ショウ「オリヴィエか?」
作者「違いますがそうです」
ショウ「ややこしい言い方だな」
作者「ま、始めましょう。さ、ショウヤッちゃってください!」
ショウ「は?」
作者「アインハルトさんが居ないんですから必然的にショウがやるでしょ、いつもの」
ショウ「な! お前がやれよ! 作者だろ」
作者「ここに誰も居ないのなら私がやりますよ。さっさとやれ」
ショウ「グッ! あ、う、えっと、リリカルマジカル始まるぞ!」
作者「はい、録画完了っと」
ショウ「…………殺す!」
作者「あーーーーー!」
「……眠い」
まだハッキリとしない視界を擦る。
時刻は四時半。いつもより一時間早い起床だ。
何故、こんなに早く起きたのか? と疑問に思うだろう。
理由は二つある。
一つ目はアイン達には内緒でやってみたいことがあるから。
二つ目は街の方へ行ってジムに行こうと思っているからだ。
アイン達には悪いが一人で行こう。
眠っている脳を覚ますように頬を強く叩いた。
「……よし!」
『スタンバイレディ、セットアップ』
紺色に輝く魔法陣が展開され、ショウの身体を包み込んでいく。
紺色のコートに身を包んだショウが数秒後現れる。
だが、
ショウの身体は身長が伸び少し大人びた青年へと姿を変えていた。
前から試していた変身魔法を使ったものだ。
「よし、成功だな」
『そうですね。魔力も安定していますね。それに声も少し低くなりましたね』
「ん、そうだな」
ユエを抜き、構える。
いつもよりも腕のリーチが伸び範囲が伸びている。
今の身体は全盛期と同じぐらいかな。
その身体を懐かしむように軽く剣を振るう。
ズシリとくる剣の重みも今は幾らか軽くなった。
深く抉りとるように剣が動く。
「やべっ、ちょっと感激だな」
『泣くんですか?』
「泣かねぇよ。もう少しだけ身体を動かしたら型の練習を少しして街に行こう。剣はアリンがいるから良いけど、格闘も相手が欲しいし」
『アインハルトさんではダメなんですか?』
「アインでもいいんだけどまだ練習を繰り返してるみたいだから変に刺激を与えて悪い癖付けのもなぁ」
『しっかり考えてるんですね』
「何だその俺がいつも何も考えていないみたいな言い方は」
『え、考えてるんですか?』
「よし、解体だ。解体がお望みなんだな」
『あ、ちょ、マスター!? 冗談ですから可愛い女の子の冗談ですから!』
「可愛い女の子? ここに居るのはデバイスだけだな」
『うぅ、絶対いつか見返してやるぅ〜〜〜!』
ユエの悔しそうな声が朝の公園に響き渡った。
□■□
「ング、ング。美味いなこのパン!」
『管理外世界の作り方を真似たものらしいですよ』
「そうなのか。 何処か分かるか?」
『地球というところらしいですよ』
「へぇ〜今度行ってみたいな」
街に出てすぐに見つけたパン屋で数個パンを買い、それを片手にジムへと向かっている途中だ。
このチョコパンとか美味いな。チョココロネ? って言ったっけ。
もっと沢山の種類食ってみたいな。あの店の商品全品制覇目指すか。
『あ、ここですよ。マスター』
「ん、サンキュー」
パンに夢中になりすぎて危うく通り過ぎるところだった。
ユエさん、ナイス。
受付を済ませ、短めの服装に着替える。
手にグローブを付けなきゃいけないらしく借りることになった。
何でも拳を壊さないためらしい。この程度で壊れるような柔い拳じゃないんだけどな。
拳を打ち付け、グローブの感触を確かめているとジムの中には誰もいなかった。
と、思ったが奥の方からバシバシッとサンドバッグを打ち付ける音が響いていた。先客かな?
奥に進み、確認するとそこには流れるような金髪を揺らし今もサンドバックに食らいつく少女の姿があった。
俺より下ぐらいかな?少女へと近付き、声を掛けた。
「よっ、頑張ってるな」
「ひゃあ!?」
突然声を掛けられたことに驚き、素っ頓狂な声を上げる少女。
慌てて此方を振り向く顔は少し涙目だ。
だが、それよりもショウの目に留まるものがあった。
その少女の瞳は赤と緑のオッドアイだった。
同じ瞳を持つ少女を俺は一人知っている。彼女の顔が脳裏をよぎる。
自分でも気付かないうちに彼女の名前を呟いていた。
「オリ、ヴィエ?」
「え?」
「あ、いや、何でもない!」
顔を反らし大丈夫と少女に言う。
しかし、ショウの心境は穏やかではなかった。
彼奴はもういない。ゆりかご乗り、戦争を終わらせた少女はもういない。
なのに何で俺はあの子にオリヴィエと言ったのだろうか?
