冗談はさておき、本当にお待たせしました。このような作品を読んで下さりありがとうございます。
つい最近また新しく投稿した作品があるのですが、興味がありましたら暇つぶしにどうぞ。
十月から新アニメ『機巧少女は傷つかない』が始まりますので書いてみました。原作を知らない方はあまり見る事をオススメしません。原作九巻まで《朗読済み》の方のみ見る事をオススメします。
<機巧少女は傷つかない―蒼の世界―http://novel.syosetu.org/15143/>
瞳は目の前に転がっている肉片と刃にこびりついた血を片付けながらPDAで暗部の下っ端に今回の事後処理を任せる有無を伝える。
連絡の僅か一二分の間で片付けを終えるとそのままチェーンソーの性能確認を済ます。人間に使用する分には問題はありませんが機械類には不安が残りますね。それが普通のチェーンソーなら——————これは木原修様がつい先日作り上げた私専用の武装『カスタマイズ超音波振動チェーンソーMKⅡ』。長いので『チェーンソー』と私は呼んでいます。これと修様お手製の紙が揃えば私に敵はいません!最近エア・トレックをあまり使用してませんね……使うような場面がそのうちあるでしょう。
さて、後は紀陸に全部任せて私は修様の所に帰りますか。面倒事を押し付けられたクズの顔が容易に想像できます。
今日の夕食のメニューはどうしましょうか?肉片、血……ナポリタンで決まりですね。材料を買いに行く前に今回使用したチェーンソーと特殊な紙の使い勝手と性能の報告をまとめてからですね。
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「あの駄メイド事後処理全部俺に丸投げしやがったなあ!!」
ふざっけんなよあの駄メイドがあ!!だけど、確かに、暗部に事後処理の連絡してくれたおかげで眠り姫三人の面倒を見るだけですんだけどな。今頃ひとみっちだけのんびり休暇かよ。まあ木原のお世話で休暇と呼べるか微妙だな。だけどひとみっちはソコに幸せを感じてるんだから手におえねー。
とりあえず病院の手配をさせるか。振動の応用で血は止めているが傷までは治せねえ。とりあえず車両が来る十分間で怪我の具合を振動で確かめますか。応急処置とか大事だし。
瑠璃ちゃんは軽い打撲程度。念の為精密機器による診査もするがそれで問題なければ大丈夫だろ。だが問題はこの二人……紗夜ちゃんは骨折五ヶ所に右手を重度の火傷。最後に見せた本人の限界を超えたアノ動きで全身筋肉断裂に関節を痛めていやがる。けど一番酷い状態は音ネちゃんだな、酷い。何が酷いって、兎に角酷い。チッ……心音が弱くなってやがる。正直此処まで面倒御見る必要はないが……
『おとねを……たすけてけってくれ……!!」』
あんな事言われたら後味が最悪だぜ。あの野郎の名前聞くの忘れてたな、名前があるか微妙だけどな。は、しゃーなしだな。
「音ネ、今からお前は俺のモノだ。死にたいか?だが死なせない、アイツの約束があるからな。死にたくても俺が許可しない。お前の命は俺のモノだ。死にたいなら俺の為に使え……って、意識のない人間に対してこんなこと言っても無駄なんだろうな……けど、これが俺なりのけじめだ」
言いたいことを言ってスッキリしたのか紀陸はそのまま音ネの胸に手を当て心臓を刺激する。これで心肺停止の心配はいらない。そのまま五分ほど待つと郵便輸送車に偽装した暗部の車両が到着した。
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造られた存在。
目的遂行の為に生き。
第一位抹殺ただその為に生きて来た。
ある日家族が出来た。
彼らは私と違い失敗作らしい。
だけど辛い実験の日々も家族のおかげで耐える事が出来た。
……死んだ……たった二人の家族が死んだ……
存在理由を否定された……私はどうしたらいい?
