仮面ライダーHearts   作:山石 悠

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 どうも、山石悠です。最近は、だいぶコンスタントに更新できていていい感じだな、と思っています。


 それでは、今回のお話に行きます。
 今回はいよいよ三人目のライダーの登場!!

 三人目の実力、能力はどれほどか!!

 ……という感じです。少し長めですが、お付き合いいただきたいです。


 それでは、楽しんでいただければ幸いです。


[懐] 懐疑の喪失者

鈴本町 風音通り

 

 人の子の夜。それは、太陽が沈んだ後の闇の時間。空に浮かぶ月は無く、街を照らす者は街灯と星だけだった。

 

 

「アハハ!! あのバカ、あんなのに騙されてやがる!! アハハハハハハ!!!!」

 

 

 そんな沈黙の春……ではなく、沈黙の夜に響くのは笑い声。それも、誰かをあざける笑いだった。

 

 

「これで敵は消えた!! 出世するのは俺だ!! 何せ、俺は勝ち組なんだからな!!」

「ふざけんなよ」

「は?」

 

 

 高笑いしていた人物に声をかけたのは、古い服を着た青年だった。そして、その手には大きなナイフが握られている。

 

 

「お前のせいで、お前のせいで俺は……!!」

「誰だお前?」

「杉田だよ!! 係長の杉田だよ!!」

 

 

 笑っていた人物は、杉田という人物に気が付いていなかったが、説明を聞いて思い出したようだった。

 

 

「ああ、あの“()”係長の杉田さんか!!」

「そうだよ」

「それで、その負け組が何の用? 御生憎様、俺は忙しいんだ。お前みたいな負け組と違ってな!! アハハハハハハハ!!!!」

「……んなよ」

「何?」

 

 

 笑っていた人物は杉田をバカにし続ける。杉田はそれを冷静に聞いていた。しかし、さすがに我慢が出来なかったようだ。

 

 

「ふざけんな!! って言ってんだよ!!」

「ふざけるな? お前みたいな負け組に何ができる?」

「できるさ」

「何が?」

 

 

 杉田は手に持ったナイフを突き出す。そして、リミッターが外れたかのように叫びだした。

 

 

「殺すことだ!! あの時の恨み!! この場で晴らしてやる!! ……死ねえ!!」

「ヒッ!! た、助けて!!」

 

 

 杉田はナイフを持って突っ込んでいく。笑っていた人物は悲鳴をあげて逃げ出した。すると、前方に人影を見つけた。彼は、急いでその人物の方に向かう。

 

 

「た、助けてくれ!! こ、殺されそうなんだ!!」

「…………」

「な、なあ!! 黙って立ってないで助けてくれよ!!」

「お前。自分に助けられる価値があると思うか?」

「……え?」

 

 

 いきなりしゃべりだした人物の方を見て、素っ頓狂な顔をする。いきなりしゃべりだした人物は彼の方を見て話を続ける。

 

 

「俺をあらぬ噂で退学まで持って行ったのは誰だった? なあ、落合?」

「お、お前は……」

 

 

 落合と呼ばれた人物はふるえながら、喋っていた人物を見つめる。その時、誰かがはする音が聞こえてきた。落合はゆっくりとそちらを見る。

 

 

「す、杉田……」

「あ、杉田さん」

「木下さん、足止めありがとうございます」

「お、お前ら、知り合いだったのか!?」

 

 

 落合は知り合いではないと思っていた二人が、互いの名前を知っていたことに驚いた。二人は何でもないように落合を見る。

 

 

「落合。お前、知ってるか? お前が今までに苦しめてきた人数」

「し、知るか!! 負け組のことなんて知らない!!」

「そうかそうか。なら、教えてやろう。……五十人だ。うち、精神疾患を患ったのは二十人。俺たちみたいにお前に復讐すると集まったのは……」

 

 

 落合は今の一言で悟った。こいつらは、自分たちを殺しに来たのだと。そして、それに加担しているのは、この二人だけで無いということを。そんな恐怖に震える落合に、杉田はその数を話した。

 

 

「……三十人。精神疾患を患っていない人は、みんなお前を殺しに来た」

 

