まあ、それはなんとかしていけるように頑張ります。それで、今回のお話です。
今回注目の人物。それは新キャラの“願いの体現者”さんです。彼(便宜的にそう呼びます)はこれからの話にどういう影響を与えてくれるのか?
ついでに言っておきますが、サブタイトルの“悉皆”とは、『残らず、すっかり、全部』という意味を持ちます。今回は『全部』ですね。ということは、“悉皆願いの体現者”とは『すべての“願い”を形にする者』という意味になります。
ということで、今回もお楽しみいただければ幸いです。
鈴本町 鈴音駅
「……着いた」
一人の少年がぽつりとつぶやく。大きなカバンを二つ。そして、その手には鈴音市の地図。それを見れば、彼が新たにこの街にやってきた者と分かるだろう。少年は鞄の中から小さなレーダーのようなものをとりだす。そして、一言つぶやく。
「……“心の守護者”、“願いの体現者”はここにいますよ」
“心の守護者”こと、ハーツを探すため“願いの体現者”はレーダーと地図を頼りに歩き出した。
鈴谷町 鈴音東高等学校
「三坂っち~~。夏休みが~~、夏休みが~~」
「仕方ないだろ。もう、諦めろよ。俺も一緒に悲しむから」
「無理っすよ。彼女のいる三坂っちと一緒にしないでほしいっす。俺っちには彼女はいないし、遊び足りないっすよ~~」
「彼女なんていないって言ってるだろ!」
「嘘っすよ~~」
鈴音東高等学校。今、ここでは夏休み最後の補習があったのだ。そして、更に夏休みの方も今日が最後だ。そんな事実を認めまいと響が騒いでいる。響のそばでは新二と和馬が呆れたと言わんばかりに呆れている。新二はあまり変わっていないが、響や和馬は肌が黒くなっていた。和馬は部活があったからだろう。そして、響はオシャレとしてか女の子を捕まえるために走り回ったからのどちらかだろう。
「知ってるっすよ。三坂っちが永見っちとデートしてたの。恋人繋ぎまでしてたっす!」
「ぶっ! な、何言ってるんだ!」
「ええ? 俺っちがみてないとでも思ってたっすか? それはないっす。あの後鈴音岬に行こうとするところまで見たっす」
「な、何だと!?」
貴大はあまりの驚きに立ち上がった。それで、クラス中が貴大に集中する。優希はあの時のことを思い出して顔を真っ赤にさせている。それを見逃さないのが響である。
「あれ~? 永見っちはどうして顔を真っ赤にしてるっすか~?」
「しょ、しょれは……」
優希はあの時のことを思い出したせいで、ちゃんと喋れていない。響は夏休みに自分が何もできなかったことのあてつけを貴大達にしているのだった。それで、響は更に調子に乗る。
「まさか、鈴音岬でキスまでしちゃ、ゴフッ!」
「さあ、片山君。お仕置きの時間と行こうじゃないか」
響は貴大に強烈な一撃を受けて動けなくなる。そして、貴大は響を連れて何処かに行った。その様子を皆、ポカンとしながら見ることしかできなかった。そして、誰かが正気に戻り、つぶやいた。
「なあ、三坂から火が出てなかったか?」
「え? そうだっけ? 気がつかなかった」
「あなたも見たの? 私も見たの」
「じゃあ、三坂君って火を出すの?」
「そんなわけないでしょ」
「確かにね。そんなことできたら人じゃないよ」
クラスメイト達は貴大から出てきたように見えた火について話していた。しかし、それはすぐにあり得ないということで、気にしないということになった。新二達はもしかして、ハーツに関係しているのでは? と考えていた。
「山宮君。今のって……」
「もしかしたら、そうなのかもしれない。後で訊けばいいだろう」
「そうだね」
二人はそれで話を終わり、怒りの収まった貴大とあの世にわたっていない響が帰ってくることを願った。
鈴谷町 素音通り
素音通りを歩く一匹の猫。その姿は何処か他の猫とは違い、理性的というか人間らしい動きをしていた。しかし、それに気がつく人はいない。猫はあちこちを見回してため息をつく。
「全く、どこに学校なんてあるニャ。全然、見つからないニャ」
このしゃべる猫は何処かの学校を目指しているようだった。猫はしばらく歩きまわっていると、地図を見つけることができた。地図は人間用の高さなので、何処か大になる物を探す。そして、ちょうど良さそうな塀を見つけるとそれに飛び乗った。そして、道を確認するとまた出発しようとする。しかし、その時どこかから声が聞こえた。
「学校、学校……っと。ああ、あった、あった。ここね、鈴音東高校」
その声を聞いた時、猫はいろいろな理由によってその少年と一緒に行くことにした。理由というのは、その少年の異常な量の“ココロ”。そして、己の楽のためである。猫は早速少年に飛びつく。
「ニャー!」
「うわっ! なんだ、猫か……」
「ニャニャニャー」
「えー、乗っけていくのー?」
「ニャニャ」
「仕方ないなー」
