悪魔より悪魔らしい……だがサイヤ人だ   作:アゴン

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life 21

 

 ブロリーがこの町に来て、早くも1ヶ月近い月日が流れようとしていた。

 

眩い朝日に照らされながら、今日もブロリーは仕事場である駒王学園に向けて通学路の歩みを進める。

 

「……それにしても、オーフィスはいつまでウチにいる気だ?」

 

ふと立ち止まり、自身が住んでいるマンションに向けて振り返る。

 

オーフィス。無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)と呼ばれる半ば同居人となっている彼女は未だにブロリーの部屋で厄介になっている。

 

自分が仕事している間はどうしているか分からないが、隣近所の住居人から何も言われていない辺り、恐らくはその姿は見られてはいないのだろう。

 

別段、彼女が夜な夜な部屋に訪れる事に関してはブロリーはあまりイヤではない。(というか、記憶が失っている所為か本人はそれが当たり前のように感じているが……)

 

ただ、目を覚ました時、自分をベッド代わりにしているのは流石に止めて欲しいと言ったが。

 

『ブロリーの体、大きくて暖かい。ダメ?』

 

などと、オーフィスが上目遣いで懇願してくる為、渋々承諾する事となった。

 

お陰で朝は慎重に起きなくてはならないという事態になっているが……まぁ、これも力の制御の一環だと思う事にする。

 

 絶世の美少女が毎晩ブロリーと添い寝していると聞かされた日には、一誠の友人である元浜や松田は血涙を流して悔しがる事だろう。

 

……話が逸れた。

 

 ほぼ毎晩ブロリーの部屋にやってくるオーフィス。だが、毎晩自分の所に顔を出す彼女に、流石のブロリーでも違和感を感じた。

 

(アイツ、他に行く所がないのか?)

 

自分と出逢ってから、殆ど毎日顔を合わせている。今朝だって一緒に御飯を食べたし、この間だって夜遅くまで色々世間話をしていた。

 

だからこそ分からない。彼女には自分を心配してくれるような友人や仲間はいないのだろうか?

 

リアスにだって心配してくれる親はいるみたいだし、アーシアだって一誠やオカ研の皆から気に掛けて貰っている。

 

記憶喪失である自分にすら、朱乃やソーナから色々世話になっている。

 

それとも、彼女は事前に親族や友人達に事情を説明しているのだろうか?

 

だとするなら、この疑問も簡単に解けるのだが……。

 

(帰ったら聞いてみよう)

 

ひとまず仕事が終わった後の事を考え終えたブロリーは、それとなく次の角を右に曲がる。そこはいつもの通学路で、普段ならそこから多くの生徒達の学園へ登校する姿が目に入るのだが……。

 

「……なんだ?」

 

いない。いつもならすぐ目の前に見慣れた朝の風景はまるでなくなり。代わりにとてつもなく濃い霧がブロリーの周辺を覆っていた。

 

……視界が悪く、すぐそこの道路標識さえぼやけて見える。────いや、それだけではない。

 

「……誰も、いないのか?」

 

周囲に人影は疎か、人の気配すら感じない。

 

まるでここだけ外との空間が切り離されたような、そんな感覚さえ覚える。

 

この霧が原因なのか? ブロリーが僅かに警戒を強め、周囲を見渡したその時。

 

「おはようございます。アナタがブロリーさんですね?」

 

「っ!」

 

突然聞こえてきた背後からの声と人の気配。

 

ブロリーが振り返ると、そこにはローブを羽織った魔術師を思わせる眼鏡の男性がにこやかに微笑みながら佇んでいた。

 

「誰だお前は?」

 

相手からは敵意は感じない。しかしこの霧の発生源は間違いなく目の前この男に関係しているだろう。

 

構えは取らない。しかしいつでま迎え撃てるよう心構えは済ませておく。

 

そんなブロリーの心境をまるで見透かした様に、男はクスリと微笑を浮かべ。

 

「そんなに警戒なさらないで下さい。私の名はゲオルク。アナタの所で厄介になっているオーフィスの関係者ですよ」

 

三日月に口を歪ませる男は、オーフィスの関係者と称し、ブロリーに僅かな驚愕を与えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おらぁぁっ! 逃がすかぁぁっ!」

