幼馴染は覇王でした。そして俺はーーー   作:流離う旅人

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作者「突然ですが私は陵辱とかそういう系が嫌いです」

ショウ「本当に突然だな。まあ、その気持ちは俺も分かるよ」

作者「分かってくれますか!」

ショウ「おうともさ!」

ガシッ!(互いに強く握手した音)

アイン「それでどうして投稿が遅れたんですか?」

作者「ギクッ! いや〜本当に無理やりとか理不尽な暴力って嫌ですよね〜!」

ショウ「おい、作者」

作者「はい」

ショウ「何で遅れた?」とってもいい笑顔。

作者「他の先生の作品読んだりしてまーーー」

ショウ「読むのは構わんが自分の作業に支障をきたすな!」

作者「あーーーー!」

アイン「作者さんにも困ったものですね。それではリリカルマジカル始まります!」


memory 3 『倒れたら元も子もないだろう?』

ーーーなぁ、クラウス

 

どうした? ショウ

 

俺、お前にばっか迷惑掛けちまったけど俺の事どう思ってたんだ?

 

ーーーそれはな

 

さっきまでの優しい瞳はそこにはもうなく只々何かを恨むような冷たい瞳が俺を見つめていた。

 

ーーーずっと、お前の事が煩わしかったよーーー

 

それはショウの心を抉りとるには余るほどの力を秘めていた。

分かってた。分かってたはずなのに。

動悸が早くなり呼吸が荒くなっていく。焦点も合わなくなってきた。

それだけ俺に取ってクラウスという少年の存在は大きかった。

 

それじゃあ、二度と僕には近付かないでくれ

 

待って、待ってくれクラウス! 俺は、俺は!

 

遠ざかっていく友の背中を必死に走り追い掛ける。

距離が詰まることはない。クラウスへと手を伸ばす。

あとちょっと、そのちょっとで掴むことができるのに掴むことができない。

 

「クラウスッ!」

 

いつの間にか俺は手を伸ばしていた。今はベッドの中にいる。

そこで理解する。さっきのは夢だったと。

寝汗をかいたらしく少し気持ち悪い。風呂に入りたいがどうせ早朝になればランニングに行くので諦める。

時刻は午前二時半。ランニングまでまだあるな。

 

「……寝よう」

 

目を閉じ、呼吸を落ち着かせる。

さっきのことを思い出し体が震える。嫌われるのが怖い子供のように震えながらまた眠りについた。

 

 

□■□

 

 

『マスター起きてください』

 

無機質で機械的な女性の声が耳に届いた。

両親の次に安心できる声だ。

 

「ん、ふぁーあ、おはようユエ」

 

『おはようございます。マイマスター』

 

空中に浮いた一つの指輪から声が聞こえる。ユエだ。

まだユエと過ごして長くはないがユエの存在は今の俺に取ってとても大きい。

ソッと手に取りユエを抱き締める。

 

『え、ま、マスターどうしたんですか!?』

 

「何でもない、よ。何でもない。もうちょっとだけこうさせて」

 

数秒なのか数分経ったのか分からないが心が落ち着きユエを離す。

 

「ごめん。急にこんなことして」

 

『いいえ、大丈夫ですよ。ーーー私は嬉しかったですし』

 

「? っと、もうこんな時間か」

 

時刻は午前五時。そろそろランニングに行く時間だ。

そうと決まればベッドから出て、ジャージに着替える。

軽めに栄養補助食品のゼリーを流し込んだ。お腹減ったまま走ると痛くなってくるからさ。

玄関で靴紐を結んでドアを開けるとそこにはアインハルトが立っていた。

 

「おはようございます、ショウさん」

 

「お、おはよう、アインハルト。どうしたんだよ?」

 

「ランニングをご一緒しようと思いまして」

 

母さんはアインハルトのことを気に掛けていて今ではご飯を一緒に食べる中でもある。

大方母さんが俺のランニング時間を教えたのだろう。

俺のプライバシーはないに等しいなぁ………お願いだから母さん。あんまりむやみやたらと俺の情報振りまかないでね。

何が起きるか分からないから。

 

