と、続いて本編の方に行きましょう。
今回は夏祭り当日。本編で言ってるかは覚えてないんですが、鈴音様の命日です。皆さん、一分間黙祷。
……していただけたのか、それは分かりませんが、次に進みましょう。今回は、少し恋愛ものっぽい感じを入れました、これから数話先には、完全に恋愛ものなお話もあります。お付き合いしていただければ、ですね。
それでは、話が長くなりましたが、お楽しみいただければ幸いです。
鈴沢町 鈴音神社
赤い光を飛ばす夕陽がまぶしい時のことだ。青年はこの神社に祭りの下見に来ていた。それが終わり、帰ろうとするところで境内の端にある木のそばに一人の女性を見かけた。女性は茶色っぽい着物を着ていた。着物は地味な色であるはずなのに、女性姿は妙に美しく輝いて見えた。
「綺麗だ……」
何気なく口から出てきた一言に反応してか、女性は青年の方を見る。横顔しか見えていなかったが、正面から見てもやはり綺麗だった。女性は青年に軽く一礼して微笑む。その姿に青年は心を奪われてしまったようだ。青年はゆっくりと女性の方へと歩く。そして、女性の前に来て止まる。すると、今度は女性の方から青年に近寄る。その距離の近さに青年は戸惑ってしまった。
「な、何でしょうか……」
女性は何も言わない。青年はもしかして、もしかするんじゃないかと、期待する。青年はじっとしている。女性は青年の胸に手を当てる。青年は何を始めるんだろうかと思っていた。青年は自分の胸に当てられた手をじっと見ていると、その手が突然光りだした。青年は驚いてしまうが、だんだん驚かなく、いや、驚けなくなりその光“ココロ”は失われていく。完全に光が消えた時、青年は倒れて意識を失った。
??? ???
「完成したわね、大我さん」
「そうだね。いや、久しぶりに頭を使ったから製作には時間がかかったね」
何処かにある研究所。そこでは二人の男女がガラスの向こう、鎧のようなものをまとっている何か、あるいは誰かを見ていた。
「彼はもともとバトルのセンスはあったようだし、“グラント”の調整をするだけだったから予定よりは早かったね」
「そうね。それでは、彼には鈴音に行ってもらいましょうか」
「確かに早い方がいいかもね。そろそろ竜崎君の創った“使心獣”とやらも強力な生物が出てくるだろうし」
二人はそこまで話すと、ガラスの向こう側の部屋に入る。二人が入った時には、16~18歳、高校生くらいの少年がいた。中肉中背という感じの体だが、普通の高校生には出せないだろうというくらいの殺伐とした雰囲気を漂わせていた。
「博士、調整は?」
「ああ、すべて終了したよ。だから、君にはこれから鈴音に行ってもらうよ」
「この“風の都”からは少し離れていますね」
「そこまでの距離じゃないよ。まあ、鈴音はここよりは田舎かもしれないけどね」
二人が話しかけたあたりから、少年からは先ほどまであったオーラのようなものはなくなり、年相応の反応をしていた。
「じゃあ、今日にも出発します」
「ああ、そうしてくれるとありがたいよ。それで、向こうに着いたら僕らの息子の下を訪れるといいよ」
「息子、ですか……」
「ああ、彼は向こうで“ハーツ”という名で戦っている。君も向こうで“グラント”として頑張ってきてくれ」
「分かりました。博士たちにはお世話になりましたから。全力で頑張りますよ」
少年はそういうと、二人に一礼して部屋から出て行った。残された二人は彼の出て行ったほうを見てつぶやく。
「彼が貴大の助けになるといいけれど」
「なりますよ。彼はきっと私たちの願いを“叶えて”くれます」
「確かにそうだね。僕たちはそういう意味を込めてあれを創ったのだから」
鈴谷町 鈴音東高等学校
「三坂っち、もう夏っすよ。夏といえば何を想像するっすか?」
「うーん……宿題」
「それは悲しすぎるっすよ。夏といえば、輝く海! そびえる山! 薄着な女の子! って、相場が決まってるっす!」
二人の少年、いや片方だけの少年が夏について熱く語っている。もう片方の少年は夏休みとかそういったことなんか頭になくて、もっと違うことを考えていた。
「どうしたっすか? 恋っすか?」
「全然違うよ。あの、鈴音様の亡霊のことさ。あの後、何度言っても会えなかったんだよな」
そうなのだ。貴大が初めて鈴音神社に行った日に見たっきり、何度行っても会えないのだ。だが貴大のいない時には出てくるらしく、もう五人ほどが犠牲になっているそうだった。
「そんなことばっかり考えてないで、夏休みはもうすぐっすよ。何して遊ぼうとか、彼女を作ろうとかあるはずっすよ!」
「いや、一切ない。今はそんなことしてられないんだ」
「はあ、またっすか。いっつもそう言ってるっすよ」
少年こと響はため息をつく。そんな二人の話をある三人がこっそり聞いている。そのセリフが出た時に二人は響のようにため息をつき、残りの一人は悲しい顔をしていた。響はそんな三人に気がついてまたため息をつく。
