ガンダムビルドファイターズ07   作:ジムスキー

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第6話 サエコ出撃

一週間後、Gステーションは噂を聞き付けたギャラリー達で溢れていた。

BBランキング一桁台二人のバトルが見られるという話になっているらしい。

だが、観衆達はおそらく全員度胆を抜かれる事だろう。

戦うのは俺でも勿論ムカイでも無い、戦うのは我等が勇者様なのだから。

【PLEASE SETYOUR GPBASE】

GPベースを置いた時点でギャラリーの期待は大きなため息に変わった。

GPベースは見慣れたここのヌシの物と誰だか分からない少女の物だからだ。

システムに急かされる様に双方がガンプラを置くと、今度はギャラリーが小さく沸く。

サエコのサイコガンダムの雄々しき勇姿はやはり人の目を惹き付ける。

しかし、大きなサイコガンダムが更に異彩を放つのはその肩に担いだ巨大なプラスチックの棒だ。

(あの女、アレをそのまま使いやがった)

俺とムカイは心の中でツッコミを入れた。

【BATTLE START】

フィールドは森、互いに有利不利は無い。

ヌシの機体はカーキ色の軍用カラー風にしたBD二号機だ。

サイコガンダムに向かって疾走する二号機、それに対してサイコガンダムは棒を地面に置くとシールドを二つに割る。

「変型?させん無いぞ!」

MAへの変型を警戒するヌシ、だがサイコガンダムは半分になったシールドを天高く持ち上げると

「ガンダァァァァッブゥゥゥゥゥメランッ!!」

なんとヌシの二号機に向かって乱暴に投げつけて来たのだ。

ブーメランと言ってもサイコガンダムの元に戻る訳も無く二号機のすぐ近くの地面を裂いて突き刺さる。

「なんだこの女、滅茶苦茶じゃ…」

悲鳴をあげるヌシの元にガンダーブーメラン(?)の第二弾が飛んでくる。

「ヤバい、あの女絶対にヤバい…」

ギリギリで避ける二号機だが、その出鱈目な攻撃にヌシも何時しか恐怖を覚える。

二号機の目が赤く光る、EXAMシステムだ。

アニメの様に命のやり取りをする訳でも無いガンプラバトルで命の危険を感じたヌシが本能的に発動させた物だ。

「殺られる前に殺ってやる!」

ヌシもサイコガンダムから放たれる殺気に当てられたか物騒な事を言い出す。

だが…

「どっせぇぇぇぇぇいっ!」

いつの間にか地面から拾っていたプラスチックの塊を乱暴に振り回す。

(あの女やりやがった…)

不意に横から飛んできた巨大な何かを避けきれず一撃を貰った二号機はバラバラになって吹き飛ばされる。

【FIELD OUT BATTLE END】

吹き飛ばされた二号機はフィールドを遥かに越えて店内の遥か彼方まで飛んで行った。

「やったぁ、見てましたコーチ」

何を殺ったのか分からないがサエコは満足気に微笑んでブイサインをする。

「宿題通りこの棒で戦いましたよ」

やはり勘違いをしていたか。

この戦いで縄張りのヌシはサエコに移譲された。

「姐さん着いてきます!」

「姐さん俺達、いつまでもアンタの下僕です!」

「姐さん!」

勇者は勇者以外の何かに進化をしたようだ。

「家近くないし面倒だからやらないよ?」

サエコの一言に周囲か凍り付く。

やはり勇気は勇者でしかなかった。

これでサエコは公式戦一勝、しかもエリアのトップファイターが相手での圧勝である。

彼女はその意味を…絶対に理解していない。

「えっ、あの棒って武器じゃ無かったの?」

勝負を終えたサエコに俺が説明をする。

まあ、武器に使っても構わなかったのだが。

まさか素材をそのまま振り回すとは、世界を経験しているムカイですら予想しなかっただろう。

ムサシの〇ッター3の進化といい、後はレイのゲルググが完成すれば一回戦くらいは勝てそうだ。

(…それって俺が困らないか?)

彼等は俺を他の連中の様に少尉と呼びたいらしい、そう呼ぶ条件に一回戦の勝利を挙げたのだが…。

「気付いたか少尉?」

ムカイが声を掛けてくる。

「サエコのビーム乱れ撃ちですか?」

俺が答えるとムカイはこくりと頷いた。

「接近戦を意識するとビームを撃たなくなる、それが無意識による物であれば今後弱点になるやも知れない」

ムカイが難しそうな顔をするので

「今日は新作パーツを持って来てるんで、なんなら試してみますか?」

俺はサエコとの対戦を提案してみる。

その提案にムカイは乗った。

 

「サエコくん、先程のバトル中々良かったよ」

ムカイが誉めるとサエコも満更では無いという顔をする。

「特にあのプラ棒…おそらくあんな使い方を思い付くファイターは世界でも君だけだと思うよ」

ムカイはどこまでが皮肉か分からない様な事を言う。

「そんなぁ、偶々ですよぉ」

ムカイのおだてにサエコは照れまくっているが、ムカイの世界での二つ名を知ったら彼女はどう思うのだろうか…。

ムカイ・オウタ…囁く魔神とか言葉の魔術師等と言う二つ名を持つ喋りのスペシャリストだ。

そんな彼に騙されてサエコは俺とのバトルを快諾するのであった。

【PLEASE SETYOUR GPBASE…】

今度はステーションの熱気が高まるのを理解した。

無名ながら地域のトップファイターをプラ棒一本で軽くあしらったパワーファイターとBBランキング一桁台の俺とのバトルだからだ。

【BATTLE START】

今回俺が持って来たパーツは長距離攻撃用ユニットだ。

左右の腰には折り畳み式の180ミリキャノンを、両腕にはミサイルポット、背中にはボール用の二連装砲を着けてみた。

バトルフィールドは街。

何時ぞやの雪山では無いが、サイコガンダムが居る事でさながらホンコンシティである。

「やっぱり絵になる機体だな」

他人事の様に言っていると正面からアラート、かなり遠い所にサイコガンダムの盾の半分が大きな音を立てて落ちる。

「幾らなんでも調子に乗り過ぎだよ」

俺はサイコガンダムに向かって180ミリキャノンを撃つ。

手応えは感じたがダメージは小さいだろう。

 

