そして地区予選が始まった。
予選は各地域のヤジマスタジアムで行われる。
東神奈川大会はみなとみらいにあるスタジアムで予選が行われる。
ここは世界規模の大会も行われる大型設備で観客の収容人数も世界クラスである。
優勝候補が出る様な大会ではそれなりのギャラリーが試合を見にくる物だ。
キシリア学園も横南も危なげなく一回戦を通過している。
一回戦、陵南の相手は商北高校。
商業高校でここのバトル部はガンプラの経済効果を研究の対象にしているらしい。
余談だが、近所の陵南高校バスケ部とは因縁のある高校らしい。
「聞いてるか、今年の量産はあのキシリアや横南に練習試合で勝ってるらしいぞ」
「どうせ噂に尾ヒレが付いただけだ、惑わされるな」
「油断しないに越した事は無い、それだけだ」
練習試合の話が広まっているらしく相手側陣営のヒソヒソ話が此方にも伝わってくる。
しかし、彼等が真の意味で肝を冷やすのはこれからである。
「さあ、僕達の本当のデビュー戦だ」
「あんなモブキャラに時間掛けてられないわよ?」
「先輩達や少尉に見せ付けてやろう!」
こちらの一年生チームにも気合いが入る。
『これより、東神奈川地区予選第六試合を開始します』
アナウンスが開場に響く。
殆どのギャラリーが他の試合に集中している。
(ここは部長を出すべきだったか…)
ムカイはそのギャラリーの無関心っぷりに少し後悔をした。
「データに無い連中だな、一年生か?」
相手陣営の中央にいる男が言う。
「諦めたのかやる気が無いのか…」
「やってみれば分かる」
商北高のメンバーも流石に動揺は隠せない様だ。
【PLEASE SETYOUR GPBASE】
六人が通信端末であるGPベースをセットする。
【PLEASE SETYOUR GANPLA】
揃った様にガンプラが並べられる。
サエコのサイコガンダムには特別違いは見られない。
ムサシのガンタンクはグフの腕を1/100MGグフの物に大型化している様だ。
益々ゲッ〇ー3である。
残る一機、胸部を青く、それ以外を白一色に染めて赤いブーツを履いているかの様なゲルググが異彩を放つ。
肩にはAを図形化した赤いユニコーンが描かれ、右手にはガンダム用のライフル、左手には連邦を現す黄色い十字のレリーフが付けられたゲルググのシールドを持つ。
「サエコ、サイコガンダム発進します」
「ムサシ、ガンタンク柔(やわら)出ます」
「レイ、行きます」
六機のMSがバトルフィールドに投入された。
バトルフィールドは月。
此方には有利も不利も無いので相手次第のフィールドである。
相手陣営の機体はNT-1、量産型ガンキャノン、ジムスナイパー2の編成でどれもジオンカラーで塗装されている。
「連中の機体の中に連邦カラーのゲルググが居る」
スナイパーがレンズ越しにレイのゲルググを発見する。
「友軍の機体が奴等に使われているのは忍びない、楽にしてやれ」
NT-1に乗るリーダーらしき男が返事をするとスナイパーのライフルから光が放たれる。
必殺の一撃がゲルググに迫るもレイはそれを苦もなく回避してみせる。
「何ぃ?」
その本来でアレば回避など不可能な一撃を避けられたスナイパーは驚きの余り動きが鈍る。
そのスナイパーの正面からアラート、避ける間も無くスナイパーのライフルを右腕部ごと持っていく。
「狙撃手は撃ったら逃げるのがセオリーらしいですよ」
ムサシの攻撃だ。
「ちいっ」
ライフルの誘爆から逃れて体勢を整えるスナイパー。
狙撃手によるファーストアタックでルーキーズが先制する。
互いのエースであるガンダムとゲルググが突進しながら距離を詰めている間、ガンキャノンがサイコガンダムにアタックを掛けていた。
ガンキャノン量産型という機体は見た目以上に近距離戦型の機体なのだが、サイコガンダムの大きさ故に多少距離を置いて戦っても十分に勝算のある距離と見たのだろう。
唯一の誤算はファイターであるサエコの性格であろうか。
「ビィィィィムッチョォォォォォォップッ!」
サエコは絶叫と共に指のメガ粒子砲を横凪ぎに放つ。
慌てて上方にジャンプして難を逃れるキャノン、ここが1Gのフィールドだったら彼のガンプラは粉々だったろう。
「なんて自由な発想だ…」
キャノンのファイターが額に汗を垂らす。
「ちいっ、だったらこれでも喰らえっ」
サイコガンダムは左の拳を握りしめて前に突き出す。