死のう……死ねば家族にまた会える……
薄らと覚醒した意識の中、その声は彼女の耳にしっかりと届いていた。
困惑、悲嘆、恐怖、あらゆる感情がごちゃ混ぜになった意識の中で彼女の耳の第五位の声がこだました。
『お前は俺のモノだ』
マスターと同じで彼も私を所有物扱いする——————けど何でだろう?不思議と嫌じゃない束縛。
(ああ……これがそうなのか……)
幼いながらも音ネはこの感情を理解していた。嫉妬にも憧れにも似た感情——————これが、『恋』
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あれから十日。原作で五巻ってところか、え?飛び過ぎ?気にしたら終わりだ。てか原作の厄介ごと夏に集中しすぎだろ。
今日は八月三一日——————
神無城姉妹はもうとっくに後遺症もなく完治。音ネも薬品の毒を抜いて正常の状態になってるが体中の機械システムを拒絶反応を無くす為に組み替えている最中だ。暗部のことだ。おそらく前よりバージョンアップしてるだろうよ。流石は学園都市、もしかしたら首を持って行っても「一命は取りとめました」って言われそうだな。
あ、何で闇咲逢魔が俺等の目の前に居るかだって?本当ならこんな雑魚……仕事じゃない事は俺もしたくはないんだが、偶然。そう、偶然に偶然を重ねた結果こうなった。簡単に説明しちまったら、ひとみっちが仕事以外で眼帯を外す時がある。それは、木原修が外出する時か(滅多にないので除外していい)木原一族の誰かに付き人……メイドでいいや。メイドとしてついて行く時。あと決まった時間帯に自分の周囲半径二kmを視ている。
シークレットの隠しアジトの一つで学園都市の壁にそう離れていない地下施設があるんだが、そこにシークレットが今後の活動についてブリーフィングしていた時に丁度その時間帯が来たわけよ。あとは……言わなくてもわかるだろ?学園都市に侵入する害虫を我らが瞳様が見逃すわけがなくいつも通り神無城姉妹はお留守番で俺等が出向いたわけよ。は、勘弁してほしいぜ。
そんで今向かい合っている状況なのだが——————
「貴方は見ているだけでいいです。最近の戦闘では、死んだふりや手加減などで少々体が鈍っている節があります。……今日はいい運動が出来そうです」
暗殺任務ばっかでシークレットでも激しい戦闘は俺と紗夜ちゃんに任せて来たひとみっちが自分から戦いたいとは、こんなの滅多に見れないかもな。
「は、いいぜ。ひとみっちがマジで戦うなんて中々見れないからな。喜んで見学させてもらうぜ……おい魔術師!!」
「……なんだ?」
「女だからって手加減するなよ!何の目的で来たかは知らねーが果たしたいなら死ぬ気で行かねーと初撃で死ぬぞ!!」
「学園都市の者よ、私は禁書目録に用があるのだ。魔術サイドのいざこざに科学サイドが介入しても得など無いぞ」
「……得?得ならありますよ。学園都市に蔓延る害虫(魔術師)を一匹殺すことができるのですから」
「……私には使命がある」
「はい」
「私の命などいらぬ」
「そうですか」
「——————!怪我では済まぬぞ!」
「先手は譲ります」
「——————風魔の弦」
直径数m大の空気の塊を打ちだす。これに足を乗せることで眼帯をした左眼の死角へ高く跳躍する。それと同時に弦を引き。
「——————衝打の弦!」
空気の塊を打ち出す。原作ではファミレスにいた上条当麻にコレを使い窓ガラスを軽く粉砕にする描写があった。だが今回は手加減なしの殺す気で打ち出された。理論も理屈もへったくれな現象に瞳はただ冷静に対処する。
「五枚……二枚ですね」
空気の塊は瞳が身動き一つせず自動に紙が展開され防御される。
「防いだか、だが二枚と宣言しつつそれだけの数で防いでる所を見るに先程までの余裕は無いとみえるが?」
闇咲逢魔の問いに対し瞳は可笑しそうに笑う。だが、品のない馬鹿笑いではなく、口元を人差し指で押さえるクスクス程度の笑い。《魔術師》闇咲逢魔はその様子に苛立つ。
「……何が可笑しい」
「いえ、失敬。二枚とは紙の枚数ではなく二枚の層という意味です」
「二枚の層だと?」
「はい。紙を重ねる事で強度を上げるのですが……二枚でこれでは私に傷一つつける事も叶いませんよ。出し惜しみせずに死ぬ気で頑張ってください。もしこれが本気なら拍子抜けもいいところです。貴方は私に柔軟体操で終わらせる気ですか?」
「後悔するなよ!——————断魔の弦!」
