それでは、今回のお話。
今回は、文字通り、雪山に現れた怪異の正体を調べたりする話です。でも、それだけじゃなくて、ついに最後のあれが出てきたり……と、ちょっと物語の動く回でもあります。終焉に向けて動き出した物語に、もう少し付き合っていただければ幸いです。
では、そろそろ本編に行きましょうか。
それでは、お楽しみいただければ幸いです。
※すいません。PCの調子が悪く、一時、タイトル名などがおかしくなってました。すいません。もう、修正したので、大丈夫です。
鈴谷町 鈴音東高等学校
「今日の欠席は、岡本君ですね」
教師がそう言うと、クラスは少しだけ騒がしくなった。しかし、教師がすぐにそれを静めて授業を始めた。しかし、生徒たちは雪山で遭難していると噂されている岡本という生徒のことが、頭から離れなかった。
「今年は遭難者が異常な人数なんだって」
「そうなのか?」
所変わって、都市研の部室である。貴大と優希が遭難者について話していた。遭難者が出ているのは、鈴音市の南に位置する“南吹山”である。まあ、冬といえば“南吹山”でスキーが常識である。これは鈴音市の楽しみ方を『春は東に夏は北。秋は西で冬、南』という歌にするほどの通説である。
「うん。例年の十倍だって」
「いつもは二、三人ってところか?」
「そのくらいだね。……やっぱり、あれが原因かな?」
「分からない。でも、一応行こうとは思ってる」
「気を付けてね」
「ああ」
南吹山 登山道入り口
「……全員揃ったな?」
「はい、揃ってますよ」
「そうね。早くいきましょう」
ここは南吹山の登山道入り口である。そこにいるのは貴大、叶、麗華の三人だ。貴大が優希と話して三日後。三人はこれから、南吹山で続出している遭難者の件を調べようとしている。現在、その南吹山はその件を異常事態と感じ、入山を禁止している。
「じゃあ、行くぞ」
「待て」
「誰だ?」
「っ! あなた、なんでここに……」
「フン、貴様程度に気付かれるほど軟ではない」
三人が出発しようとする時、誰かが声をかけた。そして、その声に過剰に反応したのは麗華だった。
「氷道、こいつを知ってるのか?」
「ええ。こいつは……“使心獣”よ」
「何っ!?」
「そうだ。我は“陸の王者”こと陸。またの名をNO,1トランスバールライオンの“Panthera leo krugeri”という」
「三将ですね……」
「いかにも。空と海には会っているのだろう?」
「オウギワシとホホジロザメだろ?」
「そうだ。それぞれ、空と海を司っている。そして、我が陸の民達を支配している。王たる者、敵のことは知るべきと考えて、貴様らの前に来たのだ」
ライオンはあっさり、目的をしゃべった。その目的を聞いている限り、ライオンは王者の中でも賢君であるように見える。
「空と海にはもう、貴様ら二人については見てもらっている。なら、我が調べる敵はただ一人」
「……私、ということね?」
「いかにも。貴様ら二人は、登るがよい。我の部下は、貴様ら程度に負けるとは思えんのでな」
「ということは、遭難者の件は……」
「我々が行っていることが原因だろうな」
「貴様……許さねえ」
「早く登るが良いわ。そうしなければ、犠牲になる者たちは増えるばかりだぞ?」
「……あなた達は向こうの敵を殺しなさい。私はこっちのを殺すわ」
不敵に笑うライオンを前に、麗華は貴大と叶に叫んだ。二人はチラリと麗華の方を見たが、すぐに山を登り始める。
「じゃあ、始めましょうか」
「いいだろう。あまり暴れてくれるな? 我にも手加減できんかもしれんからな?」
「勝てないから手を抜いてください、って正直に言えばいいのに」
「……ほざけっ!!」
その言葉を合図にライオンの姿が“人間体”から“怪人体”になった。麗華はすぐにドライバーをつけてチップを入れた。
「変身!!」
「
その音声が流れ、麗華はロストに変身した。そして、手に持った大きな鎌を地面にカンッ、と叩き付けて言った。
「死になさい、悪魔共!!」
「舐めた事を言うな、人間!!」
南吹山 尺八広場
「今、何合目だ?」
