お相手は流星のインプレッサさんの『東方悪夢男‐フレディ・クルーガーが幻想入り‐』です。
実はかなり前から、応募してくださっていた作品でやっと発表出来ました。
フレディの活躍がメインなのですが、結構なブラックなシーンもあり、ホラーとクロスしてるんだなぁと感じさせてくれる作品です。
因みに私は、ホラー作品が苦手です。
怖いのは苦手なんですよねぇ……
皆さんどうも!こんにちは。
私の名前は
偉大で優秀なお師匠様の元で、仙人目指して日夜修業中です。
目標はまだまだ遠いけど、千里の道も一歩から!!
毎日どんどん修業して、がんばって行きます。
……うん、別に底なし沼にダイブした訳じゃないよな……
けど、もう戻れないんだよな……だ、大丈夫、うん、そう……たぶん、きっと……
俺は間違ってない……ハズ……
どうしよう、自信無くなってきた……
「あら~?私の修業が不満?」
「そんな事ありませんよ!!ははは!!」
さ、さぁ!気を取り直して今日も修業です!!
静かに雪の降る夜、雪雲もまばらで雲の切れ間から満月が優しい光で大地を照らしている。
「ふぅ……」
そんな真夜中の庭で、師匠が自宅の縁側に座り熱燗を煽る。
ため息をつく度に、吐息が白く濁り雪の中へと消えていく。
「私に何か用かしら?」
そんな中、不意に自身の後ろに誰かが立つ気配を感じる。
それが誰かなど確認する必要はない、彼の持つ独特の気は背中越しでも簡単にわかる。
「善?」
師匠の横を通り過ぎ、善が雪の薄く積もる庭へと裸足で降りる。
一瞬の躊躇い。そして小さな一呼吸。
そして、善の口が開かれる。
「お師匠様……お師匠様!!
わた、私は!貴女様の事をお慕いしております!!
どうか、どうか私を恋人にしてください!!」
ズボンの濡れる事など気にせず、善が片膝をついて頭を伏せる、そして自身の右手を掌を上にして師匠に差し出す。
「へぇ……?」
その姿を見て、師匠が足を組み替える。
何かを考える様に、顎に手を当てる。
そしてとあることに気が付く。
(ああ、コレ『夢』ね。今は春で雪なんて降らないし、善は私の事を『お師匠様』とは呼ばないわ……)
一瞬だけ残念な気もしたが、コレが夢だと解ればそれはそれで面白い。
明晰夢。
それは今自分が見ている夢が夢であると、理解した場合その夢の内容をある程度自由に出来るという物。
無論今の様な状況をさす言葉である。
(せっかくのシチュエーションだし、少し遊ばせて貰おうかしら?)
そう考えると、師匠は邪仙と呼ばれるにふさわしい笑みを浮かべた。
「お師匠様!どうか、どうか――うわッ!?」
尚も頭を下げて跪き続ける善の顔を蹴とばす!!
「この未熟者は一体何を言ってるの?
修業中の分際で、色恋事にうつつを抜かすとは何事かしらぁ?
しかもよりによって自分のお師匠様に手を出そうなんて……
それに忘れたの?私もう結婚してるのよ?」
白く染まりつつある庭に、蹴られた善が転がり怯えた様な表情で師匠を見上げる。
小さく唇を舐めた師匠は、倒れる善に近づきその首掴む。
「お、お師匠様……申し訳ありません……けど、心よりお慕いしております……
どうしても、たとえどんな障害が有ろうとも、師匠の心に決めた人が居ようと!!
この気持ちは抑えきれ切れないんです!!」
「くどいわ。そんな言葉もう聞き飽きてるの、私に言い寄ってくる男は幾らでも居るもの。
そんな有象無象達に無い魅力が、あなたに有るのかしら?
ねぇ、善?私があなたを選ぶ事に対するメリットは、なぁに?」
善の服の胸元を掴んで、自身の顔の高さまでもってきて目を覗き込む。
「お師匠様に私の全てを捧げます!!身も、心も、魂すらお師匠様に!!
どんな事でもします、そんな苦行にでも耐えます!!
恋人にしてもらえなくても結構です!どんな扱いでも構いません。
だから、だからどうか!!私を、私をおそばに置いてください!!」
「へぇ……本当に私に全て捧げるの?
今の自分の全部を捨てて……私のくだらない遊びの為だけにあなたの残りの人生を消費してもらう覚悟があるの?」
尚も頼み続ける善を見下ろす師匠。
「はい勿論です。私を近くに置いてくださるなら……
私の全てをお師匠様に差し出します!!お師匠様を愛してます!!」
善の話す卑屈すぎる一言一言を聞く毎に、師匠の背筋にはゾクゾクした快感が走り、口元が意図せずにやける。
「ふふふ……そこまで言うなら。
いいわ、ええ、いいわ。あなたの人生で遊んであげる。
うふふふふ……後悔しても、もう遅いわよ?
