これから時間があればまた投稿していく予定です。
「もうすぐ試験か。面倒クセェ」
「それでも試験はやって来ますよ」
「陛下は勉学が出来た方ではなかったですか?」
「全然全く出来ないさ」
『とか言いつつマスターは何気に成績上位者じゃないですか』
ヴィヴィオとの試合から一週間が過ぎ、試験が間近に迫る今日この頃。
俺達三人は他愛ない話をしながら登校していた。
まあ、試験が明けたら四日間の休みがあるからその日を有効活用して訓練に費やそうと考えていたりする。
「……眠い」
「昨日は遅くまで何かしていたようですけど何をしていたんですか?」
「ユエのモードの追加。最近は何かと忙しかったからやる暇なくてさ」
「それをするぐらいなら試験勉強をした方がいいと思うのですが?」
「まあ、細かいことは気にすんなって」
校門を潜り、学校の敷地内へと足を踏み入れる。
ザワザワといろんな声が聞こえる。
平和だね〜なんて思いながら後ろから元気な声が飛んできた。
「おはようございます! ショウさん、アリンさん、アインハルトさん!」
「ごきげんようヴィヴィオさん」
ごきげんようと返す女性陣。
ヴィヴィオを加えた四人で校舎へと歩いていく。
ヴィヴィオとアインはあの試合からよく話すところを見かけるようになった。
仲良くなったみたいで内心ホッとしてたりする。
それはアリンも同じようだった。
だってアインを見る横顔が母親のそれなんだもんな。
「ーーーヴィヴィオさん。貴女の校舎はあちらでは」
「あ! そ、そうでしたっ!」
俺達の中等部校舎とは逆側の校舎を指差すアインにヴィヴィオは顔を赤く染め、声が裏返っていた。
「それでは」
「じゃあな。ヴィヴィオ」
「失礼します」
「あ、ありがとうございます。アインハルトさん」
「ーーー遅刻をしないように気をつけてくださいね」
「はいっ! 気をつけますッ‼︎」
振り返ることなくスッと右手を上げてヴィヴィオに言う。
それを見たヴィヴィオは嬉しそうに返事をすると鼻歌を歌いながら走り去って行った。
ふと隣を見るとアインが顔を赤くしていた。
「恥ずかしいならやらなきゃ良いんだろうに」
「うっ、仕方ないじゃないですか」
「アインさんはカッコつけたいんですよね」
「違います!」
相変わらず不器用な奴ーーーまあ、それがアインなんだけどさ。
アリンに弄られている光景を見ながら俺は頬を緩ませた。
15:30 学院内図書室
放課後になり、今は一人で図書室をウロウロとしている。
二人は試験勉強があるためすぐに帰って行った。
今度は何を見ようかな、と本を散策しているとピピッとユエから電子音が響いた。
『マスター。エリオさんから通信です』
「ん。繋いでくれ」
『わかりました』
目の前にディスプレイが映し出される。
そこにはエリオとキャロの二人がいた。
「二人とも久しぶり」
『本当に久しぶりだね。ショウ』
『早速だけどショウは週末暇かな?』
「暇だな。訓練に費やそうと思ってたし」
『じゃあさ、週末にルーテシアの家で合宿があるんだけど一緒にどうかな?』
「そういうことなら行かせてもらうよ。あ、もう一人いいかな?」
『大丈夫だと思うけど……どうして?』
「ん。まあ、俺の家族みたいな奴がいるから紹介しようと思って」
『わかったよ。楽しみにしてるね』
『それじゃあ、週末にね』
「ああ、またな」
通信を切る。
合宿ということはノーヴェさん辺りも行くだろうからアインはまず誘われるだろう。
アリンを連れて行くとしてなのはさんとノーヴェさん、アリンにメールしなきゃな。
簡単に文章をうち、三人にメールを送信。
合宿の準備をしようと俺は帰路に着いた。
□■□
いろいろあり、試験期間も無事に終了。
現在、俺はアリンと一緒に高町家に来ている。
初めて会う人達に一抹の不安を残すアリンの頭をソッと撫でてやる。
子供扱いしないでください、と目で訴えてくるが俺は無視してドアを開けた。
「こんにちは。なのはさん、フェイトさん」
「こんにちは、ショウくん。それにアリンちゃん」
「久しぶりだね。ショウ」
「こんにちは。私はアリン・キサラギと申します。陛下の忠臣を務めさせて頂いております」
「いや、アリンさんや。こういう所とかで「陛下」って呼ぶのやっぱりやめません?」
「無理ですね」
「うわー、ばっさり斬りやがった」
しかもいい笑顔で。
ふとチビッ子三人がニコニコとしているのが目に入った。
「なんか嬉しそうだなヴィヴィオ」
「はい! 三人そろって花丸評価貰えたんです!」
「ほー、それは良かったな」
「それじゃあ、ショウくん達も見せてもらおうかな?」
「うぇ……見せなきゃダメですか?」
「ダメです」
「わかりましたよ……はい」
ウィンドウを展開してなのはさん達に見えるように移動させる。
俺の結果を見た途端アリン以外全員が口を開けて固まってしまう。
あれ? なんか悪いとこあったかな? 不安になってきたぞ?
