Lonely crown   作:ラーメン文庫

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ようやく投稿。ただでさえ書く時間あんま無いのに難産だったのでクオリティは落ちています。


三話 友人-friend-

 

呼びかけられた方へと向くとそこに、窓から入ってくる日光を浴びて煌めいている銀髪ショートの髪を靡かせた女子が立っていた。顔はまだ幼さが残りつつも、そこが可愛らしさを引き立てている。

 

「………………天使…」

 

「…へっ?」

 

「あ、いや何でもない。何でも」

 

「う、うん…」

 

困りながらもぱちくりと瞬きをしながらこちらを見る天使、もとい見知らぬ女子生徒。どうやら状況を鑑みるに、この女子生徒は俺の右隣の席であるらしい。…おかしい、今の今までこんなラブコメってる展開は一度たりとも発生しなかったはずだ。なのにどうして、まさか桜満の仕業か?まさか桜満集は罪の王である共にハーレム王的な異名もあったりするのか?畜生、リア充砕け散れ。

 

心の中から桜満のツッコミが聞こえたような気がしたが無視して、女子の方へと向き直す。

 

「えっと…そういや名前は?」

 

「戸塚彩加です、宜しくね八幡」

 

そう言って微笑みながら手を差し伸べる。俺も反射的にそれに応えるように握手を返そう思い手を握る。…八幡って呼ばれると気恥ずかしいという気持ちより先に桜満の事を思い出してしまうんだが。畜生桜満め、砕け散れ。(二度目)

 

「あぁ、宜しくな」

 

俺は握手をしながら満面の笑みを浮かべる彼女、彩加と何故かこれから長い付き合いになりそうだと感じた。因みにその日の2限目の体育で菜加が男だと判明して、つい「神は死んだ」とつぶやき漏らしてしまったのは完全な余談である。畜生桜満(以下略)

 

 

 

 

そうしてあっという間に半日が過ぎ、唯一の長い休憩時間であった昼休みも過ぎた5限目。担当は橋田という一見して冴えなそうな眼鏡を掛けた教師で、教科は数学。苦手教科である共に席が後ろということもあり、淡々とした授業を朴念仁の如く聞いていると自然と首が刻々と船を漕ぎ始め、やがては俺の意識は消えていった。

 

 

 

 

『…で、授業中にも関わらずここに来たと』

 

「来たくはなかったがな。主にこの空間に」

 

寝ればそこに待つのは夢の中。そう、一日経たず再び桜満との会合と相成ってしまったのだ。…まあ度々昼寝とかしたらそうなるんだけどな。

 

『だけど数学大丈夫なの?』

 

「…まあ、どうにかなるだろどうにか」

 

不意に中学時代に定期試験で数学20点台連発した記憶が蘇る。平均点が60点の中、俺と同じくらいの点数を取ったのは他に二人いたが3連続で取ったのは俺だけだった。

 

『うわっ、これ絶対本番でやっちゃうパターンだよ…仕方ないな』

 

そう小言を漏らしながら桜満は右手を上げる。すると右手が仄かに青く煌めき始め、桜満の手中にはいつの間にか問題集とノートとペンが収められていた。それを見た俺は一抹の不安に駆られる。

 

「おい、おま、まさか…」

 

『…勉強しようか、八幡』

 

更に桜満は勿論数学ね、と補足する。…寝ても地獄起きても地獄とはこの事か…誰かここから俺を出してくれ…!

 

そうして授業終了後、彩加が俺を起こしてくれた為に何とか10分休みまでぶっ続けで数学をやる事からは逃れられた。戸塚ちゃんまじ天使。…だが男だ………ほんとまじで…。

 

 

 

 

 

そして迎えた放課後。彩加は授業が終了して早々に「じゃあ僕部活だから!」と言い残しバックを持って教室から走って出ていった。やっぱり体育会系の部活だと特に一番下の学年の風当たりは厳しいのだろうか。

 

そんなことを考えつつも戸塚に遅れて未だ授業の余韻が残る教室から退室する。下駄箱から上履きとスニーカーを苦労して入れ替えて、松葉杖を付きつつ校門から出る。5月の春と夏の間の日差しはとても心地良く、運動するのではなくただ日常生活を送るには非常に快適であると言えるだろう。もしこの辺りに芝生があれば寝っ転がって昼寝したいまである。いや、実際はしないけど。現実だから睡眠PKは無くとも貴重品くらいは盗まれてもおかしくはない、それにこの時期はなんだかんだ虫も多く活動してるからしてそんな虫が多く生息する芝生に寝っ転がるのはかなり気が引ける。それに寝たら寝たで桜満に会わなきゃならんしな…アレどうにかならないのまじで。会う度に俺の中の何かがゴリゴリ削れていってる音が聞こえる気がするんだけど。