圧縮空気の刃を打ち出す。之なら二枚の装甲をも安々とスライスしてしまう切れ味を誇っているだろう。なら……動きますか。
体を滑らすように視えない空気の刃を避け四枚投擲が"衝打の弦"により防がれてしまう。
「(自分の魔術の使い分けを心得ていますね。切るのではなく吹き飛ばすとは、戦闘経験は今まで屠ってきた魔術師の中でも中々のクラス。しかし——————)これは防げますか?」
一枚の紙に回転を加えドリル状にし投擲。先程同様闇咲逢魔は"衝打の弦"で防ごうとするが空気を切り裂く嫌な予感がし"断魔の弦"に切り替える。
瞳が投擲した"紙ドリル"が空気の刃と衝突した瞬間、切り替えたのは正解だと確信した。
拮抗したのは一瞬、僅かに起動がずれた紙ドリルは闇咲逢魔の左胸を貫通した。血が流れる。心臓に命中するのは阻止したが、命中した場所が肩ではなく胸。左腕は指がピクリとも反応せず二つある肺の内一つは完璧に機能を停止していた。脂汗が滲み出る。肺が酸素を求めて息を吸うが血が喉までせり上がりせき込みながら血反吐を吐く。そのままにしておけば高確率で出血多量で死ぬ。戦闘など死を早める無駄な行為でしかない。
なのに。
「ゔおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
血を周囲に撒き散らしながら梓弓を瞳に構える。
そして。
「——————断魔の弦!」
死に瀕している人間ほど恐ろしいものはない。それは瞳自身一番理解している。だからこそ。
「本気で行きます」
千枚を超える紙の束が一つの形を成し襲いかかる。模った形は"蛇"。魔術師闇咲逢魔の最後の一撃は五十枚破壊したところで消失した。蛇が彼を飲み込む瞬間、誰かの名前を呟いたように見えた。
「おつかれ、でもないか。は、ひとみっちが傀儡なんて珍しいな、そんなにあの魔術師強かったか?」
「本気で言ってるのですか?なら救いようがありませんね貴方の脳味噌は」
「うわひど、まずいこと言ったか俺?」
「貴方は先の戦闘を観ていたのでしょう?"あの魔術師は強かったか?"アレならまだレベル4の方が苦戦しますよ」
「なら何で本気出したんだ?千枚展開なんて滅多にないのに」
「……これだから屑は、思考回路腐ってるんじゃ(ボソ)」
「聞こえてるぞコラ。これでも俺レベル5な?学園都市でトップクラスの頭脳だぞ」
「本気を出した理由でしたね」
「無視かよおい」
「煩いですね。人が話に付き合ってるんですから静かに聞いてなさい」
「はいよ」
蛇傀儡を解除し紙で死体を隙間なく包み込ませる。残りの紙はメイド服内にまた戻っていく。
「……相変わらずその服の何処にそんなに紙を収納してんだか」
「学園都市の技術力とでも言っておきましょう」
「学園都市製なら何でもありってネタを思い出したよ」
「……ネタ?何のことか分かりませんが、私は魔術師だから本気を出したのです」
「魔術師だから?弱かったんだろ?」
「ええ、弱かったです。しかし、私たちは科学サイドです。魔術というものを深く理解していない。追い詰められた鼠は何をしでかすか分かったものではありません。何よりアレは、あの眼は不味い」
「……め?」
「そうです、眼です。アレは大切な人の為に命を投げ捨てる者の眼です。そんな相手の最後の一撃を装甲の薄い自動防御で受けようものなら切られていたのは私です。だからこそ本気を出したのです。アノ眼後と潰す為に」
「……」
「聞きたいことはもうありませんね?私は死体をこのまま焼却場まで運びますので今日はもう解散だと二人に」
「りょーかい」
上条当麻を巻き込むトラブルはこれにて回避された。だが紀陸にとって原作キャラだといって可哀想だの悲しいなど微塵も感じない。ただ運がなかっただけの話しだ。
「……さてと、帰りますか」
次の日、二人の帰りをアジトで待っていた紗夜に蹴られた事に理不尽を覚えた。……確かに言い忘れた俺も悪いけどよ。
禁書系ではまず間違いなく描写されないこのキャラ。魔術師《闇咲逢魔》。
他のssを見て「このキャラ出てきてないなー・・・・・・だすか」で決めました。
正直このキャラは原作でも出番一回キリのモブキャラ。
なら私が華々しく散らせてやろうと思い実行しました。
「原作キャラが死んじゃったねー……こんなキャラいたっけ?」
皆様の認識はこのぐらいだと思っています。
何故なら私も五巻を開いた瞬間、「あー、いたなこんなキャラぐらいのにんしきでしたから」(汗