D.Gray-man-悪魔の旋律ー 作:ティム
ししょーによるとアレンが目覚めるのは3日後ぐらいらしい。
教団に連れて行くのを断ってしまったし、ぶっちゃけやることない。
ししょーは早々に何処かへ消えた。ぶらりと女と借金にまみれて来るんだろう、うらやまけしからん。
チラリとアレンが寝ているだろう部屋を覗くと、一面血の海だった。
……すまない、大袈裟すぎた。
頭から少量…それでも致命的だが、血が出ていた。
ダイイングメッセージは“借金”…哀れな子羊だな。
こんなときだけ女の身で良かったと思う。ししょーは女にはものすごく優しい。俺は魂が男だが。
外見だけ女ならば女だと扱ってくれる。この様な理不尽を受けなくていいから、この身体で良かったのかもしれない。
ジッとアレンを見つめてから数分…する事を決めて、ティムにアレンを任せた。
少し心配だが、一応エクソシスト。それにアクマ探知機も搭載してるし、ティムもいる。大丈夫だろう。
リビングに戻り、紙とペンを取り出す。そして、もう一枚の紙を取り出してはぁ…とため息をついた。
「テキトーすぎ」
これじゃぁ、どこが教団なんだかわかんねぇよ、ししょー。
黒の教団には入ったことはないが、場所は知っている。ししょーと何度か行ったことがあるからだ。
理由は連絡係…改造アクマとして通っている俺は流石に中には入れさせてもらえないが、手紙を渡すぐらいはしていた。
…あれ?言ってなかったか?俺がアクマだって。
ただのTS転生じゃねーんですよ、奥さん!
いつでしたかねぇ、ネアが死んでマナについて行ったぐらいだろうか?
その時はまだ人でしたよ。
ただ、その旅の途中…1、2年も滞在する場所があってな。そこで仲良くなった女の子がいた。
俺より年下のやつで、いつも俺にべったりな子供だった。
ほら?俺って大人だからねぇ、普通に可愛がっていたわけだ。
んで、俺は死んだ。まさに不意打ち。
その女の子は学校で人気のある子で、その学校の外で仲良く…それも手を繋いでいる俺とその子をファンクラブの一員が見つけたわけだ。
子供ながらの嫉妬でしょうな。俺は結構大人だったのだが、反感を買ったようだ。
子供にしてはただの脅しのため。刺しても生き残るだろうという安直な考え。幼稚だ。
そうそう、俺はただの人だったから背後からの攻撃に気づかず、グサっと、ナイフが刺さった。心臓にね。
出血多量で死亡。マナも悲しんでいたらしい。そりゃぁ子供の時からの付き合いでしたから。
その後のことは知らない、何故なら死んだから。けどアクマとして蘇った。理由はわかるよな?
『フフッ♥︎アナタはこの世で最初のアクマでス♥︎ほら!喜んデ♥︎』
目を開けて、一番最初に見たのは忘れもしない千年伯爵。
あの奇怪な顔と帽子は一度あったら忘れられないだろう。それぐらい強烈だった。
ファーストアクマ。それが俺だ。
しかし、俺の魂がイレギュラーだったのかわからないが、千年伯爵の命令は一切効かなかった。殺人本能もな。まぁ、殺人したら何か少し快楽を覚えるから、あまりやってないが。
いつだったかな?“貴方の魂は鎖で縛られていますが、他のアクマの様に悲しんでないんです。むしろ綺麗な顔で目をつむって笑っているんです”なってアレンに言われたの。
嬉しかったのは覚えてる。
まぁ、マナが死んでアレンがアクマになりかけたって知った時は、千年伯爵マジ許すまじ!と怒ってたけど。
「べールっ!」
椅子に座っていた俺の背に誰かが抱きつく。
俺の名前を明るく呼び、笑ながら飴を舐める彼女は数年前から姿が変わっていない。いやまぁそうなんだけど。
彼女はロード・キャメロット。ノアの一族長子にして、第9使徒夢のノア。
ノアって転生して覚醒すると歳を取らないんだよな…ハイスクールD×Dみたいなものだろうか?あれ?あれって歳取って…ないな。