「ん、そっか。じゃあ、行こうぜ」

 

 

 

 

 

今、走っているのは俺のお気に入りコースだ。

この時間帯は人が通らないので人のことを気にせずにトレーニングが出来る。

女の子にはちょっと早いぐらいで走っているのだが辛い顔をせず、むしろ涼しい顔をしてついてくる。

 

(負けてらんないな、俺も)

 

「ん、そろそろ俺はストレッチに入るけどお前はどうする?」

 

「私もストレッチに入ろうと思います」

 

「ん、分かった。何かあったら声掛けてくれ」

 

「分かりました」

 

 

一通りのストレッチを終え、両手に付けたリストバンドを外す。

それは一見何の変哲もないどこにでもあるリストバンドだがそこらへんにあるものとは訳が違う。特別製だ(・・・・)

「んっしょっと、ふぅ〜〜これ外す時のこの感じやっぱいいな」

 

これは魔力を上げるために作られたリストバンドだ。

これを身に付けることによって体に魔力負荷が掛かり魔法が使い辛くなる。オマケに体が重いのでいいトレーニングになる。

この負荷と解放を繰り返すことで魔力の上限を伸ばしていくという寸法だ。

リストバンドはトレーニング以外にも日常から付けている。

だからこうやって体を動かす時に外している訳だ。

 

「ユエ、魔力どんぐらい上がったかな?」

 

『三カ月前がC+でしたが今はBランクですね。それもAランク寄りです』

 

「おお、結構上がったな。魔力があることに越したことはないからな。さて、さっさと終わらせますか」

 

ユエを空中へと離し、構える。

 

「ふっ!」

 

ヒュンッ!

 

気合いと共に振り抜かれた拳は空を切る。

よし、大丈夫だな。

実際、スパーをする相手がいないのでいつも一人でイメトレしながらやっているからな。今度街の方のジムに行ってみようかな?

呼吸を整え、目の前の敵をイメージする。

イメージするのは俺の知る限り格闘戦では負けなしだった彼女ーーーオリヴィエだ。彼女を超えることは俺の小さな目標だったりする。

返ってくる言葉などないがショウは笑って一人呟く。

 

「さぁ、始めようか」

 

 

 

 

 

ーーー凄い。

それがアインハルトの感想だった。

ショウが一体どんなトレーニングをしているのか気になり木の陰に隠れ覗き見ていた。最初はちょっとした好奇心。

だが、次第に自分が食い入るように見ているのが分かった。

 

彼の一つ一つの動きはとても洗礼されており無駄がほとんどない。

どれほどの鍛錬を積み、ここまで至ったのか?

どれほど鍛練すれば、私もそこに行けるのだろうか?

疑問は潰えなかった。

 

ショウばかりに気を取られていた所為で気が付かなかった。

背後から近付いて(・・・・・・・・)くる男に(・・・・)

 

「かは……っ!」

 

首元に強い衝撃が走り、意識が遠のいていく。

 

一体、何が?

 

薄れていく意識の中、最後に見たのは此方を見て口角を吊り上げ笑う男の姿だった。

 

 

 

 

 

『マスター緊急事態です』

 

「どうした? ユエ」

 

動きを止め、汗を拭いながら振り向く。

 

『家を出る前一応アインハルトさんに付けておいたサーチャーに反応がありました」

 

「何があった?」

 

一瞬でショウの顔が強張った。その顔は正に王と呼ぶに相応しい。

そんなショウに若干怯むがユエは続けた。

 

『サーチャーを通してですが、アインハルトさんが何者かに拉致、誘拐されました』

 

「場所は!?」

 

『ここから少し離れた港湾地域の空き倉庫で反応が止まっています』

 

「ユエ」

 

『イエス、マイマスター。スタンバイ、レディーーーセットアップ』

 

ショウの足元に紺色の魔法陣が展開される。

ショウはベルカの戦乱を生きた王。当然、そのバリアジャケットも騎士甲冑かと思うがそうでもない。

ショウは動きやすさ重視で紺色を基調とした長ズボン、黒のTシャツの上に濃紺のコートを纏った姿だ。

 

「行くぞ、ユエ」

 

ユエは待機状態の指輪ではなく一振りの剣に姿を変え腰に挿さっている。

 

『ブリッツアクション』

 

魔力が迸り、その場にはもうショウの姿がなかった。

 

 

 

□■□

 

 

 

 

ーーーここは、どこだろうか?