「まあ、ショウくんだもんね」
「ねぇ、ショウ? 今度執務官の試験やってみないかな?」
「考えておきましょう」
なのはさん。その納得の仕方はどうなんでしょうか?
フェイトさんもここで執務官に勧誘はやめてください。
二人がこんな態度になるのも無理はない。
ショウ・S・ナガツキ
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オール100点
「ショウさんすごいです!」
「いやーそれほどでも」
「オール100点なんて初めて見ました」
『マスターは司書資格にデバイスマスターの資格も持っていますからね。当然です』
いやいや、アリンの2位も十分すごいと思うけど。
「私は陛下の忠臣ですから常に隣にいるのは当たり前です」なんて言われた時はちょっと恥ずかしかったけど……
「そろそろお客様が来るからヴィヴィオは待っててね」
「おきゃくさま?」
『It seems to have come.(いらっしゃったようです)』
レイジングハートに続いて入って来たのはアインとノーヴェさんだった。
まさかの来客に驚きを隠せないヴィヴィオ。
「異世界での訓練合宿とのことでお誘い頂いたのですが、同行させていただいても宜しいでしょうか?」
「はいッッ! もー全力で大歓迎ですッ!」
手を取りブンブンと上下させる二人の顔は少し赤かった。
そこからなのはさんがアインと話しているが少し戸惑っているアインに一方的に話をしている。
そこでようやくヴィヴィオの静止が入った。
「ほらーお前達も着替えて来いよ」
「あ!そうだった。クリス着替え手伝って!」
「…………」ピッ!
ドタドタと階段を駆け上がっていくヴィヴィオにクリスは後ろから飛んで付いて行く。
「アインが参加するとは思ってなかったよ。てっきり断るかと思ってた」
「まあ、偶には良いかな、と思っただけです」
「ふーん?」
「こいつはなショウ。おまえがーーー」
「うぁああああ! ノーヴェさんそれは言わないでください!」
「わかったわかった」
「?」
頬を赤らめたアインはノーヴェさんの言葉を遮りように大声を上げる。
それをニヤニヤと見ているノーヴェさん。
訳が分からず俺は首を傾げた。
車に乗り込んだ俺達はわいわいと会話を楽しんでいたが遅くまでユエの調整していたことが祟り、眠くなってしまった。
俺の右隣にアイン。左隣にアリン、その奥にノーヴェさんが座っている。
前にはチビッ子三人。助手席になのはさん。運転はフェイトさんだ。
「……ダメだ、眠い」
「次元港に着いたら起こしますから寝てていいですよ?」
「それ、じゃあ、おことばにあまえて……」
重くなった瞼を閉じると急速に意識が沈んでいく。
支えを失った頭はアインの肩へともたれかかる。
(そういえば久しぶりにショウの寝顔を見ますね)
寝息を立てるショウを見て笑みを浮かべるアイン。
ショウが起きないように気をつけながら優しく撫でてやる。
すると、くすぐったそうな声が漏れるので段々と面白くなってきて夢中になってしまい、周りの視線に気がつかなかった。
アリンは羨ましそうにアインをジト目で見ている。
前のチビッ子三人も羨ましそうに二人を見ていた。
そんな子供達を見て大人三人は笑っていた。
旅行先である無人世界カルナージは
標準時差は7時間。一年を通して温暖で大自然が広がる豊かな世界である。
船の中からは次元のうねりなどが見え、早くあの大自然が見たいと考えさせられる。
きっとルーのことだから張り切っておもてなしするんだろうな。
案外温泉とか掘り当てたりな。…………さすがに、それはないよな?