 

 

歩くこと30分、漸く目的地であるバス営業所へ到着する。定期を買うためだ。

生徒証がある為に購入はスムーズに進み、10分もしないうちに家から学校までの一ヶ月分の定期を買い終える。これで明日からはもっと遅く家を出ても大丈夫な訳である。

 

早速定期を使い、営業所付近のバス停からバスに乗り込み家の近くまで揺られ始める。あんまりバスというのには乗ったことは無かったが、揺れが酷くやっぱり電車の方が俺には合っていると思わざる負えない。まあ総武線は誰もが認める千葉の足だしな。

降りるときに営業所の付近は定期圏外なので定期を見せつつその分の料金を払うのも忘れない。揺れはあれど流れる景色は電車と違いかなり見慣れた町並みで、…うまくは言えないがバス通いも悪くはないのかもしれないと心の中で俺は思った。

 

 

 

 

「ただいま…って未だ誰も居ないのか…」

 

帰宅後、リビングで反射的にそう挨拶しようとして誰もいないことに気づく。恐らく小町は中学校、うちの両親は両働きなので言わずもがなだろう。

 

一旦リビングを出て着替えるために自分の部屋へと行く。相変わらず松葉杖だと二階への階段はとても上がり辛く、完全に上り終えるのにも1分は使ってしまう。こういう時に自分の普段の身体がどれだけ便利なのかを知るんだよな…普段はそんな事は考えずに使っているのにな。

 

部屋に入るとまずスクールバッグを勉強机の横に置く。そして衣装棚で適当な私服を引っ張り出して制服をうまく両手左足を使い脱ぎ散らかして四苦八苦しつつ私服を着る。…疲れた。寝たい。実際することないし。

 

そう思いつつ俺はスマホを使いネットで「EGOIST」「楪いのり」「桜満真名」と続々と検索を掛けていく。これは退院後に桜満に頼まれたことで、もしかしたら人名とか地名で前世に関する何かが引っ掛かるかもしれないから毎日やっておいてとの事だった。

…と言っても本当はアイツ自身も解ってるはずなのだ。EGOISTならともかく、他の単語をネットでどれだけ打ったところで引っ掛かる可能性は万に一つも無いということを。いくら現代においてネット社会が拡大の一途を辿っていると言っても当然別世界の情報が流れてくるはずは無い上、楪いのりの件についても現状彼女自身がどうなっているかを知る術は無い。EGOISTとして再び歌い始めていれば確実に楪の歌声ならば人気が出てるだろうからまた別の話になるだろうが、当然そのような話は聞かないしそれ以前に検索しても出てこない。

そうして調べれば調べるほど楪いのりはこの世界に居なくて、桜満集だけがこの世界で生まれ変わったのか或いは桜満集はやはり俺の妄想か幻覚の類であるのではないかという疑いが強まっていく。そもそも王の力と言うのも冷静に考えなくとも馬鹿げた話だ、人のコンプレックスを具象化してイデアから取り出すとか質量保存の法則ガン無視しすぎである。まるでこれじゃ中学生の妄想だ。前世で罪の王になったとかその辺りも意味が分からない。

 

携帯で思いつく単語を打って調べるが今日も当たり前のようにヒットしなかったので、役目を終えた携帯は乱雑にベットの上へと放り投げる。本当に、馬鹿馬鹿しい。

…仮に、もしこの桜満集という存在が完全な虚で、過去に今にも未来にも別世界にも一度も存在し得なかった幻想ならば俺はそれに踊らされた哀れな道化師と言う訳になる。幾ら前世の記憶が有ろうがそれは俺のものでない以上桜満集の中で実在したものなのかどうかは確かめようが無い、それに聞いたことは無いがこういう「自分は本当は凄い人物で今まで冴えない日々を送っていたけどある日記憶に目覚めてから裏の世界を舞台に非日常が始まった」みたいな妄想を本気に錯覚してしまう症例の精神病が有って、それにかかっているとしてもおかしくはないだろう。

確かにこの平凡な日常が好きかと言えば断じて違うが、それでも別にアニメやラノベみたいな戦闘を自分がしたりする非日常が好きな訳でもない。そんな物は二次元の主人公だけで充分だ。何だかんだ言って俺は俺らしく、人並みで身の丈に合った生活を送れればそれが一番だと思っている。だから無意識の内に妄想を生み出していたら分かるが意識的に生み出した可能性は有り得ない。

 

…じゃあこの桜満集という俺の中に在るこれは一体何なのだろうか?その疑問だけが氷解せずに残る。

結局は考えても行動しても何も解らず、桜満集がそこにいるという事実だけが一人相撲する始末だ。妄想だ幻想だと断じてもきっと今晩も寝れば桜満集は夢の中で現れるだろう。まるで昔からそこにいたかのように。