 

 落合は後ろを見る。そこには大勢の人物。落合は一人一人の顔を見る。そこにいるのは自分が出世するため、偉くなるために蹴落としてきた人物達だった。

 

 

「さあ、落合。貴様の墓場はここだ。最後に、言い残すことはあるか? 始めに言っておくが、命乞いなんてしても助けはしない」

 

 

 落合は考える。どうしてこうなったのかと。どうすればよかったのかと。すると、ふとあることを思い出す。それは、とある占い師の話だった。

 

 

「あなた、かなり成功してきたようね。挫折を味わったことなんてないようね」

「でも、勝つためには手段を選ばなかった。時には犯罪すらも犯したようね」

「しらばっくれるのね。まあ、いいわ。……あなた、復讐されるわ。あなたが蹴落としてきた人達によって。死者の方はこないけど、生者が来るわね。生者によっては、命を落とすわ」

「ただでいいわ。私の話を無視するのなら、今のうちに楽しんでおきなさい」

 

 

 彼は気がついた。あの占い師が言っていたのは、このことだったのだと。落合はゆっくりと、言葉を吐きだす。

 

 

「もっと、楽しく……偉く、なりたかった」

「フン!! 下種め!! 苦しんで死ね!!」

 

 

 落合が最後の言葉を吐きだすと、すぐにナイフが刺さる。包丁が刺さる。カッターが刺さる。周りにいる三十人が一人ずつ、計三十本の刃物を刺してくる。落合は自分の中にある紅い物が消えていくのを感じながら、意識を落とした。

 

 

 

鈴谷町 鈴音東高等学校

 

「三坂君、聞いた? 今朝の事件」

「ん? ……ああ、あの殺人事件だろ?」

「体の三十か所を刺されて死んだって」

 

 

 鈴音市の南に位置する鈴音東高等学校。なぜ南にある鈴谷町に東高校があるのかは、鈴音市七不思議のひとつとして有名だ。

 

 

「うん。怖いよね……」

「ああ。でも、大丈夫だ。(仮面ライダーとして)俺が護るから」

「本当? 三坂君が(愛する人として)私を護ってくれるなら、安心だよ」

 

 

 勘違いが勘違いを呼ぶ。そんな言葉を連想したくなる今の二人。しばらく黙ったままだったが、しばらくして優希の方が何かを思い出したかのように話しだした。

 

 

「そういえば、他にも話があってね……。実は百発百中の占い師がいるんだって」

「占いなのに、百発百中? それって預言者じゃないか?」

「そうかもね。でも、本人は占い師って言ってるらしいよ」

「へぇ~。……あ!! そういえば……」

「どうしたの?」

 

 

 今度は貴大が何かを思い出したようで、優希に思い出した内容を話しだす。

 

 

「この間、翔逸が買い物から帰ってきた時に占い師に会ったといってたんだ」

「占い師に!?」

「いや、同じ奴かは分からないよ。で、その占い師が“変換”と“創造”の子に“喪失”がもうすぐ来ると言うように頼んでいたらしい」

「何それ? 何かのたとえなのかな?」

 

 

 優希はよく分からないらしく、頭をひねっている。貴大も渋い顔をして言った。

 

 

「その占い師な、翔逸と一緒に住んでいる人と言っていたんだ。翔逸と一緒に住んでいるのは俺と叶。つまり、俺たちにメッセージを残した。俺たちのどちらかが“変換”で、どちらかが“創造”だ」

「なるほど。……それで、それは何を指しているのかな?」

「それなんだ。俺たちに共通するのは年齢や性別、学校やクラスなんかだ。そうやってあげた物の中で一番近かったのが……」

「近かったのが?」

 

 

 貴大は優希に耳を貸すようなジェスチャーをする。優希は貴大のそばに顔を近づけた。そして、その内容を話そうと口を開いた。

 

 

「おはよう。昨日のニュースはきい、た、かい……」

 

 

 貴大が口を開こうとした時、その時に委員長の西崎新二がやってきた。彼は少し顔を赤くしながら言葉をしぼり出す。

 

 

