仮面ライダーHearts   作:山石 悠

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 どうも、山石悠です。今日は部活の見学でした。ラグビー部の先輩に勧誘(拉致)されて大変でした。

 ということで、今回のお話です。

 今回は……水です。これ以上は言いません。今までに出てきたことやサブタイトルを参考にしてください。

 それでは、お楽しみいただければ幸いです。


[悲] 激流の悲嘆

??? ???研究所

 

「いよいよ今日か。記憶が戻ると思ったんだけどね、残念だ……」

 

 

 とある研究所。ここでとある科学者が一人、何かをつぶやいていた。彼は庭らしき場所で花を観察している青年が移った画面を見ながら悲しそうな表情を見せた。

 

 

「いくらモルモットと同じだと思っても、それなりに愛着は湧いてしまう。……まあ、仕方ないか。これも先輩たちの仇をとるためだ」

 

 

 彼は真剣な顔をすると立ち上がった。そして、何処かへと向かい始めた。

 

 

「さあ、彼らは頑張ってくれているんだ。私も彼に勝てるようにしなければな。」

 

 

 歩き出した彼の影には翼が生えていた。

 

 

 

鈴原町 三坂貴大宅

 

「おーい、御飯できたよ!」

「分かったー! 総慈! 行くぞー」

「あ、はーい!」

 

 

 ここはお昼時の三坂家。今は平和の二文字がぴったりだ。そして、今昼食が完成したようで、貴大達は全員食事を始める。

 

 

「お兄ちゃんに総慈さん。二人とも、もう大丈夫なの?」

「ああ、もう大丈夫だと思うぞ」

「はい、大丈夫です」

 

 

 あの亀との戦いの後、貴大は“Terror(テラー)”によって、総慈は記憶が戻りそうになったことで、倒れてしまったのだった。貴大の方は今後一切“Terror(テラー)”の使用を禁止になった。あの時の暴走は緑曰くチップにのまれてしまったから、とのことだった。そして、総慈の方は思い出しかけはしたが、結局何処かの施設にいたことしか覚えていないとのことだった。

 

 

「……それにしても、総慈のいた施設っていうのはどんなとこなのかねぇ」

「すいません。記憶が戻らなくて」

「い、いや。別にいいから、気にしないで」

 

 

 総慈は気にしないでとは言われはしたが、やはり少しは気にしていた。いきなり怪我人として助けられ、更には記憶が戻るまでとはいえ、家に置いていてくれる。こんなことをしてくれる人などそうはいないだろう。総慈はやはり、一刻も早く記憶を取り戻したいと思っていた。そして、そのためのヒントもいくつかはあるのだ。

 

 

「あの。僕、これ食べたらまた少しヒントになる場所を回っておきます」

「そうか。あ、俺も一緒に行こうか?」

「いや、一人で大丈夫です」

「そうか。それじゃあ、思い出せたら教えてくれな」

「はい」

 

 

 

鈴坂町 鈴音第三公園

 

「うーん。なんか引っかかりはするんだけどな」

 

 

 総慈は鈴音第三公園に来ていた。この公園は前に“使心獣”が現れた影響で荒れてしまっていたが、今ではもうその影響は見られない。総慈は芝の上に寝転がってみる。

 

 

「うん、これが一番しっくりくる。なんて言うか、視線が懐かしい感じがする」

 

 

 彼はしばらく寝転がっていたが、思い出せそうになかったので、移動することにした。総慈は公園の中心地……芝ばかりの場所から、端の方にある木の多い所に移動した。

 

 

「何か思い出せ~~」

 

 

 少しおどけたようにしゃべる総慈はふと気になるものを見つけた。それはスズメバチだった。総慈は蜂に何か感じるものがあったのか、少しずつ近づいていく。そして、蜂が目の前に来たところでどこからか声が聞こえる。

 

 

「おい、久しぶりだな。元気にしてたか?」

「だ、誰!? 僕のことを知っているんですか?」

 

 

 総慈は声の主を探すためにあたりを見回す。しかし、総慈の周りに人はいなかった。総慈は不思議そうに視線を戻すと、先ほどまで誰もいなかった所に人がいた。

 

 

