ジパングの魔物使い   作:gamika

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23.僕はキミが恥ずかしい

 目前のカンダタスタイルでわめく、背の低い少年。……少年?うん、たぶん少年。

 彼は一体全体どういうつもりなんだ。あれは真面目にやっているのだろうか?口調はとげとげしく、あからさまな敵意を向けられているし、振りかざした斧をもって今にも飛び掛からんばかりの勢いだけれど、どうしても真面目に受け止めきれない。それもこれも全部服が悪い。センスが悪い。

 

「あー君、ザイル君って言ったね?その、君は本気なの?」

 

「本気も本気、大マジだ!ポワンの手先にフルートは渡さないぞッ!!」

 

 本気であの覆面全身タイツみたいな服を着ていると?正気ですか?

 

「君は……君は恥ずかしくないの?」

 

「恥ずかしい?何を言ってるのか意味が分からない!オレを惑わそうったってそうはいかないぞ!!」

 

 惑わされているのは僕の方だ。タジタジだ。はっきり言って恐怖とは別のモノで気圧されている。大王が凄い怪訝な顔で僕を見ている。くそう、やっぱりカエルにはわからないのか。いや、今この時はあまりわかって欲しくもない。いつだったか、僕は大王に服のセンスがないと酷くこき下ろしたことがある。魔物だからダメなんだとまで言った記憶がある。でも目の前にいる彼は人間でありながら魔物並みの服飾センスだ。男に二言はないとはいえ、突き付けられた現実に思わずうつむき、うめいてしまう。

 

「ゼンクロウ君?」

 

 心配げな顔で師匠が僕の背中に手を当てる。師匠は優しい。そしてカッコいい。

 師匠を見る。

 ザイル君を見る。

 師匠を見る。

 ザイル君を見る。

 

「格差、社会……ッ!!」

 

 イケメンであれとまでは言わない。フツメンであればいい。普通の恰好した普通の人間であれば……はっ、もしや。もしや彼は人間ではないのではなかろうか。そうだ、あんな格好の人間がいるはずがない!大王レベルの服飾センスだなんてありえない!ありえてはいけないんだ!

 

「ザイル君……きみはもしや人間では……ない……?」

 

「彼はドワーフよ」

 

「ドワーフ!!」

 

 ベラさんの回答に驚愕する。人間ではないがほぼ人間じゃないか!なんてことだ!しかもドワーフと言えば鍛冶や細工といった工芸に定評のある種族!そのセンスがアレだなんて……そんな馬鹿なッ!

 

「ザイル君……!君は誇り高きドワーフに生まれたというのにそうなってしまったのかい?ああっ、僕はキミが恥ずかしい……っ!」

 

「何を言ってるんだ?オレの何が恥ずかしいってんだ!」

 

「君は気づいていないの?君自身がどれほどのことをしてしまっているのか」

 

「……!!」

 

「僕らはね、春を呼ぶためにここに来たんだ。さわやかな風が舞い踊り、木々がざわめき、動物たちが歓喜の声を上げる、あの素晴らしく美しい季節を呼ぶために。だというのに君はッ!」

 

 春に多いとかいう変態さんじゃないか!!

 出てくるの早すぎるよ!

 

「……君がなぜそうしているのかは知らない。でもキミは(服が)間違ってるんだよ」

 

「オレが間違っている?ポワンが正しいってでも言うのか!そんなことは信じられない!ポワンにじいちゃんは追い出されたんだぞ!!」

 

 つまり、爺孫そろって変態スタイルでポワン様に追い出されたと。

 

 当たり前じゃないか!!

 

 祖父から孫へと脈々と受け継がれる変態スタイル。そんなもの放っておいたら変態さんが次々と生み出されそうで怖くなるよ!ある意味治安維持のためだよ!そんなのみんな不幸になるだけだ!ある意味優しさだよ!