さぁ、先ずは――」
ガサッ――
「おい、ゴーストフェイス!見ろよ、この寒いのに野外でSMやってるぜ!
実際あんなのって居るんだな!!」
「不味いっスよフレディ先輩!見つかったら半端じゃなく気まずいっスよ!!
っていうか、早く帰りましょうよ!!」
家の茂みの外、小さく空間が開いた部分に二人組の異様な恰好をした男がいた。
一人はフレディと呼ばれた長身で焼け爛れケロイド状の顔をし、右手にかぎ爪を装備した恐ろしい風貌の男。
もう一人のゴーストフェイスと呼ばれた男は、顔にムンクの叫びの様な表情の仮面をかぶっている。
いずれにせよ、異様な風体といえるだろう。
「大丈夫だって!意外とプレイに夢中で気が付きはしない。
イザと成ったら夢を操って――」
「先輩!あの人、ムッチャこっち見てるっスよ!!」
「マジか!?」
まるでコントの様なやり取りを始める二人。
そんな二人に師匠がゆっくり笑って近づいていく。
「ねぇ、さっきの話もう少し詳しく聞かせて?」
成るべく優しい笑みを浮かべて、師匠が二人に話しかけた。
こうして邪仙は、悪夢を操る殺人鬼に巡り合った。
「ふぅ~あ……」
早朝、善が目を覚ましあくびと共にベットから這い出す。
「んぉ?善、起きたのか?」
「おう、芳香。早起きだな……おはよう……」
珍しく少しだけ先に起きていた芳香に挨拶をして、芳香の使っていた布団を片付けようと押し入れを開ける。
「おっと、私がやるから善はじっとしていてくれ」
ヒョイっと、布団を持ち上げ押し入れの上の段に仕舞った。
善はその様子を
「さ、ご飯を食べに行こうな」
そう言って芳香が善に笑いかけ、ヒョイっと善を抱き上げた。
「おお、そうだな。師匠に髪の毛を結ってもらいたいしな」
二人は仲良く、居間まで歩いていった。
「あら、二人ともおはよう。早く座りなさい、すぐにご飯に成るわ」
ちゃぶ台の前で、師匠が座って待っていた。
「師匠ー、髪結んでもらって良いですか?」
「構わないわ、こっちにいらっしゃい」
善は立ち上がり、ニコニコと楽しそうに笑う師匠の膝の上に座った。
櫛で優しく善の髪を梳いてくれる、善はこの時間が大好きだった。
思わずウトウトしそうな時間が過ぎていく。
「はい、出来たわよ」
師匠の言葉に反応して飾ってある鏡を見ると、自身の長い青みかかった灰色の髪は師匠の様な形に結わえられている。
ズキンッ
「ッ――――!?」
鏡を見ると同時に、善の脳裏に痛みが走った。
(おかしい、変だ)
そんな言葉が、脳の奥から聞こえて来た。
「あれ……?なん……で?」
ぬぐい切れない大きすぎる違和感。
それがちくちくと善の脳内を責める。
「どうしたの?」
師匠の言葉に反応するのも忘れて、鏡に映る自分を見る。
そこに写るのは幼い少女――(おかしい)
さっき結ってもらった自慢の青味の有る灰色の長い髪――(自分はこんな髪形ではない)
おねだりして、作ってもらった師匠お手製のお気に入りのワンピース――(そんなものは有りはしない!!)
何時も見ているハズの景色すべてに違和感がある!!
コレは違う!!コレは正しい姿ではない!!
全細胞、全神経、全身がそう叫んでいる!!
「ね、ねぇ、師匠?私と師匠の出会いって、どんなんでしたっけ?」
思わず疑問が善の口を突いて出る。
その瞬間、師匠の瞳がスゥッと鋭くなった。
「何言ってるの?もう忘れたの?
外の世界に行った時に、あなたが両親に捨てられていたのを拾ったんじゃない。
「お母さん」って呼んでって言うのに未だに呼んでくれないのよね……」
(違う!違う!!違う!!!)
違和感がすさまじく大きな意を唱える!!
そうではない!!と強く強く!!