 

「死ねぇぇぇっ! イッセぇぇぇっ!!」

 

「なんで俺だけぇぇっ!?」

 

 遠くから聞こえてくる歓声。

 

本日は球技大会。ボールを使ったゲームで競い合う日。

 

 かなりの盛り上がりを見せるドッチボール。何やら一誠の悲鳴が聞こえてくるが、恐らくは試合によって高揚した彼の魂の叫びだろう。

 

 一誠が全校生徒(男女含む)から怨念にも似た情念をぶつけられている一方で、ブロリーは学園の花壇の手入れに勤しんでいた。

 

赤、白、黄、青、他にも様々な色合いの花達が咲いており、それらを丁寧に手入れしているブロリーはこの花壇が何気に自慢だった。

 

先代の用務員からの引き継ぎで、ソーナからは偶にでいいと言われていたが、コレが案外ブロリーには楽しく思えたのか、この花壇にはちょくちょく手を加えていた。

 

枯れないようにこまめに水をやり、害虫が入らないように手入れをし、土に時々肥料を入れたりしていた。

 

自分の手で何かを生み出す。どこか違和感を感じるがブロリーにはこの作業が癖になり、仕事の合間の暇を見つけては頻繁にこの学園の庭師的な存在となっている。

 

するとそこへ………。

 

「うわっ! ボールがスッポ抜けた!」

 

「ヤベェッ! あそこは!?」

 

背後から聞こえてくる甲高い悲鳴。

 

ドッチボールのボールが花壇目掛けて飛来してくる。

 

そして、ボールがあと数センチで花壇に入りそうになった瞬間。

 

ボールは……“消えた”。

 

今まで上がっていた歓声や悲鳴もパタリと止み、理解が追い付かない一部を除いた生徒達は呆然となっていた。

 

ボールは消えたのではない、ブロリーが消したのだ。

 

より正確に言えば、ボールがブロリーの間合いに入った瞬間、彼の拳がボールを細かく砕き、破裂音すらその時の動作でかき消されてしまった。

 

余程の達人でない限り目視する事すら叶わないブロリーの動き。

 

更に質が悪いことに。

 

「……ん?」

 

この男、そんな神速の拳撃を無意識でやってのけたのだ。

 

花壇の枠。そこから僅かでも侵入しようものなら彼の鉄拳が飛んでくるのは必然。

 

絶対的な防御力を誇るブロリーを、生徒達は“花壇の鉄壁(ボーダー・ガーディアン)”なんて呼んでいる。

 

そして、何が起こったのか分からず、静かになったグラウンドの方へ振り返れば。

 

「「「すんませんっしたぁぁぁぁっ!!」」」

 

「………?」

 

勢い良く頭を下げる生徒達にポカンとなるブロリー。

 

こうして、本人は自覚のないまま、学園の不動の番長として立場を確立してゆくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 放課後。球技大会の全ての日程を終え、現在は雨が降っている。

 

今日も一日無事に仕事を終えたブロリーはリアスに相談事を話す為に、現在、旧校舎内を歩いていた。

 

一つは自身について。

 

ライザーとのレーティングゲームの試合があってから、またブロリーは自分の中で力が溢れていくのが分かった。

 

花壇の整備という細かい作業をしていたお陰か、今のところ力の制御は順調だ。

 

だが、ふとした事で力が抑えられず、暴発してしまう可能性は決して無いわけではない。

 

元浜や松田のような被害者が出ているのだから、この件に関しては慎重にならなくてはならない。

 

唯でさえリアスには世話になっているのに、これ以上厄介になるのは正直気が引けるが……。

 

「後になって迷惑かけるよりはマシか」

 

そう自分に言い聞かせていると、オカルト研究部の前にまで到着する。

 

今頃は球技大会での祝杯でもあげている頃だろう。

 

ドッチボール部門で優勝したリアス達に祝いの言葉でも投げ掛けてから話を切り出すのが良いだろう。

 

我ながら名案だなと思いつつ、ブロリーは部室の扉を開けると。

 

 

パシン。

 

 

「………」

 

リアスが木場の頬を叩いている場面に出くわしてしまった。

 