いや、でもルーならやりかねない所が怖いな。
程なくして到着した俺達一行はルーの家に訪れた。
迎えてくれたのはルーとルーのお母さんのメガーヌさんだ。
ルーは早速ヴィヴィオ達と話し込んでいる。
と、エリオはどこかな?
すると、奥から薪にするであろう木の枝を抱える二人がやって来た。
「よっす。エリオ、キャロ」
「やあ、ショウ」
「久しぶりだね、ショウ」
「こうして会うのは1年ぶりだしな」
「しっかし、また背伸びたなエリオ」
「そ、そうかな?」
「私だって伸びたもん!?」
「ーーー1.5cmと俺は看た!」
「はぅ!? なんでわかるの!?」
「ふっふっふ。これでも長い付き合いだからな」
「なーに三人で楽しく話してるのよ」
「うぉ!? おいルー! いきなり飛び掛ると危ないだろうが!」
ヴィヴィオ達と話し終えたルーがいきなり俺の背中に抱き着いてきた為、転びそうになるがなんとか寸での所で堪える。
本人は悪びれもせずに微笑んでいた。
「別に良いじゃな〜い。私とあんたの仲でしょ?」
「どんな仲だよ!?」
「ご主人さまとペットの仲」
「そんな関係になったら覚えがないし、聞きたくなかったよ!?」
「ま、冗談は置いといて久しぶりねショウ」
「ん。久しぶり」
冗談で済ませていいのかは疑問だが久しぶりに三人と会ったことで会話に花が咲いてしまう。
それをなんだか羨ましそうに見るアインと目が合った。
「どうした?」
「えっと、三人とはお知り合いなんですか?」
「ああ、俺が嘱託魔導師になって、初めての任務の時に一緒になってさ」
そうそう。
エリオと友達になれた時はちょっと泣いちゃったんだよな〜。
キャロと会った時も中々強烈な印象だったし。
あれを見てからなるべく身長の話はしなかったし。まあ、今では気軽に言える仲にはなった、と思う。
ルーのいたずらに目を輝かせるとこも変わってないしな。
あの時は確かリープスパーダの逮捕が任務だったっけーーー
そこまで考えたのが悪かった。
思い出してしまったのだ。あの光景を。
獣に成り果てた人間が自分の仲間を鋭利な爪で殺していく光景を。
助けてくれ、と涙を流し絶命した男を。
そして、あの時の肉を斬り裂いた感触が手に蘇る。
そうだ。俺はあいつをーーーーー
「ショウ!」
「ーーーッ」
「大丈夫だよ。ショウ」
「安心しなさい。私達がいるから」
「……ごめん」
いつの間にか三人に手を握られていた。
三人の体温が強く感じられる。
それほどまでに俺の体は冷え切ってしまっていた。
チビッ子三人とアインが心配そうに見ている。
アリンは何かを察したのかその表情は暗かった。
「えっと僕はエリオ・モンディアルです」
「キャロ・ル・ルシエと飛竜のフリードです」
「ルーテシア・アルピーノよ。一人ちびっこがいるけど三人で同い年」
「1.5cmも伸びたもん!」
重くなった空気を壊すようにエリオが自己紹介を初め、ルーがキャロの身長で弄り、笑いを起こす。
さっきまでの空気は一気に霧散していった。
「アインハルト・ストラトスです」
「よろしくねアインハルト」
ガサッと茂みが揺れる音とともに現れたのは魚を入れたカゴを背負ったガリューだった。
初対面のアインは表情を強張らせ、構える。
そこでヴィヴィオ達がガリューのことを説明し、アインは頭を下げていた。
大人組はトレーニングに行くため、エリオとキャロとは一旦別れる。
「そんじゃ、水着に着替えてロッジの裏に集合な!」
「「「「おー!」」」」
水着に着替えた俺達は川で遊んでいる。
と言っても俺は少し離れた所で座禅組んでるんだけども。
リオはどこかチャイナ服を彷彿とさせるワンピースタイプの水着。
コロナは学校で使っているスク水。
ルーもワンピースタイプの水着。
ヴィヴィオとアイン、アリンはビキニタイプの水着だった。
ヴィヴィオの水着を選んだのは多分もしかしなくてもフェイトさんなんだろうな……
まあ、取り敢えずこれだけは言わせてもらおう。
「眼福です」
「お前は行かないのか? 変態」
「俺だって男ですからね。けれど変態とは心外ですね。俺は紳士ですよ。もう少ししたら俺も行きますよ」
「…………」フヨフヨ
「クリスは行かないのか?」
「…………」せっせ、せっせ、ぴゅー、パッ!