目が覚めるとそこは暗かった。体を動かそうとするがピクリとも動かない。

顔を下げると椅子ごと鎖で幾重にも巻かれていた。

そうだ。確か背後から突然気絶させられてーーー

 

「お、やっとお目覚めかい」

 

「ッ!」

 

暗闇から声が聞こえ、思わず身構える。

目の前から一人の男が歩いてくる。その男は私が意識を失う前に見た男だった。

 

「いや〜今回は結構の上玉が手に入って良かったよ」

 

「……どういう意味ですか?」

 

「ああ、お前はこれから売られるんだよ。人身売買ってヤツさ」

 

人身売買。

その言葉は私の心に深く刺さった。

これから私はどこの誰かも分からない人に買われ、奴隷のように生きるというのか?

自分の未来を想像してどんどん体から体温が失われていく。

恐怖から体も震えていた。

 

「ふふ、それじゃあ売る前にちょっと味見でもしようかな〜〜俺、ロリコンじゃないんだけどさ。やっぱ、こんな綺麗なお人形見たら壊したくなっちゃうよね〜〜」

 

「ひっ!」

 

男の愉悦に歪んだ笑顔に恐怖する。

いくら『覇王』イングヴァルトの記憶があるからといってもまだ五歳の女の子なのだ。

目の前にいる男は恐怖以外の何物でもない。

男は手を伸ばし強引にアインハルトの顔を固定する。

 

「そんじゃ、いただきま〜す♪」

 

「い、いやぁあああああ!」

 

必死に抵抗するが鎖の所為で思うように体が動かない。

いや、鎖だけの所為ではない。恐怖で体が竦んでしまっているのだ。

それでも抵抗しなければと暴れる。もう 無我夢中だった。

 

「ああ、もううるさいなぁ……ちょっと、黙ってろよ!」

 

頬に男の拳が入り、一瞬だが動きが止まってしまう。

殴られた頬がジンジンと痛む。

男が更にアインハルトを殴ろうと拳を上げた時だった。

 

バァァアン!

 

扉が轟音と共に爆発し吹っ飛んだ。

その衝撃が此方まで伝わってくる。土埃が舞い、視界が悪くなる。

次第に土埃が晴れ、一つの影が目に入る。

 

黒髪の短髪にアインハルトより少し大きめの身長をした少年。

紺を基調としたコートを纏いその腰には剣が挿さっている。

アインハルトは今にも消えてしまいそうな声で少年の名前を呼んだ。

 

「ショウ、さん………!」

 

アインハルトは等々耐えきれなくなり泣き出してしまった。

人身売買で売られると言われた時、男に殴られても泣かなかったアインハルト。

だが、感情の蓋が外れ全部外に漏れ出してしまう。

 

少年は男を見据え、低く冷たい声で言った。

 

 

「何、アインハルト泣かせてんだよ」

 

 

□■□

 

 

 

ブリッツアクションでショウは港湾地域の空き倉庫まで走った。

ユエにエリアサーチをして貰うと反応は未だ動いてはいない。

さて、問題はどうやってアインハルトを助けるかだな。

 

「ユエ、どうすればいいと思う?」

 

『正面から行くのは自殺行為ですね。ここは後方から忍び込み、犯人の隙を突くべきかと』

 

「よし、なるべく気配を消して裏にまわーーー」

 

『い、いやぁあああああ!』

 

突如、倉庫から響く悲鳴。アインハルトの声だ。

悲鳴を聞いた時にはもう体が動いていた。もう作戦のことなど頭にはなかった。

 

『ちょ、マスター!?』

 