「そ、その……そういうのはTPOを考えた方が……」

「ち、違っ!! こ、これはそんなのじゃなくてだな……」

 

 

 貴大が勘違いを解こうとするが、新二は一向に話を聞かない。貴大が懸命に説得しようと頑張っているとチャイムが鳴ってしまった。貴大は誤解を解くことができないまま授業の時間を迎えた。

 

 

 

鈴本町 鈴音中央商店街

 

「ホントにいるのか?」

「多分ね。この時間帯はここにいるって噂だよ」

 

 

 貴大と優希は部活ということで、この場所に来ていた。目的は勿論、占い師だ。二人は頷き合うと、商店街に入って行った。

 

 

「なあ、商店街のどの辺にいるんだろうな?」

「どうだろうね。……でも、ここってそこまで複雑じゃないから、すぐに見つかるよ」

「そうか」

 

 

 二人はあっちこっち見ながら占い師を探す。しかし、夕方のこの時間帯は人が多い。二人はなかなか占い師を見つけることができなかった。

 

 

「……見つからないね」

「そうだな」

 

 

 貴大は集中する。目を凝らし、耳を澄ませる。貴大はじっくり、五感を高めていく。思考がクリアされていき、当たりの様子がよく分かるようになる。貴大は、最近になって、こういうことができるのに気がついた。なぜなのかはよく分からないが、悪いことは無いので気にしていない。

 

 

「どこだ……?」

 

 

 全神経を集中させていく。じっとあたりを見回すと…………見つけた。貴大はふっと息を吐き出して、優希を呼んだ。

 

 

「見つけたぞ」

「本当?」

「ああ。こっちだ」

 

 

 二人は占い師の方に向かう。そして、ようやく占い師に会うことができたのだった。占い師はフードをかぶっていて、その表情はよく見えない。

 

 

「……ようやく会えたな、占い師」

「あなた、“変換”の子ね」

 

 

 占い師は貴大が来るのが分かったいて様な態度で答えてきた。貴大はそれについて質問した。

 

 

「分かってたのか?」

「そうね。視えてたの、あなたが発する“ココロ”が私に向かうのが」

「“ココロ”が!?」

 

 

 占い師の発言に驚く貴大。それもそうだ。彼や叶には“ココロ”を見る力は無いのだから。

 

 

「み、視えるのか?」

「ええ。“覚醒”した時から」

「覚醒?」

 

 

 隣にいる優希は勿論、貴大も意味を理解できていなかった。“変換”や“覚醒”。更には“創造”と“喪失”。意味のわからないワードが多すぎる。貴大は、敵か味方かも分からないこの占い師に、警戒心を抱く。

 

 

「警戒しないでほしいわ。私は、あなたの敵ではない。むしろ味方に近いわ」

「……根拠は?」

「そうね……それじゃあ、これで……」

 

 

 占い師はそう言って、何かを取り出そうとする。しかし、その時、ドーン!! という音がする。三人はすぐにその方向を見た。

 

 

「な、何!? 一体何があったの!?」

「わ、分からん」

 

 

 慌てている優希にそういう貴大。その、音のした場所には土煙が立っていて、何が起こっていたのかは分からない。しばらくして、煙が晴れていく。すると、そこには二体の人影が映っていた。

 

 

「……ククッ。やっぱり、活きのいい人間の“ココロ”は最高だ」

「だな。さあ、もっと喰ってやろうぜ」

「そうだな!! ここは俺たちの食卓だぜ」

 

 

 突然現れたのは“使心獣”だった。その姿は、ムカデと蠅のように見える。そして、両者の手には武器と思われる鞭とメリケンサックを装備している。貴大はそれを見て、すぐに走り出した。

 

 

「おい!! そこまでだ!!」

「なんだお前?」

「そうだぜ。……あ、そうか。お前、自分から俺たちに喰われに来たんだな!!」

「なんだよそれ。すげえ笑える!!」

 

 

 “使心獣”達は勝手な想像をして、爆笑している。貴大はいらいらしてきたのだろう。ドライバーを取り出して着けた。そして、チップを取り出して構える。視線の先には二体の“使心獣()”がいる。貴大はグッと力を込めて、口を開いた。

