それでは、今回のお話。
今回は題名の通り、様々な情報の統合、真実の解明、的な話です。今まで張ってきた伏線の八割から九割はここで回収されてます。残りは、これ以降の話で回収予定ですね。
それでは、お楽しみいただければ幸いです。
鈴原町 高畑緑宅
「……今回の事件。けが人と行方不明者は七百人を超えたらしいけど、死者は幸いゼロだったよ」
「ああ。俺と神田で調べたからな。間違いない」
「それに、世間には、謎の犯人によるテロ、というのが有力説らしい。今も、自衛隊による壊れた施設等の復旧や、政府による犯人の調査が進んでいるらしい」
そう語るのは、勇介と荘太郎と頼斗だった。警察と探偵。この三人がタッグを組めば、この街の大抵のことは分かる。
「それにしても、なんで死者が出なかったんだ? 高層ビルに取り残された人達もいただろ?」
そう疑問を口にしたのは詠二だった。高層の建物から落下。そして、瓦礫の下敷きになれば、間違いなく命はないはずだったが、死者は出なかった。
「それは、弾丸のせいだと思います」
そう言うのは、貴大。実際に、弾丸を受けた貴大には、理由が分かる。
「あの弾丸、“ココロ”でできてました」
「“ココロ”で? “ココロ”って、そんなに強力なの?」
「人によればね。あれほどなら、貴大君ぐらいしか出せないわ。……それで?」
「はい。あれは、以前戦ったリスのものでした。そして、そのリスが込めていたのは、“生きたい”“死にたくない”という、生への渇望でした」
「そっか。生きたいと願う“ココロ”が被災者に力を与えたのね?」
緑がそうまとめると、貴大がコクリとうなずいた。もう、だめだ。と、あきらめる人も出るだろう。しかし、リスの想いによって、気持ちが折れなかった。そして、一発が大勢の人にあたったため、貴大のように一気に感情が押し寄せるような状況に陥らなかったのだ。
「だから、死者はゼロだったのだと思います」
「なるほどね。……後は、大丈夫かしら?」
緑は、辺りを見回した。貴大、勇介、翔逸、叶、鴻崎、詠二、陽菜、荘太郎、頼斗、麗華。この事件について知る多くの者が集まっていた。
「じゃあ、次は、鴻崎さん。あなたの番よ?」
「ああ、分かったよ。緑ちゃんは、相変わらずだね……」
「まったくです。誰か、いい人でもできればいいんですけど」
「その年じゃ無理そうだね」
「鴻崎さん」
「……すみませんっ!!」
鴻崎が緑の年について触れた瞬間、緑の纏う空気が絶対零度に変化した。鴻崎は、思わず頭を下げた。しばらく沈黙が流れると、鴻崎は頭を上げて咳払いした。
「それじゃあ、この件の始まりから、話していこうか」
鴻崎はしばらく思案する。どこから話すか悩んでいるようだった。そして、一度、ゆっくり頷いた。
「始まりは、あの二人が出会ったころ。君の母の愛衣ちゃんは心理学を、父の大我君はエネルギー工学を専攻していたんだ。二人は、紆余曲折を経て、交際、卒業と同時に結婚した。この時、両方の実家と揉めたらしくてね……勘当同然の状況らしいよ」
「……そう言えば、おばあちゃんとか、おじいちゃん、なんて会わなかった」
「そうだろうね。……それで、二人は一緒に研究を始めた。初めは…………感情による脳の電気信号を利用した装置の開発、だったかな?」
「……何ですか、それ?」
貴大は、疑問を口にする。初めの研究内容は、長いうえに難解だった。
「えっと……人は神経を走る電気信号を使って、動いているのは知ってるよね?」
「あ、はい」
「二人の研究は、体中から、微弱な電気信号の一部を回収して使う、という物だったんだ。そして、その電気量の変化には、感情が大きな影響をもたらしていることを利用しようとしていた」
「ど、どういうことですか?」
貴大の頭は、オーバーヒート寸前だ。貴大以外にも、翔逸や荘太郎が頭を押さえている。それを見て、叶が助け舟を出した。
「三坂君。今の、“ココロ”の仕組みを電気に当てはめてるだけです」
「え? ……あ、ああ。そういうことか」
「……ということは、“ココロ”の発見前から、“ココロ”の仕組みを見つけていた、ということ?」
「まあ、偶然だけどね」