「もう、八合あたりです。どこにいるのでしょうか?」
八合目あたりにある尺八広場。ちょっとした休憩所もあって、頂上に上る前に、一息つくにはちょうどいい場所である。
「いったい、どこに……ん?」
「どうかしたんですか?」
「いや……こっちの方に何かある気がして」
貴大が、いきなり立ち上がって何か言い出した。叶はその方向を見るが、何も感じない。だが、あるものを見つけた。
「……これ、足跡じゃないですか?」
「そうだな。この大きさだったら……熊か?」
「何言ってるんですか? 熊はこの時期、冬眠してますよ」
「それもそうだな。じゃあ、いったい何が……っ、そうか!」
「どうしたんですか?」
「これは、“使心獣”の足跡だ!」
「そういうことですか。じゃあ、今回の敵は……」
「熊、だな」
二人はそう結論付けて、その先を見る。“使心獣”のものと思われる足跡は、どこまでも続いている。二人は目を合わせて頷いた。
「……行くぞ」
「……はい」
二人は登山道を外れたけもの道を歩き出した。
南吹山 登山道入り口
「はあっ!!」
「フンッ!!」
麗華が鎌を振り上げて切りかかった。ライオンはそれを力づくで叩き落とした。しかし、麗華はその勢いを利用して回し蹴りを放った。それはライオンの腹部に叩き込まれ、ライオンは軽くうめきながら後ずさった。
「……なかなかやるな。少し、本気を出すか」
「負け惜しみとは、醜いものね」
「誰が負けるか」
ライオンが何かを取り出す。それは、鉤爪のような形をした武器だった。
「獣王剣“
「……それがあなたの“ソウルアームズ”なのね。それに、三将であるが故の特別製」
「そうだ。これは、またの名を“大地の剣”。陸の王者たる我に相応しい武器だ」
ライオンはそう言って、獣王剣を振った。刀身が太陽の光を受けてキラリと輝く。麗華はチップを取り出した。
「第二ラウンド、開始だな……」
「泣き言を言っても知らないわよ?」
「そっちがな!!」
「
ガキンッ、と音を立てて二人の武器がぶつかった。鍔迫り合いをしながら相手の出方をうかがうが、どちらも相手に隙がないと分かると、すぐに距離を取る。
「……フム、面白い。今までの者共よりはましかもしれんな」
「そう」
お互いに相手の動きを見極めようと、お互いにあまり動かない。そのまま、時間だけが過ぎていく。
南吹山 山中
「ここは……」
「……研究所か何かでしょうか?」
雪道をゆっくり登ってきた貴大と叶の二人は、自然にあふれた山の中には不釣り合いな人工的な建物の前に立っていた。
「……変身していくか?」
「分かりません。“ココロ”を感知するセンサーなどがあれば、変身しない方がいいかもしれませんが」
「そういうのがなければ、何時でも戦えるようにはしとくべきだよな?」
「そうですね。……でも、今回は遭難者達の救出が優先事項だと思いますから、変身しないで行きましょう」
「分かった。いざとなったら、俺が囮になるから」
「いえ、僕の方が良いと思います。僕にはいざという時、人を運べるような乗り物が出せませんから」
「そうか……じゃあ、それで行くか」
「はい」
二人は作戦を決めて研究所に入った。幸い扉は開いていて、二人ともすぐに入ることができた。一階にはイスなどがあり、誰かが住んでいるような感じだった。二人は部屋を探索すると、地下への階段が見つかった。二人はゆっくり降りていく。壁や床は金属で実験に使うのであろう機械が置かれている。そして、二人が歩みを進めると、その先には衝撃的な光景があった。
「なっ!? こ、これは……」
「許せない。こんなことするなんて……」
「……いいじゃん。こいつら、僕達の“
二人はその声の聞こえた方を見た。
南吹山 登山道入り口
「はあ、はあ……」
「ふう、ふう……」
貴大と叶の二人が研究所に入ったころ。麗華とライオンは、いまだに戦闘を続けていた。何時間にも渡る戦闘というのは、お互いを心身ともに疲労していた。そして、お互いが理解した。この勝負、体力か気力が先に切れた方が敗北する、と。
「さっさとくたばりなさい」
「フン。意味もなく足掻きおって」
