作者「さあさあ、始まりました」
ショウ「さっさと始めるか。リオ」
リオ「はい! リリカルマジカル始まります!」
始業式から数ヶ月ーーー俺ことショウ・S・ナガツキは元気にやっています。
あの事件後、ヴィヴィオと会う回数が増え、休日に街を一人でブラブラすることは無くなった。
毎回、俺と街を歩く時「手を繋いで欲しい」と頼まれ、繋ぐと顔を赤く染めるのは何でだろう?
そういえば、ヴィヴィオも俺と同じ学校だったらしく休み時間を利用してよく話すことが多い。
余談だがなのはさんに呼ばれ、行ってみると地獄より恐ろしいトレーニングが待っていたことを思い出すと今も軽く身震いすらしてしまう。ーーーやはり、魔王だな。
椅子に腰掛け、回想を止め窓の外を見る。
そこには雲一つない青空が広がっていた。太陽の光が眩しく映え眼を細める。
ジメジメとした夏の日差しで汗が流れるが今はそれすらも心地いい。
「久しぶりの日常だな」
と、しばらく外を見ていると首の下、胸の辺りから無機質な女性の声が聞こえた。
『浸ってるところ悪いですけどさっさと図書館に行きますよ』
「もうちょっとこのままで」
『ダ・メ・で・す! シャッハさんから図書館で必要なものを持ってきてくれって頼まれたじゃないですか! このままやらなかったら説教くらいますよ』
「うぇ〜〜お説教はアインとアリンで間に合ってます。はぁ、行くか」
『賢明な判断ですね』
気怠そうに立ち上がると図書館に赴くため教室を後にした。
□■□
学校の図書館へと赴き、確認するとちょうどその本は貸し出し中だった。
このままだとシスター・シャッハの仕事が出来ないということで無限書庫まで行ってユーノさんに頼んでみることにした。
一応司書資格はあるが探すの大変なんだよね。その点、ユーノさんは本の検索魔法を使えるので少し楽なのだ。
まあ、そのお陰でどっかの提督さんに頼まれた資料の山に追われ愚痴を聞くこっちの身にもなって欲しいのだが……思い出したら腹立ってきたな。そういえば提督さんはフェイトさんの義兄さんだったな。
今度、会えるように根回しを頼んでみよう。立ち回る。
「しっかし、ほとんど誰も歩いてないな」
『皆さん、プールに行っているか家に引きこもってクーラーでも浴びているのでしょう』
「プールか。久しぶりに行きたいな」
『そうですね。行く時はちゃんと私に防水コートしてくださいよ?』
「分かってるよ。ん、あれはーーー」
ユエとプールの話をしていると女の子が三人の男に連れて行かれるところを目撃。テンプレで路地裏へと入って行く。
「どう思う?」
『大方、自分達の欲望で動いているバカですよ』
「決まりだな」
拳をニ・三度鳴らしながら狩人のような笑みを零し路地裏へと入って行く。
身を隠し、気配を消しながら近付いていくと女の子が取り囲まれ涙目になっていた。耳を澄ませ、会話を盗み聞く。
「おいおいおい! 兄貴の腕折れちまったぞ!? どうしてくれんだぁあ?」
と、叫ぶチンピラA。
「折れた、って少しぶつかっただけじゃないですか!」
どうやら女の子が今も腕を押さえ続けている男にぶつかってしまいいちゃもんをつけられているようだ。
「侘び一つもねぇのか、嬢ちゃんよぉ?」
と、身を屈め女の子を威圧する態度を取るチンピラB。
「謝ったじゃないですか!」
「謝れば済むと思ってんの? 甘ぇんだよ! ま、手っ取り早く体で払って貰おうかな!」
「いや! やめてください!」
汚い笑みを浮かべながら女の子の服へと手を伸ばす兄貴。
それに反抗しようとするがチンピラAとBに押さえ込まれてしまった女の子。
うんーーー死刑確定♪
ゆっくりと右手に炎を宿しながら兄貴へと歩く。
「誰か、助けてぇ!」
「ははは! こんな所に誰も来やしねぇよ!」
「所が来ちゃったんだなーこれが」
「あ? ーーーグベシッ!?」
『あ、兄貴!?』
肩に手をポンっと手を置くと不思議そうな声を上げながら振り向いたのでそのまま右ストレートをかます。
顔面に来た強い衝撃で身体が宙を舞い、面白いぐらい吹っ飛んでいった。