 

 

「待ちなさい。ここは、私に任せて」

「な、何言ってんだ!?」

「任せなさいと言っているの。あなたは、早く一般人を逃がしなさい。あいつらは……私が消すわ」

 

 

 占い師は変身しようと構えていた貴大に向かってそういった。そして、その手には嫌でもドライバーを連想してしまう物。貴大はまさか、と思いながら質問する。

 

 

「まさか、お前……」

「そうね。私は仮面ライダー。“変換”のハーツ、“創造”のグランドに続く三人目。それが……」

 

 

 貴大はやっとわかった。“変換”“創造”は仮面ライダーのこと。“覚醒”は仮面ライダーになること。そして、“喪失”とは……

 

 

「……私。この、氷道麗華が三人目。“喪失”を冠する仮面ライダーよ」

 

 

 占い師……麗華は黒いドライバーを着けた。その時、ようやく“使心獣”達が二人の様子に気がついた。

 

 

「だ、誰だお前!!」

あなた達の敵(仮面ライダー)よ」

「な、なんだと!? ライダーは全員、男だったはず…………ま、まさか貴様が最近報告された三人目!?」

「そうよ。括目してなさい」

 

 

 麗華はチップを取り出す。そして、それを頭上に上げ、足を一歩引いた。麗華は吹雪のような冷淡な目をして言った。

 

 

「変身」

Install(インストール)Lost(ロスト)”」

 

 

 そんな音声がドライバーから紡がれる。すると、麗華の周りには装甲が現れ、装備される。それが終わると、今度は大きな鎌が現れた。麗華はそれを手に取るとカンッ!! と、音を立てて地面を叩いた。

 

 

「……死神」

「死神。私もそう思っているわ」

「き、貴様何者だ!!」

 

 

 ムカデがそう怒鳴る。麗華は、ビシッとムカデと蠅を指す。そして、大きくは無いが、よく通る声で名乗った。

 

 

「私はロスト。人の心を喰らう悪魔達(使心獣)を狩る死神よ。冥土の土産に覚えておきなさい」

「な、何が冥土の土産だ!! 返り討ちにしてやるよ!!」

「言ってなさい。格の違いを教えてあげるわ」

 

 

 三人は武器を構える。当たりが静まり返る。そして、カランと何かが落ちた音が鳴ったのを合図に、ムカデと蠅が走り出す。

 

 

「くたばれええ!!!!」

「いけええ!!!!」

「はあっ!!」

 

 

 ムカデと蠅の攻撃を受け流しつつ攻撃。麗華の着けているローブがはためいていることや一つ一つの動きから、血なまぐさい戦場に美しさを与えていた。

 

 

「さあ、まだ戦いは始まったばかりよ」

Function(ファンクション)Slash(スラッシュ)”」

 

 

 麗華はチップを鎌に装填し、攻撃を始める麗華。鎌は“使心獣”の命を狩らんと襲いかかる。麗華の攻撃が来るのを見て、ムカデは後ろに下がり蠅は前に出てきた。

 

 

「俺たち二人に」

「負けはねえ!!」

「なら、今日が最初で最後の黒星ね」

 

 

 麗華は鎌を横に振った。鎌は蠅に切りかかる。蠅はそれを落ち着いて後ろに飛ぶことで回避しようとする。しかし、いきなり鎌の柄が伸びてきた。蠅はそれに驚き、反応できないまま攻撃を受けた。

 

 

「グハッ!!」

「だ、大丈夫か!!」

「だ、大丈夫だ。……この武器、のびるぞ」

「何?」

 

 

 蠅は心配して来るムカデに敵の武器の情報を渡す。物事に、情報は大切だ。麗華はそれを聞いて言葉を発した。

 

 

「そうよ。この鎌は伸びるの。……まあ、それが分かったところで、何も変わりはしないわ」

Function(ファンクション)Bind(バインド)”」

「く、鎖!?」

 

 

 麗華はいくつものチップを取り出していた。そして、そのうちの一つである“拘束”の意味を持つ“Bind(バインド)”を入れると、現れた鎖が二人を拘束する。

 