「あなた達“使心獣”を狩りつくすと決めたから」
「何が貴様をそこまで駆り立てる?」
「……そんなこと、知る必要はないわ!!」
その言葉を放つと同時に麗華が飛び出した。ライオンはとっさのことで、反応が遅れたがすぐに獣王剣を前に出した。ガキンッ! と、音を立てて武器がぶつかる。そして、バキッ、という音が鳴った。
「なっ!? まさか、獣王剣が折れた、だと……」
「はああああっ!!」
ライオンの獣王剣が折られ、麗華の鎌がライオンを切り裂かんと襲い掛かる。…………しかし、麗華の鎌の刃の部分が落下し、ライオンに触れる程度にとどまった。
「そんなっ!!」
「……天は我に味方、っ!? な、なんだこれはっ!!」
「……何とか、効いたみたいね」
「な、何だっ!!」
それは、麗華があらかじめ使用していた“浸食”のチップこと“
「……今回は、負けを認めよう。だが、次は必ず貴様を殺す!」
「やれるものなら、やってみなさい」
麗華は冷淡に強気なことを言い放った。だが、今の麗華は家に帰る力すらなかった。ライオンが去ったのを確認すると、麗華は変身を解いてへたり込んでしまった。麗華はライオンが去った方向を見ながらこぶしを握る。
「……次こそは、殺す」
南吹山 山中
「……お前、“使心獣”だな?」
「いかにも。俺はNO33,ホッキョクグマの“Ursus maritimus”だよ。この研究所の管理をしてる」
「これは……なんだ」
貴大は怒りを抑えながら質問した。現在“人間体”になっている熊はそれが分かったのか、クスクス笑いながら答えた。
「ごらんの通り、人間だけど」
「……この人達、攫ってきたのか?」
「まあ、そうだね。人目につかないところに来た人達を。老若男女問わずに集めてるよ」
「この人達に何しているんですか?」
「え? ……ああ、“ココロ”を貰ってるんだ。でも、僕らが喰らう時とは違って、解放すれば普通に生活できるよ。感情のない人間にはならないね」
「もしかして、“貯心体”って奴か?」
「そうそう! え? 君、知ってるの?」
ホッキョクグマは自分のコレクションについて語るような様子だった。いや、実際、熊にとっては捕まっている人達はコレクションでしかないのかもしれない。
「ドクターの研究には、“ココロ”が必要になる。でも、僕達はドクターが使う“ココロ”を賄えない。だから、こうやって“貯心体”がいるんだ。他の場所にもいるけど、ここにいるのは二十数人だったかな?」
「そんなに大勢の人を……」
「いいじゃん。僕らの研究に協力してもらってるだけさ。終わればすぐに返すって」
熊は貴大の重い調子とは正反対の軽い調子で話す。その話し方は、貴大の怒りを更に大きくする。
「そいつらが自分でやるって言ったのか? 違うだろ? お前達が皆に“貯心体”になることを強要しているだけだ。そんなの、絶対に許されることじゃない」
「何が許せないのさ? 確かに、この光景を見ればそう思うかもしれないけど、彼らの体には傷一つついていないしさ」
「そういうことじゃない。人としての尊厳っていうか、心が踏みにじられてるんだよ!」
「……分かんないな、人間は。弱い者は黙って強い者の言うことを聞いていればいいんだ。従えばいいんだ。そんな、世界の常識も知らないのかい?」
「人は自力で、他の生物を凌駕する“知性”や“理性”を手に入れた。俺達がこうやって戦うのも、その手に入れたものに従ってるだけなんだ。人は人らしく生きる権利がある。だから、俺はこんなことを許せはしない!」
「……人間はそういうもんなんだね? じゃあ、もう僕達は分かり合えない。戦うしかない」
熊はそう言って姿を“怪人体”に変貌させた。真っ白な毛皮に大きな体。その姿はまさに、熊がホッキョクグマであることを伝えていた。貴大と叶がドライバーをつけてチップを取り出した。
「作戦通りに行きます。あいつは任せてください」
「ああ、俺は“貯心体”にされている全員を助ける」
「「変身!!」」
「
「
音声が流れ、貴大と叶がハーツとグラントに変身する。そして、貴大と願がうなずき合って動き出した。
