それで、話が変わるのですが、最近「ハーツが始まって、もうすぐ一年経つな……」と、思っていたんです。それで、今日に確認したのですが……とっくに過ぎてました! [惑]の回を出した翌日でした! びっくりです。
……と、このくらいにして今回の話。
今回の題名にある“悾款”というのは、“誠”“真心”という意味です。そして、“鍵”というのは、物語の鍵です。……なんですけど、僕、“悾款”を“真”“真実”という意味だと誤解してたんですねー。まあ、本当の意味でも通じると言えば、通じますから大丈夫です!
そして、とうとう今回からクライマックスに行きます。今回は短めですが、その分内容の濃い話になっています。
それでは、お楽しみいただければ幸いです。
鈴本町 鈴音駅
鈴音駅の南口。そこで、一人の男性が電話をかけた。
「もしもし。鴻崎だよ。…………今日はね、サプライズをしようと思ってね。…………うん。今、鈴音駅にいるんだ。くれぐれも貴大君には秘密で。…………うん。じゃあね。
男性……鴻崎は電話を切った。そして、横にあるスーツケースをチラリと見てから、鈴原町の方に歩いて行った。
??? ???研究所
「……ドクター」
「なんだい?」
「俺達、大丈夫なんですかね?」
とある研究所。そこで話しているのは、ドクターと呼ばれる人物と、少し派手な格好をした青年だった。
「大丈夫、とは?」
「俺達、生き残っているのはもう十人。この状況で、勝てるんですか?」
「考えは、ある」
「考え?」
「ああ。もうすぐ……戦争をしようと思う」
「せ、戦争!?」
「ああ、そうだ。……面白そうだろう?」
ドクターは、青年に向かってニヤリと笑った。これから、何が起きるのかは、誰も知らない。
鈴本町 サウンドベル本店
「……本店が鈴音だからって、この名前は安易だよな」
「そんなこと言っちゃだめだよ」
「すまんすまん」
文具店、サウンドベル。和訳をすれば……と、言えば何が言いたいのか分かっていただけるだろう。貴大は、翔逸とシャーシンやボールペン、ノートなどを買いに来ていた。
「で、何を買ったんだ?」
「これだよ」
翔逸の出した籠の中に入っているのは、ペンのインクや鉛筆。ノートが数冊分だった。
「今日は、いつもより安いから。今日のうちに買っておくといいんだよ」
「セールか?」
「うん。毎月、十六日は安いんだ。店主が、色川さんなんだって」
「だから、
「そうだよ。でも、こういうのって、そういうのが多いよね。商店街の八百屋さんは、自分の結婚記念日は安くなるし。魚屋さんは、おばあちゃんの退院日には魚をサービスしてくれるよ?」
「……ここの人って、いい人が多いな」
「だから、僕はこうして暮らせるんだよ?」
翔逸はそう言って笑った。彼の両親や兄は、“使心獣”のせいで死んだ。しかし、今はこうして貴大の家で暮らしている。
「……そうか」
「うん、そうだよ」
貴大は、恥ずかしそうにそう呟いた。先ほどの翔逸の言葉は、貴大がいい人だと言ったのに等しいのだから。
「えっと……他に買うものはあるか?」
「後は……シャンプーとか石鹸を買っておこうかな? 石鹸は、ここにしか売ってないし」
「そうか。じゃあ、行こうぜ」
「うん」
二人はレジに行って、支払いを始めた。
鈴原町 三坂貴大宅前
「着いた」
スーツケースを持った男性が、貴大の家の前に立っていた。そして、インターホンを押そうと手を伸ばした。
「鴻崎さん」
「……麗華ちゃんかい?」
そこにいたのは、氷道麗華だった。商店街で占いをする時と同じ格好で、鴻崎を見ていた。鴻崎の声は少しこわばっていた。
「どうしたんだい?」
「今、彼はいませんよ」
「へえ、どうして?」
「この家から、彼の“ココロ”が感じられないので。ちなみに、隣にもいません」
「……そうかい」
鴻崎は、驚いたように麗華を見た。そして、理由を聞くと少し悲しそうな声を出した。しかし、すぐに表情を戻すと、鴻崎は麗華に尋ねた。
「こんなところにまで会いに来たっていうのは、用があるからだよね?」
「はい。彼に会う前に、聞きたいことがあるんです」
「……じゃあ、どこか別の場所に行こうか?」
「分かりました。カフェにでも行きましょうか」
