抜刀術のあの人が異世界から来るそうですよ? 作:rearufu
駄目なところは皆さんの妄想力で脳内補完を(笑)
「なんですと?いまフォレス・ガロにのリーダーに喧嘩を売ったとおしゃりやがりましたか?しかもゲームは明日?一体どういう心算があってのことですか!聞いてますかお三方!」
「むしゃくしゃしてやった。今は反省してるわ」
「でも後悔はしてない」
「おれは勧誘を断っただけなんだがな」
問い詰める黒ウサギに、飛鳥・耀・銀閣の順に答える。
黒ウサギと一緒に戻ってきた十六夜は、少し離れた場所からそのやりとりをニヤニヤと笑って見ていた。
「黙らっしゃい!止めなきゃ同罪です!ああ、どうしましょう。本当ならこの後皆さんを歓迎する為に素敵なお店を予約して色々セッティングしていたのに…」
「原因を作った私達が言うのもなんだけど、別に無理しなくていいわよ。私達のコミュニティって崖っぷちなんでしょう?」
なぜそれを!と驚く黒ウサギ。
黒ウサギはすぐにジンが申し訳なさそうな顔をしている事に気づき、自分たちの事情を知られているのだと悟る。
「申し訳ございません。皆さんを騙すのは気が引けたのですが…黒ウサギ達も必死だったのです」
「もういいわ。私は組織の水準なんてどうでもよかったもの。春日部さんはどう?」
「私も怒ってない。そもそもコミュニティがどうの、というのは別にどうでもよかったし」
二人の返答に黒ウサギはほっと胸をなでおろす。そして残る一人に信じてますよーと小さく呟きながら期待の目を向けた。
銀閣は寝る場所と食事さえ有れば問題ないと思い、頷く事で同意の意を示す。黒ウサギはそれを確認すると再び胸をなでおろす。本当に信じていたのかと言いたくなる態度であった。
「ありがとうございます。だからと言う訳ではありませんが、先ほどの件はもう問いません。いつまでも言い争っているのも時間が勿体ないですし、何より私達は仲間になったんですから。つまらない原因で仲違いする方が問題です。それにフォレス・ガロ程度なら十六夜さんがいれば楽勝でしょうし」
期待してますよーと黒ウサギが十六夜に笑いかけると、何言ってんだお前と呆れた眼を向ける十六夜。
「俺は参加しねえよ」
「当り前よ」
十六夜の返答に当然よと答える飛鳥。
「な、何でですか!私達は仲間なんですからちゃんと協力しないと!」
十六夜の力を当てにしていたのか、黒ウサギの抗議の声は必死だ。
「そういうことじゃねえよ。いいか?この喧嘩はコイツらが売った。そしてヤツラが買った。それに俺が手を出すのは無粋だって言ってるんだよ」
「あら、分かってるじゃない」
「……もう好きにしてください」
今日一日振り回されて疲弊していた黒ウサギは、言い返す気力も無くそう呟くのであった。
「それでは明日のフォレス・ガロとの『ギフトゲーム』に備え、サウザンド・アイズに皆さんのギフト鑑定をお願いしに行きましょう。」
十六夜は首を傾げて聞き返す。
「サウザンド・アイズ?コミュニティの名前か?」
「YES。サウザンド・アイズは特殊な瞳のギフトを持つ郡体コミュニティ。箱庭の東西南北・上層下層の全てに精通する超巨大商業コミュニティです。幸いこの近くに支店がありますし」
「何しに行くのかしら」
飛鳥の挙げた当然の疑問に黒ウサギは答える。
「ギフトの鑑定ですね。自分の力を正確に把握していたほうが、引きだせる力はより大きくなります」
黒ウサギを先頭に、一行はサウザンド・アイズへと向かう。
「家鳴将軍?あれ、そんな奴江戸時代に居たっけ?」
「…居ないはず。そもそも今は平成」
「だよな」
「あなたたちは一体何を言ってるのかしら。江戸はまだ分かるけど平成ってなによ」