麗華の驚いた様子に、苦笑しながら鴻崎が言葉を挿む。そして、説明を続ける。
「それで、その途中で発見されたのが“ココロ”だ」
全員の空気が変化した。間違いなく、この言葉によるものだった。
「……二人は、この謎のエネルギーに“心力”という名前を付けた」
「え? “ココロ”じゃないんですか?」
「ああ。“ココロ”というのは、正式には“心力”の隠語なんだよ」
「そんな……私、聞いてないですよ」
緑が驚いたように声を上げた。一番知っていると思っていたはずなのに、まだまだ知らないことがあると分かったからだろう。
「当たり前だよ。君を、巻き込みたくなかったらしいからね」
「……巻き込みたく、ない?」
「ああ。二人は、見つけた時は歓喜したらしい。“ココロ”について、基礎を固めることだけでもできれば、ノーベル賞は間違いないだろうからね」
「そりゃそうだ。新たなエネルギーを発見したんだから」
鴻崎の言葉に、詠二がそう合わせた。貴大の両親、大我と愛衣はそんな研究をしていたのだ。
「じゃあ、なぜ……」
「……誰かにとられるから、ですか?」
「彼らは理由を話さなかったけど、僕はそうだと思ってる。誰かがその存在を知り、自分のものに。なんて思うことがあった時、二人は自分達にだけに来るようにしたんだ。と思う」
「それで、二人はとうとう研究の続行をあきらめ……」
「……逃げた。多分、そう言うことだよ」
鴻崎はそう言った。第三者にデータを奪われることを恐れ、信頼のおける人物に託したのだろう。その時、誰かが部屋に入ってきた。
「勝手に嘘を話してほしくないな」
「そうね。仮定を話すのは、良くないわね」
「父さん!? 母さん!?」
それに驚いたのは、貴大だった。それだけでなく、この場にいる全員も驚いていた。
「先輩……どうやってここに?」
「何言ってるの? こことそこは繋がってるからに決まってるじゃない」
愛衣はこの家と隣の三坂家を指した。貴大だけでなく、緑すらも知らない事実に周りは驚いた。しかし、大我と愛衣はそんな周りを無視して話を進めた。
「久しぶりだね、貴大」
「一年ぶりかしら? ちゃんと勉強してる?」
「なんで……この街には来ないって……」
「貴大。いや、叶君と、そこにいる彼女にも話さないといけないことがあるんだ」
「話さないといけないこと? それって、なんですか?」
叶と、特に麗華が不思議そうにしている。麗華は、二人に会ったことすらも無いのだから。
「僕達が研究を止めた理由。それは、誰かに取られるなんて、どうでもいい理由じゃない」
「何言ってるんだ! 研究内容を誰かに取られるなんて……」
「ヒロ」
「……何?」
「僕達は、躊躇うことなくデータを君に渡した。発表してくれていいと言って」
「そう、だったね」
鴻崎は、声を荒げるがすぐに抑えられてしまった。大我は全員を見渡した。
「僕達が研究を止めた理由。それは、“ココロ”に重大な欠陥……いや、見方によれば、いいのかもしれないが。ともかく、そういう物を見つけたからなんだ」
「欠陥?」
貴大、叶、麗華は自分を見た。三人に、どんな欠陥が起きたというのだろう。
「三人とも。普通では、あり得ないことができるようにならなかったかい?」
その一言で、三人がハッとしたような表情をした。
「……心当たりが、あるんだね?」
「ああ……」
「でも、私はこれを、欠陥とは思いずらいのですが?」
「それもそうだ。だが、少し聞いてほしい」
大我は麗華の言葉を聞いて、うなづきつつも話を始めた。
「飛行機は、軍事利用されたことによって信頼を集めた」
「っ!? ま、まさか、二人とも……」
鴻崎が息をのんで二人を見た。二人はゆっくりとうなづいた。つまり、二人が研究を止めた理由は……
「……“ココロ”の軍事利用を恐れた、から?」
「そう、その通りだよ」
「私達は、“ココロ”がある特定の人に特殊な力を与えることを知ったの」
「……それが、軍事利用される、と?」
「そうだよ。はっきり言えば、特殊な“ココロ”を持つ人が生物兵器にされるのを恐れたんだ」
様々な技術は、軍事に利用されてきた。そして、“ココロ”が世界に発表されれば、表には出ずとも兵器にされるだろう。