鈴本町 某所
「もう、全部買えたか?」
「うん。そろそろ帰ろうか」
「そうだな」
貴大と翔逸は、買い物を終えて帰ろうとしていた。貴大は両手にレジ袋を持って、翔逸と鈴原町の方に向かおうとした。その時、どこかから大きな破壊音がした。
「な、なんだ!?」
「この街の者共に告ぐ!!」
突如、拡声器を使った声が聞こえてくる。貴大は、慌ててその方向に顔を向ける。すると、そこには瓦礫の上に立つ青年がいた。青年は、拡声器を持ったまま話を続ける。
「我々“使心獣”は、鈴音市に暮らす者達に宣戦布告する。今年度内に、大掛かりな攻撃を仕掛ける!」
「なんだって!? 宣戦布告!?」
“使心獣”からの宣戦布告。貴大は、思わず初めて会った“使心獣”……アッシーこと、アシダカグモが言っていた。これからは、隠れることなく襲うこともある、と。今までにもあった。だが、貴大は、あれは今回のことを言っていたとしか思えなかった。
「もしも、我々に対抗したくば、仮面ライダーを待つことだ! 仮面ライダー! この街を、人々を守りたくば、すぐに来ることだな!」
「翔逸っ!!」
「分かってる! 負けないでね!」
「オーケー、任せとけ」
貴大と翔逸は、短い会話で意思疎通を行う。翔逸は、貴大の荷物を受け取って青年の方向から離れていった。貴大の方は、青年の前にやってくる。
「おい、お前っ!!」
「おやおや……聞いてるかもとは思ったけどー、まさか本当に聞いてたなんてー。俺、びっくりだぜ」
「対して驚いてないくせに、よく言う」
「まあな」
青年は飄々とした様子でそう言う。実際、待ち行く人の“ココロ”を見ているので、仮面ライダーがいるかどうか分かるのだ。
「さーて、それじゃあ、前哨戦と行こうかね……」
青年はそう言うと、その姿を変化させた。鳥のような姿で、その色は和風な茶色と緑を混ぜたようなモノ。そして、その色は、その鳥の名前で呼ばれている。
「さて、それじゃあ、このNo,19ウグイスの“Horornis diphone cantans”がお相手しよう」
「鶯、か……」
鶯、春告鳥とも呼ばれるその鳥が、今回の宣戦布告に選ばれたのは妥当と言えるかもしれない。貴大はすぐにドライバーを付けた。
「変身!!」
「
貴大の周りに白い装甲が現れ、貴大に装備される。そして、貴大はホルダーからチップを取り出して構えた。
鈴坂町 Cafe~refrain~
「……で? 話って、なんだい?」
鈴坂町にあるカフェ『リフレイン』。その名の通り、繰り返し来たくなるような雰囲気のいい店である。しかし、裏道にある隠れ家的な存在であるためか、客は二人しかいなかった。
「……鴻崎さん、なぜこの街に? あなたは、裏から行動すると、動くことはないと言ってたじゃないですか?」
「事情が変わったんだよ、麗華ちゃん」
「事情、ですか?」
「そう。この件、僕には無関係。資金繰りの相談に乗って、研究を託されただけで、僕には何の関係もない、って」
鴻崎は砕けたような言葉を使ってはいるが、その顔は真剣だった。
「でも、そうじゃなかった」
「……鴻崎さんが、関係していたって、ことですか?」
「うん。っていうか、僕が原因だったんだよ。僕が、僕が、あんなことをしなければ、誰も傷つかなかったんだ」
「……何をしたんですか?」
「僕は、僕は……」
竜崎は、しばらく間を開けた後、己がしたことを告白した。
「……竜崎君に、恨まれてる。竜崎君が、“使心獣”を作ったのは、僕が公表してしまったからなんだよ」
麗華は何も言わなかった。鴻崎は、自嘲的な笑みを浮かべて、言葉を零した。
「……彼らの、研究を発表したんだよ。僕の、名前で」
竜崎が“使心獣”を作ったのは、先輩の研究に似たものが学会に発表されたから。そして、その発表をしたのは……鴻崎だった。
鈴本町 某所
「はああっ!!」
貴大が“
「おおっと」
鶯は剣を避ける。戦闘が開始してから五分が経過しただろうか。貴大はずっと攻撃し続けているが、鶯の方は一切攻撃していない。ただ、ひたすら避け続けていた。
「はあ、はあ……埒が明かねえ」
「
貴大は“集中”の“
「ハッ!!」
「うわっ!!」
貴大の放つ弾丸が鶯にあたった。鶯は悲鳴を上げて倒れた。貴大はすぐさま剣で追撃しようと駆けていく。
