ガンダムビルドファイターズ07   作:ジムスキー

5 / 11
第4話 ガンダム禁止命令

代表選手権試合は一年生チームの勝利で終わった。

翌日

それを受けて急遽コーチに就任したムカイがミーティングを行う為に部員全員を呼び出した。

「昨日はお疲れ様」

ムカイは昨日のバトルを労う。

残存1で一年生チームの勝ちという結果だが、総じて言えるのは上級生の敗因は油断の一言に尽きる。

上級生達はあの舐めきったバトルをしている内は絶対に上のステージに行くことは無いだろう。

一年生チームもそんな上級生チームを相手に残存1。

彼らのガンプラ歴と照らし合わせれば大した物では有るが、上級生達も二度と油断はしないだろうから次は確実に勝てないだろう。

アニメへ依存の強いレイ

短気な勇者サエコ

ガンダムである事を放棄したムサシ

舐めプで負けるおバカな上級生達…

しかし、昨日のバトルを見ていてふと思った事がある。

三人の上級生の内、赤いMk2を使っていた先輩…後で三年生で部長のアカイ・リュウセイと分かったのだが、彼のファイターとしての実力ならばフジタが相手でも余裕で勝てたのではなかろうか?

そんな風に思っていると、サエコが口を開く。

「先輩達なら逃げなくても自力で部室守れたんじゃないですか?」

ムラサメ・サエコは勇者の子。

とは言えサエコの疑問は誰もが思うところである。

サエコの一言に部長への視線が集まる。

「ひひゃ、ぽくをみるにゃ」

部長は顔を真っ赤にしてその場にうずくまる、ちょっと可愛い。

「キモっ」

…勇者様にはお気に召さなかった様だが。

他の二人の先輩…キシダとアサノによると、部長は極度のあがり症で衆目が集まるのを嫌うのだそうだ。

だが実力その物は確かな物で、BONBONランキング152位だという話だ。

BONBONクラブ…通称B-CLUBは神奈川県最大のガンプラバトルクラブで会員数は一万人以上居る。

その中でランキング対象になれるのは僅か二百人。

以前にも言ったがランカーであると言う時点で相当な実力者なのだ。

因みに、俺がこの学校で初めてバトルをしたフジタ先輩はランク外である。

その極度のあがり症が原因でギャラリーが多い試合は耐えられないのだそうだ。

おそらく、本当の実力はランキング二桁台だろう。

そんな彼は目の前で可愛らしく顔を真っ赤にしてうずくまっている。

「彼のあがり症はこれから何とかするとして、問題は今年の大会だ」

そう言うとムカイは全員を見渡す。

あがり症の部長は取り敢えず置いておくとしても二年生と一年生三人が居れば何とかなるだろう。

等と他人事の様に思っていると不意にムカイと目が合う。

「少尉、お前も団体戦に出るんだ」

突然の突然の事に俺は言葉を失う。

何故なら彼は俺のやり方や考え方を理解しているからだ。

「慌てるな少尉、個人戦予選は団体戦予選の後だから本選は出なくて構わないから予選は少し付き合え」

言いたい事は理解出来なくも無いのだが

「簡単に言わないで下さい、個人戦の予選だけなら何とでもしますが本選では彼奴らだって出て来るんですよ?」

俺にだって全国での再開を約束したライバルの一人や二人は居る、そんな連中を相手に片手間でのバトルが通用する程ガンプラバトルは甘くない。

そして何より

「そんな中途半端なバトルは個人戦の相手にも団体戦の相手にも失礼です!」

ムカイのあまりの無責任な言動に俺は思わず声を荒げてしまう。

「俺は少尉のそういう真っ直ぐな所は嫌いでは無い」

興奮する俺にムカイは優しく声を掛ける。

「だが、様々なファイターと戦う事で得られる物も有るのではないかな?」

ムカイの言う事も確かに正論である。

では有るが、失礼の無いバトルをやろうと思えば此方の負担もかなり大きくなる。

「折角だ、全員に何か課題を出そう」

ムカイは楽しそうに言う。

「そうだな、取り敢えずレイくんはガンダム禁止だ」

レイはいきなりの飛び火で火だるまになる。

