Lonely crown   作:ラーメン文庫

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物語の流れは思い付いてる、けど文章で迷子になりました。
あと感想ありがとうございます、返信はできませんけど感動しつつ読ませてもらっています!

【前回の補足】八幡の中で集の意識が固定化されました(ただ集の意識は既に薄まってるために夢の中でしか会話できない)


一章 罪の王は歌姫を求める
一話 不明-unclear-


 

 

目を覚ますと見知らぬ天井だった。…言いたかっただけである。

 

白が基調となった比較的清潔な一室、そこに置かれたベットの上に俺は寝転がっていた。周りには来客用の丸椅子や小型液晶テレビなども置かれている。チャンネルを回しても昼間は大して面白くはないので電源は消しているが。

 

そして俺は脳内で暇を叫ぶ。

…要するに、端的に言えば俺は現在入院生活2週間目なのだ。

 

 

入学式に起こしてしまった事故の後、俺は一週間ほど寝込んでしまったらしい。

この総合病院の医者はその間に妹の小町や親父たちに、俺の怪我は幸いそこまで酷いものではなく入院も一ヶ月程度で済むはずだが何故か既に覚醒していても可笑しくないはずなのに意識が戻らないので現状としてはまだ詳しく分からなく何があってもおかしくない、と説明していたらしくそれが小町の不安心を煽ったようで、俺がその後目を覚ました時に真っ先に泣きながら小町が駆けつけてきてあやすのに一時間くらい掛けてしまった。いや、愛しの小町に時間を掛けるのは良いが無駄に心配をかけさせた医者、お前だけは許さない。

 

…まあそれは良いとして、そこまで重い怪我ではないのに長く意識を手放していたのには実際のところ心当たりが一つある。というかアレしか無いだろう。

 

…そう、俺の前世(自称)である桜満集との会話だ。

 

目覚めてからと言ったものの桜満とは寝る度夢の中で会話し、その後起床してもその内容を覚えているという不思議な体験を現在進行形でしている。正直まだ桜満が実在した人物なのか、或いは俺の幻想が生み出した悲しい青年なのかは図りしれていないが、それでも目覚めてからここ1週間毎日夢に出てきていることから確実に俺の中に存在しているのだとは確信している。それに一応桜満の記憶(?)も事故の直後で夢見た後から覚えたままだしな。王の力を受け継いだとかなんとかは未だ謎だが。つか一生謎で良い、それ発覚したら面倒事は確定してるから。

 

 

そんな訳で4月中旬、入院にあたって高校から出された課題も全て片付けてしまった為に暇なのである。うん暇だ。ああ暇だ。暇すぎて世界滅ぼしそう。後で小町に適当な雑誌とかコミックとか持ってくるよう頼むか。

 

そう思いつつ包帯でぐるぐる巻きにされた挙句上に釣り上げられた自身の右足を注視する。…特に何もないな、うん。動かそうとしても動かないからベットからも出れないし売店にも行けない。本当にどうしようか。

 

 

 

そうして結局は暇すぎて、桜満が持っていて俺も受け継いだらしい王の力を早速使うことを決意する。てか本当に使えんのか。使えなかったら訴訟すんぞ?詐欺とかの疑いで。

 

内心で俺の強制的に眠らせていた中二心を押さえつけながら、右腕を視界の右へ左へとぷらぷらと動かしてみる。…うん、何も起きない。俺の予想通りだ。…ホントダヨ?ハチマン、ウソツカラナイ。

 

 

というかもし仮に、本当に仮に使えるとしたらどのように使えるのだろうか?一応桜満がこの力を使っていた記憶は持っているが勿論それで分かるはずがない。というか分かって溜まるかといった感じである。何せ人間の胸の中に手を突っ込んで不思議パワーでヴォイドとかいう、その人のコンプレックスをイデアから形相にして具体化させた物を引きずり出すんだろ。…やべえ、何も分かんねえよ。つかそもそもプラトンとかアリストテレスとかの哲学家の理論を並べりゃ良いって話でもねえからな?もし時代が違ったらパクリ扱いされるからなその表現。

 

 

…まあ兎にも角にも、試す価値は(多分)あるだろう。

 

 

 

そう思い桜満の記憶を頼りにヴォイドを出す時の光だけでも出そうと練習するが成果は何もなかった。後、俺の黒歴史がまた一つ加わったことも追記しておこう。もうやらん、絶対にだ。看護婦に「僕の王の力がァァァ!」って小声で叫んでるところ見られちゃったし…もうこの病院来れないなこりゃ。だけどあと一週間は入院しなきゃいけないと考えると……鬱だ死のう。