 

「私は今までの二人のように、情けや容赦なんてことは無い。使われるチップが一枚や二枚で済むとは思わないことね」

Function(ファンクション)Shock(ショック) Wave(ウェーブ)”」

「はあああ!!!!」

 

 

 麗華の鎌が光り出し、“ココロ”がたまっていることを伝えていた。麗華はそれを思いっきり振り切った。すると、“ココロ”が斬撃となって二人の方に飛んでいく。拘束されていた二人はそれを回避するすべは無く、いとも簡単に攻撃を受けた。先ほどのダメージもあってか、蠅の方が死にかけている。

 

 

「だ、大丈夫か!? しっかりしろ!!」

「お、俺はいい……。早く、早く奴を……」

「フライー!!!! ……よ、よくもフライを……!!」

 

 

 動くことすらできなくなった蠅を見たムカデが叫び出す。ムカデの鞭の棘が伸び、そこから何かの液体が吹き出している。

 

 

「こいつは、俺の持つ毒だ。俺の持つ“ココロ”によって強化されているからな、喰らった瞬間に死ぬと思えよ」

「……それは厄介ね」

 

 

 ムカデは鞭を振り回す。あたりに毒がまき散らされていく。麗華も毒がかからないように後ろに下がった。逆にムカデの方は前に出ていく。

 

 

「これなら、いくら貴様といえども、対抗できまい。……苦しむ暇もなく死に絶えろ!!」

「その毒、危険なのならこちらの武器にすればいいわね」

「何!?」

Function(ファンクション)Hunt(ハント)” Function(ファンクション)Shock(ショック) Wave(ウェーブ)”」

 

 

 麗華は再び二つのチップを入れて構える。先ほどのように鎌に“ココロ”がたまっていく。麗華はまたそれを振り切った。またもや斬撃はムカデを襲った。ムカデはそれをはじこうとしたが、斬撃は鞭をすり抜け、ムカデに当たって消えていった。

 

 

「な、なんだったんだ? ……そうか。失敗したのか!! ハハハ、今度は俺のターンだ!!」

「それは、どうかしらね?」

 

 

 ムカデは鞭をふる。しかし、ふと疑問がわいてきた。鞭から出ていたはずの毒はどこへ行ったのかと。ムカデは疑問を抱いたまま鞭を振るう。麗華はその斬撃を()()()()()()()で切り捨て、ドライバーに新たなチップを入れて切った。

 

 

Install(インストール)Erosion(イロージョン)”」

 

 

 遅れて聞こえたその言葉の意味は“侵食”。体の色が灰色から紫になった麗華はムカデを切った後に、その鎌を傷口に突き刺した。

 

 

「ぐ、ぐぅぅぅ……」

「二度目の斬撃。あれの目的はあなたの毒を私が使うため。そのあとのチップの効果は毒を操る力」

「な、何、だと……」

 

 

 苦しみながらもなんとか声を絞り出したムカデに、麗華は冷たい目をしてこういった。

 

 

「死になさい。私とあなた、二人の持つ強力な毒によって」

「が、ガアアアア!!!!」

 

 

 ムカデはそう叫んで、爆死した。麗華は蠅の方に向かう。蠅は未だに動くこともできずにいた。麗華はその前に立つと、二枚のチップを取り出す。

 

 

「死にかけているのでしょう? 私が完全に殺してあげるわ」

「“Lost(ロスト)” “Slash(スラッシュ)Final(ファイナル) Attack(アタック)

 

 

 麗華は鎌を振り上げる。それは、まさしく死神にふさわしい姿だった。

 

 

「消えなさい闇に……Lost(ロスト) Execution(エクスキューション)

 

 

 麗華はその鎌を振り上げて……振り下ろす。断末魔すらあげられない蠅を真っ二つに切り裂いた。蠅は切られた部分から、灰となって…………消えた。

 

 

「……終わったわね」

 

 

 麗華がそう言って変身を解除する。すると、風が吹いて誰かが地面に降り立つ音が聞こえた。麗華はそちらを見た。そこにいたのは、飛行ができる身軽な姿をしたグラント……“Zeus(ゼウス) Form(フォーム)がいた。