 

「ポワン様だって、本当はそうしたくなかっただろうさ。君のおじいさんが間違ったモノ()を生み出してしまったから、きっと仕方なかったんだ」

 

「おまえは何を、何を言ってるんだ?」

 

「ゼンクロウ?あなたまさか知って……?」

 

「いいんだ、ベラさん。ここは僕に任せてほしい。彼を説得してみせるよ」

 

「あなた、一体……」

 

 変態の遺伝子というものは根強く、深く、血に刻まれ、決して消えることなく受け継がれてしまうのだろう。何百年も前から触手プレイのエロ絵を描いていた人種がいたとどこかで聞いたこともある。確かホクサイだったかな。

 彼の人の残した絵画は後世では芸術とまで言われたそうだけど、冷静に考えなくてもエロ絵はエロ絵だ。変態スタイルは変態スタイルだ。今ここで彼の意識を改善、改心させねば妖精の国に真の平穏は訪れないだろう。ならばやるべきだ。おそらく常識をわきまえた上で、なおかつこの場で一番口が回るであろう僕がやるべき事なのだ。

 

「ポワン様はね、君のおじいさんが作ったものがとても危険だって思ったんだ。だから、仕方なく追い出したんだよ。きっとおじいさんの方もそう思ってたんじゃないかな?」

 

 半分は僕がそうだったらいいな、おじいさんにも常識残ってたらいいなって思ってるだけなんだけどね。

 

「それは……そうかも、しれない……」

 

「思い当たる節があるんだね?だったら、なぜザイル君は自分が正しいと思ったの?おじいさんがそう言ったことがあった?それとも……」

 

「じいちゃんは……仕方ないって悲しそうに笑うだけだった。でも雪の女王様が!ユリナ様がオレは正しいって!」

 

 なるほど。そいつが諸悪の根源か。カンダタスタイルを許容する女王。つまり変態の女王だね?

 

「ザイル君はそいつに騙されてるんだよ。大体、女王様とやらがどうしておじいさんが正しいってわかるのさ?きっと面識だってないだろうに」

 

「昔じいちゃんの恋人だったって言ってたし……」

 

「そういうことか……」

 

 こじらせカップルの性癖の果てにってところかな。性癖が受け入れられないからって極寒の世界にするとか、ちょっと凶悪すぎる。ああ、そうか。そうだね。寒いなら顔隠すスタイルも防寒だって言い張れなくもないのか。小賢しいな!

 

「ザイル君。僕はキミと争う気はないんだ。その雪の女王様とやらに会わせてくれないかな?きっとその人ならすべて知ってる。そんな気がするんだ」

 

「……わかったよ。オレももう一回ちゃんと確認したくなった」

 

 ザイル君は振り上げていた斧をおろした。根はすごく素直な子なんだろう。あからさまに肩を落とす様子が少し憐憫を誘った。

 

 

 ◆

 

 

 そうして、氷の床をつるつる滑りながらザイル君の案内に従って館を進んでいく。

 それにしても、ベラさんがさっきからやたら怪訝な視線で僕を観察しているのが気になってしょうがない。何気ない風を装ってはいるものの、見てるのバレバレだからね?視線って見られてる側からしたら結構バレるものだからね?

 

 大王が僕の頭の上で溜息をつき、小声でつぶやいた。

 

「うむ、明らかに疑われているようである」

 

「はてさて、何が気になるのやら」

 

「……ゼンはダーマ神殿で詐欺師にでも転職した方が良さそうであるな」

 

 なんてヒドイ風評被害だ。僕は真剣に説得したっていうのに。いっぱい悲しい。師匠に泣きつこう。

 

「師匠、僕ってそんなに怪しいですか?」

 

「うーん、ビアンカ、どう思う?」

 

「怪しいっていうか、変な人ね。頭にカエル乗せてるし?」

 

 なんだ、大王のせいか。よかった。僕じゃなくて大王が変なんだ。

 




流行りの勘違い要素入れてみました!度し難いな!

あと、覚えてない人も多いと思うので補足。
原作のザイルのじいちゃんはカギの技法という、いわゆる盗賊のカギレベルの技術(つまりピッキング)を生み出したせいでポワン様に追い出されてます。きっとマジで治安維持目的です。実際、洞窟の奥に技法を封印してますしね、じいちゃん。きっとドワーフであるがゆえに認められないとわかっていても技術の研鑽をやめられなかったんでしょう。それもまた変態だわ。
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