幼馴染は覇王でした。そして俺はーーー   作:流離う旅人

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作者「現実はとても残酷だ」

ショウ「……そんなことは嫌というほど知っているさ」

作者「それでも現実に抗い続ける」

ショウ「大切な人を、守るために」

作者「そんな現実を斬り裂くために」

作者・ショウ『リリカルマジカル始まります』


memory 9 『狂気』

「ハァ、ハァ」

 

心臓がバクバクとその動きを激しくし、肺一杯に空気を吸い込んだ。

二、三回深い深呼吸をしてからヴィヴィオへと駆け寄った。

 

「大丈夫か!? ヴィヴィオ」

 

「は、はい。大丈夫です。ショウさんが守ってくれたから」

 

「良かったーーー」

 

胸を撫で下ろし安堵するが背後から聞こえる轟音でまたすぐに気を引き締めた。

土煙でよく見えないが音が聞こえたのは吹き飛ばしたベルクがいる方向だ。

ガラガラと瓦礫の音を立てながらベルクが細剣を杖代わりにして立ち上がるところだった。

甲冑にはヒビが入り、その意味を無くしている。輝く銀髪も土を被り濁った色に変わっていた。

身体はボロボロになのにその目の光は消えていなかった。それどころかさっきよりもギラギラと光っている。何という執念。

 

「まだだ……こんなところで終わる訳にはいかないんだよぉ!」

 

「いや、もう終わりだよ。ベルク・カロナ。お前は負けたんだ」

 

「ふふ、フヒヒ、終わる訳ないだろう! 私の理想郷が‼︎ 私は王になるんだよぉ‼︎」

 

最初に会った時の落ち着いた様子は既になく気が狂ったように笑い、叶うはずのない夢を熱弁するベルク。もう、ベルクは壊れているのだ。おもむろに懐に手を伸ばし、何かを取り出した。

それは赤黒い液体が詰まった三本の注射器。

打たせてはいけないとアクセルシューターを作るがそれも虚しくベルクは注射器を三本同時に右腕に打った。

 

「ぐっ、グク、ガァアアアアアア!」

 

ベルクの絶叫と共に甲冑が内側から砕け、筋肉が膨張していく。

肌が注射器の液体と同じ赤黒い色へと変色する。

先ほどまでの細身ではなく筋肉が盛り上がり、熊を連想させる。

正に獣であった。

 

「バカが……!」

 

ショウは怒り、吐き棄てる。

ベルクが打ったのはドーピング剤。そんなものに頼ってまで王になりたいと言うのか?

 

「コロス……コロスゥゥ!」

 

跼み、足に溜めた力を爆発させ瞬間的に距離を詰め殴り掛かって来た。

それを躱すが通り過ぎた時の余波で吹き飛ばされそうになる。

やりたくはなかったがこうなってしまったらそうも言ってられない。

 

「モード・チェンジ、ランス!」

 

剣を突き出しながら叫び、そのまま槍へと変わる。

その際、距離が伸びベルクの眼球を貫いた。

 

「ギャアアアアア!」

 

「今のうちにヴィヴィオをーーー」

 

振り返るがそれが間違った選択だと気付く。

背中に強い衝撃を受け、ヴィヴィオの横まで飛ばされてしまう。

見ると、ベルクが拳を振り抜いた体勢だった。

その目は次第に傷を塞ぎ、傷一つなかった。

幻覚剤と異常な回復力まで与えているのか!?

 

「ヒヒ、ヒャハハハ! コノテイドデオウガタオレルワケナイダロウ!」

 

「……チート過ぎるぜ。畜生」

 

圧倒的な力に異常な回復の速さ。それはもう人間の枠を超えている。

俺は内心嘆息した。

後ろにヴィヴィオがいるこの状況で守りながら戦うことは困難だ。

ならば、とショウはユエを再び双剣へと変え地面を蹴った。

傷つけても回復するのならその回復が追いつかない速さで攻撃すればいい。

 

「『剣王流』ーーー瞬閃!」

 

瞬閃に決まった型はない。ただ何よりも速く、疾く斬るための技だ。

放たれた連撃はベルクの肌で弾かれてしまう。

まるで鉄を斬りつけたかのように硬く、重い。

硬い奴相手なら炎だ!