「き、君は……」

「俺か? 俺はな、ずっと監視していたんだ。お前、No48クロオオアリの“Camponotus japonicus”をな」

「なんですか。僕が蟻だって言いたいんですか?」

 

 

 総慈は青年に問う。彼は何が言いたいんだ、という感じの顔をして総慈にいった。

 

 

「まだ思い出さないのか? お前は俺と同じ“使心獣”で、クロオオアリがもとになっているっていってるんだ。そのヒントはあったはずだ」

「ヒント?」

「ああ。お前、この公園で寝転がった時に何か感じなかったのか?」

「あ、そういえば……」

「それが一つ目、お前がただの蟻だった時の記憶があるからだ」

「そ、そんな……」

 

 

 総慈は純粋に驚いていた。自分を知る人物が現れたことに。その人物が自分をずっと監視していたことに。そして、自分が人ならざるものであることに。

 

 

「う、嘘だ! 僕は人だ! あ、そうだ! あなたも“使心獣”っていうものなんでしょう? じゃあ、あなただって何かの動物なんですよね? それになってください」

「……お前、さっき見ただろう。俺はさっきの蜂だ。見ていなかったのなら、もう一度なってやろう」

 

 

 青年はそういうと、一歩下がる。そして、彼の体が揺らいだかと思うとそこにはもう、一匹の蜂しかいなかった。そして、すぐに蜂の体は揺らいでまた青年に戻った。

 

 

「そんな……。まさか……」

「やっと信じる気になったか? お前だって蟻になれるはずだがな。……ああ、そうだった。お前にはこっちの方も見せてやろう」

 

 

 そういうと青年の体が変化していく。それは総慈をずっと監視していた人と蜂の中間のような姿だった。

 

 

「ぼ、僕もこれになれるんですか……」

「ああ、お前の場合は蟻だがな」

「わ、分かりました。僕が“使心獣”だという存在なのは信じます。じゃあ、僕はどうして記憶をなくしたんですか?」

「お前が記憶をなくしたのは……」

 

 

 そして、蜂はしばらく話をまとめようとしているのか、考えてから口を開く。

 

 

「……お前は生存本能に従い、多くの人間を傷つけ“ココロ”を喰らった。それはきっと人と争うのを嫌ったお前にとっては恐ろしいことだったのだろうな。それによってショックを受けたお前は記憶をなくしたのだ」

「な、なんだって……」

 

 

 総慈はその事実を知りショックを受けた。そして、ここまで言われてやっと思い出したのだた。誰も傷つけたくない、まじめに働いて、みんな仲良く静かに暮らしたい。こんなことを考えていた総慈は研究所を逃げ出したのだ。そして、人に襲われ……。あとは蜂が言っていたとおりだった。

 

 

「……思い出しました。僕は人ではなかったんですね」

「ああ、そうだ。そして、逃げ出したお前は処刑されるのだ」

「そうですか。君じゃあ、逃げられないですね。亀君ならなんとかなったかもしれないけど。……まあ、関係ないか。さあ、やってください」

 

 

 総慈は自分の死ぬ運命を受け入れようとした。だが、その決心をするのはとても苦しかっただろう。総慈はいろいろなことを思い出す。それは記憶をなくしてしまってからのことだった。

 

 

 貴大達に助けられ、家に置いてくれた。この“総慈”といういい名前を貰った。貴大と一緒に出かけて、翔逸と家事をして、緑に怪我や記憶の様子を見てもらって、勇介と体を鍛えたり……。まだまだ思い出はある。それに四人だけじゃない。近所おばさん、翔逸の友人の拓海、商店街の人たち……。多くの人が総慈の周りにいた。総慈のことを心配して、優しくしてくれて、一緒にいた。総慈は最後に一つだけ願いがかなうのなら、もう一度、もう一度だけ彼らに会いたかった。……そして、その願いは少しだけ叶う。

 

 

「総慈さん! 大丈夫ですか!」

 

 

 翔一が来た。

 

 

「総慈君! 怪我はない?」

 

 

 緑が来た。

 

 

「総慈! 安心しろ! 助けに来た!」

 

 

 勇介が来た。

 

 