「ち、違――」
「ご飯の時間スよ!」
「ああ~、腹減ったぜ」
善の言葉をかき消す様に二人の男たちが扉を開けて入ってるく。
その男たちの風体に、善はギョッとしてしまう。
鍋を抱えた男はまだいい、ムンクの叫びの様な仮面は確かに異様だがそのインパクトはもう一人の男の恰好ですっかり消えてしまっている。
「おう、善ちゃん。俺の顔に何かついてるかい?それともイケメン過ぎて惚れちまったかな!?ヒヒヒヒヒヒヒ!!」
ケロイド状の焼け爛れた顔に右手に付けられたかぎ爪、フランクに話しかけるがこんな男は見た事がない!!
善の違和感が頂点に達した!!
「アンタ誰ですか!!あなたの顔なんて、一回も見た事無いですよ!!」
「あ”あ”!?今俺のこのケロイド顔のこと何つった?」
平穏な空気が一瞬にして壊れた。
怒り狂う男が、手のかぎ爪をカチカチと鳴らす。
「俺の火傷にケチつけてムカつかせたヤツは何モンだろうと許さねぇ!このケロイド顔がデ○ィ婦人みてぇだと!?」
「いや、別に顔の事を言った訳では――」
「確かに聞いたぞコラァ!!」
ダン!!
机に拳を叩きつけるケロイド顔の男。
事態を見ていたもう一人の仮面の男が止めに入った。
「ちょ、先輩止めましょうって!!」
「貶す奴はゆるさねぇ!!そのかわいい顔をズタズタに――」
「フレッド君、そこまでよ」
静観していた師匠が、穏やかな口調でフレッドと呼ばれた男を止める。
一瞬だけ、嫌な顔をしたがすぐにフレッドは爪を片付けた。
「ごめんなさいね?この子、寝ぼけてるみたいで……
二人とも自己紹介、してくれるかしら?」
「ああ、俺の名はフレッド・クルーガー……っても、あだ名フレディの方が名として通ってるぜ」
「ゴースト・ファイスっス!フレディ先輩の後輩ス!
どうしたっスか?寝不足っスかね?今日は早めに寝るっすよ?」
フレディが納得いかなそうに、ゴーストファイスは元気に自己紹介をしてくれた。
「ね?思い出した?二人とも、ずっと一緒に居たじゃない?」
師匠が話しかけると、二人と今まで過ごした記憶が蘇ってくる。
皆で、出掛けた温泉。
皆で、行った花見、皆で行った宴、食事、修業……
確かな記憶が蘇るがそのどれもが現実感の無いモノばかりだった。
「ん~?」
何とも言えない不思議な違和感を感じつつ善は朝食を終えた。
「此処は墓場だ、キョンシーがいてもおかしくない。そうだよな?
キョンシーが居るなら、悪夢を操る殺人鬼も、謎の仮面の男が居てもおかしくない。
……のか?」
ぬぐい切れない違和感から逃げる様に、善は家をでて墓場の墓石に腰かけていた。
「よぅ、善ちゃん。さっきぶりだな」
「あ、フレディさん……」
家の方から、爪を振りながらフレディが歩み寄ってくる。
記憶は知ってるのに、はやり大きな違和感がぬぐえない。
「お前、俺の事知らないだろ?」
さっきまでのふざけた態度を捨て、確認する様に聞いてくる。
「正直言って、すごく違和感がありますね……っていうか、自分の体事態にもですけど……」
そう言って、自身の恰好を見下ろす。
幼い少女の体、見覚えは有るのだが……
「よしよし、やっと味方が出来たな」
「味方?」
善の問いに、フレディがケロイド顔をニタリとゆがめる。
「ネタバレしちまうとこの世界は夢の世界だ。
本物のお前は今頃ベットでグッスリ、オネンネ中って訳だ。
因みに夢だから、こんな事も出来るぜ!!」
善の目の前で、フレディが自身の顔の皮をプロレスのマスクの様に引っぺがす!!
「ほい、やる」
「うぉぉおおお!?」
叫ぶ善を他所に、皮がめくれ頭蓋骨を露出したフレディが皮を善に投げ渡す!!
「オイ!優しくキャッチしろよな!!」
「いやぁあああ!!!」
投げ渡された皮膚が勝手にしゃべりだし、更に善が驚く。
「どうよ、ビックリしたか?」
「心臓止まるかと思いましたよ!!二度としないでくださいね?
これ以上やると本気で泣きますからね?」
「いいセリフだ。感動的だな。だが無意味だ。
という訳で、今度は頭蓋骨を――」
「ヘェイ!パッス!!」
頭蓋骨を投げようとする、フレディにさっき渡された顔の皮を投げつける!!