双剣を炎が包み、灼熱の刃が鉄の肌を斬り裂いていく。

ジュウッという肉の焼け焦げる音が聞こえ、異臭が鼻に届く。

 

「あぁああああああああ!」

 

「グッウァアアア!」

 

幻覚剤で痛みなど感じていないはずなのに鈍い悲鳴を上げる。

だんだん傷も目に見えるほど大きくなり再生スピードが落ち始めた。

このまま一気に決める! その時だった。

後ろから何者かに抱き着かれ、動きが止まってしまう。

抱き着いてきたのは気絶していた魔導師。

 

「お前にベルクさんは倒せない!」

 

「なっ!?」

 

そう叫んだ魔導師は右手に持っていた手榴弾のピンを抜き放った。

このままでは魔導師ごと吹き飛んでしまう。

とても正気の沙汰ではない。これは自爆だ。

振り解こうにも身体強化で上がった筋力でピクリとも動こうとしない。

そして、轟音と閃光がショウと魔導師を包み込んだ。

 

ドゴォオオオン!

 

「ショウさんーーー!」

 

ヴィヴィオは叫んだ。

彼が爆発に巻き込まれてしまったから。

いくらバリアジャケットを着ていてもゼロ距離からの爆発には耐えられない。

爆煙が晴れ、爆発の中心にはボロボロになったショウの姿しかなかった。

魔導師がどうなってしまったかなど言うまでもない。

ピクッと彼の指が動いた。良かった。生きてはいるみたいだ。

だが、この状況はーーー最悪だ。

 

(クソッ! 今ので左手と右足ヤッちまった。不味い、このままだとヴィヴィオが!)

 

「ヒャハハハ! ソレデコソワガシモベダ!」

 

奇声を上げ、ショウへと近付いてくる。

この時点でベルクは気が付いていない。自分が魔導師達のことを同志ではなく僕と言っていることに。

同志とは同じ立場で同じ志を持ったもののこと。僕ではない。

もう、まともな思考も出来ないでいる。

ベルクは俺の前まで来ると鉄柱の太さはある足を腹に落とした。

 

ベキッベキ!

 

「ーーーーーッ!」

 

骨の折れる鈍い音が響き、声にならない悲鳴が飛んだ。

今ので肋骨がニ・三本折れた。

そのまま腹をすり潰すように踏み、ベルクの顔が愉悦へと歪んでいく。

 

「サンザンオウノワタシヲキリツケテクレタナァ? ドウダ? ミウゴキガトレズニアシゲニサレルキブンハ! キサマニオウノセンコクヲイイワタス。ゼツボウヲクレテヤル」

 

そう言うや否や踵を返し、ヴィヴィオの元へ。

 

「やめ、ろ! 逃げろ! ヴィヴィオ!」

 

逃げようとするがショウを残していく事が躊躇われ足が止まる。

ベルクはヴィヴィオの首を掴み上げ、力を込めていく。

 

「ショウ、さん! ……カハッ!」

 

「オマエヲコロス」

 

ゆっくりと見せつけるように手刀を引いていく。

それはヴィヴィオの胸ーーーリンガーコアに狙いを定めた。

ベルクは笑う。ショウの絶望に歪んだ顔を想像して。

ショウは叫ぶ。ヴィヴィオを助けるために。

だが、現実は残酷だ。

 

「やめろーーーーーー!」

 

ベルクの手刀がヴィヴィオの胸を貫いた。

 

 

 





短ッッッッかいです!
でも、次回は長めになりますね。(悪魔で予定)
次回、ついにショウが!? ヴィヴィオはどうなる!?
それではまた次回お会いしましょう。




次回予告

「ナゼ、キサマガソコニイル!?」

「……間に合ったッ」

「一人の魔力で足りないなら周りから補えばいい!」

「束ねるは星光! 輝くスターライト!」

「オレヲ、僕を、コロしてクれ」

「ショウくん、ダメ!」

「あいつが、“殺してくれ”って言ったんじゃないですか」

memory 10 『剣は血に染まる』
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