オリヴィエと同じオッドアイだから?
それともオリヴィエと同じ綺麗な金髪をしていたから?
ああ、もうダメだ。考えるのはやめよう。
考えたって答えは出ない。だって、今目の前にいる彼女とオリヴィエは別人なんだから。
「あの、大丈夫ですか?」
「あ、うん。大丈夫だよ。えっと、俺はショウ・S・ナガツキです。よろしくな」
「えっと私はですねーーー」
息を吸い、その全てを吐き出しながら少女は満面の笑みで自分の名前を口にした。
「初めまして! 高町ヴィヴィオです」
「そっか、高町ヴィヴィオか。いい名前だ」
ん? 何か引っかかるようなーーーあ!
「高町ってあのーーー!」
「はい! あの管理局のえーーー」
「管理局の白い魔王と恐れられている高町なのはさんの娘なのか!?」
「違います! いや、そうですけどママは魔王なんかじゃないです! エースオブエースです!」
「あ、そういえばそんな呼ばれ方もしてたな」
「ついでみたいに言わないでくださいよ!」
ヴィヴィオには悪いがなのはさんは魔王だと思うよ?
だってさ? 俺は体験したことないから分からないけどあのピンクの色の砲撃食らったらトラウマものだよ?
色は綺麗なのにやることがえげつない。
うん、正に魔王じゃないか。
「しかし、あのまおーー高町さんに娘がいるとはな。父親は誰なんだ?」
「今、また魔王って言おうとしましたよね?」
何のことかお兄さん分からないな? テヘッ!
次の瞬間、ヴィヴィオの右ストレートが顔面に決まった。
「グベッ!」
「あ、ごめんなさい! 何でか分からないんですけど殴らなきゃいけない気がして」
そっか……そんな時ってあるよね。俺もよく母さんに殴り掛かろうとするもん。アインに止められるけど。
「まあ、いいよ。それで本当に父親は誰なんだ?」
「パパはいません」
「あ、ごめん……変なこと聞いたな」
「いえ、大丈夫ですよ。だってーーー」
「私にはママが二人いますから!」
「そっか、そっか。ママが二人もいるのかーーーはい?」
え? それってどういう意味なんだ!?
ママが二人? つまり女性と女性。そして、ヴィヴィオが娘。
なのはさんと誰かということで、二人がくんずほつれつでヴィヴィオが生まれたってことか?
いや、さすがにそれはーーーもしかしたら有り得るかもしれない。
最近の技術って進んでるからなぁ。
なんて自分の中だけで考えるのは失礼なのでヴィヴィオに問い掛ける。
「えっと、ごめん説明頼む」
「なのはママとフェイトママ何ですけどその二人が普通の夫婦よりもすっごい仲良しなんです!」
白い魔王に続いて金色の死神だと!?
確かあの二人は幼馴染でとても仲がいいと聞いたことがある。
そこから恋愛感情に発展してもおかしくはない。
そこから導き出される答えはーーー!