相手の弱点を的確に突いてくるスタイルはバトルでもコーチでも同じらしい。

「なっ…」

全身を炎に包まれた哀れな犠牲者も次の言葉を失う。

「ガンプラは自由だ、だがチームである以上ワガママと自由を履き違えられても困るのだよ」

ムカイの一言に反論の言葉を失いレイは途方に暮れる。

とは言え彼のアニメに依存するスタイルも困った物であるのは事実である。

「勇し…サエコくんにはこれを渡す、好きに使いたまえ」

そう言うと、ムカイは30cm程の長さの太いプラスチックの棒を渡す。

「もう少し面白い宿題が良かった」

渡された物の意味を分かっているのだろうかと思わなくもない。

「ムサシくんはこれを見てレポートを提出する様に」

そう言うと部室のライブラリーから映像ディスクをムサシに手渡す。

「アサノとキシダは上級生として恥じぬガンプラを作って来る様に」

そう言われた二年生二人は黙って頷く。

これは暗に俺にも言っているのだろうと思った。

団体戦用の専用ガンプラを作るくらいで無ければねならないだろう。

その言葉を重く受け止めて二年生の二人も静かに頷く。

「リュウセイ、お前の課題が一番辛いが大丈夫か?」

ムカイは部長を見つめ静かに言う。

その問いに静かに、しかし力強く部長のアカイは頷くのであった。

「では、これにてミーティングを終了とする」

ムカイの言葉に皆一様に力強く返事をする。

ただ一人、レイを除いて。

 

タムラ・レイ

彼はアムロ・レイになりたい男だ。

その思いの強さ故にガンプラを親から止められた。

特にファースト…初代ガンダムのアムロのMS操縦に強い思い入れが有り、それ故に前回の戦いで部長にしてやられた訳だ。

おそらく今後工夫が無ければ少しアニメに詳しい相手と戦う事になれば部長との戦いと同じ様な結果になるだろう。

残酷な選択を迫られる事になるが、これが個人でやるガンプラバトルと部活動でやるガンプラバトルの違いである。

きっと彼は独房で自分が一番ガンダムを上手く操れると言っていたアムロの気分で居るだろう。

だが、現時点でそれを口にする事が許されるのは第二回大会準優勝者のレジェンドファイターであるイオリ・タケシだけだ。

「僕はどうすれば良いんだ…」

成す術を失い、レイは一人途方に暮れるのだった。

 

「Gガン最高です!」

その週の週末、レイが作るガンプラを見に行く為に一年生四人で横浜のGステーションに行く事になり駅で待ち合わせて居たのだが、ムサシが開口一番に口にしたのがこれである。

ガンダムは難しいという固定観念から某合体ロボットのアニメを見てガンタンクを改造したり、上級生に一発かます正確な射撃をしたりとこちらの想像を上回る真面目さと才能のあるムサシには、小難しい理屈を超越した作品に触れさせればガンダムを好きになってくれるだろう。

自分でもそう考えては居たが、こうも単純にGガンを褒め称えてくるとは思いもよらなかった。

「今二周目なんですけど、一回見てから見直すと違いますよね」

このハマリ方なら小難しいガンダムも大丈夫なのでは無いだろうか。

そう思わなくもない。

「みんなぁ、お待たせぇ」

パーティの紅一点にしてリーダーの勇者様がやって来た。

どこで売っているのだろうか、アニメ機動戦士Zガンダムのフォウ・ムラサメの着ていたやたらデカい服を着ている、色は薄桃色だが。

「サエコ、あの棒の使い方は決まったのか?」

俺は興味本位からサエコに訪ねる。

「内緒♪」

サエコは笑ってウィンクをして誤魔化す。

あの短気なバトルスタイルと勇者と称される言動が無ければね可愛いのになぁと思った。

が、勇者では無い俺はそんな事は口が割けても言わない。

最後に今日の主役のレイがやって来た。

口から魂が飛び出しているかの様な心ここに無い歩き方である。

「やぁ、ぼかぁダメだぁ」

ガンダムを禁止されたレイの声はそれは弱々しい物であった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。