 

 

「…今日はこんなんばっかだな…考えても無駄だってことはわかってるはずなのに」

 

そう自分自身に再びそう言い聞かせ、携帯を操作して検索ボックスを引き出し「夢を見なくする方法」と簡潔に打ち込んで俺は検索を掛けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはよー!」

 

「…ああ、おはよう彩加」

 

松葉杖で高校に通い始めちょうど一週間が経った。しかし俺の周りの状況は特にこれといって特筆するような出来事は起こらず、今も彩加に朝の挨拶をするという平凡で慎ましやかな日常を変わらず謳歌している。

 

そしてクラス内の俺の立ち位置も既に確立されていた。彩加といつも話しているからぼっちではないが、しかし取っ付きにくいから出来れば話したくないと言う具合にだ。それでも彩加以外とは時に話す機会が出来てしまい、仕方無く会話を交わしたりもする。まあその殆どの場合が互いに嫌々意思疎通しているので当然そいつらと仲が進展するはずもなく、結局は彩加を除けば何も変化なく中学時代と変わらず俺はぼっちだった。

 

 

「にしても今日は何か寒いね…」

 

カーディガンに手を埋めながら菜加はそう呟く。

 

「だな。何か気温も15℃を越さないらしいしな」

 

「うん。まだ上着無しで過ごすのはきついよね」

 

何気ない会話をしつつ俺は座りながら机の中に教科書を突っ込み、ついでに一限の用意もしておく。…にしても本当に隣が彩加で良かった、もしそうじゃなかったら絶対中学同様ぼっちロードを歩んでたまである。…何かぼっちロードって語感が孤独の王みたいでカッコいいな。ただのぼっちだけど。

 

 

 

そうして授業が始まると俺も彩加も会話を止める。やはりまだ序盤と言っても高校の学習内容なので、もし重要な箇所を聴き逃していたらその時点で詰んでしまうからだ。

 

 

 

進学校ならではの淡々としていてテンポの早い授業を受け、集中も良い感じで持続していたおかげか午前は流れるように過ぎ去り直ぐに昼休みになる。

 

彩加と机を合わせつつ弁当箱の中身を消化していく。因みに今日は汁無し肉じゃが弁当だ、理由は昨日の残り。既に水分は吹っ飛んでるせいでパサパサとなっており、余りと言うか全然美味しくない。

 

「そういや八幡、さっきは数学の問題解説してくれてありがとね」

 

いいや違う、彩加の邪気の無い笑みを見ながら食べる食べ物が不味いはずがない。なぜなら今俺の口の中で幸せ味が広がっているからだ。最強無敵のドレッシング、それが彩加だ!

 

「ああ、でも半年後は期待すんなよ?確実について行けなくなってる自信あるから」

 

「本当かなぁ…」

 

そんな彩加の疑いの視線を俺は悠々と受け止める。実際桜満による家庭教師が無ければ俺の数学力は確実無比に100から9くらいまで落ち込むだろう。因みにこの数字は現在テストで取れる可能のある点の最大値である、よって別に絶対100点取れるマンと言う訳でない。つかむしろ一桁で収まる可能性も普通にあるまである。…あれ、それって結局は今も未来も数学出来ないってことじゃん。八幡クジケナイ。

 

「ところで八幡」

 

「どうした彩加?」

 

「登下校路になんかよく分からない建物が出来てたの知ってる?」

 

「何だそれ?何処かの秘密基地とかか?」

 

「それが分からないんだよね…だって見た目はただの一軒家なのに玄関が無いんだよ?おかしいよねこれ…」

 

「玄関…つまり出入り口が無い…?」

 

玄関が無い家ってどういう事だ…?出入り口する場所が欠落した建物とか完全に欠陥住宅だろ。

 

「うん…。でももしかしたら八幡がさっき言ってた秘密基地って言うのも強ち間違ってないかもしれないね。実は秘密の入り口があったりして」

 

「流石にアニメの見過ぎだろ…そういや千葉駅に日伊國屋書店出来たの知ってるか?」

 

「そうなの?今度行ってみようかな…」

 

 

そんなこんなで俺たちは昼休みが終わるまで雑談を続けた。俺の何一つ変わり映えのしないが緩やかで飽きない日常、それが壊れ始めようとしているのも知らずに。

 




Q&Aコーナー

Q,ギルティクラウンか俺ガイルのどちらかを知らなくてもこの作品を読めますか?
A,俺ガイルに関しては大丈夫ですが、ギルクラはアニメを視聴してないと少し話で置いてかれる可能性があります。ご了承下さい

では次回も今回と同じように更新は空きます。
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