 

 

 

そしてその日の夢の中で桜満に滅茶苦茶慰められた。序でに桜満が過去に発言した台詞を意図的に真似するのは禁止された。どうやら桜満にとってあの台詞は割りと黒歴史だったらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして途中から小町が大量の本を持ってきてくれたおかげで入院生活は本を読んでいるうちにあっと言う間に終わり、遂に退院許可が出た。まだ松葉杖は手放せないが、入念にリハビリさえしていれば一ヶ月でそれも消えるらしい。なので帰宅するまでの道のりも松葉杖を使っている為に普通に歩くより多少時間が掛かっている。あーまじで恋して気で超回復する的な能力あったら即使うのにな、何ならかすり傷でも使うまである。痛いの嫌だし。でもまずは武人になる修行しなきゃいけないしな…うん、俺には無理だ。だから松葉杖君には今日から使い倒されてもらおう。

 

 

そうして一ヶ月ぶりの我が家へと帰宅、俺がすぐにしたことと言えば自室の確認だった。いや多分誰も入ってないと思うけど一応、な。見つかるとヤバイものもあったりするし。特に小町に見つかるとヤバい、分別し処分されたあと一週間は氷のように凍てついた視線で俺と距離を取る。…ハチマン挫けない。

 

そんな確認も無事終えるとリビングへと足を向ける。小町に無事を知らせるためだ。千葉の兄妹は常に不確定要素の危険に晒されるため互いの情報は密接に取り合うのである。あ、これ常識な。あと小町には内緒で、多分気持ち悪がられるから。全然情報密接に取り合ってないじゃんってツッコミは無しでな。

 

 

 

「ただいまー小町」

 

「お兄ちゃんお帰りー…何かこれ言うのも一ヶ月ぶりだね」

 

「安心しろ小町、これからは毎日言わせてやるから」

 

「でも小町的には二日に一回ペースが丁度いい良いみたいな?あ、これ小町的にポイント高い!」

 

「八幡的にはポイントダダ下がりだからなそれ」

 

二日に一回とかちょっと回数がリアル過ぎて嫌なんだが…。何かこう、心にくるものがあるしな…。

 

「まあそれは置いといて、もう作り終わったからお兄ちゃんお昼食べよー」

 

「…そうだな、小町の手料理も久々だし全身の五感を最大限に使って味わうまである。あ、これ八幡的にポイント高い」

 

「お兄ちゃんちょっとそれは無いわー」

 

冷めた目でこちらを射抜くように見る小町。ま、まあアレだ、こういう妹の視線に耐え抜くのも兄の役目だしな。つまりこれは兄としての果たさなければならぬ義務なのだ。千葉の兄はこうして妹との距離間を測ってるんだよ、うん。あれ、つまりこれは俺と小町の距離が開いている証拠になってしまうからしてやっぱ違うわ。そもそもこんな行為で人間同士の距離間掴めるわけ無いしな。だから決して俺が小町に嫌われているというわけではない。というかそう信じてる。

 

 

 

 

そんなこんなで久々の小町とのスキンシップを楽しみ、松葉杖をトントンと使いつつ再び自室へと戻る。そして睡眠を享受しようとマイベットで横になる。要するにただの昼寝だ。ほんと今日が土曜で良かったわ、明日もこうしてダラダラ出来るし。

窓を開けっ放しにしていると心地の良い春風が吹き抜けてくる。そんな昼寝にベストな環境により俺の眠気が一段と深まっていき、やがて俺は重くなった瞼を自ら閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『やあ八幡』

 

「…俺の妄想力って凄えなほんと。また俺の夢を乗っ取ってきやがった」

 

『いや違うから!実体はないけど僕はちゃんとここに居るから!』

 

「なんか安っぽいラノベみたいだな」

 

『…それを言われると否定できないんだよね……』

 

そんな訳で俺の夢の世界の住人(誤字にあらず)である桜満集は相も変わらず俺の目の前で苦笑いを浮かべながらそこに立っていた。バックの背景は初めて会った時と同じような何処までも白い空間である。最初は異質な雰囲気を感じていたが何度も来ているせいかそれにもすっかり慣れてしまった。

 

「というかここに来ても別にお前と話すことないんだがな…」

 