「この扉、邪魔だな。撃ち抜くぞユエ」

 

『はぁ、もう何も言いません。ーーーモードチェンジ・バスター』

 

ユエの姿が剣から長大なライフルへと変わる。

両手で持ち、扉にその砲身を向ける。

魔力を集中させ、カートリッジも二本使用する。

 

『「ショートバスター」』

 

砲身から紺色の光線が撃ち出され、轟音が鳴り響くと同時に扉が吹っ飛んだ。

その拍子に土埃が舞ってしまい視界が悪くなる。

次第に土埃が晴れ、視界がクリアになる。

そこにいたのは惚けた顔をしたクソヤローと鎖で縛られたアインハルトだ。

 

「ショウ、さん………!」

 

アインハルトは泣いていた。

当たり前だ。こんな目にあったのだ。泣かない方がおかしい。

ショウは吹き出す怒りを諌めるように深呼吸を一つ。

心は熱く、頭はクールに行こう。

そして、クソヤローにどうしてもくれてやりたくなった言葉を言った。

それは自分でも驚くほど低く冷たい声だった。

 

 

「何、アインハルト泣かせてんだよ」

 

 

 

□■□

 

 

 

砲撃の衝撃で吹っ飛んだ男が立ち上がり、おかしそうに笑っていた。

 

「ねぇ、君誰かな? ああ、この子が見てたのって君のことか! じゃあ、お礼を言わなきゃね。君のお陰ですんなり事を運ぶことができたよ」

 

ショウは男の言葉に耳を傾けてはいなかった。

何故なら聞くに堪えないからだ。

 

(ユエ、エリアサーチ)

 

(この場にはマスターを含めた三人の反応しかありません。恐らく単独犯でしょう)

 

(そっか。ありがとう)

 

エリアサーチを済ませ、辺りを見る。

使われていないコンテナが積み重ねられ少々狭い。

だが、剣を振るうには十分だ。

男は無視されたことが気にくわないらしく息を荒げ、叫んだ。

 

「ねぇねぇねぇ!? 何、無視してくれちゃってんですか? それとも何? 今更怖気付いちゃった? でも、ざ〜んねん! 見られたからにはここで死んでもらうよ。恨むなら自分を恨むんだね」

 

「さっきからギャーギャーうるさいんだよ。それにそんなに喋るなよ。弱く見えるぞ?」

 

「何だと!」

 

右手が懐へと伸び、何かを取り出した。

それは見覚えがあった。確かーーーそう、拳銃だ。

質量兵器を持ってるってことは結構な犯罪者ってことか? ま、そんなの関係ないけど。

 

男は引き金を絞る。撃鉄が弾を高速で弾き出し頭を撃ち抜く。

ーーーと、男は考えているのだろう。だが、そんな考えは見え見えだ。奴は俺が子供という時点で明らかに自分が強者だと勘違いをしている。

その考えはすぐに改めることになる。

 

キンッ!

 

金属を打ち付けたような音が響いた。

男は口を開けて呆然と立ち尽くしていた。

何故なら、ショウが剣で弾丸を真っ二つに斬り裂いたからだ。

呆気に取られている男を気にすることなくアインハルトへと歩く。

そこで男は我に返ったようでまた引き金を引いた。

学習しない奴だな、とショウは内心嘆息した。

その弾丸を先ほどと同じように斬り裂く。

 

「何で! 何でだよ! 何で当たらない!?」

 

狂ったように撃ってくるが途中で弾は飛んでこなくなった。

弾切れを起こしたのだ。

当たり前だ。バカみたいに無闇矢鱈と撃ち続ければ弾は無くなる。

男が弾を詰め替えようと懐に手を入れるがそんな時間を与えてやるほどショウは優しくはない。

ブリッツアクションで一気に距離を詰め、身体強化で極限まで強化した拳を放った。

それは男の顔面を捉え、地面をニ、三回バウンドしながら吹っ飛んだ。

手応えはあった。ーーーが、この程度で終わる相手だとも思えない。

もしものことがあってからでは遅いのでアインハルトの元に駆け寄り、鎖を引きちぎった。

自由を取り戻したアインハルトは震える体で抱きついてきた。

 