「だから、研究を止めたのか? でも、どうしてグラントを……」
「……竜崎君を、止めてほしかったからだ」
「だから、貴大や叶君のような生贄を作ってしまった」
「そうか。……麗華ちゃんは、本当に“ココロ”が見えたのか。感じやすいだけだと思っていたのに……」
大我と愛衣の話に、鴻崎が絶句した。今まで、麗華の『“ココロ”が見える』という言葉を、他人の気持ちに敏いことを例えただけだと思っていたのだ。そして、それが少し強化されただけ、と。
「じゃあ、俺達には何かしらの力があるのか?」
「そっか。僕の、“願い”を叶える力も……」
「叶える? お前、見えるだけじゃないのか?」
叶が、自分の力について言及すると、貴大が叶に言った。確かに、貴大の前でそんなそぶりを見せたことは無かった。
「僕の“
「私も、何かを消す事ができるわね。特に、“ココロ”関連のモノ。おそらく、見るのは消すために得た副作用のようなモノね」
「じゃあ、僕の“願い”を見る、というのも副作用ということでしょうか?」
「ええ、おそらくね」
自分の能力の見当がついた叶と麗華。しかし、貴大は自分の能力が話からなった。
「俺の力は……なんだ?」
「あ、お兄ちゃん! あれじゃない?」
「あれ?」
声をあげたのは、翔逸だった。翔逸は、思い出しすように貴大に話す。
「お兄ちゃん、前にいってたよね? 鈴音港で、いきなり“
「ああ……そう言えば」
「それって、お兄ちゃんの能力に関係あるんじゃない?」
「……もしかして、あの便利能力のことか?」
「貴大君、それって何?」
翔逸に言われ、貴大には心当たりが出てきたようだった。緑はそれを聞いてすかさず質問をした。
「いや……氷道を探したときとか、なぜか感覚が鋭くなったりしたんです。例えるなら……あ、“
「それって……」
「はい?」
緑はなんとか考えがまとまったようだ。そして、緑は恐ろしい事実に気がついたように貴大に言った。
「……チップの効果を発動する力、じゃないの?」
今までに、何度もそんな場面があった。激怒した時に吹きあがった炎。驚いた時に走った電撃。意識を研ぎませた時の五感の強化。……全て、感情と能力が合致していた。
「そんな……じゃあ、ドライバーやチップなしで、変身できるってことですか?」
「行く所まで行けば、そういうことになるわね……」
それこそ、まさに生物兵器である。体から、炎や電撃、激流に疾風。様々な強化や攻撃。それらが、生身でできるのだから。そう認識した瞬間、体中がおかしくなるのを感じた。
「…………」
貴大はひざから崩れ落ちた。体中がガタガタ震える。心の底から沸き起こってくる恐怖。なぜ、なぜ……。これでは、まるで自分が……
「……化物、ってことか?」
「た、貴大君……」
「は、ハハッ……緑さん。俺、人間を止めたみたいですよ」
体中から、恐怖、後悔、哀憫、懐疑……様々な感情が貴大をむしばむ。今まで、自分はあくまでドライバーとチップを使って、強力な力を得た。だから、それさえ無い自分はただの人だ。そう考えて、何でも手に入れたいという強欲さを抑えたり、化物ではないという安息を得ていた。しかし、それは全て壊されてしまった。
「ハハッ、ハハハッ……」
乾いた笑いだけが、外に出て来る。それは、まさに嘲笑。現実を知らなかった自分に対する嘲笑だった。哀れで、愚かで、なにも知らない自分への嘲笑。
「俺は、人の皮をかぶった化物ってことか。皆を、騙し続けてきたのか……」
貴大が、そう呟くと誰かがいきなり叫びだした。
「騙してた? 何言ってんだ。お前は記憶がなかったんだ、それは騙していたことにはならない。それに“使心獣”だったとしてもお前は俺達の仲間で、家族だ!」
「……え?」
そう言ったのは、翔逸だった。
「お兄ちゃん、総慈さんにそう言ったじゃん。同じだよ。お兄ちゃんは、知らなかっただけなんだよ。それは、騙していたことにならない。化物だったとしても、お兄ちゃんは僕達の中まで、家族なんだよ!」
人ではない。そんな事実は、変わらないのかもしれない。しかし、その中にある心は、今でも貴大のままであり続けているはずだった。
