紗夜と紀陸が瞳以上に主人公らしいぞw
岩城紀陸は紗夜と風力使いの戦いを観戦しながらPDAで連絡を取り合っていた。
「え、こっちに来るの?」
『——————』
「了解。こっちで処理する。んじゃ計画通りに」
PDAの電源を切り胸ポケットにしまう。さて、お前の潜在能力を見せて貰うぞ——————紗夜。
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ホイールから噴出する炎。膝まで包み込み炎は他者から見れば能力の制御が出来ず足を焼かれていると思うだろう。
だが、ホイールから噴出する炎は肌を焼かず白のガーターベルトも焦げ目一つも無い。
——————あの炎は本物ではない。相棒の発火能力で飽きるほど見てきたボクだから解る。あれは幻覚——————
炎が発生したかのような幻を見せている。大口叩いて幻とは、ボクを馬鹿にするにもいい加減にしろ!!
風力使いで胸に埋め込まれた轟の玉璽を起動させる。瞬間的に風速50メートルもの突風を生み出す。この轟の玉璽は『ラム・ジェット理論』という原理を応用させたもので、前方からの風を圧縮、後方に噴射させることで推進力を生む。押しよせる風が強ければ強いほど、更に加速していく!
推進力で威力が増大した右ストレート。ガキの意識を飛ばすには十分過ぎる。拳が顔に命中する瞬間——————紅髪のガキが消えた。
回避行動を取るが時すでに遅し、右腕に絡み付く感触と共に左頬に熱が走り蹴り飛ばされた。肺から一気に空気を持っていかれた。絡まれた腕が引っ張られると浮遊感が襲った。身動きの取れない僅かな間。防御姿勢が取れない空中。紅髪のガキは夜空を背に流れるように右足を振り上げていた。裂帛の気合いと共に炎を纏った右足を振り下ろす。
渾身の力を込めた踵落とし。瞬発的な筋力と能力強化、足の踵のホイールに集中させた摩擦熱による高温が合わさり、標的へ正確無比に振り下ろされる。必殺の一撃として胸に埋め込まれた轟の玉璽ごと体を貫通した。
「——————かああっ!」
コンクリートの地面に叩きつけられ朦朧とした意識の中自身の敗北を悟った。最後の一撃で肉体の限界を超えたのか、紅髪の子供は人形のように崩れ堕ちる。
元から臓器は無く胴体の殆どが轟の玉璽で作られていたためか、胸に穴が空いても痛みはなかった。血は一滴も流れてはいないが僕はもう長くはないと理解できる。
ホイール音が聞こえる。ふと其処に視線をやると先ほどまで僕が戦っていた子供と同じ紅髪の青年が立っていた。青年は子供を抱きかかえると妹(?)の隣に優しく寝かせる。すると僕に近づいてくる。
「まだ生きているのは確認済みだ。だが後もって一分ってところか」
分かってるんなら話し掛けないでほしい……ねむたいんだ……すごく……。
「そう露骨に嫌そうな顔するなって、俺はお前に感謝してんだぜ」
…感謝……?
「お前らのおかげで紗夜は炎の玉璽を発動出来た。たぶん無意識に起動させたんだなぁー、ホイール自体内蔵してある事知らせてなかったし。そしていい感じに二人をぼこってくれた事も感謝してんだ。あの二人あんま仕事で怪我しないんだよ、まあたぶん能力的に血を流す刃物類の怪我には慣れてんだよな~。けどそれ以外の痛みは耐久性が低い低い……今回はいい経験になったと思うぜあの二人にとってはな。なんせ絶対と過信していた強固な鎧と俊足であそこまで追い込まれたんだ、いい刺激になっただろう。あの二人にとって自分に勝てる絶対者は俺と瞳だけと思ってるからな——————
はぁー。そう考えるとひとみっちって意外と甘いよなぁ……。本当に危険な仕事は俺とひとみっちだけで二人は留守番だぜ?今後の展開を考えるともっと経験値上げておきたいからな——————」
…雰囲気が変わった……なんだ……?
