仮面ライダーHearts   作:山石 悠

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どうも、山石悠です。テスト期間の真っ最中で、投稿しちゃうという暴挙に出ました。
いやー、現代文で『南総里見八犬伝』の作者、滝沢馬琴さんを主人公にした、芥川龍之介さんの『戯作三昧』を読んでしまったので……つい。

さて、それでは今回の話。
今回から『“使心獣”大戦』が開始されます。第一回とある今回は、街への攻撃。そして、氷道さんの戦いを書いております。三坂君や夢乃君が好きな方には申し訳なく、もしかしたら氷道さん好きの人にもかもしれませんが……今回は、ブラック氷道さんだけです。

それでは、お楽しみただければ幸いです。


[撼] 都市の撼落

鈴本町 鈴音駅前

 

 街は、いたって平和だった。しかし、いきなり……駅前の噴水が破壊された。突如、放たれてきた弾丸が噴水を破壊したのだ。そばにいた人達は、その衝撃に吹き飛んだ。

 

 

「っ!!」

 

 

 誰かが息をのんだ。しかし、破片が飛ぶこともなく消し飛んだ噴水に、その場にいた者達は状況を把握しきれていなかった。

 

 

「………………あ、ああ…………」

 

 

 誰かが、何かを叫ぼうとする。しかし、何も言えない。そして、二発目の弾丸が、同じ場所に再び落ちたことで、その硬直は破壊された。

 

 

「きゃあああああああ!!!!」

「うわあああああああ!!!!」

「ぎゃあああああああ!!!!」

 

 

 あちこちから絶叫が聞こえ、人々が逃げ惑う。その間にも、三発目、四発目が放たれて、街の人々を襲っていく。街は、一瞬にして混乱の渦に巻き込まれた。

 

 

 

鈴谷町 鈴音東高等学校

 

「それでは、授業を始めるぞ。教科書の230ページを開けー」

 

 

 鈴音東高等学校では、いつものように授業が行われていた。生徒達は教科書を開いた。

 

 

「それじゃあ、この学年で最後の話だ。三坂、題名から読めー」

「はい。……『想いの能力』鴻崎博信…………って、鴻崎さん!?」

 

 

 貴大は、いきなり絶叫する。その叫びにクラス中がざわつくが、貴大は話の最後にある著者の写真を見る。そして、確信したようだった。

 

 

「三坂? どうかしたか?」

「あ、いや……この、鴻崎さん、知り合いだったので」

 

 

 その言葉でまたクラスがざわつくが、しばらくしておさまると、貴大は続きを読みだした。

 

 

「火事場の馬鹿力、という言葉がある。危険な状況になると普段以上の力が出る、という意味だ。火事場、という場面に出くわす人はあまりいないので、事実かどうかは分からないが、似たようなことはよくあるのではないだろうか? 例えば、スポーツでの気力での勝負、といったものがあるだろう。スタミナなどが、自分の限界を超えているにもかかわらず、それ以上のプレーができるとき。これは、まさしく想いの能力だと思う」

 

 

 貴大は教科書を読み進めていく。そして、一ページ読み終えて次のページに進もうとしたとき、突然、衝撃と共に大きな音が鳴り響いた。教室中がざわつくが、教師がすぐに静めようとする。

 

 

「落ち着け!! まずは、全員、出席順で廊下に並べ!!」

「無理だよっ!!」

 

 

 騒ぎかき消されたが、そう叫んだは貴大だった。貴大のポケットに入っている携帯からは、うるさいくらいに“Hサーチャー”の音が鳴り響いていた。生徒達も、二回目の衝撃と爆音によってパニック状態に陥る。教師の指示もまともに飛ばず、ある三人を残して全員が教室から出た。

 

 

「……この爆発の原因」

「間違いなく、奴らね」

「おそらく、これが戦争でしょう」

 

 

 短い言葉で状況確認をした、貴大、叶、麗華。三人は、“Hサーチャー”の反応している地点を確認する。

 

 

「三方の山……街を囲んで落とすつもりか。どうする?」

「とりあえず、私は西に行くわ」

「分かりました。僕は、南に行きます」

「じゃあ、俺は東だな?」

 

 

 三人は自分の行くべき場所を確認する。そして、顔を居合わせるとしっかりとうなずいた。そして……貴大は、ふと麗華の方を見た。

 

 

「……何?」

「いや……今回は、協力的だな、と」

 

 

 貴大がそう言うと、麗華は少しだけ表情を緩めて言った。

 

 

「……手に入るモノは、手に入れておくことにしたの」

「手に、入るモノ?」

「ええ。例えば……戦友、とかね」

 

 