猫は驚いていた。自分の言ったことをここまで正確に当てられたころはなかったからだ。だが、これも“ココロ”の影響だろうと考え、どうせ喰うからと気にしないことにした。
「一体、何をしに学校に行くんだい?」
猫は何も言えない。学生たちの“ココロ”を喰らうなど、この自分の発言を理解する少年に行ってしまうのは、まずいからだ。少年は猫が何も返さないのに、答えたくないこともあるもんね、と気にしないことにした。
鈴谷町 鈴音東高等学校
「終わったー!」
貴大は三時間の補習が終わると同時に叫んだ。それは、周りにいる者たちも同様だった。皆が終わってよかったと、喜んでいる。しかし、その中には憂鬱な顔をしているものも少なくない。それはなぜか。理由は、この補習の次に宿題という敵が待ち構えているからだ。そんな人々の一員である響は情けない声を出して、新二の所に行く。
「西崎っち~。助けてほしいっすよ~」
「ダメだ。そういうのは自力でしないと。人のを写そうとかするくらいなら、明日きっちり怒られてきなさい」
「そんなあ~」
新二の完璧な正論に響は撃沈した。そんな時に、どこかから声が聞こえてきた。
「キャー!! 猫よ!! かわいーー!!」
「ホントだー!! 写真撮ろうかな」
「ああ、いいな! 私も~!」
学校の生徒達、特に女子は大騒ぎしながら突如やってきた猫に群がる。猫の方は我関せずという感じで、優雅にふるまっている。その様子が更に生徒たちのハートを射抜く。そんな猫の下に一人の少年がやってくる。
「全くー、勝手に入ったらダメでしょう。怒られるから外で待っていようよ」
「ニャニャニャ、ニャニャー!」
「ええ? そんな自分勝手なこと言わないでよ。ルールはちゃんと守ろうよ」
優雅な猫と優しそうな少年が会話している様子は、とても絵になる光景で癒し効果がばっちりとあった。そんな二人の所に誰かが声をかける。
「ねえ、君はこの子の飼い主なの? っていうか、そもそも君は誰? うちの生徒じゃないよね」
「あ、はい。そうです。ここには人探しと転入の手続きに来ました。それと、この子は偶然行き先が同じになったので一緒にいるだけです」
「なんで、猫の言ってることが分かるの?」
少年の丁寧な回答に声をかけた人物は安心して、更に質問を浴びせかける。しかし、少年は嫌な顔一つしないで答える。
「猫が言っていることが分かるのではなく、対象の“願い”が分かるんです」
「……うーん、良く分からないな。それで、君は誰を探しに来たの?」
「えーっと、博士達の息子としか聞いてないんです」
「その博士の名前は?」
少年はその質問に、どんな名前だったかな、と少し思い出すことが必要だったが、なんとか思い出せたようだった。
「ああ、そうでした。三坂大我さんと三坂愛衣さんです」
「三坂、三坂……。私は分からないな。誰かー、三坂っていう人しってる?」
「あ! うちのクラスのは三坂貴大っていう奴がいるぞ!」
「そうなの? じゃあ、この子を案内してあげてよ!」
「ああ、いいよ!」
質問をした人物はテキパキと周りの人にも尋ね、貴大の所にたどりついた。その人物は貴大のクラスメイトに案内を頼む。クラスメイトはあっさり了承し、少年を案内し始める。そして、その少年と一緒に猫の方も移動する。そのおかげで、貴大のクラスメイトを先頭に、ハーメルンの笛吹きか大名行列のように人々が移動する。
「俺さ、池上良太郎っていうんだ。それで、お前何年生なんだ?」
「あ、今度二年生に転入します」
「それじゃあ、おんなじクラスになるかもな」
「そうかもしれません」
二人はそんな会話をしていると、貴大のいる教室に着いた。二人は教室に入る。クラスメイトの方は用は済んだという感じで、友人たちの方に行く。少年の方はレーダーを出して、反応を見る。そして、レーダーは一人の人物に反応した。そう、貴大だ。少年は貴大の方に行く。
「ああ、ようやく会えました。はじめまして“心の守護者”さん」
「っ! ……お前は?」
「ああ、すいません。僕は夢乃叶。“願いの体現者”です」
「にゃーー!!」
少年……叶が自己紹介をすると、いきなり猫が飛びかかってきた。貴大達はとっさのことではあったが、素早くそれを回避する。猫は貴大と香苗を威嚇しながら“怪人体”へと変化した。なんと猫は“使心獣”だったのだ。
「……今度は猫ってことか」
「初めて会いましたが、全然気がつきませんでした」
二人は冷静に返すが、周りはそうはいかない。学校の生徒たちは蜘蛛の子を散らすように投げ出した。そして、その場に残るのは貴大、新二、和馬、響に優希。更には叶まで残っていた。貴大はまだ皆が逃げていないのを見て言った。
「お前たちは早く逃げろ。俺はこいつを……」
「その必要はありません。僕が倒します」
貴大は逃げるように言うのを止めたのは叶だった。貴大はそれを見て反論する。
「何言ってるんだ! あれはな……」
「あれは“使心獣”。“ココロ”と人間以外の生物を組み合わせた人造生物、ですよね?」