「これからは、俺様の舞台だあ! 貴様は黙って死ねえ!」
「それは、お断りだねっ!!」
両者は武器を出した。願は大剣で、熊は戦斧だった。お互いに重量のある武器なので、動きは速くないが、一つ一つの動きに力強さがあった。
「はあっ!!」
「おらあっ!!」
お互いの武器が鈍い音を立ててぶつかる。願はいきなり力を抜いて熊のバランスを崩させた。そして、すぐに大剣で切りかかった。
「ぐはっ!!」
熊は鮮血を飛ばして地面に倒れた。冷たい床には熊の体温が伝わっていく。願は更に大剣を振りかぶった。
「これで終わりだあっ!!」
「ま、まだああ!!」
願が大剣を振り下ろした場所にいた熊はやっとのことでそれを避けて、“原獣体”になった。
「グオオオオオッ!!!!」
「何っ!?」
いきなりのことで驚いた願は、一瞬動きが止まる。そのせいで、熊の鋭利な爪が願の体を切り裂いた。
「がはっ!!」
ザクッ、と肉の切れる音がして、願は地面に這いつくばった。“原獣体”になったからか、少し理性が飛んでいる熊はあたりに暴れ散らしていた。願はその隙にチップを取り出した。
「
「ふうぅ」
願が入れたチップは“治癒”のチップこと“
「クソッ、油断できねえな……」
「グルル……」
「いくら“
「“
願はチップを入れて構えた。願の周りにはたくさんの武器が出てくる。
「これで終わりだ。願式必殺術“
「グオオオオオッ!!」
願は必殺技を放つ。熊は飛んでくる武器を避けながら願を攻撃しようとするが、できなかった。武器がザクザク刺さり、熊は叫びながら爆発した。
「……ふう。終わった」
「おい! こっちの救助、終わったぞ!」
願は息を吐き出した時、貴大が駆け寄ってきた。救助がすべて済んだようだった。願は変身を解除して貴大の方を見た。
「そうですか。あの助けた人は?」
「全員一階にいる。意識を失ってるだけで、怪我とかはなさそうだ。岡本もいたよ」
「岡本君もやっぱり?」
「ああ、“貯心体”にされてた。と言うか、捕まった人たちは全員そうだったよ。……もしかして、疑ってるのか?」
「ええ。否定はできませんから」
叶は不安そうに一階の方を見た。そこには、意識を失った人々がいるのだろう。そして、叶は不安に思っていることを口にした。
「……人体実験が行われている、ということを」
「……そうだな」
二人はお互いに黙り込んだ。しかし、しばらくすると貴大の方が口を開いた。
「……とりあえず、上にいる人達を連れて下まで降りようか」
「はい。……一人で、十数人ですか?」
「重労働だが、頑張るぞ」
「そうですね」
『そうだよ! 頑張れ、叶ちゃん!』
『……頭を使えば、簡単にできる』
『らーくーしょーうーさー♪』
『俺は変わんねえぞ。自分でやれよ』
叶が疲れているのに重労働をするため、疲れたように返事をした途端、そんな応援(?)がやって来た。叶は、苦笑して貴大に言った。
「なんか、いいチップとかないですかね?」
「多分あるんじゃないか? 緑さん、“W”のところに色物チップ入れるの好きっぽいから」
「もしかして、トラックとか……」
「免許がないものは使えねえよ」
貴大と叶は笑いながら一階に上がった。その後、“W”のところに“自動車”こと“
どうでしたか?
今回は、いろんな用語や存在について語ってみます。
いよいよ最後の三将が現れました。三体目はライオンです。ありきたりですが、三将にはピッタリだと思います。サメ、ワシ、ライオン。この三体が、海、空、陸の“使心獣”を統べる者達です。
三将。サメを出してから、どんな感じにしようかなあ……と、楽しみにしていた三体です。ちなみに、結構気に入ってるキャラです。だから、武器もちょっといいものを使わせてあげたかった。……折れたけど。
後は、“貯心体”ですね。いつぞやのリス(今も生きてる)の時に出てきた言葉です。電気でいうなら、電源装置みたいな感じでしょうか。“ココロ”を効率よく供給する存在です。
後は……特にないですかね。
それでは、次回の[急]の回も見ていただければ、幸いです。
See you next time!