「ぅうっ、こわがっだでず」

 

「ーーーごめん」

 

アインハルトの体は力を入れたらすぐに壊れてしまいそうなほど細かった。恐怖で震えていてとても冷たくなっていた。

ショウはアインハルトを温めるように優しく抱き締めた。

 

「もう少しだけ、待っていてくれ。アインハルト」

 

「っはい!」

 

アインハルトを後ろに下がらせ、吹っ飛んだ方向に振り返ろうとした時、背筋が凍る錯覚に襲われた。

反射的、自動的に振り返るよりも早く剣が動いた。

ズシリとくる重み。鉄と鉄がぶつかり合う擦過音。

振り返るとそこには警棒を持った男がいた。

 

「はは! まさかこれに反応するとは思わなかったよ。完璧に不意をついたと思ったのにさ」

 

鍔迫り合いの中、男が楽しいそうに叫ぶ。

男を見て、あの時感じたものの正体が分かった。殺気(・・)だ。

もし、男が殺気を出さずに気配を完璧に殺していたら今の(・・)俺だったら防げなかっただろう。

 

だんだんと此方が押され始める。

子供と大人の体格差だ。幾ら身体強化で強化しても限度がある。

どちらが押し勝つかなど明白だ。

だが、ここで下がれば距離を詰められ追撃されるーーー

ならば、受け流すだけだ(・・・・・・・)

 

剣を斜めにズラし、警棒を滑らせる。

男の全体重は警棒に掛かっていたため簡単に体勢を崩せた。

そのまま流れるように右脇腹から左肩を斬り上げた。

もし本当に俺が握っている剣が本物だったなら今の一撃で終わっていた。

だが、今は戦乱に包まれたベルカではない。それに出来ることならーーーもう、人は殺したくない。

男は苦しそうに胸を押さえ、肩で荒い息を吐いていた。

 

「ぐっ、痛いなぁ。俺を殺す気かい?」

 

「非殺傷設定なんだから死ぬわけないだろ。それに俺のことを殺そうとしている奴が何言ってんだよ」

 

「はは、それもそうだ。ーーー絶対に殺す」

 

さっきまでのふざけた感じではなく明確な殺意を瞳に込め睨みつけてくる。

これは、何度も感じてきた感覚。何処でだっただろう?

ふと荒れ狂う喧騒が聞こえ、血生臭い匂いが鼻腔を通り抜ける。

ああ、そうだ。ーーー戦場だ。

 

「死ね」

 

「死ね、か……」

 

躊躇うことなく警棒を頭へと振り下ろす。

ショウはそれを読み、剣を横に持ち上げ止めた。

男は警棒に力を込めるがピクリとも動かない。

このままでは殺せないと一旦引こうとしたが動くことができなかった。

今、男の目には無数の剣が突きつけ(・・・・・・・・・)られているように見(・・・・・・・・)えているのだから(・・・・・・・・)

それは全てショウの殺気(・・・・・・・・)。脳がショウの殺気を無数の剣として捉えているのだ。

 

ショウは重く閉ざされた口を開く。

それはアインハルトが攫われた時よりも酷く冷たい声だった。

 

「『死ね』って言葉はそう簡単に口にしてはいけない」

 

男はショウの顔を見て気付く。

自分は決してこの子供の前で言ってはいけないことを言ったのだと。

ショウはゆっくりと男の前へと歩く。

此方に歩いてくると分かっていても体が動かないでいた。

スッと剣を男の喉元に突きつけながら、

 

「その言葉を口にしていいのは自分も殺される覚悟(・・・・・・)を持ったものだけだ(・・・・・・・・・)

 

「う、うわぁあああああああ!」

 

殺られる。殺らなければ自分が殺される。

そう肌で感じた男はデタラメに警棒を振り回していた。

冷静さを欠いた攻撃が当たることはなく、ただ虚しく空を斬る。

 

