、腰の関節はその挙動に耐えられず動きが固まってしまう。
「なりきる事は否定しないが、僕ならガンプラに出来る動きで解釈を変えるよ」
そう言うと赤いMk2はライフルでガンダムを撃ち抜いた。
「クソっ」
ガンプラの可動の限界を思い知らされたレイがプラフスキー粒子で出来たコンソールを殴る。
「残りは支援機のガンタンク一機のみか」
赤い機体は残りの一機を仕留めるべく動き出す。
「当たれっ」
ガンタンクの主砲による長距離攻撃が始まった。
4ブロックユニットのこの学校のバトルシステムならではの長距離射撃である。
油断は無かったが最初の一撃でMk2はライフルを失う。
「なんて正確な射撃だ」
初めて十日かそこらのファイターとはとても思えない正確な一撃に嫌な汗も出る。
「だが、正確であるが故に予測もし易い」
Mk2はビームサーベルを引き抜くと一気に加速をした。
「格闘戦ならそちらに利は無い、勝つのは僕だよ」
そう言うとガンタンクとのすれ違い様に主砲二門を切って捨てる。
「だが不思議だ、柔道をやっていたと聞くが何故格闘機に乗らずガンタンクなのだ?」
彼の疑問も無理は無い。
俺もアニメ機動武闘伝Gガンダムに登場した格闘用MSのモビルファイターを勧めたくらいだし。
「何言ってるんですか先輩…」
最早武装と言えばフィンガーバルカンくらいしか残っていないガンタンクのムサシがガンタンクで柔道の構えをとる。
「このガンタンクは、俺の柔道を活かす為に選択した機体ですよ」
ムサシの言っている事が理解出来ないのは多分俺だけでは無いだろう。
「ハッタリを!」
ガンタンクに向けて再び加速を始めるMk2。
だが、Mk2は急に前進しなくなる。
「なに?」
よく見るとガンタンクの両腕が伸びてMk2の身体に巻き付いている。
「ガンダムってアニメ難しくてよく分からなかったんですよ、ハヤトって人柔道の技を活かしてくれないし」
ムサシが語り出す。
「仕方がないんで別のロボットのアニメを見て覚えました」
ムサシがSPコンソールのボタンをクリックする。
「まさかこの技はっ、やめろ後輩!この技は色々とマズイ」
先輩は違う何かを恐れて技の中止を呼び掛ける。
「必殺っ大雪山自主規制!」
巻き付いたガンタンクの腕が一気にMk2を上空に引き上げられる。
それによって出鱈目な回転を加えられたMk2は機体の制御を失って高速で地面に叩き付けられる。
その直後、Mk2は大爆発を起こし粉々に飛び散った。
【BATTLE END】
「ガンプラは…本当に自由でいいのか?」
この戦いをムカイは苦笑いを浮かべて後にそう語ったのだった。