それでは、今回の話。
今回は[悉]の回に出てきた池上君が出てきます。叶君の友人です。それと、ちょっと入れたかったものを入れました。おかげで文字数がかなり多くなってしまった。
バトル成分が削られてしまったのですが、楽しんでもらえるのではと思います。
それでは、お楽しみいただければ幸いです。
鈴谷町 鈴音東高等学校
「おーい、夢乃!」
「あ、池上君」
「待ってく、ぐへっ!」
叶を呼びとめて駆け寄ろうとした少年。彼は石につまずいて転び、水たまりに顔から突っ込んだ。叶はそれを見て、またか……と思いつつ助ける。これが夢乃叶と池上良太郎の日常だ。
「全く、あれほど周りを見るように言ったのに……」
「すまんな。つい、忘れちった♪」
「簡単に言ってしまいますね。そんなについてなくて、いやになりませんか?」
「ならないね。俺はこのタフさだけで生きてるんだから!」
叶の心配に対して、いつもの笑顔で答える良太郎。叶はそれを見て、呆れてしまう。しかし、そのタフさは素直に尊敬していた。
「まあ、もうドジしないでください」
「はーい!」
「はあ、またそんな調子だから……」
「大丈夫だって!」
二人は並んで楽しそうに話し始める。しかし、叶は彼のドジを何とかしてあげたいのだった。
鈴原町 三坂貴大宅
「……ということなんです。どうしたらいいと思いますか?」
「それは、本人が気をつけない限りどうしようもないだろ」
「そうですよね……」
鈴原町にある貴大の家。今ではこの家の住人も三人に増え、にぎやかになってきた。更に緑や勇介。優希、新二、和馬、響、拓海、おまけに渡といったメンバーもくることもある。だが、まだ部屋は余っており、もう三人くらいは住むことができるだろう。そんなこの家で、叶は良太郎について、貴大に相談していた。
「やっぱり、今以上に気をつけるように言うことにします」
「そうだな」
「おーい! 貴大お兄ちゃん、叶お兄ちゃん! 御飯できたよ!」
「分かったー」
「了解です」
翔逸の一言で、貴大達が動き出す。もしも、三坂家の家事全般を担っている彼の一言を無視すれば…………恐ろしい罰が待っている。なので、二人は決して逆らうことはできない。つまり、翔逸は三坂家の支配者と言っても過言ではない。
「今日は何だ?」
「今日はねえ、アジの塩焼き、わかめと豆腐の味噌汁、根野菜の煮物だよ」
「和風ですね」
翔逸の料理のバリエーションは多い。様々なジャンルの料理が作れる。ただ、一番なのは和食らしい。三人は料理を運んで席に着く。そして、三人一緒にこの言葉を言うのだ。
「「「いただきます」」」
鈴田町
「次、入ってきなさい」
「はい」
とある集会所。集会所はかなり暗く、カルト教団のような雰囲気も出ている。そんなこの場にいるのは二人だ。一人は真っ白な衣装を着た人物。もう一人はかなりやつれた青年である。しかし、青年がやってきた方から大勢の声が聞こえるあたり、かなりの人がいるのだろう。
「ふむ、長岡君か。今日はどうしたのかね?」
真っ白な衣装を着た人物は、青年に問いかける。青年の名前をしっていることや発言を聞くと、彼はかなりの回数ここにきているようだ。
「実は、まだ社内いじめが止まらないのです。白鴉様のおかげで、だいぶ楽になったのですが……」
「そうか。それは辛かったな。よく頑張っているよ」
「ありがとうございます。そう言っていただけるだけで救われます」
「お礼を言われることはない。これが私の役割なのだから」
真っ白な衣装の人物は青年にそう言うと、しばらく間をおいてから質問する。
「それで? 今日も“アレ”をするのかい?」
「はい。お願いします」
「……分かった。そこまで言うならやろうか」
真っ白な衣装の人物は青年の胸に手を当てる。すると、手を当てている部分が光る。そして、その光が止んだ時には青年は完全に何かを失っていた。真っ白な衣装の人物は舌打ちすると、スイッチを取り出す。そして、そのスイッチを押すと青年の倒れている床が開き、青年が落ちる。真っ白な衣装の人物はそれを見て、薄く笑いを浮かべる。
「次、入ってきなさい」
彼は、次の“
鈴原町 御音通り
「やっぱり日ごろ気をつけないと、いつか大怪我しますよ」
「しないって。全く、夢乃は心配性だな」
「仕方ないですよ。いつもそんな目に会っているのを見たらそう言いたくもなります」
学校が終わり、部活はテスト前のために休みになっている今週。二人は並んで、帰宅する途中だった。