「もう、終わりにしよう」

 

警棒を振り下ろすよりも早く警棒を持つ右手に蹴りを放つと警棒は宙に円を描きながら飛んでいく。男が警棒を取ろうと視線を一瞬上げる。その一瞬があれば十分だ。

剣を腰の位置で構え、男の体ごと横に薙いだ。

それは最速の一撃。例え見えていても避けることは不可能。

自分の倍はある体は大きく吹き飛びコンテナへと激突し沈んでいく。

 

アインハルトの元に戻ろうと踵を返す。

管理局にも通報しなければならないな。ショウは今から事情聴取のことで頭を抱えた。

 

ショウは男を打ち倒し安心しきっていた。

だから、アインハルトが声を上げるまで気付かなかった。

 

「ショウさん避けて!」

 

「がっ!」

 

アインハルトの声で咄嗟に横に飛んだが背中に強い衝撃を受け、その場に崩れ落ちてしまうショウ。

 

(何が、起こったんだ!?)

 

視界の端に捉えたのはさっき自分が倒したはずの男だった。

その右手には杖ーーデバイスが握られていた。

 

「ふ、ふふ、あはははは! バ〜〜カ! ガキが大人に勝てるはずないだろう。まあ、最後のはヒヤヒヤしたけどね」

 

ショウは勝手に思い込んでいた。

最初に男が使ったのは拳銃。その次は警棒だ。

男は魔力がなく質量兵器を使っている。ショウはそう思っていた。

だが、違ったのだ。使えないのではなく使っていなかったのだ。

 

(クソッ! やっぱ鈍ってるな。昔だったら最後まで注意を怠らなかったのに。やっぱりちゃんとーーー)

 

ーーー殺しておけば良かった。

 

え?

 

今、俺は何を考えた? 殺せば良かった? 違う、違うだろ!

力は誰かを守るための力。

でも、俺はその力を本当に守るために使えていただろうか?

みんなを守るために剣を振るった。

戦場に駆り出し、何人、何十人、何百人と殺してきた。

誰かを守るために誰かを犠牲にしているじゃないか。

本当の意味で俺はあの男と何も変わらないのかもしれない。

でもーーー今だけは考えるな。アインハルトがいるんだ。このままではまたアインハルトに怖い思いをさせてしまう。

 

そんな思いとは裏腹に体は思うように動いてはくれなかった。

魔力弾が男の周りに形成され放たれる。その数四つ。

二つはショウの足へ。残り二つはーーーアインハルトへ向かっていた。

それに気付いたショウは体に鞭打ちアインハルトを突き飛ばした。

瞬間、閃光が視界に広がった。

 

 

 

□■□

 

 

 

「きゃっ!」

 

ショウさんに突き飛ばされた私はその場に倒れ込んだ。

その時、私が立っていた場所に魔力弾が炸裂した。

閃光が収まり、目を開くとボロボロになったショウさんが爆発の中心に立っていた。

その体はゆっくりと横に傾き、力なく倒れ伏してしまう。

私を庇ったせいでショウさんがーーー!

 

「ふふふふふふふ、あははははははははは! やっぱりね! 君ならそうすると思ってたよ。本当に君はバカだね? そういうのを何ていうか知っているかい? 偽善っていうんだよ、それ」

 

あの男がさっきよりも酷く歪んだ顔で狂ったように笑い、叫ぶ。

男はゆっくりとショウさんへと歩いてくる。

ああ、私にはどうすることも出来ない。こうして震えて守られることしか出来ない。

それが嫌で強くなろうと決めたのに。

それが嫌で彼の意思を継ごうと決めたのに。

自分にはどうすることも出来ない。

 

その時、私の脳に映像が浮かんだ。

見覚えのない景色。賑やかな声。そして、目の前に立つ彼。

これは彼の、クラウスの記憶だ。

 

『っと、大丈夫か? クラウス』

 

『っまたお前に助けられてしまったなショウ』

 

『何言ってんだよ。助けんのは当たり前だろうが親友』

 

『僕は、弱いな』

 