「なになに? 『
「…………」ピッ!
「『是非!』か。OK、今度作ってくるよ」
アインはノーヴェさんと何やら話している。
まあ、大方水遊びよりも練習がしたいんだろうな。
ま、やってれば
「陛下は泳がないのですか?」
「ん。ちょっと落ち着いてから行こうと思ってさ」
「ーーー私は何も聞きませんよ。でも、あまり一人で背負おうとしないでください」
「ーーーわかってる。そう言えばさ、アリン」
「何ですか?」
「最近リンに会った」
「本当ですか!?」
「ああ。もう少しで完全に目覚めるって言ってたよ」
「そう、ですか。早く会いたいですね」
「そうだな」
アリンと話しているうちにノーヴェさんがアインに何故水遊びさせているか教えていた。
「ヴィヴィオ、リオ、コロナ! ちょっと「水斬り」やってみせてくれよ!」
「「「はぁーーーいッ!」」」
順番に拳を打ち出していく三人に拳速で水柱が上がる。
アインは少し驚いていたようだが俺とアリンはベルカの時にやったことがあったのでさほど驚きはしなかった。
「お前もやってみな」
「ーーーはい」
川の中心に入り、拳を引くアイン。
(水中じゃ大きな踏み込みは使えない。抵抗の少ない回転の力で出来るだけ柔らかくーーー)
「……あれ?」
撃ち出された拳は水柱を5メートルほど上げたが本人はあまり上がらなかったことにキョトンとしている。
「お前のはちょいと初速が速すぎるんだよ。初めはゆるっと脱力して途中はゆっくり……インパクトに向けて鋭く加速。それを素早くパワーを入れてやるとーーー」
ザッパァアアアン!
「こうなる」
さすがはノーヴェさん。
四人よりも倍はある10メートルは水柱が上がっている。
そして、ルーが俺達にもやってみればと言ってきた。
アリンも頷いたのでやることにした俺達は水の中に入る。
最初はアリンが拳を撃ち出したがアインよりも少し高い6メートルの水柱が上がる。
続いて俺。何故かチビッ子三人が目をキラキラと輝かせているのは気にしないでおこう。心なしかアインとアリンも輝いているような?
「ふぅーー……」
脱力しながら拳を引く。
そして、インパクトの瞬間に一気に加速し、撃ち抜く。
ノーヴェさんにやや劣るが水柱が上がる。
おおー! と歓声が漏れるが少し納得がいかない。
「ノーヴェさん。剣使っても良いですか?」
「別に良いけど……お嬢も大丈夫か?」
「構わないわよ。思いっきりやっちゃいなさい」
「よし。ユエ」
『イエス、マスター』
剣に形を変えたユエを腰で隠すように構える。
ノーヴェさんには見覚えがある構えだ。
そう。これはミカヤさんの居合術の構え。
目を閉じ、意識を集中させる。
右手を柄に添え、肺にある空気を全て吐き出した。
カッ! と、瞳が見開かれると同時に剣を抜刀する。
剣閃が川を裂き、滝を一刀両断し、川の水のほとんどが宙へと上がる。
納刀するの同時に時間が巻き戻るように宙に舞った水が俺達に叩きつけられる。
「ふぅ、まあこんなもんかな」
「やり過ぎだろ!」
「さっすが『剣王』ってことかしら?」
「その呼ばれ方は好きじゃないからやめてくれ」
「お疲れ様です。陛下」
俺の予想以上の「水斬り」を見たチビッ子とアインに火がつき、全員が川で「水斬り」をしていた。
その光景を俺たち四人は笑いながら見守っていた。
「おかえりー。みんな遊んできた?」
「はい。楽しかったですよ」
「あらあら? ヴィヴィオちゃんとアインハルトちゃん大丈夫?」
「いえ……あの」
「だ、だいじょうぶ……です」
「やめとけって言ったのに無視してずっと「水斬り」やってたんですよ。だからメガーヌさんは気にしなくて良いですよ」