「……あ、そう言えばさ」
「なんですか?」
良太郎が何かを思い出したような声を出す。叶はそれに反応して、良太郎に尋ねる。
「えっとな、最近とあるうわさが流れてるんだ。一つが、的中率100%、絶対外れない美人占い師。それと、もうひとつが……」
「もうひとつが?」
良太郎が突然言葉を止めたため、叶は疑問に思いつつ尋ねる。
「もうひとつは……どんな苦しみや悲しみでもなくしてくれる団体のことだ」
「おや? 我々のことは都市伝説扱いですか?」
「何者ですかっ!」
突然後ろからかけられた声に、叶は思わず反応する。その時に良太郎を抱えて、五メートルは跳んだため、良太郎の顔は驚愕に満ちている。後ろから声をかけた男性は、白いスーツを着て上品な感じで笑っていた。
「申し訳ありません。それほど驚かれるとは思っておりませんでしたから」
「質問に答えてください。何者ですか?」
「そうでしたね。申し遅れました。私、先ほどそちらの方が話していた、『どんな苦しみや悲しみでもなくしてくれる団体』こと“白鴉の会”の会員の者です。カイ、とでもお呼びください」
男性ことカイは、叶と良太郎に自己紹介をする。その立ち振る舞いからは、何処か品の良さが見えてくるが、それと同時に狂人のような雰囲気も感じられる。
「“白鴉の会”ですか?」
「はい。我々は、日々の生活に苦しむ人々……私もですが、そういう人々から苦しみや悲しみを取り除くことのできる方、白鴉様を紹介するのです」
「苦しいことを乗り越えさせるのですか?」
「いいえ。我々が受ける施しは、苦しみや悲しみを感じなくなるほどの強い精神です」
カイの持つ、狂人のような雰囲気や話の内容から、ただのカルト教団のようなものではないかと思い始めた叶。最後にしようと思い、二つ質問した。
「あなたの言う、白鴉様とは何者ですか? それに、話を聞く限りではただのカルト教団にしか聞こえません」
「おや? これは手厳しい……まあ、そう思うでしょうね。始めは皆がそう言うのです。ですが、後者はその目で見ればわかります。そして、前者の質問に答えましょう。白鴉様は、幸福をもたらす白き鴉なのです。我々に、無償で施しを与えてくれるのです」
「ホントにタダですか?」
「ええ。供える物も、支払う金も、一切いらないのです。更に、必要な物も一切いりません。その体さえあればいいのです」
叶と良太郎は首をかしげる。利益を目的にしないカルト教団があるのか、と。二人の中で、白鴉の会はカルト教団に決定しているらしい。
「本当でしょうか?」
「事実です。もし、疑問に思うなら一度くればいいのです。警察でも何でも、一緒でも構いません。朝の9時から夕方の6時までの間に、この場所に来てくださいれば白鴉様はいつでもお救い下さります」
そう言うと、カイは颯爽と去って行った。叶と良太郎は「はあ……」と、声を出すことしかできなかった。
鈴本町 鈴音中央商店街
昨今、シャッター街という物が増えているらしい。しかし、鈴音市の中央にある鈴本町を南北に分けるこの鈴音中央商店街には、そんな不景気の波はこない。大型ショッピングセンターにはない、アットホームな雰囲気を持つこの商店街には客足が途絶えない。
「そこのあんちゃん! あんたちゃんと食べてるのかい? これ、サービスしとくからちゃんと食いなさいよ!」
「おっ! 奥さん、いい目をしてるね。それは今朝、鈴音港から仕入れた秋刀魚だよ。どうする? 奥さん、いい目をしてたからね……半額で売っちゃうぜ?」
こんな声の毎日響く。そんなこの商店街の一角。夜に開く“スナック御鈴”の前には、一人の占い師がいる。鈴音市は治安もいいし、心優しい人が多い。不良やヤクザも義理人情に厚い物ばかりで、第二の警察と言えるレベルだ。そのため、路上パフォーマンスはかなり多い。大道芸やライブなど、いろいろなことをしている。それで、占い師は目に入った一人の通行人に声をかけた。
「ちょっと、そこのあなた」
「ん? 君が呼んだのは、僕のことかな?」
「そうよ」
占い師が呼んだのは一人のサラリーマンだった。彼からは、自信家のようにも見える。
「どうしたんだい? ……占いか? 僕を占うのかい?」
「ええ。あなたに不吉な“ココロ”が向かっているから」
「は? よく分からないな。……まあ、いいや。それで、早く占ってくれ」
占い師の言った言葉の意味が分からず、サラリーマンは首をかしげるが気にしないことにしたようだ。