「この構え…まさかっ!」
キャノンのファイターが何かを悟る。
「ガンダァァァァァッパァァァァァンチィッ!!」
火を吹きながら轟音と共に拳が飛んでくる。
自由落下状態のキャノンにこれを避ける術はない。
だが、キャノンに拳が当たろうかという刹那、一条の光に貫かれて爆発する。
「油断大敵だな!」
先程直撃を免れていたスナイパーが左手にゲルググJのビームマシンガンを携えてサイコガンダムに向かっていた。
左拳を失ったサイコガンダムに二機のMSが迫る。
「ガンダァァァァァッソォォォォォッドッ!」
サエコはSPスロットをクリックして叫ぶ。
すると、月の外周を回っていた人工衛星から一振りの大剣が射出される。
地面に深々と突き刺さる大剣を右腕一本で軽々と引き抜くサイコガンダム。
呆気に取られるスナイパー、キャノンは二度目故か動じない。
それをサエコは見逃さなかった。
「サイコウエェェェェッブッ」
サイコガンダムの全身から放たれる紫色のオーラに当てられ動きを封じられるスナイパー。
サイコガンダムの次の行動を阻止するべく砲撃を開始するキャノンを別方向からの砲撃が邪魔をする。
「あなた、この展開を邪魔するのはちょっと野暮ですよ?」
ムサシのガンタンク柔が突進してくる。
妨害がカットされた事でフリーになるサイコガンダム。
「サイコ…スラァァァッシュッ!」
動きを封じられたスナイパーを文字通り荒削りな大剣が真っ二つにする。
「粒子残量が少ないからソイツはムサシくんにあげる」
サエコがそう言うとサイコガンダムは目から光を失う。
「では遠慮無く」
ムサシはそう言うとムサシはそう言うと最早フィンガーバルカンと呼ぶには憚られる巨砲を撃ち放つ。
砲撃戦は不利と見るやキャノンはビームサーベルを抜刀して距離を詰める。
本来は無い装備だが、近接戦闘用に取り付けたのだろう。
キャノンのサーベルによる一撃をガンタンク柔は右掌で受け止める。
掌には緑色の半球状クリスタルパーツが取り付けられていて、そこから発生する粒子がバリアを形成してサーベルの浸入を防ぐ。
「この光、GN粒子だとでも言うのか?」
切り札を無力化されて流石に狼狽えるキャノンのファイター。
「必殺真空投げっ!」
ムサシがSPスロットをクリックして技の名前をコールすると、クリスタルパーツから粒子の竜巻が放たれた。
緑色の粒子の渦がキャノンの重装甲をズタズタにする。
粒子の渦が消え去った後には辛うじて原型を残すガンキャノン量産型が立っていた。
右腕を持ち上げ、一本前に出た所でキャノンはついに原型を咎める事が出来ずに崩壊、直後に爆発する。
「大技は粒子を浪費してダメですね」
ムサシの言葉をスイッチにするかの如くガンタンク柔も動かなくなる。
残るは先行したリーダーの二機のみだ。
奇しくもジオンカラーのNT-1とアムロカラーのゲルググの対決である。
「その機体を汚すな下郎が!」
人の事が言えた義理では無いであろうジオングリーンのガンダムのライフルが火を放つ。
そのビームを全て紙一重で避けるレイ。
「その動き、アイラ・ユルキアイネンの再来とでも言うつもりか!」
アイラ・ユルキアイネンは七年前の世界大会でベスト4にまでなった強豪で、その戦い方からスペシャルとかニュータイプと呼ばれたファイターだ。
「そんなに器用なもんじゃ有りませんよ」
レイはそれだけ言うとライフルで反撃、NT-1のライフルに命中、破壊する。
ピンク色の爆煙を突き抜けて弾幕がゲルググを襲う。
NT-1の腕部ガトリング砲だ。
だが、その実弾はゲルググの盾に阻まれる。
「装甲の薄いケンプファーと重装甲のゲルググで同じ戦い方をしても」
レイはそれだけ言うとライフルを捨てて更に距離を詰める。
それを見たNT-1もガトリング砲での射撃戦を止めて背中のサーベルを抜いてゲルググに向かって加速する。
レイはサーベルを抜かずに前進する。
刹那、一条の閃光がNT-1を貫く。
「なっ…」
何が起こったのか理解出来ずに言葉を失う相手のリーダー。
「ライフルをリモートコントロールにしただけです」
レイは簡単に言うが、コントロールはそんなに簡単では無い。
呆気に取られている相手リーダーのNT-1に静かに連邦仕様のビームサーベルで止めを刺す。
【BATTLE END】
陵南、初戦は課題を残すも手堅い一勝であった。