「お前の敗因は自分の特性を活かさなかったことだ。言葉の意味は説明しなくてももう解ってるな?だが——————死が決まっているこの状況そんな事説いても意味はない。……今はもう眠れ。ご苦労だった。最後に言い残す事はあるか?」
……さいご…………か……
「——————ぼっ、ぼくには……家族がいる…………ふたりともほんとうの家族じゃない……けどほんもののキズナでつながった家族だ……」
「……そうか」
「…………ひとりは・…死したが……もうひとり……おとねを………………………——————」
「おとねを?」
「——————・・・・・けて・………たすけてけってくれ……!!」
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——————死んだか。にしても最後の一撃は本当に軽率だったな。お前は中距離支援型。近接は専門外だろ。どーせ感情に任せて一発殴る!とかなんとか考えたんだろ。——————にしてもこいつは酷い。
こいつ(偽疑似玉璽)を作った奴——————南博士に怒られっぞ。轟の玉璽のラム・ジェット理論は間違ってはないんだが出力が低すぎるし強度もあべこべ、真面目に作る気あんの?
そのおかげで紗夜は死なずにすんだな。擬似玉璽並の出力なら最初ので死んでたぞ。
——————紗夜の炎の玉璽発動時のあの動き……今の紗夜には絶対無理な修練を積んだ迷いの無い正確な動きだった。紗夜は炎の玉璽を発動させた事から
相手の拳が当たるタイミングに合わせ腕と視線が重なる個所に避ける。相手には消えた様に見える筈だ。そのまま絡み付いた腕を軸に体を回転させ蹴りを放ち片足着地と同時に相手を空中に投げ飛ばす。投げ飛ばした時の張力を利用し回転をより速く鋭くし遠心力で増幅した踵落しを振り下ろす。
紗夜はそれを無意識むしゃらにやり遂げた。——————いや違うな、炎の道に身を委ねたのか。ハハハハハハッ!此奴はスゲェー!早くもチート使いやがった!だが肉体が幼すぎてトリックについて行けてねーのが問題だが今後の成長に期待だな(胸もな)。
「——————さて、来るのが遅かったじゃねーか。は、怯えて逃げたかと思ったわ」
物陰に隠れている二人に向かって問い掛ける。すると白衣を着た男と女の子が姿を現す。こいつが木原か?何て言うか——————普通だな。他の人間からしたら十分変態染みたマッドサイエンティストに見えるんだが…………この場合俺の感覚がおかしいんだと思うんだが、何か……何て言うか…………普通だ。
俺の周りが普通じゃない変態ばっかだからなぁ~~。ひとみっちとかひとみっちとかひとみっちとか。おい誰か早くあのメイドなんとかしろ……w
「おいクソ野郎、今なんか変な事考えてなかったか?」
「———————————————何も」
「心音・………嘘。マスター」
「何その子!チョー便利じゃん!!」
「よくやった音ネ・………殺す」
「お前もそうホイホイ人を殺そうとするな!てかノリいいなおい!!」
本当に木原か此奴ッ!?絶対ノリで殺すって言っただろ!かっこよく挑発した意味がない。ここは気を取り直して。
「お前の要件は分かってるが念の為聞いてやるよ。お前は此奴(風力使い)の開発者木原周波で目的は同じく上条お当麻の誘拐でO-K-?」
「大体合ってる、が。誘拐じゃなく研究だ」
「それこそ大体一緒の意味だろ。でだ、その音ネって子も体サイボーグなの?」
「おっ!!聞いちゃう?聞く?仕方ないクソ野郎だ」
さっさと言えよ。
「音ネのレベル4『音波センサー』はあらゆる音を聞き分け調節する。クソほど戦闘向けじゃないが、木原に不可能はない!声が最も高い子供時代に年齢を
PDAで聞いた情報通りか。だが固定は初耳だな。年齢の固定——————肉体の成長が止まるの解釈でほぼ間違いないな。
「だがまだだ!!まだ足りない!!これじゃあ第一位のクソ野郎にも数多の糞野郎にも勝てねー・・・・・・あの無能力は何者なんだ?オレが何年も何年も何年も何年も何年も何年何年も何年も何年も何年も何年も何年何年も何年も何年も何年も何年も何年も耐えてきたんだぞっ!!この屈辱!!それを何の努力も!絶望も!知らねーよーな只の学生がぁ!生まれ持った能力?才能?そんな糞みたいなモノに負けてたまるか糞野郎ぉ!!」
こいつぁー・……・なんていうか・………被害妄想が酷過ぎだろ。まいっか、計画通りに事を進めるか。風力使いとの約束もあるしな。