「あなた、かなり成功してきたようね。挫折を味わったことなんてないようね」
「そうだよ。僕は勝ち組だからね!!」
「でも、勝つためには手段を選ばなかった。時には犯罪すらも犯したようね」
「っ!! ……な、何を言ってるんだい?」
占い師の発言に心当たりがあるのか、彼は動揺するがしらばっくれた。占い師はそれを冷めた目で見ながら続ける。
「しらばっくれるのね。まあ、いいわ。……あなた、復讐されるわ。あなたが蹴落としてきた人達によって。死者の方はこないけど、生者が来るわね。生者によっては、命を落とすわ」
「死者? 生者? わけわかんないな。……まあ、所詮占いだからね。そんなもんだろう。それで、いくらだい?」
「ただでいいわ。私の話を無視するのなら、今のうちに楽しんでおきなさい」
占い師の言葉に恐怖を覚えているサラリーマンだが、そんな事おくびにも出さずふるまう。彼はただということを聞くと「そうか」とだけ言い残して去った。占い師はポケットから何かを取り出した。
「助けて、と言えばあの不吉な“ココロ”も“消して”上げたのに」
占い師の持つ何か。それには英単語が虫食いの状態で書かれていた。書かれているのは“lo○t”だ。文字が書かれていないのはひとつ分。候補に挙がりそうな単語は“
鈴田町 白鴉の会集会所
「ここだな」
白鴉の会に来た叶と良太郎。他には貴大と勇介がいる。四人は集会所を見に来たのだ。何か犯罪の様子が見られれば、勇介がしかるべき処置をするだろう。
「それじゃあ、入りましょう」
「そうだな。神田さん、よろしくお願いします」
「ああ、任せてくれ」
いつもは自分が頼る側なため、今回のように頼られるのが嬉しい勇介。少しテンションが上がっている。
「失礼します。カイさんの紹介で来たものです」
「おお、来てくださいましたか。……それで、そちらの二人は?」
「どうも、三坂貴大です。こちらは神田勇介さんです」
「はじめまして。神田勇介と申します」
「ご丁寧にどうも。私はこの会に所属している者です。カイとお呼びください。それでは、どうそこちらに」
カイが四人の案内をする。カイが通ろうとする場所には道が開いていく。そして、四人はとある部屋に通された。その部屋には真っ白な衣装を着た人物がいた。
「失礼します。こちら、この会に興味をもたれた方々です。みなさん、こちらが白鴉様です」
「はじめまして。私は“幸の運び手”の白き鴉、白鴉と名乗っている」
白鴉が自己紹介をした。貴大達もすぐに自己紹介をした。その時、白鴉の顔がひきつったのを叶は見逃さなかった。叶はすぐに白鴉に言った。
「あなたの施し、という物を見せてください」
「……よいだろう。カイ君、信者達を連れてきなさい」
「分かりました。全員ですか?」
「ああ。全員だ」
カイはそれを聞いて、全員を連れてくる。信者たちはいきなり呼ばれたことに戸惑っているようだ。白鴉はそれを静め、一人の信者を呼んだ。
「それではお見せしよう。これが私の力だ」
白鴉が信者の胸に手を当てると、そこから光が出てくる。それを見て、叶達は絶句する。それは間違いなく“使心獣”が“ココロ”を喰らっている状況と同じなのだから。叶たちはすぐにドライバーを出す。
「貴様!! “使心獣”だったんだな!!」
「……やはり知っていたか。そうとも、私は“使心獣”だ。くわしく言えば、No23ハシブトガラスの“Corvus macrorhynchos”になる」
そう言うと、白鴉は“怪人体”になった。白鴉、と名乗るだけあり、その体は雪のように白い。そして、その姿を見て騒ぎだす信者を見て鴉は言った。
「お前達、これが私の真の姿だ。この姿がもっとも力を発揮できる」
驚く信者達に鴉は更に声をかける。
「お前たちは、人ではない姿をいているだけで、信仰を捨てるのか? 私はお前達がそんな、冷たいものではないと知っている。彼らは私を討つものだ。私に力を貸してはくれないか?」
鴉の演説に乗せられた信者たちは、「白鴉様のためだ!」と叫びながら貴大達に襲いかかった。
「く、くそ!! 信者達を兵隊にしやがって!! ……変身!」
「白鴉に踊らされていた彼らに罪はない。人の心の弱みに付け込んで操るなんて許されない。……変身!」
「
「
二つの音声が流れると、両者の周りに装甲が現れる。二人がそれをすべて纏うと、周りの人々が驚く。
「あ、あれって……」
「仮面ライダーだ!」