 

 

「おや? もう終わってる~♪」

「そうよ。私が終わらせたわ」

「……誰だ、お前」

 

 

 へらへらと笑っていた望は、きっと真面目な顔をしてそう訊いた。

 

 

「私のことは後で彼から聞きなさい」

 

 

 麗華はそう言って、貴大の方に向かった。貴大は“Grief(グリフ) form(フォーム)”でけが人の治療をしていた。

 

 

「けが人は?」

「っ!! ……大丈夫だ。お前、それよりも……」

「何かしら?」

 

 

 麗華がけが人の様子を訊いてきたのに驚いたのか、少しつまった貴大だったが、すぐに大丈夫と答える。だが、貴大はそれよりも何か言いたいことがあったようだ。

 

 

「あれは、あんな攻撃はやりすぎだろ。もう、奴らはやられていた」

「……そういうこと? だからあなた達は甘いのよ。奴らは悪よ。完全に殺しきらないといけないわ」

「そ、そんな……」

 

 

 先ほどの奴らは人の“ココロ”を喰らうことにためらいを持たない奴らだった。しかし、貴大は知っている。総慈という、優しい心を持ち続けた“使心獣”がいたことを。そんな貴大の想いを知ってか知らずか、麗華は話を終わらせてまた貴大に質問する。

 

 

「けが人が分けられているようだけど、どういう分け方なのかしら? 予想はつくけど」

「“ココロ”を喰われた人と喰われなかった人。あっちが喰われてない方で、こっちが喰われた方だ」

 

 

 貴大の診ている人たちは皆一様に濁った眼をしている。それは“ココロ”を喰われた証に他ならない。麗華はそれを見て、貴大に言った。

 

 

「やっぱりそうなのね。……じゃあ、こっちはもういいじゃない」

「ああ、ちゃんと診ないとな……って、何!?」

「聴こえなかったかしら? もういいと言っているの」

 

 

 貴大はそれにキレて、麗華に怒鳴った。

 

 

「なんで見捨てるんだ!! この人達はまだ生きているのに!!」

「そこから意見の相違があるようね。……私は、その人達は死んでいると思っている」

「……どういうことだ?」

 

 

 一度怒鳴ったことで、少し落ち着いた貴大は麗華の話に疑問を持つ。麗華はそのわけを話しだした。

 

 

「人には二つの命が存在する。一つは、あなたの言うような身体的な命。そして、もうひとつ。それが、精神的な命(ココロ)よ」

「精神的な、命……」

「そう。この二つの命が両方そろって初めて“生きている”と言える。どちらが一つでも欠けているのなら、その人間は“死んでいる”と言ってしまって構わないと思っているわ」

 

 

 貴大はなんとなくわかってしまった。今までの経験や見聞を思い出せば、確かにそうだと言えてしまうのだった。貴大が納得したのが分かったのか、麗華は貴大に背を向けた。

 

 

「それじゃあ、私は行くわ。あなたも、そんな死者を気にしている暇があったら、生者を気にかけなさい」

 

 

 貴大はなぜか体が動かなかった。貴大は何か、悔しいような、納得したような、嫌なような、安心したような、そんな相反した物を無理やり足したような感情を抱いていた。

 

 

「…………………………くそっ」

 

 

 商店街は、貴大の心情を表すかのように…………崩れていた。




 どうでしたか? いい感じに書けていればいいのですが……。


 まあ、そんな心配は置いといて、今回のお話です。
 今回登場したロストですが、僕が考えた物ではないです。アイデアをいただいたのです。こんなのどうですか~、と。

 仮面ライダーロストに変身するのは、あの“占い師”とか“少女”とだけ呼ばれいた人物、氷道麗華さんです。名前や能力等の基本的なところはそのまんま使っています。しかし、ちょっと設定を足した所もあったりします。

 そんな感じです。それで、このアイデアを与えてくださった水晶皇帝さん、ありがとうございます!!


 ということで、これくらいで終わります。

 それでは、次回の[悼]の回も見ていただければ幸いです。

See you next time!
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