「三坂っちが何でもかんでも、高校生らしいことを捨ててまですることってなんすか?」
「それは……言えない」
「どうしてっすか?」
「どうしてもだ。いつか、話すから……」
「しょうがないっすね。いつか話して貰うっすからね」
響はもう、授業が始まるからか貴大に追求するのを諦めて席に戻った。貴大はあの鈴音様に化けている“使心獣”について考えるが、担任が入ってきたところで思考を止めた。
鈴沢町 鈴音神社
「三坂くーん! こっちーー!!」
「速いって。もう少し落ち着け」
「でも、お祭りってテンションが上がるんだよ!」
「それは分かるんだけど……」
今日は夏祭りの当日。貴大は優希と共に鈴音神社に来ていた。貴大はあの“使心獣”に未だあえておらず、今回も難しいかもしれないと思っていた。
「それにしても、すごい人だな」
「そりゃそうだよ。この街で、一番二番を争うくらいのイベントなんだから」
「なるほどなぁ」
祭りの会場は鈴音神社であった。太陽がその姿を隠し、月が空に昇る夜を祭の明かりや人々の熱気で明るく、そして暖かくする。更に浴衣やTシャツの人が屋台と屋台の間を歩く様子や、屋台の店主が声を張り上げるこの光景は幻想的だった。貴大はその光景を見て、いつもの日常から切り離されたような気がしてくるのだった。
「……か君! 三坂君!」
「……あっ! ああ、ごめん。呆けてた」
「全くもう。早く先に行くよ!」
「ああ、そうだな」
二人は横からかかってくる屋台の定員たちの呼びかけを聞き流しながら先に進む。だが、優希が急にとある屋台の方に走って行ってしまった。
「見て見て! 金魚すくいだよ!」
「ああ、そうだな」
「どうだい嬢ちゃん、一回百円だよ」
金魚すくいの屋台をしている五十くらいの豪快そうなおじさんが優希に話しかける。優希は少し考えてから貴大の方を見る。何も言いはしなかったが、その目はやりたいと言っているようだった。貴大はしょうがないという感じで笑う。
「別にいいんじゃないか。せっかくの祭だ」
「うん! ありがとう! それじゃあ、とりあえず一回分ね!」
「はい! 毎度あり! それじゃあ、こいつを使ってくれ」
優希はよーし! と意気込んで金魚すくいを始める。しかし、優希は少々……いやかなり下手くそだった。あっという間に破れてしまう。だが、諦めないで何度もやるが全然成功しない。
「全然できないよ! 三坂君!」
「え? 俺がするの?」
「やってやれよ、可愛い彼女にいいとこ見せようとか思わないのか?」
「か、彼女!?」
「ハァ~~。仕方ないな。おじさん、一回分」
優希が貴大に助けてくれと言わんばかりに見つめると、おじさんはニヤニヤ笑いながら乗っかる。優希が彼女といわれて恥ずかしそうにするが、貴大はそれに気づかず諦めたように一回分の代金を支払う。そして、貴大は受け取ってから気がついた。紙が薄くなっていることに。ハッとおじさんを見ると、意地悪な笑みを浮かべて貴大を眺める。これを見て貴大が吹っ切れた。
「フフフ、おっさん。結果を見て泣いても知らんぞ」
「み、三坂君!? 性格変わってるよ!?」
「ふぅ~、よし! 必ず取ってやる!」
貴大は気合いを入れて水槽を眺める。そして、貴大は金魚たちを“威圧”する。すると、金魚たちは固まってしまった。貴大は動くことすらも忘れた金魚たちをどんどん掬っていく。その光景に優希とおじさんは唖然としていた。そして、最後には貴大の持っていたお椀は金魚でいっぱいになっていた。
「どうだ! ざまぁみろ!」
「……何!? な、何をした!?」
「見ての通りだよ。これだけ掬ってやったぜ!」
貴大はどうだ! といわんばかりにおじさんを見つめる。それに対して、おじさんは悔しそうにしていた。その時、優希が貴大に向かって言う。
「ねえ、三坂君。ポケットのところが光ってるよ?」
「え? どれだ?」
そう言って貴大はポケットの中から光るものを出すと驚いた。それは“H”のチップだったからだ。貴大はすぐに光ったチップを確認する。それは“威圧”の“
「ねえ、それって何?」
「あ、えっと、その……知り合いの科学者が創ったものだよ」
「へえ、一体どんなものなの?」
「さあ? よく分からないんだ」
嘘は言っていない。実際に知り合いの科学者が作ったし、チップの効果も分からない。貴大はごまかして、おじさんから金魚を三匹(持って帰れる最大数だった)を貰って先に進んだ。そうすると、今度は優希が何処かを見つめ始める。貴大がそちらを見ると、そこには大きな人形があった。貴大はまたしょうがないと笑ってそちらに歩いていく。優希は驚いたように貴大について行った。
「よし、今度は俺がわがまま言う番だ。この射的、やらせてもらうからな」
「え、あ、ああ。うん、いいよ」