「これで、どうだっ!!」
貴大が一撃決めようとした途端、鶯が何かを取り出して操作する。すると、かなり大きな音が鳴り、貴大は思わず耳をふさいだ。だが、すでに音は貴大の耳を使えなくし、さらに衝撃波が貴大を襲った。
「ああ、危ない危ない……。これがなかったら死んでたー」
「くっ……」
「え? これ? これは俺の武器。ある操作をすると……バーン!! と、大きな衝撃波と音をぶつけるのですっ!!」
鶯が饒舌になる。しかし、貴大には何も聞こえない。とりあえず、あの武器が原因だということだけは分かった。貴大はすぐに立ち上がって攻撃に転じようとするが、なぜか立ち上がれない。
「立て、ない…………っ!」
「そりゃそうだ。音と衝撃波で三半規管に大ダメージ!! 平衡感覚を失っている今、あんたは立てない!!」
鶯はそう言うと、すぐに貴大の方に駆け寄って剣と銃を弾き飛ばす。どうやら、攻撃が効いていたのか確認していたようだ。鶯らしい、警戒心の強い戦い方だった。
「おらっ!! そりゃあっ!!」
「ぐふっ!!」
まともに動けない貴大にどんどんと攻撃が加わっていく。その場所も万一の場合を想定してか、防御の難しい場所だけを狙う。貴大は地面に倒れこんだ。
「おいおい! もう終わりか? そんなんじゃ、戦争なんてできねえなあ!」
鶯の罵倒すらも聞こえない貴大は、起き上がることもできないまま意識を落とした。一瞬、グラントの影が見えたが、詳しいことはもう彼には分からない。
鈴坂町 Cafe~refrain~
「鴻崎さん。あなたが、“使心獣”誕生の原因だと?」
「そうだね。作ったのは、龍也君だけど」
その言葉を最後に、二人の間に沈黙が流れる。そして、しばらくして鴻崎が口を開く。
「麗華ちゃん。君の話はこれじゃないよね? 君には、悩み……のようなものがある。それについてじゃないかい?」
「……分かるんですか?」
「まあ、短い付き合いだけど、そのくらいはなんとなくね」
麗華は驚いたような表情を見せたが、しばらく言葉を選んでから話しだす。
「私は、自分の正義のために戦っている。その正義を乱す者はすべて敵で、倒すべき存在です。それは、今でも変わらない。これからも、そうです」
「じゃあ、何が問題なのかな?」
「それが……よく、分からないんです。というか、分からないことが問題です」
「そう…………」
鴻崎はしばらく悩んだそぶりを見せてから、窺うように話し始めた。
「前から思った事ていたことがあるんだけど……聞いてくれるかな?」
「……なんですか?」
「麗華ちゃん、さっきも言ってたよね? 自分は、虚無の存在だって。何も持たない、無だって」
「はい。私は何にも持たない、無だと思います。今は、力を手に入れることができたけど、それ以外には何もないし、手に入らない」
「やっぱり、そう思ってるんだ?」
「はい」
鴻崎は目を閉じて深く息を吸う。そして、それを吐き出すと、言った。
「麗華ちゃん、君は…………得ることを、失うことを恐れてないかい?」
「得ること、失うことを……恐れる?」
「そう。君は、自分は何もない。何も得られないと、思い込んでいる。そして、仮に何かを得られてもまた失う。そういった考えがあるから、得ることや失うことを拒む」
「そんな、そんなことっ!!」
麗華はガタッ、と勢いよく立ちあがった。二人は見詰め合って……いや、睨み合っていた。そして、しばらくして麗華が椅子に座りこんだところで、再び鴻崎が話し出す。
「……麗華ちゃん。自分は何もないって、そう言ったね?」
「……はい」
「二つ。人生の先輩である僕から、後輩の麗華ちゃんに教えてあげよう」
鴻崎は少し茶化したような言葉で麗華に語りかける。しかし、その眼は変わらなかった。
「失うっていうことはね、持つ者にしかできないことなんだよ」
失う、という行為は、何かを持っていて初めて成り立つことだ。何もない人間は決して“喪失者”になることはできない。
「それと、もう一つ。得るっていうことは、いつでも、どこでも、どんなものででもできる。必要なのは、手を伸ばすこと。伸ばさない者には、手に入る資格すら与えられない」