「イッテェ!!何しやがる!!」
顔面に自分の皮を投げつけられたフレディが不満げに話す。
「はいはい、茶番ばっかりでちっとも話が進まないので要点だけお願いします。
いろいろと気になることもあるんで」
憤るフレディに対してあくまでも善が、淡々とした事務的な口調で話す。
その態度にすっかりフレディもへこんでしまった。
さみしそうな顔をして、さっき投げ返された顔の皮をかぶる。
「この幼女、ノリ悪ィな……ま、いいや。
俺の種族は夢魔、夢を操る種族だ。
ぶっちゃけるとこの夢の世界の基盤は俺様が作ったんだぜ?」
なるほど、さっきの顔面の皮等のおかしな動きはのその能力に依る物だったんだろう。
夢という『なんでもアリ』の世界を操る能力、師匠が見たら大層喜ぶだろう。
そこまで考えて、善は思わずハッとした。
「えっと、まさか……」
自身の悪い予感が外れてるのを願ってさらにフレディに言葉を促す。
「少し前、ゴーストファイスを連れて適当に夢の中を散歩してたんだよ。
体の良いストレス解消的な?けど、な~んか調子悪くてよ。
夢の中で迷子に成っちまったんだよ。
気が付いたら、あの女の近くで――」
フレディの言葉に、善は思わず頭を押さえる。
事態は最悪の方向にに向かっている気がする。
「うわぁ……もう聞きたくない、現実逃避して家でふて寝したい」
「いや、むしろ寝てる最中だぜ?んでな?
突然お前の師匠に、ぼっこぼっこにされて気が付くと――!!
子供に成って――」
「あー、はいはい。このザマですね」
善が自身のスカートをつまんで見せる。
「へっへっへ……ウェルカム、トゥ、ナイトメア。
俺の悪夢へようこそ!!」
「乗っ取られてるじゃないですか!!」
恰好付けるフレディに、善が全力のツッコミを入れる!!
「ぐす……気にしてんだよ……」
するとすぐに態度を改め、フレディが泣きまねを始めた。
「はぁ、ってか起きれば万事解決じゃないですか?
結局の所夢でしょ?起きれば消えるハズ――」
「そこは俺の能力よ!夢で負った傷は現実のお前にフィードバックするぜ!」
「現状ではマイナスにしか働いてない!!」
善は今の自分の姿を思い出す。
さっきのフレディの『夢』という単語で思い出したが、自分は幼女ではない。
この体は、前に師匠が作った緊急事態用のキョンシー「詩堂娘々」だ。
自分の性別は男でおっぱい大好き。思春期だから、男の子だから仕方ない。
そう、自分は男だ。うんそうだ。そう思いつつ、足の間に手を持っていく。
理解した瞬間、サァーっと血の気が引いていく。
「なくなってる……俺の
「ボールブレイカーしちまったな!!ぎゃははは!!」
他人事のフレディは自身の言葉がツボにはまったのか、ゲラゲラと大爆笑している。
「お、起きれば元に戻りますよね!?元気な相棒が帰ってきますよね!?」
「起こすのは簡単だ。そう、赤子を殺すより楽な作業よ……
けど、さっき言ったみたいにフィードバックするから、姿はそのまんまだな!!」
すがるような善の言葉をフレディが最悪の形でアッサリ一蹴する。
「うっそだ……最悪だ……」
「まぁ元気だせ、女として生きれば良いじゃないか。
金持ちイケメンと結婚して玉の輿狙えるぜ?」
「誰のせいでこんな事になったと思ってるんですか!?」
無神経な神経を逆なでするようなセリフに善が、立ちあがってフレディの胸倉をつかもうとするが、当然身長差で届きはしない。
「落ち着けよ、
もっとも、そうなったのもお前の師匠に手を貸したせいでもあるし……ハッ!
俺のせいだ、全部俺のせいだ!ははははは!聞いたかよ?全部、全部俺のせいさ!!