「つまりそのママ達は百合ってことか!」
「何のことか分かりませんけど絶対違います!」
「ヴィヴィオよ」
「大人には子供には知られたくない情ーー事情があるんだ」
「今、何を言い掛けたんですか?」
ポンっとヴィヴィオの肩に手を置き、遠くを見据える。
「ヴィヴィオも大人になれば分かるさ」
「どういう意味ですか!?」
二人でわいわい騒いでいると後ろから俺たちを見つめる視線に気が付いた。
振り返るとそこには赤い髪を短髪にしたボーイッシュな女性が呆れたような目で此方を見ていた。
「何やってんだ? ヴィヴィオ」
「あ! ノーヴェ」
「あ、初めましてショウ・S・ナガツキです」
「ノーヴェ・ナカジマだ。お前もスパーしに来たのか?」
「はい。そうなんですけど生憎相手が誰もいなくて」
「なら、ヴィヴィオとスパーしてみるか?」
「え!?」
「良いんですか!?」
凄い勢いでノーヴェの前まで走り、手を取るショウ。
その目はキラキラと輝いていた。
これで断れるほどノーヴェは強くない。
半ば勢いに負け、頷いてしまうノーヴェ。
「あ、ああ、良いぞ? 良いよな? ヴィヴィオ」
「え、まあ、わたしも偶には違う人とやってみたいなって思ってたから大丈夫だよ!」
「よし、そうと決まれば軽くアップするか」
「うん!」
「分かりました」
こうして急遽ヴィヴィオとのスパーが決定した。
□■□
「二人とも準備はいいか?」
「うん」
「いつでも」
「よし! ルールはどちらかが降参するか相手の膝を地面に着けた方の負けだ。魔法は相手を傷つけるようなエグいのはなしだ。それではーーー始めッ!」
ノーヴェさんの合図により試合が始まった。
ヴィヴィオはまだ隙が多いが様になっている。
よっぽど
「行きます!」
ヴィヴィオは一気に距離を詰め、さっき見せた右ストレートを放ってくる。それを紙一重で躱し、掌底で吹き飛ばした。
「わわっ!」
(へぇ、彼奴も結構やるな。もっと磨けばいい線行くぞ)
「やりますね、ショウさん!」
「ヴィヴィオもな!」
俺のスタイルはクラウスと同じ『覇王流』だ。
ずっと一緒に鍛錬してきたせいか身体が覚えていたのだ。
それに我流を混ぜたものを使う。
オリヴィエ相手では一歩届かなかったが並みの相手なら軽くあしらう程度には強力だ。
ヴィヴィオは楽しいのか笑顔で突っ込んでくる。
きっと俺も笑っているだろう。
ヴィヴィオの拳を左手でブロックし右ストレートを放つ。
その際避けられないように左手を掴むのも忘れない。
「ック!」
ヴィヴィオはそれを擦りながり避け、蹴りを放つ。
掴んでいた手を離し、ガードする。
一気に後退し、息を整える。ヴィヴィオは恐らくカウンター型。
突っ込んで行けば必ず一矢報いようと食らいついてくるだろう。
ヴィヴィオの顔が引き締まる。コブシに魔力が集中していく。
来る……ヴィヴィオの本気が。
「行きます!」
「なっ!」
拳にばかり集中していたため足に集中した魔力に気付くのが遅れ、懐を取られてしまう。
「一閃必中ーーー‼︎」
ーーーアクセルスマッシュ‼︎
ヴィヴィオの気合いと共に放たれたその一撃は身長差があるため顎を捉えていた。
何とか避けようと考えるが、その考えている時間が無駄だった。
ヴィヴィオの拳が不規則に加速し、避けるよりも早く顎を打ち抜いた。
強い衝撃を頭に受け、意識は飛ばないにせよニ、三歩後ろに下がってしまう。
まだ揺れている目でヴィヴィオを見ると勝利を確信した顔をしていた。
ああ、本当に強いよヴィヴィオ。
だけどな、勝利の余韻って奴はしっかりと相手にトドメを刺してから浸るもんだぜ。
ダンッと足に力を込め、踏み止まる。
その音に一瞬怯むヴィヴィオ。一瞬、止まれば十分だ。
ーーークラウス、技借りるぜ。
ヴィヴィオ達には聞こえない声量でボソリと彼の、『覇王流』を口にする。
「覇王ーーー空破断」
ヴィヴィオに向けて掌底を一発。
掌底によって撃ち出された空気の塊がヴィヴィオに決まり、身体が大きく吹っ飛ぶがそれを耐えてみせた。
凄いな。本来なら魔法を使って単発のソニックシューターも付けるところだがそんなことしたら危ないので踏み留まった。
さてーーー
「これで終わりだ」
「えーーー」
ヴィヴィオは後ろからするショウの声に驚き、振り返ろうとするが足を払い転ばせる。
痛ッと小さい悲鳴を上げながらショウの勝利が確定した。
『剣王流』ーーー瞬雷
それは雷のように速く、鋭く移動する『剣王流』の歩法だ。
ヴィヴィオが膝を着いたことを確認しノーヴェさんはこの試合の勝者の名を告げた。
「勝者ーーーショウ!」
□■□
「ううっ、勝てたと思ったのに……」
ショウと同じく隣に腰を下ろしたヴィヴィオは結果に納得出来ず呻いていた。
「ふふ、ヴィヴィオも結構強かったぜ? 最後の加速した拳なんて予測出来ずに食らっちまったし」
「本当ですか!?」
先ほどの俺と同じように目を輝かせて手を取るヴィヴィオ。
おお、凄い迫力だ。ノーヴェさんもこんな気持ちだったのかな?
