てんこうぐらし!~SCHOOL LIVE! IF STORY~ 作:委員長@バカ犬
「ここやな?」
「うん。ここの4階にいるはずだよ」
モールの入り口の前に原付を停める。何かあれば逃げ出す時にすぐに走らせられるように、念のためだ。
「足は大丈夫?」
「んしょ……、うん。これなら歩けそうだよ」
圭の足の調子も大分マシになったようだ。
「それじゃあ……ウチが前行くから、しっかりついてきてや!」
「うん!」
弥涼は木刀をしっかり構えたまま歩き出す。音を立てず、慎重に。
圭もそれに続く。足を痛がる様子は殆どない。
入り口から入ると、まずは広々としたロビーが見えた。
ところどころにあいつらが見える。結構な数だ。
「買い物客がいっぱいやなぁ…」
冗談気味に呟き、気付かれないようにそっと階段を目指す。
その際、ふと床を見るとあることに気づく。
「……防犯ブザーと、サイリウム?」
ブザーは栓が抜けており、電池切れまでずっと鳴っていたようだ。
サイリウムも同じく、既に折れているが光は発してなかった。
「私が出るときは多分なかったと思う……」
小声で圭が教えてくれる。
つまり、誰かがここにきていた、ということになる。
それに、このブザーやサイリウムをみる限り、あいつらの対処法をわかっている。かなり手慣れているんじゃないだろうか。
そう思うとやっぱり嬉しくなる。生きてる人は少なくないんだと思い、ホッとする。
でも、今は気にしている暇はない。
電池切れしたブザーをみる限り、生存者達は既に脱出しているのだろう。
そうこうしてるウチに、階段の前の踊場まで到着していた。
「こっから階段かぁ…登れそうか?」
「いけるとおも……いたっ!」
やっぱりまだ痛むようだ。平地は歩けても、階段はまだ難しそう。
「しゃーないなぁ…よいしょっと!」
「わあっ!?」
再び圭を背負うことにする。ここで待ってもらうほうがずっと危険だし、一緒にいれば守ることだってできる。そう思っての行動だった。
「大丈夫!?また疲れ果てちゃうよっ!」
「4階までくらいやったらなんとかなる!」
そう言って手すりを伝いながら4階まで階段を上がり続けた。
何事もなく4階に着くことができた。踊場から出て、通路を見ようと思ったが、ダンボールでバリケードが積み上げられていた。
「この先に「避難所」って貼り紙をつけた部屋があるはずだよ…美紀と太郎丸もきっとまだそこに…」
「よし……ふぅ、行くで!」
圭を降ろすと、再び弥涼は圭の前に出る。
「……弥涼ちゃん……」
弥涼にも聞こえないほど小さく呟く。どうしても不思議に思ってしまう。どうしてそこまでして、見ず知らずの他人のために頑張ってくれるのか……
「早よせんとおいてくでー」
「あっ、待ってよ!」
でも、今はこの背中に頼らなきゃいけない。自分よりも一回り小さい…それでも、頼りがいのあるこの背中を。
途中、あいつらが一体ちらついていたが、弥涼は容赦なく木刀で始末した。
そして、いつものように動かなくなったあいつらの前で数珠を持って読経する。
「弥涼ちゃん、何してるの……?」
「……ん、お経を唱えてやっとる。せめてもの手向けや」
「……そっか……」
圭は気付いた。この子は……優しすぎるんだ。おそらくだけど、大切なものをもう失っているんだろう。
こんなに優しいのに1人でいるのだから、そうでないと説明がつかない。
あいつらは人間じゃないって思い込みたかった自分とちがい、弥涼はあくまでも人間として、その最期を看取ってあげていたんだ。今までも、ずっと。
「……あそこ、やな?」
「…え?」
弥涼が指をさすその先は……避難所だった。
なんたかんだでついていた。ここに美紀はいるはず。
「美紀……!太郎丸……!」
足のことも気にせず、急いで避難所のドアに前に立ち、ドアを叩く。
「美紀!!私だよ!助けにきたよ…!!」
何度も、何度も叩く。
……だが、返事はなかった。
「美紀…!?いないの!?ねぇ!!返事してよぉ!!」
「落ち着きや…!
鍵、開いとるみたいやで?」
弥涼がドアノブに手を伸ばす。鍵はかかっていなかった。
一応室内を確かめる。だが、そこには誰もいなかった。
争った形跡もないことから、美紀は自らここから逃げ出したことになる。
「そんな……っ!!」
「諦めたらアカン!見たやろ?ロビーにあったものを…っ!!
もしかしたら、騒ぎを聞きつけてここから逃げ出して、助けてもらえとるかも知れんやん!」
顔が青ざめる圭の肩をつかみ、元気付けるように声をかける。
「だから…諦めたらアカン。
でも……圭の足も心配や。今日はここで休むで。
きっと、美紀もどこか安全な場所におるはずやもん。
急ぐ必要はない…まずはその足を治そう。なっ?」
「……うん、わかった……。ありがとう、弥涼ちゃん……」
「そろそろウチのことも美紀みたいに呼び捨てにしてもええんやで?
多分、圭とは同い年やと思うし」
「えっ?……いくつなの?」
「高2、16やで」
「…一緒だ。ずっと年下だと思ってた……」
「せやろな……ウチ、背低いし……」
そう言うと酷くうなだれる。身長のことはかなり気にしていたようだ。
「あっ……!ごめん弥涼ちゃん!……じゃなくって……弥涼っ!!」
「許す!」
即答だった。
ニコッと笑って圭に抱きついてきた。
「うわっと!?」
「ごめんな圭……ウチ、ちょっち疲れたわ……寝さして……」
「あっ……うん、いいよ」
「おおきに………」
そう言うと、安心したように眠りについてしまった。
「……ホント、優しい子だね」
弥涼の寝顔を覗きながら呟く。弥涼のその瞳からは、小さな涙がこぼれていた。
というわけで、圭と弥涼のろじょうぐらし!もうちょっとだけ続くんじゃ♪