「きゃっ」

何もない所から飛んできた弾に当たってサイコガンダムの右肩のパーツが吹き飛ぶ。

レーダーには何も映っていない。

 

「砲撃戦特化型のレーダーを甘く見るな」

二発、三発と撃ち込む、今回は確かな手応えを感じた。

すると、再びシールドが正面から激しい音を立てて飛んでくる。

進行方向にあるビルを次々に砕いている音だ。

身を隠していた俺の機体のすぐ上をシールドの半分が飛び去っていく。

「マジかよ、届くなよおい…」

暫く飛んだあと、盾は一際大きなビルに突き刺さる。

何にしても規格外な奴だと思ったが、これでサエコには飛び道具は無くなった。

(ここまでは想定内、どうするサエコ?)

「知ぃぃぃれぇぇぇたぁぁぁこぉぉぉとぉぉぉっ」

雄叫びを上げながらプラ棒を担いだサイコガンダムが真っ直ぐに此方に突っ込んで来る。

「やはり内蔵火器の存在を忘れてるか」

短気で猪突猛進な奴がサイコガンダムで迫ると世界レベルのプレッシャーになる。

だが世界レベルのプレッシャーならばムカイとやり合う事で既に体験済み、しかもこれはサイコガンダムのサイズが見せる幻覚に過ぎず冷静に対処するのなら棒一本で戦おうという木偶人形に過ぎない。

「所詮は素人!」

俺はジムの武装を全てパージすると背中のビームサーベルを抜刀する。

「それの大きさは知ってるからねっ!」

MG用の大きなビームサーベルの間合いを知っている程度では俺の斬撃からは逃れられない。

何故なら狙いは最初からサイコガンダムでは無いからだ。

「えっ…」

サエコが声を出す。

そう、最初から狙いはサイコガンダムが振り回すプラ棒だったのだ。

寸断されたプラ棒の残りを俺に向かって投げつけるサエコ、だが流石にこれはかすりもしない。

続いて拳を握って殴りかかってくる。

並みのファイターならばサイズと迫力に負けて吹き飛ばされたところだろう、だが冷静に向かってきた拳を右腕ごと斬って捨てる。

「弱いものイジメだ!」

サエコは意味の分からない抗議をしてくる。

(十分強いって…)

サエコといいムサシといい機体の特性を一体何だと思っているとのだろうか、そんな疑問が頭を過る。

「フンガァァァァッ!!」

今度はサイコガンダムの蹴りが恐ろしいスピードで飛んでくる。

「正直怖ぇから」

内蔵火器の存在を忘れて格闘戦を挑むサエコ、その一撃をいなしながら確実に反撃する俺、笑いを必死で堪えてバトルを見守るムカイ。

この巨体から繰り出される一撃は何れも必殺の一撃である、これに内蔵火器を組み合わされたら俺どころかムカイですら本気にならざるを得まい。

ただし、この本気の格闘戦にビームを組み合わせられる様な器用なファイターはそうそう居ないだろう。

続いて左手から拳が繰り出される、だが左の拳が光って爆発掏る。

どうやら誤作動で拳を握っている状態でビーム撃ってしまっていたらしい。

「あっ」

サエコも今更ながらサイコガンダムの本来の特性を思い出した様だ。

とは言え残るは腹のビームのみ、至近距離で撃たれても堪らないので俺はジムの両脚に内蔵しているビームダガーを投げて腹部ビーム砲を破壊する。

「死なばもろともぉぉぉっ!」

武装を全て失い成す術無いサイコガンダムがジムに倒れ込む様にのし掛かって来る。

この執念は本物である。

だからこそ全力で終わらせる。

俺はコンソールのSPパネルをクリックする。

只でさえ巨大なビームサーベルが更に長く太く変質する。

この機体の大技、その名も…

「プラフスキーっザンバァァァッ!」

巨体を誇るサイコガンダムの上半身が蒸発し、下半身は力無く倒れる。

【BATTLE END】

直後、ギャラリーの割れんばかりの歓声が上がる。

バトル終了後、サエコは糸が切れた様にその場に座り込む。

それを見てサエコの居る側に駆け寄る。

「シンくんのジムはやっぱりスゴいね、勝てると思ったんだけどやっぱり負けちゃった」

サエコは笑ってみせる。

「立てるか?」

俺はサエコに手を差し出す。

内に悔しさを秘めているのは誰が見ても明らかでは有るがそれを兎や角言うのはファイターの礼儀に反する。

「ありがと」

それだけ言うと俺の差し出した手を取らずに一人で立ち上がる。

「二つ…」

サエコが言葉を絞り出す。

「二つ改善点が見付かったから、それを改善出来たらもう負けないんだから」

そう言うとニコっと微笑んでブイサインを作る。

「勇者だ」

サエコのガンプラ魂に当てられて、ついその言葉を口にしてしまった。

 

(粒子変容素材で出来たビームサーベル…こんなところで面白い物を見せて貰った)

熱闘に興奮醒めやらないステーションで冷静に試合を分析する男が居た。

「今年の量産…いや、陵南中学は台風の目になりそうだな」

男は機嫌良さげにその場を後にする。

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