だが俺は謝らない!!」
無駄にキリッとした顔で、フレディが善に言い放った。
(この人、絡み辛い……)
無駄に高く、更に話題が簡単に変わるフレディに、善が辟易する。
「一番の方法は、お前の師匠をこの夢から追い出す事だな。
夢をゆがめてるのはソイツだし、後は俺の力で何とかしてやるよ」
「へぇ、私に逆らうのね?」
「「!?!!」」
やっと示された解決案、その最中聞きなれた声が善の耳に届く。
この声は間違いない。
「し、師匠!」
二人の少し離れた場所。
そこにふわふわと師匠がアンバランスな位置で揺れていた。
「違うでしょ?私の事はお母様か、母上でしょ?」
「違いますよ!あなたは私の師匠です!!」
言い含ませる様な師匠の言葉を振り切り、善が毅然とした態度で言い放つ。
その瞬間、師匠の表情が暗くなった。
「あら、すっかり思い出しちゃったのね。まぁ、良いわ。
フレッド君を殺さず生かさずで捕まえといて、その後いくらでもイジってあげればいいんだもの」
表情をコロッと変え、楽しそうに平然と師匠が言い放つ。
夢とは言え、世界を自由に出来る力を手に入れた影響かもしれない。
まぁ、もともとの性格がこんな感じだった気もするが……
「お前の師匠、スッゲェ怖えな!暴走してんのか?」
「いえ、平常運転です」
怯えるフレディに、訂正をする。
そうだ、思い出してきた。
この人は大体こういう性格だ。
「まぁいい、せっかくそっちが来てくれたんだ。
此処でぶっ倒して俺は元の世界に帰らせてもらうぜ!!」
「えーと、私も元の体が恋しいので……」
意気揚々と手の爪を掲げるフレディ、オズオズと頭の簪として使っている、小型レーヴァテインを構える善。
「ふふっ、必死ね。いいわ、ゲームをしましょうか?
私はあなた達に手を出しはしないわ。
代わりにこの子達を相手してもらいましょうか」
パチン
師匠が指を鳴らすと同時に、ゴーストフェイスと芳香が駆けつける。
「そいつ等が相手か?このフレディ、顔見知りでも容赦せん!!
俺のかぎ爪が血を欲してるぜ、ヒヒヒヒヒヒヒ!!」
意気揚々と言った感覚で、フレディがべろりと長い舌で自身の爪を舐める。
明かに敵役なポーズに、一瞬だけ善が何か言おうとしたが結局止めて口を閉じた。
「あはは、違う違う。この子達はギャラリーさ。
私の戦いをなるべく沢山の人に見てもらいたいからね」
聞きなれない声が響き、善が声の主に顔を向ける。
そして時間が止まった様に体が動かなくなった。
「な、なんで――」
「さぁ、私が相手ですよ」
フレディと善の前に現れたのは、もう一人の善だった。
だが恰好が違う、光沢のある体のラインの出るライダースーツの様な恰好に身を包み、腰からコートの裾が広がる様に左右計6枚の布がスカートの様に揺れる。
そして肩には闇色のマントを風にたなびかせ、マントの内側に背中に背負う様に大剣を持っている。
「この子は、私の理想を投影した弟子。勝てるかしら?」
「行ってきます。私のお師匠様」
その言葉と共に、弟子が背中の剣に手を伸ばす。
大剣に巻き付く血のようなシミの広がる包帯を解く、その下から出てきたのは巨大な鉈にも見える大剣。
飛び上がり、善とフレディの中間に大剣を振りおろす!!
ガギィン!メシャ!!
大剣の重量かそれとも使用者の技量か、墓場の石畳が大きなヒビを入れられそこに切っ先がめり込んだ。
弟子がその剣を左手で逆手に持ち、右手に紅い気をバチバチとスパークさせる。
角度的に影に成った顔半分が、血のような色の気によって照らされる。
「うふ、このゲーム私の勝ちかしら?」
「ハッ!どうかな?テメェは俺を怒らせた。
こっちも隠し玉の出番だ!!」
何処からともなく、フレディが黄色のよくわからないアイテムを取り出す。
一世代前のゲームカセットを入れる様な穴が二つ在り、ピンクのレバーと液晶画面が見える。
次世代のゲーム機だと呼ばれれば信じてしまうようなデザインだった。
ソレをフレディは、腰にくっつける。瞬時に皮ベルトが腰に巻き付きソレが巨大なベルトのバックルだったことが分かる。
「夢の運命は俺が変える!ノーコンティニューでクリアしてやるぜ!」
フレディの手にプレートの様な、ピンクのガジェットが現れる。
持ち手の部分にピンク色をした一等身キャラが書かれている。
小さな黒いスイッチをフレディが押して、ベルトに押し込む!!
『マイティアクションX!!』
「ゲームなら俺に任せとけ!!変身!!」
『ガッシャットォ!!レッツゲーム!ムッチャゲーム!メッチャゲーム!!ファッチュアユアネーム?』
『アイアムカメンライダー……』
フレディの声と、ベルトから漏れる音が交互に聞こえてくる。
まばゆい光に包まれ、その中から現れたフレディは姿が変わっていた。
3等身位の、ゆるキャラみたいな奴に……
「フレディさん!?それ、どー見ても戦力下がってません!?」
どっからどう見ても強そうではないキャラクターに善が焦る。
この戦いは文字通り自分の将来がかかっている。
こんなキャラに任せて大丈夫なのか?という心配がどうしてもぬぐえない!!