「ひっさしぶりだね!ベルー」
「おもたい」
「ぶー、冷たいなぁ」
そう言って彼女は俺の背からふわりと舞い降りる。
彼女とはアクマになった時からの知り合いだ。ファーストアクマってのもあるだろうけど、それより伯爵から逃げ切れたからだろう。
身体が小さくなってあまり激しく動けなかったけれども、あの太っちょさんからは逃げ切れるだけの身体能力はあるつもりだ。
逃されたともいうが。
その後かわからないが、伯爵の命令を聞かない俺にノア達が接触を図ってきた。
曰く仲間にさせるため。
命令を聞かないのはわかっていたので、仲間…家族にならないか?と言ってきた。
勿論断ったよ。絶対俺を壊す気がするしね。ノアがアクマを家族に引き入れるなんてことあり得ないし。アレンの事もあるしな。
その中でロードの気に召してしまったというわけだ…どういうわけだよ。
「何書いてるの?」
「ダメ」
サッと俺は書いていた紙を取り、隠す。一応ししょーのも。
あぶねぇ…危うく教団の位置知らせてしまう所だった。
その行動を見たロードは目をキラリとさせ、ふふんと笑った。
「わかった、教団の位置でしょ?」
ギクリ。
クスクスと笑うロードは俺に取って冷や汗ものにしかならない。
ノア達に教団の位置が知られたら、俺はししょーに殺される。比喩じゃなくて本当に。
「大丈夫だよぉ、知ってるからね!今更見ても問題ないよ」
……………え?
は?いまなんと?うん??おれのききまちがい??
激しく動揺してると、ロードはあははははっ!と今度は豪快に笑う。
そんなロードはただの少女に過ぎないが…前世含めて俺とあまり歳が変わらないんだよなぁ…ノア怖い。
「嘘だって!そんなのもわからないなんてベルは純粋だねぇー」
嘘だと考えられないほどお前らは情報力と社会の地位力があるだろ!
お前ら貴族なんでしょ!?
って、そういやロード。
「学校は?」
「ん?今日は創立記念日なんだぁ」
なるほど、それで休みと。
というか、お前さんよく変わらない姿で学校行けてるな。怪しまれないのかよ…。
「だって学校に通い出したの、最近だよぉ?気づかれないって」
「読まないで」
心読むな、マジで。怖いんだよ、こんちくょーめ。
ロードはニコニコと笑いながら、向かい側の椅子に座る。ホントこいつ自由人だよな。
しっかし、肌黒すぎないか?ノアってイケメン美女揃いだけど、肌黒なんかなぁ。いやいい感じに雰囲気醸し出していいんだけ「ロードたまぁ〜!」…ん??
「あー、レロ。遅いよー!」
「ロードたまが早すぎるレロ!」
何処からかかぼちゃ頭の傘が飛んでくる。今思えば、何でこいつ喋れるんだろ…ティムとか喋れないのに…技術の差?まぁアクマなんて兵器創り出すくらいだもんな…。
「まぁた、こんなアクマの所に来て!伯爵たまに怒られるレロよ!」
「えぇー?千年公は別にいいって言ってた気がするけどぉ」
「それはロードたまが強請るからレロよ!伯爵たまはロードたまに弱いレロ」
喋る傘と言い争っている肌黒の子供。何ともシュールである。
「とにかく帰るレロ!伯爵たまが待ってるレロ!」
「うぇえーやだぁ!もっとベルと話したいぃー!」
ロードの服を傘の取手で引っ掛け引きずる。無駄に器用だね。
ジタバタと暴れるロードを四苦八苦してレロは連れ去って行った。
レロ…苦労してんな…ドンマイ。
さて、暴れる声も聞こえなくなったし続きしようか。
ししょーの書いた紙と自分の書いた紙を取り出し、まだ書き写していなかったものを写す。
汚い地図から綺麗な地図へと。
「これでよし」
二つの紙を見比べ、満足する。
ししょーが書いた方をぐしゃりと丸めてゴミ箱へ投げる。綺麗に放物線を描いたそれは見事にゴミ箱の中へと入って行った。
「あとは…」
必要な物の買い出しかな?