 麗華はそう言って、教室を出た。貴大は叶と顔を見合わせて首をかしげた。……何が起きた? と、言わんばかりに。

 

 

「……俺達も、行くか」

「ですね」

 

 

 二人はすぐに自分が行くことになっている場所へと急いだ。

 

 

 

西打山 鉦鼓展望台

 

「……ここね」

 

 

 麗華は鉦鼓展望台(しょうこてんぼうだい)にいた。街の一望できるところで、攻撃にはもってこいな場所だった。

 

 

「お! 俺のところには三人目か!」

「……“使心獣”」

「せいかーい!!」

 

 

 麗華の言葉に答え、その姿を人ならざる者に変えたそれは、ニヤリと笑った。

 

 

「さーて、ここにいるのは、俺No14オニヤンマの“Anotogaster sieboldii”だけだが、楽しい戦いになると思うぜ?」

「オニヤンマ……あなた、季節はずれなのよ。さっさと消えなさい」

 

 

 麗華は冷たく言い放つと、オニヤンマ……トンボは、両手を顔の横に持ち上げて「やれやれ」といった様子で首を振った。

 

 

「つれないねえ……ま、そんな余裕、すぐに消してやるけどな」

「やってみなさい。……変身!!」

Install(インストール)Lost(ロスト)”」

 

 

 麗華の周りには、全身を覆う装甲が現れた。そして、それが装備されると、麗華は手に持った鎌をオニヤンマに向けた。

 

 

「私は、彼らと違って容赦しないわ。私が相手になったことを、黄泉路で後悔しなさい!!」

「噂通りの死神ぶりだなっ!!」

 

 

 麗華は手に持った鎌を……トンボはどこからともなく取り出した槍を構えた。槍は一メートルほどで、穂と茎が同じくらいの長さ。リーチ差はあまりないようだ。

 

 

「はあっ!!」

「おらあああっ!!」

 

 

 二人の影が交差した。キン、と武器がぶつかる音がし、両者が背を向けたまま五メートルほどの距離が開いた。しかし、両者は無傷だった。

 

 

「なかなかいい槍ね。どこぞの獣王の剣よりもいいんじゃない?」

「俺が“ココロ”で強化してるからな。あの方は、“ココロ”の操作が苦手だから」

「そう。……どうりで、私の死神の鎌(ロスト・デスサイズ)よりも悪いと思ったわ」

「言ってくれるじゃん。これ……蜻蛉斬、かなり気に入ってるんだけどなー」

 

 

 トンボは、残念そうに言葉を漏らした。蜻蛉斬、というのがあの槍の銘なのだろう。トンボは槍をクルリと回転させて持ち直した。刃が太陽の光を反射して、キラリと光る。

 

 

「さーて、雑談はもういいよな?」

「そうね。あなたの寿命をいたずらに伸ばす必要もないものね」

「ハッ、言うじゃん。でも、それでこそ…………」

 

 

 麗華はとっさに武器を構えた。トンボの纏う気配が確実に変化したからだ。トンボは、ジャリ、と足で地面を鳴らした。

 

 

「……心が躍るなっ!!」

「戦闘狂めっ!!」

 

 

 麗華の罵倒が放たれると同時に、トンボの槍が麗華の鎌とぶつかった。透明な羽はもはや見ることができず、黒と黄色の軌跡だけがそこに見える。

 

 

「はあっ!!」

 

 

 麗華は少し槍をずらして自分にあたらないようにした。そして、体をひねるようにして回し蹴りを放つ。しかし、その攻撃は遅すぎた。麗華の蹴りがトンボのいたところに届いた時には、すでに麗華の後方に移動した後だった。

 

 

「遅いっ!!」

 

 

 トンボは、急ブレーキからの急加速。一気にトップスピードになると、槍をふるった。あまりの速度に、槍が複数あるようにも見えた。

 

 

「幻想斬撃!!」

「きゃあっ!!」

 

 

 麗華に斬撃が決まる。速度に後押しされた斬撃は、麗華の装甲を斜めに切り裂いた。麗華は物理法則に従って吹っ飛ぶ。麗華はできる限り衝撃が逃げるようにして地面に倒れこんだ。

 

 

「クッ……」

「どうだ!! これまで、時間をかけて編み出した二十六の必殺技の一つ“幻想斬撃”!!」

 

 

 自慢げにそう言うトンボ。麗華はすぐに起き上ってチップを取り出す。そして、すぐにそれを入れた。

 

 

Function(ファンクション)Invisible(インビジブル)” Function(ファンクション)Darkness(ダークネス)

「……透過に暗黒。俺の目を使えなくしようってことね」

 

 

 麗華が行ったのは、トンボが言ったように目くらましだ。そして、それは有効な一手だった。トンボも人も……視覚が中心となっている。そして、その両方の性質を持つ怪人体に、この行動は有効だったのだ。