最初こそ俺は渋々と言った感じで話していたのだが、眠る度強制的にここへと来てしまうのでもうそれも諦めてしまっている。…しかし、こうして寝ている間にも俺の意識はあるのに起床した後はしっかり睡眠を取ったように感じるのは何故だろうか。本当に不思議な場所である。

 

そんな風に思っていると何思ったのか、桜満はこんな事を言い始めた。

 

『なら少し僕と格闘訓練でもする?』

 

「………は?」

 

突拍子の無い話に俺は思わず不躾な返事を返す。

 

『いやだってもしかしたら君の今居る世界にだってアポカリプスウイルスがある可能性も否定できないんだよ?なら多少は戦闘技術があった方が良いでしょ?』

 

「いやそりゃ詭弁だろ。そもそも科学的に考えると存在することを証明は出来ても存在しないことは逆立ちしようが証明できないんだぞ?アポカリプスウイルスだってある事は証明出来ても無いことは証明できんだろ」

 

『だけど君の右腕には確かに王の右腕がある』

 

「僕の王『八尋!』の右腕がぁ…って待て待てまだ言い終わってないうちからそんな物騒なもん向けてくんなよ頼むから」

 

病院で王の力を使おうとして看護婦に「こいつ中二病だ…」という視線を浴びせられた事を思い出させられた当て付けで桜満の黒歴史を掘り起こそうとすると、桜満は直ぐに寒川八尋の命を断ち切るハサミをヴォイドとして取り出し俺の首筋へと当ててくる。つかお前あの時は別に何とも思って無かっただろ。なのに何で今更そこまで黒歴史になってるんだよ…。

 

『そりゃ考えてみなよ…僕の力が、とかならまだしも僕の「王の」力って…今思うとあの学園にいた時から絶対的な支配者を気取ってたし…うん…』

 

「分かった、分かったからそのハサミ退けてくれ」

 

そう俺が言うと桜満は「あ…ごめん…」と言ってハサミから手を離して俺から離れる。

…少し支離滅裂ではあったがまあ大体は理解できた。確かに桜満がアポカリプスウイルスによって環状七号線を境目に外界と隔離された時、学校のことを僕の王国とか言ってたしな。中二病とはまた違った種類の黒歴史ではあるんだろう。

それに桜満の過去は一つ一つが何というか、重い。俺自身にも記憶が残ってしまっているから分かることだが、特にその辺りの桜満の状況はいつ人の命が消えてもおかしくない環境だったと言える。だからもしかすると桜満のこれらの黒歴史は中二病を掘り起こされるような恥ずかしいといった感情とは別の何かがであるのかもしれない。

…これからは気を付けるか。主に命のために。

 

 

「…つかお前、何時からそんなこと出来るようになったんだ?」

 

『そんなことって?』

 

「その寒川のヴォイドだ。今まで一度もここで使ったこと無かったろ」

 

そんな俺の疑問に桜満は少し考え込む素振りをしてからこう答える。

 

『…それは多分夢だからじゃないかな?実際僕には既に王の力は無いし』

 

「…確かにそうかもしれんな」

 

『だから戦闘訓練だって出来るはずだよ』

 

いや待てだから何でそういう話になった。

 

『だって君には既に王の力が宿ってるんだ。ならある程度本格的にヴォイドも取り出して戦うことも出来るだろ?』

 

まあ王の力が無くても夢の中だからなんでも出来るんだろうけどと補足する桜満。毎回思うんだが心を読んで喋るのをやめて欲しい。

 

…にしてもこれは嫌な流れだ。ぐっすりと寝る為にベットで横になったというのに夢の中で訓練なんて冗談じゃない。

そう思いながら俺は必死で反論を思い浮かべて話す。

 

「だ、だけど俺の王の力がもしあったとしても俺には使い方が分からんぞ?」

 

『それは大丈夫、八幡も知ってるだろ?僕がヴォイドを使った初めてが実戦だったことくらい』

 

「いやいや、そもそもこれってアポカリプスウイルスを発症していることが前提の話だろ?現状から察して常識的に考えられない上に、そもそも俺の体には王の刻印が無い」

 

『いや、まだ君は事故後から見てない体の部位があるだろ』

 

呆れながら桜満は俺の体の一部分を見つめる。

……まさか。

 

「…俺の足にそれがあるとでも言う気か?」

 

『少なくとも僕はそう思う』

 

…そう言われると確かに否定ができない。他の体の部位と違い未だ包帯やギブスが取れない右足はまだ確認していないからだ。

 

「…だが、ならアポカリプスウイルスの件はどうする。キャンサー化なんてもしこの情報社会の範疇で起きたならば既にニュースになっていてもおかしくないだろ」

 

『言っておくけど八幡、君もうアポカリプスウイルスに感染してるよ?』

 

…まじで?