想像だにしていなかった場面。どうしていいか分からず混乱していると。

 

「では、僕はこれで失礼します」

 

「待ちなさい祐斗!」

 

爽やかな笑みを浮かべ、木場はリアスの制止の声も聞かずに部室から出て行く。

 

その際、ブロリーと一度だけ視線が交わるが、木場は相変わらず爽やかな笑みを浮かべたまま軽く会釈するだけで、特に何も言わずに廊下を歩いていく。

 

そんな木場に僅かな違和感を感じたブロリーは、木場の背中を目で追っていると。

 

「……それで、アナタは一体何しに来たのかしら?」

 

威圧感すら感じるリアスの口調。重苦しくなった部室内で。

 

「え、えっと……」

 

少しばかりの理不尽さを感じながら、ブロリーはここへ来た内容をポツリポツリと話すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……今日は、何だか疲れたな」

 

 降りしきる雨の中。コンビニで買ったビニールの傘を差しながら、ブロリーは一人マンションへの帰路に着く。

 

あの後、明らかに不機嫌となったリアスの剣幕に圧され、ブロリーは結局話せずに二、三、言葉を交わすだけだった。

 

一誠とアーシアからは同情の込められた視線を浴びながらスゴスゴと部室から出て行くのは、我ながら情けないものだ。

 

それに、話したかったのはそれだけじゃない。

 

「オーフィスの事、話せなかったな」

 

現在、ブロリーはリアスの紹介してくれたマンションで生活している。

 

より正確に言えば、ブロリーもまたリアスの世話になっている居候のようなもの。

 

そこに主の許可なく別の人間(?)を住まわせるのは流石にマズイのではと、最近になって漸く気付き、自身の力の事ついでに話しておくつもりだったのだが……。

 

「……とても話せないよな」

 

部室で見た異様な光景。リアスが自分の下僕を叩くという普段なら有り得ない場面に出くわし、とてもじゃないが話せる状況じゃなかった。

 

何だか木場も様子がおかしかったし、その場は取りあえず解散という形で終わったが……。

 

どうも、ブロリーにはその辺りに関する違和感が拭えなかった。

 

それに、気になる話はそれだけではない。

 

今朝、霧の中で会ったゲオルクと名乗る男からは近い内にまた来るとだけ言い残して霧と共に消えていった。

 

オーフィスの関係者と言うからには彼女とは何らかの関わりを持つ人間なのだろう。

 

ただ、彼の態度と口振りからは親族という訳ではなさそうだ。

 

「……取りあえず、明日考えよう」

 

自分一人では考えられない事はスッパリと諦める辺り、ブロリーの潔さが伺える。

 

兎に角明日、まだリアスが怒っているようならソーナにでも相談する事にしよう。

 

そう結論付けたブロリーは、考える事を放棄し、自宅であるマンションに向けて歩を進める。

 

その時。

 

 

ギィンッ!

 

 

「?」

 

鋭い金属同士のぶつかり合う音が耳に入ってくる。

 

こんな住宅街からは有り得ない音に不思議に思ったブロリーは辺りを見渡す。

 

そこでブロリーが目にしたのは、雨の中で魔剣を携えた木場と……。

 

「ブロリーさんっ!?」

 

「おやおやぁ? アナタはいつかのお兄さまじゃああ~りませんかぁ! こんな所で再会するなんて、僕ちん運命感じちゃう!」

 

白髪のイカレた神父、フリード=セルゼンが神々しく輝く長剣を握りしめ、木場と相対しているのが見えた。

 

「神父狩りに飽きていた所に魔剣使いのイケメン様、更にはクソ生意気な異端者の大男にまでエンカウントしちゃうなんて、俺様感激!」

 

相変わらず言動が定まらない神父。

 

だが、彼が手にする剣からは凄まじい程の威圧感を感じる。

 

あの爽やかな笑顔を絶やさない木場が目を見開いて驚いている辺り、相当危険な代物であるのは間違いなさそうだ。

 

だが、その前に。

 

「………誰?」

 

目の前のフリードの存在を頭の中から完全に消え去っていたブロリーは、取り敢えず名前を聞くことから始めた。

 

 

 

 

 




今回から暫くは短めです。
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