とある冥土の主はマッドサイエンティスト   作:namaZ

16 / 24
孫      「・・・・・・・」(カタカタ)

おばあちょん 「もうすぐ飯やよ」

孫      「ほーい」

~一分後~

おばあちゃん 「もうすぐ飯やよ」

孫      「ほーい」

~三十秒後~

おばあちゃん 「もうすぐ飯やよ」

孫      「・・・・・ほーい」

~十秒後~

おばあちゃん 「もうすぐ―――」

孫      「わかってるよ!!」




12話メイドの心情

 

 

 予想外のことが起こりました。

 今日だけで計算外の事が起こりすぎた。

 ひとまず、神裂様を立ち直させることには成功しました。

 後はマグヌス様が負傷した禁書目録(インデックス)を回収すれば終わるはずだった。

 そう、はずだった。

 

 誰が考えるだろうか?

 歴戦の魔術師がたかが一学生に負けるなど。

 

 気絶したマグヌス様を看病したあと、すぐに目を覚ました。

 今現在のインデックスの居場所を教えると、二方は急いでその場所に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 七月二十一日

 

 

 

 600メートルほど離れた、雑居ビルの屋上で、ステイルはメイドか受け取った双眼鏡から目を離した。

 

 「インデックスに同伴していた少年の身元の詳細はメイドから頂きました。・・・・・・彼女は?」

 

 ステイルはすぐ後ろまで歩いてきた神裂の方も振り返らずに答える。

 

 「生きてるよ。・・・・・・・だが生きいると向こうにも魔術の使い手がいるはずだ」

 

 神裂は無言だったが、新たな敵よりむしろ誰も死ななかった事に安堵しているように見える。

 

 「それで、神裂。アレは一体何なんだ?」

 「それなのですが、少年の情報に特に目立った点がありません。少なくとも魔術師や異能者といった類ではない、という事になるのでしょうか」

 「何だ、もしかしてアレがただの高校生とでも言うつもりかい?」

 

 ステイルは口に咥えて引き抜いた煙草の先を睨んだだけで火をつける。

 

 「・・・・・・やめてくれよ。僕はこれでも現在するルーン二四字を完全に解析し、新たに力ある六文字を開発した魔術師だ。何の力も持たない素人が、裁きの炎(イノケンティウス)を退けられるほど世界は優しく作られちゃいない」

 

 いくらインデックスの助言があったとして、それを即座に応用し戦術を練り上げる思考速度。さらには正体不明の右手。アレがただの一般人ならまさしく日本は神秘の国だろう。

 

 「そうですね・・・・・・むしろ問題なのはアレだけの戦闘力が『ただのケンカっ早いダメ学生』という分類(カテゴリ)となっている事です」

 

 (あのメイドもただのメイドの分類となっている事自体が異常ですが)

 

 学園都市には事前に連絡を入れて許可を取っていた。名実ともに世界最高峰の魔術グループでさえ、敵の領域(フィールド)では正体を隠し続ける事は不可能と踏んだからだ。そして、あのメイド――――

 

 「情報の・・・・・意図的な封鎖、かな。しかもインデックスの傷は魔術で癒したときた。神裂、この極東には他に魔術組織が実在するのかい?」

 「・・・・・・この街で動くとなれば、何人も統括理事会のアンテナにかかるはずですが―――――――

 

 敵戦力は未知数、対してこちらの増援はナシ。難しい展開ですね」

 

 少しでも情報が欲しい今。メイドからより詳しい事を聞きたかった二人だが、神裂火織に資料を渡し、そのまま行方をくらましまったため聞くことができない。

 

 その資料にはただ"上条当麻"とだけ書かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 私、粕谷瞳はメイド長の新たな命令を受け、実行していた。

 

 (まあ、ただの命令内容の変更なのですが)

 

 メイド長からの命令変更はいたって簡単。

 

 "隠れて監視しなさい"

 

 (この程度のスニーキングミッション。こなせなくて何がメイドですか)

 

 二人の魔術師を中心に『眼』を展開。

 これで全ての準備が整った。時刻は昼、魔術師が行動に移るのはおそらく夜。

 夜になるまでは『眼』を五機だけ展開。

 今はこれだけで事足りる。

 

 (それにしてもあの少年――――上条当麻は何者なのでしょうか?)