「貴大君は、今までも皆の“ココロ”を守るために戦ってきた。それは、自分の私利私欲のためじゃない。もし、それが自分を保つためのものだったとしても、その行為は正しいって言えるんだよ」
「神田さん……」
「貴大君は、一度も、私利私欲に使うそぶりすら見せなかった。本当に化物なら、そんなまやかしの壁なんて壊すはずよ? でも、あなたは皆のために戦ってきた。それって、化物のする行為じゃないはずよ?」
「緑さん……」
皆が貴大に声をかける。君は、化物なんかじゃない。どんな力を得ても……三坂貴大は、心優しい人間なんだ、と。
「男子三日会わざれば刮目して見よ、なんて、よく言ったもんだよ。」
「貴大は、恵まれた環境にいたのね……」
大我と愛衣が、顔を見合わせて驚いた。貴大は二人がいない一年で、こんなにも多くの人に出会い、恵まれた環境にいられたのだから。二人は、しばらくしてから声をかけた。
「……さて、貴大」
「父さん……」
「何も言わなかったことは申し訳ないと思っている」
「……もう、いいんだ。俺は、何があっても俺なんだよな?」
貴大が、はっきりとそう言う。それは、自分を取り戻せたということだろう。大我は、自分の息子を見て微笑んだ。
「ああ。……本当に、成長したな」
「誰かさんが、旅に出したからな」
「可愛い子には旅をさせよ、って事かい? ハハッ、自分で自分を可愛いというのか」
「なっ……! そういうことじゃなくて……」
「分かってるよ」
大我は気のすむまで笑うと、一気に表情を引き締めた。周りの温度が、急激に下がった。
「さて……それでは、“使心獣”について話そうか」
「父さんは……どのくらい知ってるんだ?」
「全く。おそらく、貴大の方が知ってるだろう」
「そうか……」
“ココロ”に関する知識が一番豊富であろう大我でも分からない。……なら、この件で一番情報を持っているのは……
「竜崎君、か」
「そうだろう。龍也君に会えないだろうか?」
「私からは……。彼から、連絡があればいいのですが……」
大我の言葉に、緑がそう返した。その時、緑のPCにメッセージが届いた。差出人は不明。ウイルスは入っておらず、内容はテレビ電話の準備をすることだった。
「……しますか?」
「しておこう」
緑の問いに、大我が答えた。緑はすぐにテレビ電話の用意をした。すると、早速電話がかかってきた。
『……何年ぶりだったかな、高畑』
「竜崎君!?」
全員がモニターに注視した。電話をかけてきたのは、“使心獣”の生みの親にして、この事件の犯人、竜崎龍也だったのだ。
『今回は、話があって連絡したんだ』
「……話?」
『そう。“使心獣”が残り四体しかいない。だからね、来月の14日に最終決戦を行おうと思ってね』
「……四体ってことは、残っているのは三将とNo,0ね?」
『それで、場所は三か所だ』
竜崎は緑の質問を無視した。そして、片手を出した。そして、一つずつ指を立てていく。
『まず、南吹山。そして、鈴音駅前。最後は、鈴音岬だ』
「それぞれに三将がいるのね?」
『その通り。そして、それを倒すと私の居場所を教えよう』
「なるほど。最後は、あなた達のアジトってことね?」
『アジト……いいね、それ。今まで、研究所と呼んできたが……これからは、そう呼ぶことにしよう』
竜崎はそう言うとカラカラ笑った。
『それでは、私の話は以上だ。他に、訊きたいことがあるなら、私のもとへ来るといい』
その言葉を最後に、テレビ電話は切れた。沈黙がその場を支配していた。……緑がこの前数えた限りでは、十体を越えていた。なのに、現実は四体。そんな疑問も、彼に会わなければわからない。
「……竜崎君」
誰かの呟きが聞こえた。……戦いの終わりは、もう、すぐそこに迫っていた。
どうでしたか? だいぶ、“
今回、ようやく三坂君の両親を出せました。今まで、度々出てきましたけど、こうやって三坂君達と会わせるのは初めてでしたね。そろそろ、竜崎さんもやりたいですね。
そして、いよいよ次からは最終決戦です。三将戦等、たくさんの見せ場を作りたいと思います!
それでは、あんまり話しすぎないで、続きを書きたいと思います。
ということで、次回[恢]の回も見ていただければ幸いです。
See you next time!