「あれが、正義の味方なのか? じゃあ、なんで白鴉様を襲うんだ?」
「か、叶が仮面ライダー?」
驚く人々を見て、貴大が叫んだ。
「みなさん! あなた達の信じていた白鴉は、幸福を与えていたんじゃない。あなた達の“ココロ”を喰らって、何も感じないようにしていただけです!! この場は危ないので、早く逃げてください」
「仮面ライダーめ、余計なことを……!!」
貴大の話を信じ出した人々はすぐに逃げ出す。一部は残っているが、かなり“ココロ”を喰われた人々ばかりで、覇気がまったく感じられない。
貴大の話を信じ出した人々はすぐに逃げ出す。一部は残っているが、かなり“ココロ”を喰われた人々ばかりで、覇気がまったく感じられない。
「残りやがったか……」
「ああ。こいつらは俺に任せて、お前は白鴉に集中しろ」
「オッケー。ブット飛ばしてやるぜ」
二人はそれだけ話すと走り出した。貴大は襲いかかる信者達をさばいていく。だが、だんだんと厳しくなる。貴大はチップを入れた。
「
貴大は手に持ったネットを投げる。ネットに捕まった人をそのままどかし、またネットを出す。その作業を繰り返した。そうして、なんとか信者達を抑えた。
「よし! 終わった」
貴大はすぐに叶の方に向かおうとするが、上を見上げると追うのをやめた。天井には大きな穴が開いていた。
「ヒャッハー~~♪ 望さまのターン♪」
「何!?」
「喰~ら~え~♪」
白鴉の会の集会所の上空。望はそう言うと、手を上にあげる。すると、小型の雨雲が現れる。望は更に手を振る。そして、今度は雨が降り出した。鴉は雨にぬれていく。望は何かに守られているかのように一切濡れていない。
「何も起きないな。……所詮、その程度なのだな?」
「バ~カ~じゃ~な~い~♪」
望はそう言うと、チップを出した。そして、それをゆっくりといれた。
「“
「お~わ~り~だ~♪」
「ま、まさか!?」
鴉は上を見る。雲からはゴロゴロと音がなる。このままなら、鴉は雷に打たれる。鴉はすぐに望の方に飛ぶ。
「はあああ!!!!」
「ほいっ」
突っ込んできた鴉を右に動いてよける。だが、鴉はまだまだ攻撃をやめない。
「だあ!! せいやあ!!」
「き~か~な~い~よ~♪」
回し蹴りを放つ。しかし、下に逃げられる。
かかと落としをする。しかし、横によけられる。
拳を突き出す。しかし、受け止められる。
掴まれた拳を使い、接近する。しかし、手を離されて逃げられる。
ボディーに一撃を入れようと飛びかかる。しかし、カウンターを喰らう。
「ハッ! ハッ!」
殴る、効かない。蹴る、効かない。突っ込む、効かない。
右、左、上、左、下、右、右、下、左、右、上。蹴撃を、拳撃を、手刀を、放つ。
左、右、下、左、上、左、左、上、右、左、下。攻めを、攻撃を、襲撃を、躱す。
「ハッ! はあ!!」
効かない、効かない、効かない、効かない、効かない、効かない、効かない、効かない、効かない、効かない、効かない、効かない、効かない、効かない、効かない、効かない、効かない、効かない、効かない、効かない、効かない、効かない、効かない、効かない、効かない、効かない、効かない、効かない、効かない、効かない、効かない、効かない、効かない、効かない、効かない、効かない、効かない、効かない、効かない、効かない。
攻撃は一切通じない。
鴉は、空でこの神の名を冠する者と戦うことの愚かさを知る。
気象と司り、天空を舞う、この力の強大さを知る。
「ゲームセット、ゴートゥーヘル」
望が平坦な声で、時間切れを伝える。
――――神の裁きが執行される。
「神の裁きを受けよ。“
「や、止めろ!!!!!」
雲から、大きな一条の雷が落ちる。それは、鴉にくだった刑。死という、多くの物の“ココロ”を喰らった者への裁きだった。鴉は雷に打たれると、爆発した。望は大地におり、変身を解除した。
「……終わりました」
「そ、そうだな」
いつもどおりに話す叶に、怯えながら返す貴大。しばらく、あれは貴大のトラウマになるようだった。空は、青く澄み渡っていた。
どうでしたか? 僕はラストの方が少しドタバタな感じがしないこともないなと思いました。
それで、今回も少し話しましょう。
今回、章をつけてみました。今は第三章ですね。これは時系列で区切ってあります。分け方は章の題名を見ればわかるかと。
と、こんな感じでした。
それでは、今日はこのへんで。
次回も見ていただければ幸いです。
See you next time!