D.Gray-man-悪魔の旋律ー 作:ティム
この世界に来て幾十年か経った。
最初に起きて出会った人で、ここがどういう世界か認識して、そして自分の事を理解して発狂したりしたけど、まぁ、なんとか楽しくやって来た。
ちゃぷん、と水が跳ねる。
やはり、元は日本人だからか風呂に入ったら気が安らぐ。気持ちいい。
両手で器を作り、水をすくい上げて顔に浸す。
「ふぅー」
息を吐いて上を向くと、首筋に奇妙な痛みが走る。……見られてる。
立ち上がると、風呂が水飛沫をあげて揺れる。それを無視しながら、浴槽の横に取り付けられた窓をガラリと勢い良く開ける。
「よっ」
「…………………」
顔の半分に仮面、赤く長い髪を持つ神父がニヤニヤしながら手を上げて、此方を見ていた。
勿論その目は俺の身体に注がれている。…この変態め。
「ししょー、意味ない」
「あ?中が男だから意味ないって?馬鹿だな、お前。お前の中が男だから、見てるんだよ。本物の女にはこんなことしねぇ」
「変態」
因みに俺が喋るときは文章をあまり作らない。口下手と言ってくれ。
にしても、変態神父にジロジロ見られるのは嫌だな、何だか癪に触る。
アレン、助けてくれ。
ししょーと睨むこと数秒。ドタバタという忙しない音が聞こえて、風呂の扉が開く。
「ベル!大丈夫ですか!?」
バーンという音と共に白髪の少年が現れる。
俺とししょーはそちらを見るが、その少年が現れたことによりししょーが此方を見直して来た。
「全く、アレンを呼ぶなよ」
「呼んでない、思った」
声には出してないからな。
「なっ!ベル、なんていう格好をっ!」
俺を見て顔を赤らめ顔に手をやるアレンだが、ての隙間から赤髪の神父を見つけるとキッと睨んで、声を張り上げた。
「あ!師匠!また覗きましたね!変態ですか!」
「酒は買ってきたか?」
「え?あ、はい。借金取りから逃げ出すのに苦労しましたよ。師匠いい加減借金払って「ご苦労さん」………デスヨネー」
話題を逸らされたことに気づかないアレンは項垂れ、話題を逸らすことに成功したエセ神父は窓から消える。
少し身体が冷えたが、これ以上入るとふやけるので浴槽から上がって、涙を流してるアレンの横を横切る。
脱衣所にあるバスタオルを取り、まず身体を拭いてから頭を乱雑に掻き回す。
雄鶏が日が昇ったことを教えてくれる鳴き声を聞きながら、服を着る。
下着を履き、白シャツに黒の短パン、ガーターソックス、黒紫のチョッキを着る。そして黒のネクタイを緩めにして完了。
「アレン、ご飯」
「あ、すみません!今すぐ!」
それだけ言うと風呂間からタタタッと走り出して行った。
…どうでもいいが、靴下は濡れてないのだろうか?まぁ、他人事なので気にしてもしょうがないが。
パタパタと近くを飛んでいたティムキャンピーと共に、食卓へと向かう。ティムはししょーの差し金だろう、映像を残せるもんな。
さて、気づいてると思うが、俺は転生した。それもTS転生とかいう奴だ。そう性別が変わるやつ。
まぁ、これは転生じゃなく憑依だろうな。
食卓の椅子に座って待っているとアレンが朝ごはんを持って来てくれる。……朝からカレーか…重いな。
スプーンを取り出し、手を合わせる。
いただきます。
ルーをすくい上げて口に運ぶ。
うん、スパイスが効いていて美味しいな。
「アレン、来い」
「師匠?何ですか?」
ししょーが呼んだと同時にアレンがししょーの元へ歩き出す。
頭にはてなマークを浮かべてるアレンとは裏腹にししょーはわからない程度に笑っている。
しかし、神父が金槌持つなんてどういうことだろうな。
…気にしてもダメだな、と食事の続きをする。
「ティム、食べる?」
「ガァっ」
スプーンでまだ小さいティムが食べれるサイズをすくい上げ、運んでやる。十字架のような模様が入っている球体の真ん中がパクリと割れ、鋭い歯が顔を出す。
その中に放り込んでやり、また自分にカレーを運ぶ。
「よく、噛む」
「ガ」
二人してカレーを味わい、何度かそれを繰り返したら、また手を合わせる。
ごちそうさま。
暫くするとししょーが扉の奥から現れ、用意されたカレーを頬張る。半分顔が隠れた状態で食べれるのが不思議だが、ししょー自体が珍妙体なのでまぁ気にしない。
「ベル」
「何?」
因みに俺の名前はベルだけど、ルル=ベルとは関係ない。
この身体がイザベルという名前なので、その短縮系の愛称なのだ。俺としてはイザベルと呼ばれたら何だかこそばゆいのでベルと名乗っている。
「アレンを教団に連れてってやれ」
「やだ」
めんどくさい。
「即答かよ…まぁいい。自力で行けるだろう」
「ししょー、優しい」
「お前、頭おかしいのか?」
む?本当のことを言ったんだけどな。
基本的に厳しいが、導いてくれる。それにちゃんとたまに、ときに本当にたまに、神父らしきこともしてるしな。
「今、馬鹿にしただろ」
気のせいだ。