 

 粕谷瞳は自身を暗部の中でもより深い闇の中の存在だと自負している。だからこそ木原に仕え、他の部隊の任務内容、構成員の名前、能力を全て把握している。

 なのに、そんな自分が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 だけど―――――――――――――

             ()()()()()()()()()()()()

 

 

 上条当麻の情報が閲覧できなかった事が悔しいわけではない。

 

 『閲覧できない』―――――――この事実が瞳を苦しめていた。

 

 (閲覧できない程の情報。おそらく閲覧可能な者は、アレイスター=クロウリー様、メイド長、そして木原のごく一部の方のみ……・・・・・)

 

 まだ完全には信頼されてはいない―――――この事実に粕谷瞳は苦しみられていた。

 

 なら、自分がとる行動は一つ。

 

 『命令通り忠実に、主人が望む結果以上の結果を完璧にやり遂げる……・・・・・それが『メイド』』

 

 メイド長の最初の教え―――――私が初めてメイド長にお会いした時の最初の言葉―――――

 

 

 「魔術師(お客様)を監視、さらに能力、力、弱点、全てを徹底的に分析する。『命令通り忠実に、主人が望む結果以上の結果を完璧にやり遂げる』・・・・・・・それがメイドなのですから」

 

 路地裏で音さえ感じさせず闇に溶け込み、まるで最初っからそこに居なかったかの様にメイドは消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方的な暴力。

 あまりの力は本人の意思に関係なく相手を傷つけてしまう。

 だけど、それさえ踏まえればやり方は幾らでもある。

 七本の、鋼糸(ワイヤー)

 手加減に加減を加えて行われる攻撃は本来の力とは程遠く、そのおかげで少年の体は原型を保っていられる。

 運良く七本の鋼糸をくぐり抜け、本体に近づくことが出来ても『唯閃』という技がある。

 

 (技名からしておそらく『抜刀術』。威力は鋼糸以上と考えるなら一撃必殺と考えるのが妥当)

 

 身体能力も人間以上。

 何の補助もなく私と同等な運動性能の可能性あり。

 600メートル先が鮮明に見えることから視力両目とも八.〇の可能性あり。

 彼女に本気を出させるには超能力(レベル5)クラスが必要と思われ。

 

 

 

 ――――――――以上の結果が、100機の『眼』から導き出した答え。

 

 

 "難敵"

 

 

 だが、戦いのやり方では私でも勝機がある相手。

 

 (神裂様・・・・・・・・相手が格下の相手だからとそうペラペラ自分の事を話すのはどうかと思いますよ)

 

 そのおかげで色々な情報を入手できたのだから文句はない。―――――――――少年、ナイスファイト。

 

 

 いきなりですが、ここで私の眼の特殊機能を一つ紹介しましょう。

 普段は()るだけの私の左目。しかし、ある特殊コードを入力する事により眼るだけではなく、聞くことができる様になる。正確には、相手の唇の動きから発話の内容を読み取り、自動で音声化する機能。

 分かりやすく言ってしまえば読唇術(とくしんじゅつ)です。

 

 ですが滅多に使いませんがね。

 だって、コレ使うと起動させている全ての『眼』から音声が流れ込んでくるんですよ?

 関係ない声も自動で音声化するので苦痛でしかありません。

 しかも音声のせいで両耳が聞こえなくなるので戦闘では役に立たない。

 正確には聞こえなくなるのではなく、どの『眼』から聞こえる『声』なのか、自分の耳で聞こえる『声』なのか区別できないのが難点です。

 

 

 そうやっているうちに満身創痍の少年が神裂火織にどういう因果か説教をしだした。

 

 (戦闘中にあの男は何をやっているのでしょう。神裂様は戦闘のプロ。仕事の前にはどれだけ詭弁を並べても無意味だと分からないのでしょうか)

 

 少年は言いたいことを言い終わるとそのまま双方とも沈黙した。

 するとどうでしょう?逆に神裂様が語りだすではありませんか。

 

 (何ですかこの状況)

 

 正直もうこれは戦闘とは言えない。では何か?