道中暇つぶしがてら雑談をしていたのだが、話を振られた銀閣がそれに答えたところ話が噛み合わず首を傾げる一行。それを見た黒ウサギは得意げに説明を始める。
「皆さんはそれぞれ違う世界から召喚されてきているのデス。元居た時間軸以外にも、歴史や文化など所々違う箇所があるはずです。自分の居る世界とはちがった歴史を辿った世界出身、なんて事もあり得ます。」
「へぇ、面白いな。」
黒ウサギの説明に十六夜はそう呟くと、皆に何処から来たのかを聞き出し始めた。
「銀閣のオッサンは?」
順番だとばかりに、十六夜がそう問いかけてきた。
「因幡だ」
「……物置?」
「なんで出身を聞いてるのに物置になるのよ。そんな訳ないじゃない。」
「…たしか、私たちの時代で言う鳥取のことじゃないかな」
「まっ」
話をしていると、急に先頭を歩いていた黒ウサギが走り出す。黒ウサギの向かう先には、看板を下げる割烹着姿の女性店員らしき姿が。
「待ったなしですお客様。うちは時間外営業はやっていません」
だが無情にも間に合わなかったようで、言い捨てる店員。
「なんて商売っ気のない店なのかしら」
「ま、まったくです!閉店時間の五分前に客を締め出すなんて!」
「文句があるならどうぞ他所へ。あなた方は今後一切の出入りを禁じます」
店員は冷めたような眼と侮蔑を込めた声で対応する。
「これだけで出禁とかお客様舐めすぎでございますよ!」
黒ウサギの抗議に店員はなるほどと呟き
「中で入店許可を伺いますので、コミュニティの名前をよろしいでしょうか」
見下すような笑みを顔に貼り付けそう言った。
「……う」
何か不都合でもあるのか言葉に詰まる黒ウサギ。代わりに十六夜がなんの躊躇いもなく答える。
「俺達はノーネームってコミュニティなんだが」
「ほうほう。それで何処のノーネーム様でしょうか。良ければ旗印を確認させて頂いてもよろしいでしょうか」
店員の言葉で一行は気付く。先ほどからのこちらを見下した態度はこちらがノーネームと分かったうえでのことだったのだと。
黒ウサギにさあどうしますかと店員が視線で促す。
「あの……その……」
「いぃぃぃぃやっほぉぉぉぉ!久しぶりだくっろうっさぎィィィ!」
答えられず言い淀む黒ウサギに、突然店内から出てきた真っ白な髪をした和服の少女が跳びかかってきた。
「へぁぁぁ!?」
少女は黒ウサギに抱き着くと、いきおい余って黒ウサギと共に転がっていく。そして転がった先には浅い水路が。
──ボチャン。
二人が水の中に消えて数秒。突然の出来事に固まっていた十六夜が店員に話しかける。
「おい店員。この店にはあんなサービスがあるのか?俺にも是非」
「ありません」
「なんなら有料でも」
「やりません」
『やりなさい』
飛鳥の発した言葉に店員は馬鹿じゃないのと鼻で笑う。だがそんな事誰が好き好んでやるものかと思う店員の心中とは逆に勝手に動き出す体。
「あ、あれ。なんで私これから突撃するみたいな態勢とってるの?」
「私ね、怒ってるの」
自分の意志に反して動く体に戸惑う店員に、言葉とは逆にとても良い笑顔を向ける飛鳥。それが合図だったのか、それとも偶然だったのか。十六夜に向かって走り出す店員。
「いやぁぁぁぁぁ!」
「あ、悪い。さっきの和装ロリならともかく、薹の立った女はちょっと…」
突進する女性店員をひらりと躱す十六夜。
「私はまだ二十代だぁぁぁぁぁぁ!」
──ボチャン
叫びながら店員は前の二人と同様に落ちていった。
「生憎と店は閉めてしまったのでな。私の私室で勘弁してくれ」
あれから一行は白夜叉と名乗る少女に案内され、私室らしき和室に招かれる。
「先程も名乗ったが改めて。サウザンド・アイズ幹部の白夜叉じゃ。黒ウサギとは少々縁があってな。コミュニティが崩壊してからもちょくちょく手を貸してやっている美少女と認識しておいてくれ」