「あら、そうなの」
プルプルと震える二人に呆れながら答えるとメガーヌさんは笑っていた。
「それじゃ、食べようか」
『いただきまーす!』
「あ、これ美味しい」
「それ私が作ったんだよ」
「キャロが?」
「本当に美味しいよキャロ!」
「よしよし、エリオ。飯は逃げないからもう少しゆっくり食べような?」
吸引機のように料理を吸い込んでいくエリオ。
うん。こういうところは全然変わってないみたいだな。なんか安心したようなホッとしたような。
キャロは少し苦笑しているし。
「あ、そうだ。ショウくんも午後からトレーニングに参加する?」
「是非!」
「じゃあ、久しぶりに私と模擬戦でもする?」
ガタンッと音が鳴り、全員がショウを見る。
当のショウはいつの間に移動したのか隅っこの方でガタガタと震えていた。
「ピンクの砲撃怖い……SLB怖い……
なのはのことをよく知っている人達は「あー」と納得しているが何も知らない子供達は不思議そうに首を傾げていた。
「ショウくん酷いの! 私は魔王じゃないよ!」
「……ショウの気持ちすごくわかるよ。大丈夫。私がついてるから強く生きよう?」
「……フェイトさんッ!」
ガシッと抱き合う二人。
それを見たなのはさんは「フェイトちゃんまで!?」と叫んでいた。
抱き合う俺達を見ていたチビッ子三人とアインとアリンが黒いオーラを放出していたことをここに追記しておく。
□■□
昼食を食べ終え、俺はエリオと一緒に日向ぼっこをしている。
「ねえ、ショウ。今まであんまり詳しく聞いてないけどさ。ショウのーーー『剣王』のこと教えてよ」
「ん? そうだなーーー偶には昔話も悪くない、かな? しっかし何から話したもんかな」
時同じくしてルーテシア書斎ーーー
「あ、ルーちゃん。もしかしてその本……」
「うん。アインハルトとショウに見せてあげようと思って」
「歴史に名を刻んだ『覇王』イングヴァルト、『剣王』ショウ・S・ナガツキーーー二人の回顧録を」
「ベルカの歴史に名を残した武勇の人にして初代覇王クラウス・G・S・イングヴァルト。救世主として名を残したショウ・S・ナガツキ。彼等の回顧録。ーーーと言っても現物じゃなくて後世の写本なんだけれどね」
「ルーちゃんはアインハルトさんの事は?」
「ノーヴェからだいたい聞いてるわ。覇王家直系の子孫で初代覇王の記憶を伝承してるってね」
「じゃあ、ショウさんは?」
「それは本人から聞いたわ。ーーーまあ、とても良い話とは言えなかったけど、ね」
「話を戻すわね。彼等の生きていたベルカは乱世。簡単に言うと戦争ね。そんな悲しい時代を生きていたの。ここからはショウに聞いたことなんだけどーーー」
乱世のベルカ。
一言で言えるほど軽い言葉ではない。
雲に覆われた薄暗い空。枯れ果てた大地。
人々の血が河のように流れても終わらない戦乱。
誰もが苦しんでも、辛くても、悲しくても乱世を終わらせるためにまた剣を取る。
力を持って戦わなければ大切なものを失ってしまう、戦うことを強要された時代ーーー
「そんな時代に生きた覇王と剣王としての短い生涯の記憶。そして、心残りを聞いたわ。ま、こんな悲しいことばかりじゃなかったみたいだけどね」
「それってどういう意味?」
「ちゃんと楽しい記憶、幸せな記憶まあるってことよ。例えばオリヴィエ達との日々とかね」
「オリヴィエって確か……」
「オリヴィエ・ゼーゲブレヒトーーー聖王家の王女にして後の『最後のゆりかごの聖王』。そしてヴィヴィオの
「聖王家の王女様にシュトゥラの王子様が仲良しだったの?」
「オリヴィエがシュトゥラに留学っていうのが体裁だったみたいだけどショウに聞いたら要は人質交換だって言ってたわ」