「大丈夫、大丈夫、見てろよ?大・だ~い変――シン!?」
弟子が大剣を使って、思いっきり変身したフレディを殴り飛ばす!!
「脆いな」
ころころと地面を転がるフレディを弟子が見下ろした。
「お前、変身中を狙うのは卑怯だろ!!お約束を守れよな!!絶対にゆ″る″さ″ん″!!!」
ずんぐりむっくりした体形で、何とか立ち上がろうとしてバランスを崩しまた転ぶ。
「ああ、もう!何やってるんですか」
善が尚も倒れるフレディに近づき何とか助け起こす。
やはり、どう考えていても戦力が下がってる気がする。
「うふふ、どうするの?このままじゃ、時間切れが近いんじゃない?」
「時間切れ?」
師匠の言葉に、善が反応する。
そう、と一回言葉を区切って師匠がまた説明を始める。
「永遠に眠る事なんて、出来ないでしょ?
どうしても朝が来れば起きるわ。
その瞬間あなたの今の情報は固定されて、その姿で新しい人生が始まるのよ?
勿論この子のもね?」
そう言って、傍らに寄り添う自身の理想を投影した弟子の頭を撫でる。
弟子はその手を恍惚とした表情で見ていた。
「正直言ってヤベーな……、ある意味アイツは俺様の力の一部から生まれてる。
要するに、俺と同じような力を持ってる」
「マジですか……それって、事実上無敵なんじゃ?」
さっきのフレディのパフォーマンスを思い出す善。
自身の顔面の皮を剥がして、簡単に元に戻し、いきなり見たことの無いアイテムで全く別の存在に変身する。
夢という独壇場では、フレディに適うものなど在りはしない。
「俺が居るから、条件は同じハズだ!!」
元の姿に戻ったフレディが、またしても弟子に襲い掛かる。
しかし、簡単に防御されてしまう。
「うわぁぁあぁぁ……!」
フレディが弟子に殴られ、宙を舞い石畳に落ちる。
「わ、私も――」
善も弟子に襲い掛かるが、簡単に腕を掴まれてしまう。
「君はお師匠様のお気に入りだから、傷付けずに持って帰ろうかな」
「放せ!!」
振り払おうとするが、力の差かどうやっても振りほどく事が出来ない!!
圧倒的な力の差を感じる善。
「俺の前で、幼女の手握って楽しそうにしてんじゃねーよ!!
妬ましいなコイツゥ!!パルパルパルパルパルパルパルパルパr(ry」
フレディの攻撃をあっさりと、弟子は回避する。
余裕のある弟子に対して、フレディは息が切れかかっている様だった。
(はぁはぁ……やべぇな……上手く力が使えねぇ……やっぱ邪仙なんか、手を出すんじゃなかったぜ……)
その胸の後悔が出でるが、弟子のニヤけた顔を見た瞬間そんな気分も消えていった。
「けどテメェの顔がムカつくから殺す!!」
再び、弟子に向かって爪を振るう!!
今度は爪ごと、素手で捕縛されてしまった。
「夢魔のフレディか……夢を操るという、類稀な能力……か。
結構面白かったけど――バイバイ!!」
弟子が善を話し、拳をフレディに向ける!!
「ばーか、俺の目的はこっちだぜ」
トン
フレディが、善の額を弱く小突く。
その瞬間、善の背後に黒い穴が出来てそこに落ちていく。
「ワリィな、俺のせいでこんな目に遭わせちまって……
結構反省してるんだぜ?だから、せめてお前は自分の夢に帰れ」
最後に不敵な笑みを浮かべ、フレディが善を穴に押し込む。
正直言って賭けだが、今は仕方ない。
コレは自分と邪仙の問題だ、弟子とはいえあまり関係ない者をこれ以上巻き込むのは容認できなかった。
「ふぅ、逃がしたか。ま、近いうちにまた探せばいいか」
弟子はフレディに向かって、大剣を振り下ろした。
真っ暗な夢の境目とでもいうべき空間で、善が暴れていた。
フレディに師匠の夢から逃がしてもらった為か、恰好は元の少年の姿に戻っている。
正直な話、フレディと師匠の問題なのだろうが放っておく事は出来ないと思った。
何とかして、師匠の夢に戻らないといけない。
そう考えて、善は何もない空間でどうにかして、戻ろうと暴れていたのだ。
「あー、くっそ!師匠も師匠だけど、フレディさんも何してんだか。
早く戻らないと……」
クスクス……
その時善の耳を、小さな声がくすぐった。
「だ、誰だ!?」
振り返るが誰もいない、さっきと同じく闇が広がっているだけだった。
しかし、何かが居る気配は消えなかった。
「あ~ら、ずいぶん乱暴です事。わたくし、怖くなってしまいますわ」
「!?」
直ぐ耳元でくすぐる様に誰かの声が消えた。
「あ、あなたは――」
「『あなたは誰ですか?』なんて、言わないでくださいましね?