チンピラA、Bが兄貴に駆け寄り抱え起すと左頬には拳型の火傷が出来ていた。
「テメェ、何しやがる!?」
「ムカついたから殴った。でも、後悔はしてないし反省もしてない」
「「「ふざけんな‼︎」」」
そう言うや否や三人同時に殴り掛かってくるが、隙だらけだったので風を起こしお互いの顔面に拳が飛ぶように仕向ける。
拳は綺麗に隣同士の顔面を捉え、目を回しながら倒れてしまった。
これで懲りたとは思えないので最後に一発ずつ頬を叩いた。
振り返り、女の子に声を掛ける。
「悪い、大丈夫か?」
「は、はい。でも、何でお兄さんが悪いんですか?」
「ん、もう少し早く助かれば良かったなって」
「そんな大丈夫ですよ! お兄さんが助けてくれたから私は無事ですし」
「そう言ってもらえると助かる。そうだ、お詫びにアイス奢ってやるよ」
「え、そんな悪いですよ!」
わたわたと手を振る女の子の手を掴み、多少強引に手を引いた。
「それじゃあ、出発〜!」
「あ、自分で歩けますよ! お兄さん!」
「聞こえな〜い」
「酷いですぅ!?」
ちょっと遠慮した態度を取ってはいたが実際目の前にアイスが出されるとーーー
「このアイス美味しいですね!」
と、ニッコリと満足そうにアイスを食べている。
女の子がストロベリーで俺がバニラ。見出しの旗に『地球産の牛乳使ってます』と書いてあったので選択肢はこれ一択だけに絞られた。
うん、やっぱり地球のものは美味しいな。
「そういえばずっと女の子って言い方も変だし、自己紹介だな。俺はショウ・S・ナガツキ、好きなように呼んでくれ」
「私の名前はーーー」
「リオ・ウェズリーです!」
「ん、そっか。よらしくなリオ」
「はい、先輩!」
「ん? 先輩?」
「だって先輩が着てるのってSt.ヒルデ魔法学院の制服ですよね? 私もそこに通ってるんですよ!」
「ああ、だから先輩ね」
「はい!」
それにしても、と話題を変え手を繋いだ時の疑問を投げ掛ける。
「失礼だけどさ、手を繋いだ時の感触ーーーリオも武術関係やってるんだろ?」
「よく分かりましたね。ってことは先輩も?」
「ん、まぁな」
「先輩の言う通り、私は『春光拳』という武術をやっています。家がやっているので自然と興味が湧いて始めました」
「そうなのか。だったら、あの時軽くいなせたんじゃないか?」
「えっと、怖くて足が竦んじゃって……」
「ん、それじゃあ仕方ないな。女の子だから怖くて当たり前だ」
「でも、魔法を使えば良かったんですよね」
リオは右手に炎を灯し、左手に雷を轟かせた。
「魔力変換が二つか……珍しいな。じゃあ、俺も見せてやるよ」
ショウも炎と風を発生させ、更にリオと同じ雷を、他にも水、土、光が現れる。その光景にリオはおお〜っと感嘆の声を漏らす。
だが、ショウの魔力変換は
「すごいです! 先輩!」
「うん、俺もそう思う。初めて出来た時なんて驚いたなあ」
「ハハハ……」
乾いた笑いを漏らすリオ。
「リオが使う『春光拳』今度見せてくれよ。すごく興味あるし」
「はい! いいですよ。それに何か縁があったら実家に来てください。いろんな秘伝書があるので退屈しないですよ」
「ん、縁があったらな」
「それじゃあ、そろそろ帰りますね。もうこんな時間ですし」
ユエに時刻を表示してもらうと午後六時半。
いつの間にか空も赤くなっていた。
「ん、またなリオ」
「またです、先輩」
ショウはリオが見えなくなるまで手を振り続け、見えなくなったので踵を返し自分も帰路に着いた。
「アイス美味かったな」
『それは良かったですね。ですがマスター』
「ん?」
『シャッハさんに頼まれた本借りるの忘れてませんか?』
「あ……」
この後、御説教を食らったのは言うまでもない。
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それではまた次回お会いしましょう。
次回予告
「私は、どうすればいいんでしょうか?」
「その答えは自分にしか出せないよ。君はどうしたい?」
「私はヴィヴィオと一緒に徒手格闘技術がしたいです」
「ん、そっか」
memory 12 『少女は迷う』