 さっきまで殺伐としていた戦闘が今ではただのお遊戯会とかしている。

 眼を通し声が聞こえる。

 

 

 『―――――私だって好きで、こんな事をしている訳ではありません』

 

 

 ……・・・・・。

 瞳はこれでも人を見る眼はあると思っている。実際瞳は()ただけでアマチュアなのかプロなのかを見分けることだってできる。

 肉体のバランス。

 醸し出す雰囲気。

 身のこなし。

 目つき。

 全てに置いて神裂様はあの男より格上。

  

 なのに―――――――――

 

 

 『彼女は、私の同僚にして―――――――――大切な親友、なんですよ』

 

 

 今は自分の見解が間違っていたので?と考えるのであった。

 

 (流石の私も人間関係。精神力は眼ただけではわかりませんし・・・・・・・・はぁ・・・・・・)

 

 瞳はため息と共に考えを放棄し、話から情報を聞き出すことに集中することにした――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼女―――――インデックスについて。

 今の会話ではわかったのはそれだけ。

 

 (しかし、人間の記憶を綺麗に一年だけ消すとは、心理掌握(メンタルアウト)の様なものでしょうか)

 仕事上。魔術があるという認識はあるが、詳しい概要までは知らない瞳は自信が知りゆる知識のみで仮説を立ててみる。

 

 (なるほど、彼女は眼に映る全ての物を完全に記憶してしまう『完全記憶能力』という特異体質で、10万3000冊の魔道書をその頭に記憶している。インデックス――――禁書目録。名前からして皮肉ですね)

 

 話を聞いていた瞳は疑問を覚えた。

 

 (脳の85%は10万3000冊の記憶のため使われている。残りの15%は一年しかもたない・・・・・・・)

 

 おかしい。人の脳にはそこまで詳しくない瞳でさえその理論は科学的におかしいと気づいた。

 だけど―――――――――

 

 (―――――私には関係ありませんしね)

 

 そう、瞳には関係ない。

 ただ監視するのみ。

 

 少年はそのまま気絶。

 魔術師に動き無し。

 インデックスは少年の看病。

 

 その状態が三日続いた。

 

 暇。暇です。暇すぎます。

 少年が起きるまでの三日間。

 平和すぎるほど何も起こらなかった。

 

 (会話から今日がタイムリミット。どうなるか見ものですね)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜。

 

 インデックスは倒れ。

 

 それを何とかしようと頑張る少年。 

 

 時刻は午前零時。

 

 時間切れ。

 

 終わり。

 

 少年は間に合わなかった。

 

 一人の少女の悲劇な物語はここで一時終焉。

 

 それが現実。

 

 人間にできることは限られている。

 

 無駄だっただけ。

 

 あとは記憶を消されえて終わり。

 

 そしてまた一年周期で記憶を消す。

 

 少女の悲劇な物語は終わらない。

 

 そう、ヒーローはいない。

 

 この世界にはヒーローは存在しない。

 

 悲劇を終わらせる都合のいいヒーローなんていない。

 

 泣いている子供に飴をあげる人もいるだろう。

 

 挫けそうな時背中を押してくれる人もいるだろう。

 

 落ち込んだ時励ましてくれる人もいるだろう。 

 

 絶望の中手を差し伸べてくれる人もいるだろう。

 

 私はそれで満足だった。

 

 手を差し伸べてくれる・・・・・・・・たったそれだけで救われた。

 

 これ以上何が必要だろうか?

 

 ご都合主義なんてない。

 

 確かにこの世界に真のヒーローはいない。

 

 お父さんを助けてくれるヒーローはいなかった。

 

 だけど、絶望の闇の中・・・・・手を差し伸べてくれたあの人は、私の(なか)でたった一人のヒーローだった。

 

 別に助けなくていい。

 

 汚されて。

 

 穢されて。

 

 犯されて。

 

 それはただ自分に力がないから。

 

 そう、自分が悪い。

 

 だけど、全てが終わった後に手を差し伸べてくれる。

 

 私はそれだけで救われるのだから・・・・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 そう、ご都合主義なんてない。

 なら今眼ているモノは何だ?