もう何度も、相まっていますのよ?わたくし達は」
その声を聴くと、善の脳裏に白黒のポンポンの付いたワンピースが脳裏に浮かんだ。
「あ……」
牛の様な尻尾がシュルリと善の頬を撫でた。
「思いだしてくださったみたいですね?本当なら正式に自己紹介したいのですけど……
今、切羽詰まってまして……夢の支配者、とだけ名乗っておきますわね?
『初めまして』は次回にしましょうか。
けど、お近づきの印にこれを――」
ソレは自身の右手にふよふよ浮かぶ、半透明の物体を善の顔の前に持ってくる。
それはやがて、形を新円の球体へと変化させた。
「コレは?」
「『オカルトボール』と呼ばれていましたわね、確か。
貴方にはお願いがありますの、コレでこの騒ぎを片付けて来てほしいんですの。
お師匠様にも、偶には
善は何かに導かれる様に、ソレを手に取った。
「ぐぁ!」
投げ出されるフレディを師匠と弟子が見下ろす。
弟子が、大剣を構えてとどめを刺そうとする。
「待ちなさい。善を逃がしたのは困ったわね……
もう少し、フレッド君にはやってもらう事が有るわ。
逃げない様に、気絶だけはさせておいて」
「了解しました!!!お師匠様、貴女様の命ならどんな事でも!!」
弟子が大剣を振り下ろすその瞬間!!
地面からせり出した、黄色と黒の標識によって剣撃が止められる!!
「ん?」
「あ”?」
「あら?」
その場の全員が、突如湧いた謎の物体に眉を顰める。
カンカン……カンカン……カンカン……
その物体についていた赤いランプが左右交互に点滅し始める。
フレディ、師匠の両名はその道具に見覚えがあった。
師匠に至っては、少し前に見たばかりだ。
「……踏切の……遮断機?」
師匠がその道具の名を言った。
「そうですよ。よく知ってますね」
よく通る声が響き、3者が視線を向けた先には小さな幼女が、手にボールを持って立っていた。
「フレディさん、もう一回いけますか!?」
善の何かを決心した顔をみて、フレディがニタリと笑った。
答えはもう決まっている。
「勿論だ、フレディ様を舐めるなよ?」
「回収して頂戴」
「はい、お師匠様!!」
師匠の言葉に、弟子が剣を捨て飛んだ!!
善はその様子を冷静に見て、手に持つボールを砕いた。
「出発進行!!『最終電車あの世逝き』!!」
カンカン……カンカン……カンカン……カンカン……カンカンカンカンカンカン!!カンカン!!!カンカンカンカン!!!カンカン!!!!カンカンカンカンカンカンカンカン!!カンカンカンカン!!カンカンカンカンカン!!カンカンカン!!
地面から無数の遮断機が出現して、師匠と弟子の視界を覆いつくす!!
耳に聞こえるのは、無数の遮断機の警告音!!黒と黄色と警告音が全てを塗りつぶした!!
「は!?」
次の瞬間、師匠は電車内で目を覚ました。
意識ははっきりしているのに、体が動かない。
声を出すのも、殆どできない。
唯一動く眼球で周囲の様子を確かめる。
「ん?」
車両の前から誰かが歩いてくる。
それと同時に、車内にアナンスが流れる。
「皆様ー、ご乗車大変ありがとうございます。当電車猿夢特急はあの世逝きと成っております。
乗り換え、途中下車等不可能なので、あらかじめご了承お願いしますー」
マイクを持った髪の長い子供が後ろの方へ歩いていく。
その後ろに男が小さく「ランランルー」と良く分からない言葉を呟いて追従している。だがその右手に、光るかぎ爪を見つけ師匠が小さく息を漏らした。
なおもアナウンスは続いている。
『次はー、生け造り、生け造りでございまーす』
今、なんと言った?師匠がそう考えていると途中で――――
「イイィギギャァァアアアア!!!!」
後ろから悲鳴が聞こえる!!
何かが激しく暴れる音!!
そして、自分の方まで謎の赤い液体が飛んでくる!!
突然の悲鳴に師匠が身を縮こませる!!
『次はー、抉り出し、抉り出しでございまーす』
「ぐぅあ!!はああ、あっ、あぁああ……あああ!!」
アナンスが響いた次の瞬間、すぐ後ろの席から声が聞こえた!!