『そんなことはーーー』

 

『事実だろう! どれだけ鍛錬しても全然お前やオリヴィエに勝つことが出来ない。僕は守られる側じゃなく守る側になりないんだ! 君には分からないさ! 最初から強い君には!』

 

『本当にそう思うか?』

 

『どういう、意味だよ』

 

『本当に俺やオリヴィエが最初から強かったなんて思うのか?』

 

『だって、そうだろう! 君には圧倒的な剣の才能が! オリヴィエには天賦の格闘があるじゃないか!』

 

『確かに才能はあったかもしれない。でもなーーー誰もがみんな最初から強い訳じゃない』

 

『ッ!』

 

『俺は、たぶんオリヴィエにも言えることがある』

 

『………何だよ』

 

『守りたいものがあるから人は強くなれるんだ』

 

『守りたいもの……』

 

『お前には守りたいものがあるか? もしないならそれを見つけろよ。きっと、今よりも強くなれる』

 

『お前の守りたいものって何なんだよ?』

 

『ん? 俺か? 俺の守りたいものはなーーー』

 

ーーーみんなが笑って暮らせる日常、かな?

そこで映像は終わった。

 

『守りたいものがあるから人は強くなれるんだ』

 

アインハルトは胸を押さえ、その言葉を反芻した。

守りたいものーーー私の、守りたいもの。それはまだよく分からない。

今まで強くなり、クラウスの意思を継ぐことしか考えてこなかった私にはそれが何なのか分からなかった。

でも、今は、今だけは守りたいものがある。

 

体の震えはもう止まっていた。呼吸も安定して体も動く。

手を何度か開閉しながら拳を強く握った。

そして、今まさに私の守りたい人ーーーショウさんに杖を振り下ろそうとしている男に肉薄する。

拳を握る力を更に強くし、歯を食い縛る。

今から放つのは『覇王』の一撃。それはまだ私では打てない一撃。

だから、

 

ーーー少しだけ力を貸してください、クラウス。

 

ーーーああ、任せてくれ。

 

風と一緒に彼の声が聞こえたような気がした。

彼の想いに応えるように、ショウさんを守るためにアインハルトはその拳を打ち出した。

 

「覇王ーーー断空拳!」

 

男は遅れて気付き、障壁(プロテクション)を展開する。

この拳は彼と私の想いが詰まった一撃。

たかが薄壁一枚で防ぎきれるものじゃない!

 

ピシッ ピシピシッ!

 

障壁は音を立てて崩れ落ちていく。

だが、それだけでは終わらない。

障壁を打ち破り、男の鳩尾に決まった。

 

「かはっ……!」

 

「や、やった……」

 

やりました、よ。クラウスーーー

 

紛いなりにも覇王断空拳を使ったため一気に体力を使い果たし膝を付く。そのまま地面に寝そべり目を閉じた。

その表情はとても満足した顔だった。

 

 

□■□

 

 

「覇王ーーー断空拳!」

 

それはかつての親友(とも)の一撃。

何故、アインハルトが? という疑問が上がったがそんなことならどうでも良くなるぐらい懐かしいと思った。

アインハルトは体力を使い果たしたようで気絶したようだ。

その寝顔はとても満足そうだ。

 

「ふ、ふは! ま、まさかその子にも一杯食わされるとはね。殺す! 絶対にお前たち二人は殺す!」

 

まだ、動けたのか。

タフな奴だな。実は人間じゃなくてゴキ○リなんじゃねぇーの?