「こう見えて白夜叉様はとってもお強いんですよ」
煽てる黒ウサギに当然じゃと答える白夜叉。
「私は東側の階層支配者(フロアマスター)だぞ。東側では並ぶものがいない最強の主催者だからの」
その言葉に十六夜・飛鳥・耀は目を輝かせる。恐らく最強という言葉に反応したのだろう。
「つまり貴女のゲームをクリア出来れば、私達のコミュニティは東側で最強のコミュニティという事になるのかしら?」
「そうなるのう」
「そりゃ景気のいい話だ。探す手間が省けた」
十六夜は闘争心を隠そうともせず白夜叉を見る。飛鳥と耀も気持ちは同じなのか白夜叉に挑発的な眼を向け、黒ウサギもはわわわと奇声をあげながら事の成り行きを見守っている。
盛り上がる場をよそに、銀閣は眼を瞑り腕を組んで静かに座っている。半日ぶりの畳を堪能している訳ではないのだ。最強という言葉に興味が無いだけなのだ。たぶん。
「抜け目ない童達だ。私にギフトゲームで挑むと?まあ受けるのは吝かではないが、ゲームの前に一つ確認しておく事がある。おんしらが望むのは挑戦か────もしくは決闘か?」
場の空気が変わる。そして次々と情景が変化していく。黄金色の穂波が揺れる草原。雪で全てを白で染めあげられた森林。次々と移り変わるソレは眼を閉じていたはずの銀閣にさえも見えたことから、眼から送られた情報ではなく直接脳に送りこまれたものだと言われても疑いようのないであろう事象であった。
唖然と立ち竦む一行に白夜叉は今一度問いかける。一人だけ座ったままだったが。
「今一度名乗り直し、問おうかの。私は白き夜の魔王────太陽と白夜の星霊・白夜叉。おんし達が望むのは試練への挑戦か、それとも対等な決闘か?」
「参った。やられたよ。降参だ、白夜叉」
「ふむ?それは決闘ではなく、試練を受けるということかの?」
「ああ。これだけのゲーム盤が用意出来るんだからな───いいぜ。今回は黙って試されてやるよ、魔王様」
苦笑しながら白旗を挙げる十六夜に、城夜叉は哄笑をあげた。どうやら素直に負けを認めない十六夜の態度が、白夜叉の笑いのツボを刺激したようだ。
「こんなに笑ったのは久しぶりだのう。さて、では試練を始めようか」
「終わってみればあっという間だったわね」
「だな」
試練は誰か一人でもクリアすれば良いものであった為に、何もせずに終わった十六夜と飛鳥は物足りないような顔をしていた。
「そう言うでない。ここは素直に仲間の健闘を称えておけばよかろう。さて、報酬はギフトの鑑定だったか。本来なら専門外なのだが仕方ない。今回は特別にコイツをやろう」
白夜叉がパン!と柏手を打つと、各自の眼前に光輝くカードが現れる。
それぞれがカードを手に持つと、白紙であったカードに文字が浮かぶ。
「そのカードは名称をラプラスの紙片と言っての。そこに刻まれるギフトネームはおんしらの恩恵の名称。専門外故鑑定は出来ぬが、それを見れば大体のギフトの正体は分かるであろう」
逆廻十六夜・ギフトネーム 正体不明
久遠飛鳥・ギフトネーム 威光
春日部耀・ギフトネーム 生命の目録
宇練銀閣・ギフトネーム 剣士
十六夜のギフトネームが正常に表示されなかった事を議論する横で、銀閣はカードに表示された文字をジっと見つめる。
「おれは──────剣士なのか?」
言葉にするつもりはなかった。だが思わず口をついてしまった。
昨日までの自分なら疑問にも思わなかった。召喚される直前までは、確かに剣士であった。剣士として戦い、守ってきた。守るために戦ってきた。おれには守るものが必要だったから。そうじゃなければおれは──────戦えなくなる。そう思っていた。なら守るものの無くなった今の俺は
女性店員にムカついてこんな展開に(´・ω・`)決してアンチなわけではありません