「総慈! “ココロ”、喰われたりしてないよな? 元気に家に帰ろうぜ!」

 

 

 ハーツに変身した貴大が来た。

 

 

「……み、皆さん」

 

 

 総慈は嬉しくなった。こんな自分を助けに、迎えに、心配してくれる人達がいることに。

 

 

「フン、仮面ライダーか」

「おい! 総慈を離せ! 何かしてたら、ぶっ飛ばしてやる!」

「何かした? 記憶を取り戻させてやったのだ。こいつの“使心獣”としての記憶を」

 

 

 蜂のこの発言に貴大達は衝撃を受けた。そして、すぐにそれを否定しようとする。

 

 

「嘘だ! 総慈は人だ! “使心獣”なんかじゃない!」

「いいや、こいつは“使心獣”。No48クロオオアリの“Camponotus japonicus”だ。人間の“ココロ”を喰ったこともある。どうだ、裏切られた気分は!」

 

 

 貴大達は否定していくのに、ことごとく蜂から返答がやってくる。貴大はずっと黙っている総慈に訊く。

 

 

「総慈! お前は本当に“使心獣”なのか?」

「はい、すいません。ずっと騙していたんです」

「騙してた? 何言ってんだ。お前は記憶がなかったんだ、それは騙していたことにはならない。それに“使心獣”だったとしてもお前は俺たちの仲間で、家族だ!」

「た、貴大さん。ありがとうございます……」

 

 

 総慈が予想もしていなかった貴大の言葉に、総慈はとてもうれしくなってきた。だが、この会話を面白く思わない存在がいる。それはずっと総慈のそばにいる蜂だ。

 

 

「なんだ? そのお涙ちょうだいな話は? つまらんな。こうなったらこの場で処刑してやる!」

「な、何!? やめろ!」

 

 

 貴大の制止を無視して、蜂は総慈にその爪を振り下ろす。ザクッという音がして、総慈の胸に穴が開く。周りには血しぶきで真っ赤に染まる。貴大達は茫然としていた。その様子を見て蜂が笑う。

 

 

「ハハハ、傑作だ! 見事なほどの悲しみだ! これこそ俺の見たかった表情だ!」

 

 

 蜂が高笑いをしていると、貴大がショックから立ち直った。

 

 

「な、なんでだよ! お前の仲間だったんだろ!」

「何を言っている? あれは処刑の対象だ。仲間などではない」

「なんで、なんで、なんでそんな悲しいことを言うんだよ!!!!」

 

 

 その時、貴大の中で熱い何かと目の前にいる蜂を押し流してしまおうとする何かが現れる。これはいつぶりだっただろうか? あの炎のように今度は水が出てくる。その水はこの目の前にいる存在を押し流すかのように“H”から、あふれてくる。貴大はその水を出す元になっているものをとりだして、ゆっくりとドライバーに入れる。

 

 

Heart(ハート)Grief(グリフ)”」

 

 

 “Grief(グリフ)”。その意味は“悲嘆”。それは総慈が殺されそうになって傷ついたことに対する悲しみ。その大きな悲しみは激流となって敵を押し流す。ドライバーから際限なく出てくる水に包まれた貴大はゆっくりとその姿を変えていく。白を基調としたその姿から、青を基調とした姿に。すべて終了するとそこには青くなったハーツ、“Grief(グリフ) form(フォーム)”になった。

 

 

「白、赤、黒、ときて今度は青か。カラフルになるものだな」

「いってろ。総慈のかたきは絶対に取る」

「やれるものなら……」

 

 

 蜂はゆっくりと貴大に殺気を当てて、構える。そして、少しためてから続きを言う。

 

 

「……やってみろ!」

「上等だ!」

Weapon(ウェポン)Gun(ガン)” Attack(アタック)Shoot(シュート)”」

 

 

 貴大の手元には銃がやってくる。それはいつもと違って二丁の銃だった。貴大は蜂に向かって銃を撃つ。蜂は少しは受けつつもよけたりはじいたりする。貴大はその動きに驚き、思わず声に出す。

 

 

「まじかよ。化物か?」

「化物に決まっているだろう!」

 

 