本当にそう思ってしまうほどの生命力。

そこは素直に感心してしまう。

 

久しぶりに見た親友(とも)の一撃。

それを見てしまったら俺も本気を出さなきゃいけないな。

ーーーなぁ、クラウス。

フラつく体でショウは立ち上がり、男を見据える。

 

「今のお前に言っても分からないし聞こえてないと思うがーーー見せてやるよ『剣王』の一撃を」

 

「うがぁあああああああ!」

 

剣を構える。

先ほどの生半可な攻撃ではダメだ。きっとすぐにまた立ち上がってくるだろう。

だから、剣に想いを込める。込めるのは守りたいという気持ち。

決して殺意ではない。

 

それに気付いた男は障壁を展開しながら突っ込んでくる。

だが、そんな障壁(モノ)『剣王』の前ではないも同然。

 

「『剣王流』ーーー透扇(すいせん)

 

右薙ぎを放ち一閃。

それの一撃は障壁によって防がれるーーーことはなかった。

 

「な、なんで!?」

 

障壁にぶつかることはなくまるで障壁を透かしたかのように男を斬り裂いた。

『剣王』の前では障壁もその効果を発揮することは出来ない。

ただ、それだけのことだ。

 

今度こそ男は意識を失い、崩れ落ちた。

また起き上がるかもしれないのでバインドを付けましたよ?

管理局に通報しそこを動かないようにと言われたが無視してアインハルトを抱き抱えその場を去った。

通報は一応ウィンドウを出さずにsound onlyにしたから大丈夫だろう、うん。

取り敢えず、

 

「……腹減った」

 

 

 

□■□

 

 

 

私たちが現場に着くとそこには犯人らしき人物がバインドで拘束されておりそれ以外の人影は見当たらなかった。

どうやら此方の言葉を無視して帰ってしまったようだ。

 

「取り敢えず、この人を局まで運ぼうか」

 

何人かの局員が男を持ち上げようとした時、私の目にあるものが飛び込んだ。

それは綺麗に服が横に避けていたのだ。

動く相手に対してこれほどの剣技を持つ者は私の知る限り今、私と肩を並べている彼女だけだ(・・・・・)

その彼女に目を移すと何か懐かしいものを見るような顔をしていた。

 

「どうかした? シグナム」

「いや、何でもない。早く戻って事情聴取をしなければなテスタロッサ」

 

「うん、そうだね」

 

そうして私たちは踵を返し、管理局へと戻った。

 

 

□■□

 

 

「ん、んんぅ」

 

眼が覚めると彼の顔がすぐそこにあった。

 

「おはよう、アインハルト」

 

いつもの優しい彼の声。聞くだけで心が温かくなる。

だが、しかしーーー

 

「何で私はお姫様抱っこされているのですか?」

 

「それはね、背中が痛くて背負うことが出来ないからだよ」

 

「あ、その、ごめんなさい……」

 

「謝らなくていいよ。俺が勝手に助けただけだからさ」

 

「すいません。私が弱いからこんなことにーーー」

 

「アインハルト」

 

「何ですか?」

 

「別に俺は気にしてないからこのことはもう終わり。次、謝ったりなんかしたらグリグリの刑だから」

 

「え、あ、ごめ、いや、はい……」

 

「それに弱くたっていいじゃん」

 

「え?」

 

「弱いなら強くなればいい。でも、焦ったらダメだ。それにーーー」

 

ーーー俺がお前のことを守ってやるよ、アインハルト。

 

それを聞いたアインハルトは顔を真っ赤にしていく。

そして、小さく頷いた。

 

 

□■□

 

 

 

「そういえば私ずっと眠っていたってことですよね?」

 

「ん? まあ、そうだな」

 

「ってことは、その、寝顔とか見られてたり?」

 

あの満足そうに眠る顔を思い出す。

少しだけ悪戯してやろうとニヤッと笑い、

 

「ごちそうさまでした」

 

「どういう意味ですか!?」

 

家へと向かう帰り道、彼女の悲痛の声が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




感想を頂いた方、本当にありがとうございます!
これからもよろしくお願いします!
それとこの物語で出てくる『剣王流』の技名とその詳細を募集しようと思います。アイデアがあったらどんどんください!
それではまた次回お会いしましょう。

次回予告

「ショウさん、遅刻しますよ」

「朝起きたら目の前にアインハルトがいる件について説明頼む」

『マスター?』

「何でもない。何でもないんだ。ーーーでも、涙が止まらないんだ」

「お久しぶりです、陛下」


memory 4 『学校で我が忠臣と再開す』
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