 

『うん、マジ』

 

神妙にそう頷く桜満。長年人間観察をしてきた俺の目で見てもそこに嘘の気配は感じない。

 

…すまん小町、お兄ちゃん何か知らない内に紫色の結晶に覆われて砕けて死んじゃうみたいだ。そうだ、早く起きて遺書書かないと。キャンサー化する速度は遅くとも最後には死に至る病なのだ、早い内に書いておきたい。だから夢よ、頼むから早く覚めてくれ…!

 

『いやちょっと落ち着いて八幡!?多分八幡はキャンサー化しないから!』

 

「…………へっ?」

 

全力で遺書の事を考えていた俺の脳内の活動が急ストップする。…どういう意味だ?

 

桜満は俺の焦りが沈静化したことに安心感を抱いたのか、ゆっくりと話し始める。

 

『…本当に僕にとっては不甲斐ない話なんだけど、多分王の力が君の体に宿ったと同時に僕のアポカリプスウイルスまで君に転移しちゃったっぽいんだ。その事を実は前々から気づいて対策をずっと考えてたんだけど、…理由は知らないけど全然アポカリプスウイルスが君の体の中で進行していない事が最近分かったんだよ』

 

「…それって分かるもんなのか?」

 

『まあ何というか…感覚的に?』

 

凄い曖昧模糊な言い方だな。全然安心できないんだが。やっぱり早いとこ遺書を書くために起床しないと…!

そんな俺の思考を読み取ったのか再び桜満は焦りながら話を進める。

 

『だ、だけどそれに心当たりが無いわけでもないんだよ?可能性としては幾つか有るんだけど、一つ目はいのりのアポカリプスウイルスを抑える力が何処かしらで働いている可能性。だから感染しているのに関わらずそこまで八幡の体に影響していないのかもしれない…とか』

 

「だが何故楪の力が俺の中にあるのか説明がつかないだろ?」

 

『それが分からないから飽くまで可能性にしてるんだよ。それにもう一つ、八幡自体に免疫がある可能性もある』

 

「いやそれこそ無いだろ。俺はれっきとした世間的にも良識的な一般人だぞ?」

 

そう俺は胸を張りつつ主張する。桜満みたくテロリストに関わったこともなければ怪しい製薬会社の実験台にされたこともないし、それ以前にアポカリプスウイルスなんて言う俺やその他大勢のこの世界の住民からしたら見たこともないウイルスに対して免疫なんて付きようが無いのである。

 

「…というか本当に俺はウイルスに感染してるのか?あまり実感が沸かないんだが…」

 

まあだからと言ってキャンサー化するのは御免被るのだが。

そう思っていると桜満はそれに頷く。

 

『多分それは間違いないと思う。何せ八幡の体にはヴォイドがあるからね』

 

「それも感覚的なものか?」

 

『まあそうなんだけどさ…。ともかく、これらが全部僕の感覚的なものだから君が疑うのも無理はないけど一応考慮に入れておいたほうがいいと思う』

 

それに世の中何が起きるか分からないしねと桜満は付け加える。なんかそれをコイツが言うと少し現実味が湧きすぎて怖いんだけど…。

 

 

 

すると何時もと同じように、会話終了の知らせである空間の歪みが白い空間に刻みこまれ始める。始めはこれに恐怖心を抱いたものだが慣れればそうでもないのである。

 

『あ、ちょっと戦闘訓練は…!』

 

「丁重に断る。一昨日来やがれ」

 

空間のヒビが徐々に入っていくのを目に入れながら俺は桜満の言葉にそう返す。つか今思ったんだがお前本当は体動かしたいだけじゃないのか?

 

『…バレたか。とにかく今日の夜は絶対にするからね…!!』

 

「図星かよ…」

 

今日の夜はマジで寝たくねえな…というか何で疲れとるための睡眠で疲れなきゃいけないの?ちょっとこの世界は俺に厳しすぎやしません?ブラック企業でも寝る時だけは事務処理しなくて良いのに、本当にどうしてこうなったんだ……。

 

 

そんな事を考えながら、割れていく空間に意識を任せて俺は本体が起床するのを待った。

 





ここからガクガクっと更新速度が落ちます

…にしてもアポカリプスウイルスに感染した人がいない世界だと王の力意味ないんですねよね…
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