それは、今の麗華でも得ることができる、ということだ。麗華は、ゆっくり立ち上がった。鴻崎は、軽く微笑むと言った。
「周りを見てごらん。君の周りには、いろんなものがある。欲しければ、手を伸ばせばいい。恐怖から、逃げてもいい。だから、目をそむけないで。ゆっくりでいいから、向き合いなよ?」
「………………た」
麗華は小さい声で何かを言うと、カフェを出た。そして、それと入れ替わるように二人の男女が入ってきた。
「お、見て見て! 教授みたいな人がいる!」
「じろじろ見たらダメですよ! 失礼です!」
その二人は、陽菜と詠二だった。鴻崎は、驚いたように口を開いた。
「え……陽菜ちゃん? 詠二君?」
「えっと…………みたいじゃ」
「ないですね…………」
三人は見詰め合ったまま一言もしゃべれなかった。
鈴本町 某所
「フッ!!」
「ぎゃ!! だ、誰だ!!」
「……僕だ」
そこにいたのは、頼だった。鶯のそばには、気を失った貴大がいる。頼は手に持った弓を放ちながら貴大の方によっていく。鶯はその気迫に負けて、後ろに下がった。頼は貴大の前に来ると、“
「くっ……まあ、いい」
鶯は、貴大が回復していくのを見て、そう言いながらあの武器を取り出した。
「喰らえっ!!」
バーンッ!! と、いう大きな音と衝撃波が頼を襲った。頼はそれが鳴る前に耳をふさいで、身構えていた。
「ぐっ!!」
「何っ!?」
貴大の時にうまくいったこともあり、鶯は少し慢心してしまっていた。だからこそ、防がれたことに驚きすぎてしまった。頼は一気に距離を詰めると、拳を顔面に放った。そして、間を開けずにさらに攻撃を仕掛ける。
「……遅い、注意散漫」
「ぐふっ!! ガハッ!! うがっ!!」
頼……拳闘の神“
「これで終わり」
「“
「汝、痛み感じること無かれ。“
頼は黄金に輝く矢を弓につがえた。そして、一気に振り絞ると、それを放った。一筋の光の矢は鶯の胸に刺さる。
「ううっ……覚悟しろよ、仮面ライダー。もうじき、すぐに戦争が起きる!! 明るい、賑やかな春が来ると思うな!」
鶯はそう言って爆発した。頼は、変身を解除した。
「……ともに、歩むつもりはないのでしょうか」
『……叶ちゃん』
叶のつぶやきに、祈が声をかけるが、叶は何でもないと返事をした。叶は最近、貴大から聞いたある“使心獣”の話を気に入っている。人と“使心獣”がともに歩める未来があるかもしれない。そう思った彼にとって、戦争の知らせはつらい物だった。
「……明るい、光はないんでしょうか」
未来は、どこまでも暗澹たる闇が広がっているのだった。
??? ???
「……もう、そろそろじゃないかしら?」
「分からない。まだ、なのかもしれない」
どことも知れない場所に、二人の男女がいる。女性は男性の方に話しかけるが、男性は思考の海に潜っていた。
「……どうやら、竜崎君も最後の行動を起こしたようだ。本当に、このことを言うべきだろうか?」
「彼らの、戦う意思が鈍るから?」
「ああ。だから、言うべきじゃないのかもしれない。でも、真実を伝えないのは……」
「……間違ってる?」
女性の問いに、男性は首肯した。どうやら、何かを誰かに話すかどうかを悩んでいる様子だ。
「……もう、戦いも終わりそうね?」
「うん。だからこそ、終わる前に言うか、どうするか……」
男性は、答えを出すことができない。彼が、その問いに対する答えを出すのは、もっと先になるだろう。
どうでしたか? お楽しみいただけましたか?
とうとう、宣戦布告されました! これから、三話の間……僕個人が『“使心獣”大戦』と呼んでいる話が始まります。この話で、残った三将達以外の“使心獣”の在庫しょ……ゴホンゴホン!! ……失礼、彼らとの大戦争が起こります。
更に、ギャグキャラになってしまっている夢乃君達にも、活躍の場を作ってあげる予定です。お楽しみに。
最後に、この物語の謎も、かなり分かってきましたね。ですが、まだまだあるんですよねー。そちらは、またこれからのお楽しみしていただきたいと思います。
だいぶ長くなりましたし……今回は、このくらいにして終わりたいと思います。
次回の[撼]の回も見ていただければ幸いです。
それでは!
See you next time!