「ヨッシャ、それじゃ。……すいません! 一回分お願いします!」
「あ、いいよ。はい、十発。三百円」
貴大はコルクの弾を受け取ると狙いをつける。ハーツとして銃は何度も使っているので簡単に景品を落としていく。その中には優希が見つめていた景品も含まれていた。貴大は全て撃ち終えるともう帰ってくれ! というお兄さんの声を聞きながら先に進む。
「あ、これ。俺はいらないから貰ってくれ」
「いいの?」
「ああ、別にほしいものじゃなかったから」
「そうなんだ。ありがとう、大事にするよ。よろしくね、メリーちゃん」
「め、メリーちゃん!? もう名前つけたのか!?」
「うん、都市伝説に出てくるメリーさんからとったんだ」
優希は笑いながら人形……メリーちゃんをギュッと抱きしめる。と、そうしているうちに神社の一番奥にまでやってきた。二人はお参りをしてから来た道を戻ろうとした。しかし、優希がふと何かを見つけたようでそちらの方に歩き出した。貴大は何事かと優希の後を追いかけた。すると、そこには一人の女性、鈴音様に化けた“使心獣”がいた。女性は優希に近づいて人質に取る。
「おい、“使心獣”! 優希を離せ!」
「返してほしいなら力ずくで取り返しなさい」
女性は決して大きくは無いが、よく通る凛とした声で言った。そして、その姿が徐々に変化していく。その姿は鳥の特徴が入った“怪人体”だった。優希はうんうん唸って逃げ出そうとする。貴大は優希に見られることも気にしないと、ドライバーをつける。
「優希は絶対助けるからな!」
「危ないって! 早く三坂君は逃げて!」
優希はなんとかしゃべれるようになって、貴大に言う。しかし、貴大の耳には入らなかった。貴大は“H”からチップをとりだす。それは真っ白な色をしていた。そして、叫んだ。
「変身!」
「
ドライバーがお決まりの音声を流すと、貴大の周りに“装甲”が現れる。それはどんどん貴大に装備されていく。優希はそれを見て驚く。そして、すべて終了するとそこには人々の“ココロ”を守る戦士“仮面ライダーハーツ”が現れる。
「やはり、あなたが仮面ライダーでしたか。初めて会ったときからそう思ってましたよ。あなたは私、No20ミソサザイの“Troglodytes troglodytes”が倒します」
「うるさい。お喋りはいいからさっさと優希を返して貰う」
貴大はそういうとチップをとりだす。それは先ほど使えるようになったばかりの“
「
その音声が流れると鳥はピクリともしなくなった。それは先ほどの金魚のように。貴大は鳥が動けない間に優希をとり返す。だがチップの制御ができず、優希も動けなくなっていた。貴大は優希をどうしたらいいのか悩んでしまう。しかし、その間に鳥はまた動けるようになってしまった。
「ようやく動けるようになりました。全く、あなたのチップというのは厄介ですね」
鳥はそう言いながら構える。そして、貴大と優希の方を見てさらに続ける。
「ですが……私が勝つ!」
「誰が負けるか! 行くぜ!」
鳥は貴大の方に向かう。貴大は優希を近くに下ろしてチップをとりだす。それは今は隠れている太陽のような赤だった。
「
「うっ、熱い……」
赤いチップ、“怒気”の“
「さあ、どんどん行くぜ!」
「
貴大が入れたのは“
「はあぁぁぁぁ!!!!!」
剣は綺麗に鳥の体を文字通り、叩き斬った。鳥は地面にたたきつけられ、その衝撃で動けなくなっていた。貴大はすぐに二つのチップを入れる。それはこの戦いに終止符を打つものだった。
「“
「燃やせ怒気を! “
貴大は炎に包まれる剣を鳥にたたきつける。そして、鳥は断末魔をあげる暇なく爆発した。貴大はそれを確認してすぐに変身を解除して優希の所へ向かう。優希はなんとか“
「三坂君が……仮面ライダーだったんだね」
「ああ、俺が仮面ライダーハーツだ」
優希は貴大の言葉をゆっくりとのみこんで理解しようとする。そして、少し置いてからまた質問をしていく。
「私に初めて会ったときから仮面ライダーだったの?」
「そうだ。あのちょっと前からだった」
「そう………」
優希は悲しそうにうつむいた。そして、自嘲的な笑みを浮かべる。
「三坂君にしたら、私は滑稽に映ってたんだろうね」
「いや、そんなことは……」
「もういいよ。今は何も聞きたくない、一人にして」
優希はそう言って神社を後にした。そして、その場に残されたのは申し訳なさそうにうつむく貴大の姿だった。その光景は当事者たちの抱いていた思いや夢や幻想を砕いてしまったようだった。
どうでしたでしょうか?
“威圧”の“
それで、ようやく永見さんに正体がばれてしまいました。三坂君はもう、他の人にもしゃべってしまおうかと………。
というのが、次回です。少しホラー成分があるお話です。
それでは、次回の[忍]の回も見ていただければ幸いです。
See you next time!