 蜂は貴大のそばまで来ると、連続でパンチやキックを放つ。貴大は銃を持つ手でさばきながら、次のチップを入れる。

 

 

Weapon(ウェポン)Sword(ソード)” Attack(アタック)Slash(スラッシュ)”」

 

 

 貴大は新たにあらわれた剣を手に取る。それも、先ほどの銃の時のようにいつもと違う短剣になっている。貴大は武器と、自分の動きからこのチップによって上昇する能力を理解した。そして、更にチップを足す。

 

 

Attack(アタック)Acceleration(アクセラレーション)”」

 

 

 貴大は加速した。“Grief(グリフ) form(フォーム)”はスピードタイプだ。連続で攻撃を加えていくタイプ。だから、この姿の武器はそういった戦い方にあったものになるのだ。

 

 

「これでどうだ! どりゃあ!」

「くっ、速い! だが、見きれない速度ではない」

 

 

 蜂は必死に貴大の連続攻撃に押されていく。そうして、貴大の方が優勢になってきた。蜂の方は小さいとはいえ、少しずつたまっていく疲れとダメージによって動きが落ちる。貴大はそうしてできた隙をついて大きな一撃を与えた。蜂は攻撃によって飛んで少し離れたところに倒れた。貴大はチップをとりだす。

 

 

「これで終わりだ」

「“Grief(グリフ)” “Shoot(シュート)Final(ファイナル) Attack(アタック)

 

 

 貴大は銃口を蜂に向ける。そして、いつものように必殺技の名前を考えてから叫ぶ。

 

 

「流せ悲嘆を! “Grief(グリフ) Shoot(シュート)”」

 

 

 銃に水がたまり、水の弾になる。そして、その貴大の放った水の銃弾は一直線に蜂に飛んで見事に命中する。

 

 

「ク、クソ。仮面ライダー、貴様はいつか俺の仲間が倒す」

 

 

 蜂はそれだけ言い残して爆発した。貴大は変身を解除してすぐに総慈のところに行く。総慈は重症で普通の人なら今にも死ぬだろうという状況だった。これだけの時間生き延びたのは総慈が“使心獣”だったことと生きようとする執念だったのだろう。貴大が駆け寄ると総慈は貴大の方を見て話しだす。

 

 

「貴大、さん」

「な、なんだよ。しゃべるな。しゃべるなら治してからにしろ」

「い、いえ。この場で、言います。僕は、嬉しかった。人でないのに、家族だと、いってくれたことが。助けようと、してくれたこと。本当に、ありがとうございます」

「何言ってんだ。これからも一緒に楽しく暮らすんだ。もう助からないみたいなこと言うな」

 

 

 貴大の言葉に総慈はゆっくりと首を振って答える。

 

 

「助かりません。分かるんです。きっと、皆さんとの、生活は、僕が死ぬ前に、神様がくれた、贈り物です」

 

 

 総慈は怪我できっといたいはずなのに、終始笑顔を絶やさずにしゃべり続ける。

 

 

「皆さん。皆さんのおかげで、僕は笑っていられます。本当に、本当に……」

「言うな! それ以上は家に帰ってからいくらでも聞いてやる!」

「貴大さん、この場で、言わせてください」

 

 

 総慈は全員を見まわしてから、ゆっくりと口を開いた。しかし、それはもう音として出てくることはなかった。貴大達は全員、涙が出てきた。総慈の最後の言葉は音にならなくたって、ちゃんと貴大達にはとどいていた。

 

 

「ありがとう」

 

 

 この五文字はいつまでも貴大達の心の中で響き続けた。




 どうでしたでしょうか?

 個人的に今回の“Grief(グリフ) Form(フォーム)”はクウガのドラゴンフォームやキバのバッシャーフォームをイメージしました。水とかスピードとか。

 これで総慈君はこのお話の舞台から降りることになりました。残念です。個人的には好きだったんですけど……。

 それで、次回からは夏休みモードです。現実(リアル)の方は春休みが終わったばかりですが……。とりあえず、次回からは夏祭りネタで行くことにしましょう。それが終われば肝試し、ってね♪

 それでは、次回[憶]の回も見ていただければ幸いです。

See you next time!
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