「あ、ああ。だけど、お前なんで……」
「言ったじゃないですか。あなたは“心の守護者”。そして、僕は……」
叶はそういって、ある物をとりだす。それは、貴大の持つドライバーに似ていた。そして、叶はそれを腰に巻きつけて、続きを言う。
「……僕は、“願いの体現者”です!」
「“願いの体現者”だと……」
「はい。見ていてください。ハーツに続く新たな戦士。その名は……」
叶はベルトから一つのチップをとりだす。それは、二本の剣を交差させたマークをしている。叶はそれを前に突き出し、右足を一歩踏み出して叫ぶ。
「“グラント”。“仮面ライダーグラント”です。……変身!」
「
その音声が聞こえると、叶の周りには貴大のように鎧のようなものが出てくる。叶はそれに自分から腕や足、体を入れていく。そして、それが終わると、そこには刺々しい姿の何かがいた。
「……ア゛ア゛、やっと出てこれたぜ」
「ニャに!? さっきと性格が違うニャ!?」
「ア゛ア゛? お前、叶と俺様が一緒だと思うな! 俺は願様だ!」
「ど、どういうことだ?」
「分かんねえのか? 俺たちはな、多重人格なんだよ」
貴大達はその答えに納得する。叶と願。この二つの意識はひとつの体を共有しているのだった。
「なるほど。そういうことか」
「やっと分かったか。それじゃあ、俺はあいつをぶっ殺してくる」
「
願はそういうと、チップを入れた。そのチップからは“召喚”を意味する
「さあ、戦を始めようか……!」
「な、何をするニャ!?」
「戦だよ! 殺戮と破壊の饗宴を始めるんだよ!」
そう言うと、願はどこからともなく槍をとりだす。そして、それを振り回して猫にたたきつける。猫は大きく吹っ飛んで、校庭の方へと落ちて行った。しかし、やはり猫の身体能力はあるので、なんとか着地を成功させた。願もすぐに狼と共にそれを追いかける。貴大達はその光景を呆然としながら見ていることしかできなかった。しかし、貴大は正気になるとドライバーをつけてチップをとりだす。
「じゃあ、俺も行ってくる」
「ああ、速く行ってこい」
「もちろん。……変身!」
「
貴大が真っ白なチップを胸の前に持ってきて左足を引く。そのまま貴大は戦う者となる魔法の言葉を叫んだ。そして、それに応えたドライバーは貴大に“装甲”を与えた。貴大は叶のように自分からではなく、“装甲”から装着しに来るのを待つ。そして、現れるのは“心の守護者”こと、仮面ライダーハーツである。
「よし、次はこれだ」
「
貴大はスピード特化の“
「はあああああ!!!!」
「ニャ! いきなり何するニャ!」
「攻撃だよ! ほら、どんどん行くぞ!」
貴大は攻撃を繰り出す。更に、これに乗じて願や狼の方も反撃を始める。貴大とオオカミの攻撃で動きが遅くなった所に願の強力な一撃。初めて会った二人ではあるが、相性が良かったようだ。猫にどんどんとダメージを与えていく。
「さあ、これで終わり……」
「ちょっと待て」
「な、何?」
「ここは俺様にさせろよ」
「……まあ、いいけど」
「サンキューだぜ! それじゃあ、俺様の必殺技を受けてみろ」
「“
「ふぅぅぅぅぅ」
願が息を吐き出しながらゆっくりと構える。その構えは野性味あふれるというか、獰猛なイメージを抱かせるものだった。そして、願はぴたりと止まるといきなり大地を蹴って猫に突っ込んだ。
「くたばれ! 願式必殺術“
「クソおおおニャああああ!!!!!!」
願のそばにいた狼が光となって願の中に入る。そして、願は狼の幻影を生み出して、それと共に突っ込んだ。その威力はかなりのものだったらしく、猫はあっさりと爆発した。願は倒したのを確認すると変身を解いた。すると、そこには温和な雰囲気を漂わせる少年、叶がいた。貴大も変身を解いて歩み寄る。
「お前、すごいな」
「僕じゃないですよ。願君がすごかったんです」
「でも、お前達って同じ……」
「違いますよ。願君は願君で、僕は僕です」
「そ、そうか」
貴大は叶の言ったことになんとか納得した。その時、叶は何かを忘れていたのか、ポンと手を叩いた。
「そうだった。三坂君」
「なんだ?」
「今日からお宅にお世話になります」
「え?」
「ついでに明日からこの学校に通います」
「え、ええええええええ!?」
いきなり現れた“願いの体現者”を名乗る叶。更に新たな戦士“グラント”などを見て貴大の驚きのレベルはスペックオーバーも夢じゃないくらいのものだった。そして、その時の貴大の驚いた声は鈴音の街中に響いていた。
どうでしたか?
今回登場したのは“願いの体現者”こと“夢乃叶”君でした。
“願い”を形にする戦士“グラント”。その詳しい説明は次の次、だったかな?お楽しみにしていてください。
それでは、今回はこのくらいにしましょう。次回[憧] の回も見ていただければ幸いです。
See you next time!