「でよ!その時数多がよ「一つ気になったんだが聞いていいか?」なんだよこれからがイイ話なのに、いいぞ、オレは今機嫌がいいから何だって答えてやるよ」
「俺の仲間が倒した発火能力と風力使いと其処にいる音ネといい何でお前から逃げないんだ?」
明らかに嫌々従ってるふうだったからな。
「そんなことか。実験体(三人)には欠陥があってな、まずそのせいで一般社会の生活はまず無理だな」
「欠陥?」
「そう欠陥。そこで壊れている風力使いも発火能力も音ネも能力強化を犠牲に欠陥が生まれちまった。風をより強くする為にハッキングで偶然手に入れた轟の玉璽の情報の一部をオレ風にアレンジ、改良して体に組み込んだ!けど情報が不十分過ぎて完成には至らず起動させたら間違いなくバーン!起動させなくても臓器としての機能も補っているから定期的に調整する必要がある。
発火能力も火力を上げる為に無理やり調整したせいか週一でパーツを変えなきゃいけない。まったく……これだからレベル3困る。これだけ手を尽くしてもレベル4止まり——————救いようがないクソ野郎だ。
あ、音ネは勿論別。
お前の命令に命を懸けた人間をクソ野郎と呼ぶか。
「・………音ネにはどんな欠陥あるんだ?」
「いやなに、計算に狂いはない筈なんだが……勝手に人体に害をなす音波を常に出しててな、音が聞こえない分余計たちが悪い。オレの体調が優れない原因探ったら音ネの音波が原因だったんだぞ?あと少し対処が遅ければ脳にダメージを負っていたぞ。ああそれと、薬品で無理やり成長を止めたせいか体調不良が酷くてな~。寿命自体二十歳まで生きれればいい方だな」
「・………それだけ聞けば十分だ」
「なんだ?あ、何でオレに効かないか聞きたいんだろ?音ネ開発したのオレだぜ~?オレにだけ効かないよう中和音波装置を身に着けてるからな。あ、オレの為に死んでくれる?」
「黙れ」
此奴はダメだな——————だめだ、駄目過ぎる。木原らしいといえば木原らしい。『実験に際し一切のブレーキを掛けず、実験体の限界を無視して壊す』ことを信条とする。木原らし過ぎて涙が出るぜ。だけどな木原周波。お前は甘いな……他の木原と比べればの話しだがな。
「所で俺のレベル言ってなかったな……俺はお前の長年の夢、頂き、学園都市に七人しかいない——————超能力者だ」
「…………………………へぇっ・………お前が?」
殺気がスゲーな。今まで手に掛けて来た奴より此奴の数十年分の嫉妬と憎悪の方が強いんじゃないか。
「……殺れ、音ネ」
音ネは命令を何の躊躇も迷いもなく衝撃波を放つ。仕損じた瞳は例外として只の学生ならこれで終わりだろう。だが、相手は学園都市に七人しかいない最高レベルの能力者。
紀陸は破壊を撒き散らす衝撃波を無造作に振り上げた足で踏み砕いた。
「はぁ!!?あ………ありえねー……ありえねええええええええええええええええ!!!!!音ネの喉は音を超振動させ衝撃波を放つんだぞ……衝撃波の振動を壁に受け流したメイドもいたが、それを砕くだとぉ!?」
「は、<レベル5>を何だと思ってやがる?学園都市に七人しかいない最高レベルの能力者?皆が目指す夢の頂き?それとも学園都市のヒーロー様ってか?——————違うだろ。お前はレベル5を履き違えている。勝ちたい?見返したい?立派な思想だな。人間の本質だと思うぞ、あー前々からこの引っ掛かる感じが何なのか分からなかったんだが分かっちまった。木原周波、お前は女々しいんだよ。『木原』じゃまずありえない感情、想い………は、一時でも木原らしいと思った俺が恥ずかしいぜ。『実験に際し一切のブレーキを掛けず、実験体の限界を無視して壊す』を信条とするお前等(木原)が、その三人を全然壊せていない。数多に勝ちたい?実験体を壊せない時点でお前はもう負けてんだよ」
「……う……うっ、るさい・………」
木原周波は呼吸を荒くし胸を強く押さえつけ体が小刻みに震えている。呼吸が上手くできない為か言葉があまり聞き取れなかったが無視して続ける。
「お前は『木原』である木原数多が羨ましいんだ…………木原でありながら木原になり切れない——————それがお前だ、木原周波」
「……うるっ、……さい……!!」
肺の空気を絞り出したかのような掠れた声で力強く叫ぶ。その叫びからは木原周波の内に秘められていた何かを感じた。