 

 

「……………………」

 

 

 沈黙。何の音も聞こえなかった。トンボは視覚を封じられているため、頼れるのはそれ以外の感覚。必死に耳を澄ませていた。そして、遠くに麗華のドライバーから音声が流れたのが聞こえたが、よく聞き取れない。

 

 

「……見えないうちに必殺技か? 大技なら、それなりの音が鳴る……」

 

 

 “ココロ”がチャージされる音、麗華の足音、鎌が空を切り裂く音。さまざまな音が、トンボの耳に届くはずである。トンボは軽く息を吸った。……そして、違和感を感じた。

 

 

「…………………………? ……!!」

 

 

 「何が起きた?」そう、自分は言ったはずだ。しかし、自分の声が聞こえない。そして悟る。先ほどの、息を吸った時に感じた違和感。あれは…………息を吸った音が聞こえなかったからだった。

 

 

「…………………!!」

 

 

 何かが自分の体を切り裂いた。慣性の法則に従って、トンボの体が吹き飛ぶ。おそらく……いや、間違いなく麗華の攻撃であるはずだが、何の音も聞こえなかった。意識が混乱している。何が起きた? 何をされた? そんなことを考えている間に、さらなる攻撃が、トンボを襲う。

 

 

「…………!! ………………!! …………!!」

 

 

 「なんだ!! 何がっ!! 起きた!!」しかし、そんな叫びすらも聞こえることはない。悲鳴も上がらない。死神の足音すら聞こえない。そして、周りは完全な闇。トンボの意識を、恐怖と焦りが支配する。

 

 

「…………!!」

 

 

 叫び声が上がるはずだった、「ぎゃあ!!」と。しかし、そんな音は聞こえない。そして、ようやくトンボの周りの闇が消えた。そして、麗華の姿も、目の前にあった。トンボは、先ほどまで優越感を感じていた相手に、恐怖を……畏怖を感じているのを理解した。

 

 

「……………………………………起きた? っ!! やっと、音が戻った!!」

「どう? 何も見えず、何も聞こえない世界は?」

 

 

 背中に、冷たい物が走った。麗華の声は、先ほどと、まるで変わっていない。しかし、トンボ自身の恐怖が、麗華を先ほどとは違う何かにしていた。

 

 

「な、何を、した…………」

「……いいわ。教えてあげる」

 

 

 麗華はしばらく思考してそう言った。おそらく、答えを話した程度では、トンボの恐怖は消えないと思ったのだろう。

 

 

「私は、あなたの目を見えなくした。それは分かるわね?」

「あ、ああ……」

「そして、私はすぐにその場から離れて、あるチップを入れた」

 

 

 そう言って、麗華はとあるチップを取り出した。そこにかかれているのは……

 

 

「…………“Silent(サイレント)”」

「そう、“Silent(サイレント)”。……“沈黙”よ」

 

 

 トンボは、それですべてを悟った。麗華はトンボから離れて、あのチップを使った。だからこそ、トンボは音が聞こえなくなったのに気が付かなかった。あの、かすかに聞こえたドライバーの音声は、あれを使った音だったのだ。

 

 

「あなたは最初の二枚で、私が目くらましをしたことを理解する。そして、次が聞こえていてもいなくても、あなたはこれを私がチャンスだと思っていると考えた。だからこそ、次の攻撃は抑えようとしても、集中すれば音の聞こえる大技だと誤解した」

 

 

 すべて、あたりだった。トンボは、完全に麗華の仕掛けた罠にかけられていたのだった。

 

 

「私は、それを逆手にとって、音を聞こえない状況を作り出した。理由も分からない沈黙。聴覚に頼ろうとしたのに、何も聞こえない恐怖。それを利用した私の作戦。……効いたでしょう?」

「っ!!」

 

 

 やられた!! そう、思ったころにはもう遅い。理由も分かっているにもかかわらず、恐怖がトンボを襲っている。もう…………逃げられない。

 

 

「最近、いろいろなものに甘くなってしまったと思ってるの。だからこそ、ここで本気にならないと、ね?」

 

 

 今の一言が事実かどうかはわからない。しかし、最後の言葉がトンボの脳内で変換される。「ただでは、殺さない」と。全身からあふれてくるのは、逃げ出したいと思う恐怖と生きたいという欲望。だが、今は戦争中。この地を任されている自分に、逃げの一手という判断を下せない。“使心獣”になる前から持っていた“本能”。“使心獣”になって得た“理性”。

 

 

「クソッ……」

 

 