今度から気を付けよう。悪魔で気を付けるだけであってしない訳ではない。気を付けるだけであってしない訳ではない。
大事なことだから二回言った!
「お前も強かったぞ? ショウ。お前の師匠って誰なんだ?」
反射的にクラウスと言いそうになり、その言葉を飲み込んでからノーヴェさんの質問に答える。
「基本、我流ですよ。生憎、友達少なくてスパーしてくれる人いないでっし、それに俺は
パシッと拳を打ち付ける。
「本業じゃない?」
「ん、俺は
「へぇ〜どんな感じなんですか?」
「簡単な型でいいなら一つ見せるけど」
「お願いします!」
女の子の頼みを断らないのは男の性ってね。
ユエを剣に展開し、調子を確かめるようにニ、三回振る。
腰の高さに下げ、身体をやや下げ力を溜める。
ヴィヴィオとノーヴェはその迫力に驚いていた。
ショウの顔はさっきまでの笑顔ではなく鋭いものへと変わっていた。
ノーヴェはそれに見覚えがあった。それはノーヴェ自身もしたことがあったから。
あれは、誰かの命を奪おうとする時の顔。
ヴィヴィオとそう年は変わらないはずなのに何故、そんな顔が出来るのか?お前は何を見てきたんだ?
「『剣王流』ーーー透扇!」
ショウの剣閃に思わず見惚れてしまう。
一瞬で空を斬り裂く剣速。型の完成度に目を見張る。
今のだけでどれだけショウが鍛錬を積んできたかが伺えた。
「ま、こんなもんですね」
「凄い! 凄いよショウさん!」
「ん、ありがとう」
ショウの顔は笑顔に戻っていた。
だが、さっき見せたあの顔はーーーさせてはいけない気がした。
「ん? もんこんな時間か。俺、そろそろ帰りますね」
外を見ると太陽が傾き、空が赤く染まっていた。
いつの間にか夕暮れになっていた。
「私たちもそろそろ帰ろっか、ノーヴェ。あと、ショウさん!」
「ん?」
「私と友達になってください!」
バッと手を出しながらヴィヴィオは明るく友達になろうと言ってくれた。
ショウは目を丸くするがすぐにさっきよりも笑顔になり、ヴィヴィオの手を取った。
「よろしくな、ヴィヴィオ」
「はい!」
ヴィヴィオ達と別れ、ショウは帰路に着いた。
そして、ヴィヴィオと繋いだ手を見る。
まだ温もりが残っており、その暖かさがヴィヴィオと友達になったと証明してくれていた。
それが嬉しくて微笑みを零す。
『何、幼女と繋いだ手を見てニヤニヤしてるんですか?』
「それ誤解招くからやめろ! そして、俺はロリコンじゃねぇーーーー!」
□■□
ショウの背中が見えなくなるまでその場に佇む二人。
「不思議な奴だったな、彼奴」
「うん。でも、友達になれたよ!」
「良かったな」
「あ、そう言えばーーー」
「どうしたんだ?」
「ショウさん、小さい声でだけど私に向かって“オリヴィエ”って言ったんだ」
「何だと?」
それはヴィヴィオの母体、クローンの本体だ。
オリヴィエのことは知っているものは知っているだろうが……ヴィヴィオを見てオリヴィエと初対面で言うだろうか?
彼奴は、オリヴィエのことを知っている?
「お前は、何者なんだ?」
ノーヴェの訝しむような声は風の音と共に掻き消えた。
アイン・アリン『ねぇ、ショウ』
ショウ「ん? 何だよ二人して」
アイン・アリン『何処で女の人と会っていたんですか?』
ショウ「何故、俺が女の人と会ってる前提で話が進んでいるんだ?」
アイン・アリン『ショウから他の女の子の匂いがするからです』
ショウ「怖いよ!? お前らは獣か!」
アイン・アリン『さあ、詳しく話を聞かせてくださいね? フフフフフ』
ショウ「え、ちょ待、止まーーーあーーーーーー!」
次回予告
「おはようございます、ショウさん!」
「ん、魔王の娘」
「やめてください!」
「……本当に何で悪人はこういう倉庫に集まるのかね」
「この私が聖王の力を奪い、あのベルカの戦乱を呼び戻し王に君臨する!」
「寝言は寝てから言え」
「ショウ、さん……助けて!」
「そこで、待ってろ。ーーーすぐに終わらせる」
memory 7 『狂人が戦乱を呼び戻すなんてくだらない事を言っている』