「それってアレだよね?」
「裏切ったら人質処刑しますってやつ」
「それそれ」
リオとコロナはお互いに抱き合いながらブルブルと震え始める。
一緒に話を聞いていたクリスまでもが口を押さえながら顔面を蒼白させていた。(外装はぬいぐるみのはずなのにそう見える)
「じゃあ、ショウさんはどんな関係があったんですか?」
「あーこれは聞いたら呆れると思うんだけど、なんか家出して、路銀も備蓄した食料も底を尽いて倒れてる所を助けられたみたい」
「あーそれは確かに呆れるのも頷ける、かな?」
「くしゅん!」
「大丈夫? 風邪でも引いたのかな?」
「いや、誰かが噂でもしてるんだろ。俺の知り合いなんてあんまいないし案外ルー辺りかもしれないぜ」
「……もっと友達作りなよ」
「言うな……」
自身の交友関係という痛い所を突かれ、口籠ってしまう。
「それでクラウスとオリヴィエと仲良くなったの?」
「最初はそうでもなかった。初対面で敵と勘違いして思い切り殴ちまったこともあるし」
「は、はは。それは中々強烈だね」
「でも、まあそれから少しずつ仲良くなってさ。すごく楽しかったことだけは今でもハッキリと言える。ーーーあの日々があったから俺は剣を握り続けることが出来たんだ」
横からはよくわからないが真剣な雰囲気を醸し出すショウ。
だが、その迫力はすぐに軟化すると笑みに変わっていた。
きっと、クラウス達の日々を思い出しているのだろう。
こうやってショウを笑顔に出来るクラウス達に少しだけ嫉妬を覚えてしまう。
自分達の目の前ではまだ数えるほどしか心から笑ったところを見たことがなかったから。
だから、こうやってショウのことを笑顔に出来るクラウス達が羨ましく思える。
その思いを振り払うように立ち上がったエリオは軽く背伸びをしてから、ショウへと手を差し出した。
「そろそろ行こう。訓練が始まっちゃうよ」
「そうだな」
エリオの手を取り、立ち上がる。
「取り敢えず頑張りなよ? 絶対なのはさん模擬戦するだろうからさ」
「やっぱり? はぁ……俺はまたしばらくピンク色をしたもの全般見るだけでもトラウマ再発するかも」
「うん。結構なのはさんと訓練するけどやっぱりあの砲撃は怖いよね」
「怖いって次元じゃないぞ。あれはもう死を覚悟させられるね」
バインドで拘束されて身動きの取れない状況にあの特大ピンク砲が撃ち込まれるんだよ?
撃ち抜かれた時なんて光と一緒に消える感覚に陥るもん。
「それ、なのはさんに言ったら酷い目にあうよ?」
「絶対言わない。もう俺はSLBを喰らいたくない! はぁ……トレーニング終わった後、絶対風呂に篭もろ」
「そう言えばルーテシアが温泉掘り当てたらしいよ」
「え、まさか本当に掘り当ててるとか……ある意味才能の塊だよな。ルーは」
「僕もそれは常々思うよ」
他愛ない話をしながら歩くエリオとショウ。
エリオは久しぶりの男友達との会話に頬が緩んでいる。
まあ、それは頬が緩む理由の一つであって。
もう一つの理由は……まあ、言わなくても分かるだろう。
ゆっくりとした足取りで二人はみんなの待つ訓練場へと歩いて行った。
次回予告
「
「それじゃあ、模擬戦しよっか!」
「私もやっていいかな?」
「あんた達は俺に死ねというのか!?」
「大丈夫大丈夫。ちゃんと加減はするから」
「何の!?」
「……実は俺、女性を傷つけるのは嫌でして」
「私達はそう簡単に傷つけられるつもりはないけど………あ! じゃあショウくんが女の子になればいいんだよ! これで解決だよ!」
「うぅ……何でこんな目に……」
memory 19 『白き魔王と金色の死神vs剣姫』