「……ま、関係ないけどな(ボソ)」
「音ネええええええええええええええ!!殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せええええええええええええええええええっ!!後で新しいパーツに変えてやる!!最大出力でころせえええええええええええええ!!!!」
音ネの喉が音を反響し威力を高めていく。まだ放出していないのに疳高い音が空気を振動する。振動すればするほど威力が高まるのを感じるが同時に肉体がそれに耐えきれず傷ついていくのが分かる。
「……音ネちゃん。君は疑問だと思わないのか?何故自分はこんなにも体を弄られ痛い思いをしてるのか。その上君の家族を死に追いやった人間の言う事を聞く事に疑問はないの?」
「——————ッ!」
この子はもう自分じゃどうしたらいいのか分からないのか。どう生きればいいのか、ただ分からないだけなんだ。
「もう何もいわねーよ、全力でこい。出し惜しみはするな。木原周波、お前には『諦め』て貰う。そして音ネ・………これがレベル5第五位、振動系最強の力だ!」
自分の体の損傷を一切無視した最大出力の衝撃波。音の振動はあらゆる鉱物を破壊する。水を含んだ物質ならなおのこと。——————相手がレベル5ではなければ勝機があっただろう。
紀陸は一歩も動くことなく衝撃波を相殺した。自分の命を掛けた攻撃をこうも容易く相殺してみせた目の前の敵。
これがレベル5。
これが学園都市の頂き。
これが第五位。
勝てない。自分がどれだけ足掻こうが泥さえ着けられなかった圧倒的存在。これで第五位。第一位を倒すために創られた存在、それが
紀陸はそっと気を失った音ネを胸で受け止める。腰に手を回ししっかりと支える。
よく頑張った……今はもう休め。そのまま抱きかかえ落とさない様に気をつけながら木原周波が居た所を凝視する。如何やら逃げたようだ。ひとみっちの言う通り逃げ足だけは一流らしい。
紀陸はため息をつきつつPDAで状況の終了を伝える。もうすぐ医療班も来るしこれにて仕事は無事終了だな。
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「クソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソぉ!!!!」
木原周波、彼の心は最早死んでいた。自分の今までの嫉妬が絶望が弟が兄を羨ましいと思うものと一緒と教えられてしまった彼は心の支えを失っていた。足取りは何処に向かっているのかは分からない。彼自身何処に向かうのか、向かえばいいのか分からなかった。
「如何やら既に心は『壊されて』いるようですね。あの人もたまにはいい仕事をしますね」
幾重にも入り組んだ裏路地の奥から声が響く。目を凝らせば見えただろうが今の彼にはそんな心の余裕はなかった。
「……だ、誰だ!!!」
ゆっくり近づく靴音と共に姿を現す。そこにはメイドが居た。これには流石の木原周波も驚きの声を上げる。
「……な……なんで、おまえは……お前はオレが殺したはずだ!!音ネにも心音の確認はさせた!!なんで生きている!!!」
瞳はまるで可笑しなモノを見た様に微笑む。
「メイドの秘密です」
「ーーーーーーー~~~~~!!アイツといいお前といいなんなんだよ!?何の権限でオレの邪魔をする!?」
「何の権限で邪魔をする?可笑しな事をおっしゃりますね。決まってるじゃありませんか。学園都市そのもののですよ」
「が、学園都市が・・・・・・・木原がオレを見捨てた・・・・?」
「その通りです。それと今回の仕事に病理様が注文を付けましてね。”『諦め』を教えてやれ”と。私なりに考えた結果第一位を倒す事を目的とする周波様には同じレベル5、しかも第五位に圧倒的敗北をして貰い『諦め』を知って貰うという計画だったのですが、あの馬鹿が計画を台無しにしてしまうような発言をしたため慌てましたが結果オーライでした」
「きはら・・・・・・・きはらが・・・・・・・・・・・・・・」
「これはもう駄目ですね。周波様、僭越ながら最後に修様が新しく改良に改良を加えた私専用にカスタマイズされたチェーンソーの試し斬りに付き合って下さい」
チェーンソーを掲げた瞳は今日一番の楽しそうな笑みを浮かべた。
脱字、誤字、ありました申し訳ございません。
ご感想。アドバイス等は感想にてお願いします。