 他のものなら……例えば、()なら逃げを選ぶだろう。実際、奴は逃げてきたのだ。しかし、幸い……いや、この場でなら不幸なことに、トンボは“ココロ”とある方向で相性が良かった。そのせいで、より人間らしい行動……“理性”が強くなってしまっているのだった。

 

 

「……何もできないの? 見苦しいわ」

 

 

 悪態しかつけていないトンボに嫌気の差した麗華。さらなる恐怖を与えるため、麗華は新たなチップを取り出した。

 

 

Install(インストール)Rejection(リジェクション)”」

 

 

 音声が流れ、麗華の装甲が闇よりも深い黒に変わる。その色は、先ほどまでトンボを恐怖の底に貶めていた“暗黒”を嫌でも連想させる色だった。トンボの体中に、恐怖が走る。

 

 

「……さあ、これが最後の恐怖よ。最初にも言ったけど……」

「…………ああ、っ!!」

 

 

 トンボは息をするのが精いっぱいだった。麗華が言葉を溜めて沈黙を走らせると、先ほどの恐怖が倍加した。

 

 

「……私が相手になったことを、黄泉路で後悔なさいっ!!」

 

 

 あの時の、自信満々だった自分がうらやましかった。あの自信の、百分の一……いや、一千分の一でもあれば、勝つ希望が見えるかもしれないというのに。トンボは……恐怖に負けた。今すぐ逃げようと、後ろ向きに足を踏み出そうとした。しかし……その体は、前に、麗華に向かって突っ込んで行った。

 

 

「あ、あ゛あ゛ああああっ!!!!」

 

 

 分からない。なぜ、自分の思い描く方向に体が動かない? なぜ、目の前の敵は動いている? なぜ? なぜ? なぜ?

 

 

「はああっ!!」

「ぎゃあああっ!!」

 

 

 麗華の攻撃がトンボに命中した。トンボの体が吹っ飛ぶ。トンボはすぐに起き上ろうとする。しかし、体が地面に張り付くように動いてしまう。

 

 

「なんで!! なんでなんだっ!!」

「それが、“拒絶”の力よ」

 

 

 麗華の声が頭上で聞こえる。手に持っている槍が蹴り飛ばされた。しかし、確認しようとしても体が逆を向く。

 

 

「“Rejection(リジェクション)”……その効果は“反射”。あなたや私の動きは、全て逆になる。だんだん、扱いがうまくなってきて……効果の範囲も広がったのよ。Function(ファンクション)の方で使おうとすると、鎌が盾にしかならないからInstall(インストール)の方で使うしかないんだけどね」

 

 

 やっと、今度の恐怖の謎も解けた。トンボは、試しに顔を下に向けようとする。すると、顔が持ち上がって麗華の方を見ることができた。

 

 

「そうそう。自分がしたい動きの逆をイメージして動くの。そうすると、本当にしたい動きができる」

 

 

 そこまで言うと、麗華は沈黙した。……いやな予感、というのはこれのことだろう。麗華はチップを取り出した。

 

 

「これで、終わりよ」

「“Rejection(リジェクション)” “Area(エリア)” Final(ファイナル) Attack(アタック)

 

 

 麗華が鎌を振り上げた。それは、生者を死地に送る死神のようだった。

 

 

「消えなさい虚空に……“Rejection(リジェクション) Disappearance(ディスピアレンス)”」

 

 

 トンボは、何かが自分を押しつぶそうとしているのを感じた。しかし、そこから先は……何もない、無だった。

 

 

「……終わりね」

 

 

 麗華は小さくつぶやく。先ほどまで、トンボがいた場所には、もう何も残っていなかった。トンボの存在全てが消え去ってしまっていた。

 

 

「……彼らの方は、どうなったのかしら?」

 

 

 麗華は、他の山の方を見た。東引山……貴大のいる場所からは、いまだに砲撃がある。しかし、その方向は街を狙っておらず、貴大が狙われているのだと悟る。そして南……叶のいる場所は、

 

 

「……み、水!?」

 

 

 ……南吹山。三つの山の中で、もっとも標高が高いはずのその山の頂上は、()()していた。




どうでしたか? なかなかブラックだったと思います、自分でも。

えーと、どうしてこうなったのか、については、また四話か五話くらい後で話すと思います……多分。
そして、最後。残りの二人のことについて。三坂君については、まあ、いいでしょう。予想できるし。しかし、問題は……夢乃君の方です。やってしまいました。つい、出来心でやってしまいました。夢乃君の見せ場、というのはあれのことなんですけどね。ですから、楽しみに……。

……さ、さて、次回は、三坂君の戦いとそれぞれの人の様子。三回目は、夢乃君の戦いとそれぞれの人の様子。と、なっております。

それでは、次回[儜]の回も見ていただければ幸いです。

See you next time!
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