 結局少女は助かった。

 魔術師と協力しあい。

 一人の少女の悲劇な物語を終わらせてしまった。

 しかし、やはりご都合主義なんてなかった。

 少年の脳細胞は破壊された。

 記憶が破壊されたのだ。

 だけど少年はいつも通りな態度で少女と触れ合う。

 瞳は納得した。

 これがこの少年の本質なのだと。

 この少年は生まれながらにしてヒーローなのだ。

 だけど、そんなヒーローはクソくらえだ。

 私には主人がいる。

 それが私の全てなのだから――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 「――――――ザ・ペーパー。聞いてるのですか?」

 「ッッッ!!・・・・・申し訳ございませんメイド長。本日のこの失敗、私の失態です」

 「いえ、仕事の方は予想以上の結果が得られました。貴方はやり遂げたのです」

 「ですが私は!!」

 「確かにザ・ペーパー・・・・・・・貴方があの現場の一番近くにいました。しかし、それとこれとは話は別です。私は貴方に『隠れて監視しなさい』と命令しました。貴方は命令通りに実行しただけなのです」

 「ですが私がいながら『樹形図の設計者』は破壊されてしまいました!どのような処罰も受けます!」

 

 そう、私は見ている事しか出来なかった。

 自分の考えに集中してしまった。

 目の前の光景が現実からかけ離れている。

 そんなモノ関係ない。

 『樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)』が破壊された。

 それはどういう事か?

 学園都市の、木原にとってそれは圧倒的な予測演算が失われる事を意味している。

 それは瞳にとって木原に迷惑を掛けた事に等しい。

 

 

 「私のせいで樹形図の設計者が……・・・・・・」

 「……・・・・・・いいですか瞳、私たちはメイドです。主人のパーソナルスペースには決して踏み込んではいけない存在。この意味がわかりますか?」

 「・・・・・・・・・・はい。私たちはメイドは主人にとって害ある者であってはならない」

 「それなら今の貴方はなんですか?鏡で今の顔を見てみなさい。それではシークレットを任せる事も、木原に仕える事も出来ませんよ」

 

 瞳は懐から反射性が強い紙を鏡にし、自分の顔を確認した。

 そこには本当に自分の顔なのか疑いたくなるほどの酷いありさまだった。

 

 「そんな顔では周りを不快にするばかり。仕事も任せる事も出来ませんね」

 

 メイド長はいつ通りの無表情で厳しく言い切った。

 だが、ふと頬を緩めると。

 

 「瞳。顔を上げなさい・・・・・・・・・・」

 

 それはまるでお母さんを連想させるようで――――――

 

 「瞳――――貴方がいないと私が困るのです。貴方は今まで仕事を忠実にこなしてきました。確かに『樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)』が破壊されたのは此方にとって大打撃です。ですが、回収準備をしている今は気にしなくていいでしょう。……・・・・・・・」

 

 またいつもの無表情の顔つきに戻るが、その顔に優しさを感じ取った。

 

 「いつまでめそめそしてるのです。ザ・ペーパー。それでは人に笑われてしまいますよ。貴方にはまだまだ仕事がたくさんあるのですから」

 

 瞳は両手で自分の頬思いっきり叩いた。そこにはもう迷いはなかった。

 

 「・・・・・・・・お任せ下さいメイド長。必ずやご期待に応えてみせます」

 

 いつも通り、メイドは優雅な動作でお辞儀してみせた。

 

 そして、PDAでシークレットに招集を掛けるとそのままどこかに走って消えていった。

 

 

 

 『君がここまで彼女を気に入っているとは、正直驚きだよ』

 

 突如メイド長の耳元で囁き声が響いた。

 振り返ってもそこには誰もおらず、声だけがこだまする。

 暗黙の了解如くの無表情のまま驚きもせず、返答した。

 

 「盗み聞きとは趣味が悪いですよ。アレイスター様」

 『今更な回答だね。僕が常に滞空回線(アンダーライン)で監視しているのは知っているだろ?』

 「愚問でした。確かに今更ですね」

 『・・・・・・・・にしても、アイツは使えるのか?』

 「ご心配なく、私の教え子は必ずやアレイスター様のお役に立つでしょう」

 

 

 確かな確信をもってメイド長は言い切った。

 その返答にアレイスターは何も言わなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




一巻終了。
予定通り早く終わりました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。