グリグリと何かを、回すような感覚!!
更に飛び散ってくる赤い液体!!
ボトン!!
師匠の視界の端、列車の通路の真ん中に何かが落ちた。
それに対して、師匠は視線を向けてしまった。
「ひ!」
それは自身の弟子の成れの果て。
頬肉が削げ、目が抉り出され何とか分かったのが奇跡のようなものだった。
「あ、ああ……」
渇いた声が口から漏れる。
『次はー、ひき肉ー、ひき肉でございまーす』
5本の爪が席に掛けられる。
ゆっくりと、顔がケロイド状に成った男と目に何の感情も宿していない幼女が現れる。
『次はー、ひき肉ー、ひき肉でございまーす』
再度、死刑の宣告をするかのようにアナウンスが流れる。
かぎ爪と幼女の手が師匠に近づく!!
「いや……いやよ、来ないで!来ないでぁえええ!!」
抵抗空しく、体に4本の腕が絡みつく!!
師匠は自身の体がぐちゃぐちゃにつぶされる感覚を味わった!!
「消えましたね」
「ああ、そうだな」
だんだんと景色の崩れていく墓場で、本来の姿に戻った善とフレディが話す。
師匠は叫び声をあげると同時に消えてしまったのだ。
「きっと、跳び起きたんだろうな。
ひひひ!もっと脅かしてやりたかったんだが……」
物足りなさそうにフレディがそう話す。
善としてはもう十分なのだが、フレディはそうではないらしい。
「さて、もうすぐ朝だ。
お前も、起きる時間だな。
えーと、お!居た居た、ゴーストフェイス!!起きろ!!
帰るぞ!!」
うっぷん晴らしか、近くに倒れていたゴーストフェイスを結構な力で殴って起こす。
「いてって!先輩なにすんスか!?」
「お前は、俺が大変な時に……無能なヤツはこうだ!!」
ゴーストフェイスに蹴りを入れて、此方に手を振る。
「じゃあな!またいつか、俺の悪夢で会おうぜ!!」
「お断りします!!むしろ、なんかいい夢見せてくださいよ。
優しいおねーさんにビーチサイドで囲まれるとか……」
「つまんねーだろ?そんなのよ!!
夢は起きたら消えちまう、けど俺様の恐怖は忘れんなよ!!」
最後にそう笑ってフレディは消えて行った。
「ふぅ~あ……」
早朝、善が目を覚ましあくびと共にベットから這い出す。
「んぉ?善、起きたのか?」
「おう、芳香。早起きだな……おはよう……」
珍しく少しだけ先に起きていた芳香に挨拶をして、芳香の使っていた布団を片付けようと押し入れを開ける。
「おっと、私がやるから善はじっとしていてくれ」
ヒョイっと、布団を持ち上げ押し入れの上の段に仕舞った。
気が付くと右手に、ガラスの様な玉を持っていた。
「?」
ソレが何か分からなかった善は。とりあえず箪笥にそれを仕舞った。
「さ、ご飯を食べに行こうな。
っと、師匠を起こさないと」
そう言って善は、芳香を連れて師匠の寝室へと足を運んだ。
「師匠?起きてます?」
「あ、あ……善、そう、善よね?」
布団にくるまった師匠が善を見る。
「どうしたんですか?」
「何か、怖い夢を見たんのよ。
そう、怖い夢を……」
珍しく弱った師匠を見て、善はなぜか心が少しスッキリした。
「さ、母上、朝食にしましょう?」
「あら」
「お?」
師匠、芳香の二人が何かに反応する。
「今、母上って言ったぞ!!」
「あら、なぁにぃ?急にお母さんが恋しくなったの?
まだまだ、子供ねぇ?
善ちゃ~ん、ママよ~おいでおいで~」
芳香と、師匠の二人が善をからかう。
「や、止めてくださいよ!!ってか、私が師匠の子供って年齢合わなさすぎでしょ!!」
「そうよねー、もっと早く、そう……赤ん坊のころに拾えたら、自分好みに調教――もとい教育できたのに……残念よね
私に服従でさせて、力を調節して、武器も用意して……」
「なんか、倫理感とかが著しく欠けてそうですよ……」
なぜか、嫌にその姿がリアルに想像できてしまった善は朝一でげんなりする。
そう言えば、自分も夢を見た気がするが内容はもう思い出せなかった。
ただ何となく、怖い思いと楽しい思いをした気がした。
何処かで、ケロイド顔の男の笑う声が聞こえた気がした。
さて、コレで現在、訳あり以外の全てのコラボが終りました。
見なさんありがとうございます。