とある冥土の主はマッドサイエンティスト   作:namaZ

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いつもより文章を長くすることができました。
この調子で頑張っていきます。


5話父の思い

 

 

 赤い、ただひたすら赤い。目に映るもの全てがただ赤く染め上がった。

 体を覆うように。5メートルもの距離からも赤い液体は容赦なく降りかかる。

 全身を赤く汚す『それ』は生暖かかった。

 しつこいように「」の体を赤く染め上げている。

「」は、わずかに顔を下げ、自分の体を見下ろす。

 爪先から胴体にかけて「」の体に『それ』がついている。

 周りを見渡せば普段遊んでいる公園が同じように赤くなっていることに気がついたはずだ。

 だが「」には周りを見渡す余裕はないし、何より今の「」にはそんな簡単な動作さえすることができない状態だった。

 「」は、この場所をこんな惨状にした手を見下ろす。

 真っ赤に染め上がった手を見つめ、徐々に思考が回復していく。

 これは、『血』だ。

 だが「」のものではない。

 5メートル先で倒れている男はうつ伏せのまま人形のように動かない。

 これは男の『血』だ。

 だが、それにしては『血』の量が多過ぎる。

 (いや・・・・・)

 この『血』は男のものと――――

 (いやだ・・・)

 同じように壊れた人形のように動かない――――

 (いやっ・・・!)

 三人の少女の『血』だった――――

 

 「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!」

 

 わざとではない。無意識に、夢中に、ただ助けたくて――瞳の心は混沌の渦に陥っていた。

 この"力"はお父さんを、友達を―――瞳自身を幸せにしてくれるモノだと信じてきた。

 この"力"はお父さんを、友達を―――皆を笑顔にしてくれるモノだと信じて疑わなかった。

 皆に喜んでもらえるように頑張って練習した。

 自分の"力"が日々成長していくのが楽しかった。

 紙に触れれば反射的に造型できるまでになった。

 だからこそ、こんな結果は()()()()()()かっ()()

 助けないと、そう思った瞳は一歩足を踏み出す。

 クシャ、どうやら紙を踏んでしまったらしい。

 当然、その紙には血がこびり付いている。

 こんなモノに気を取られている場合ではない。

 すぐに助けないと、助けないといけないのに――――私は、私を凝視する目に動けないでいた。

 柚ちゃんは、糸切れた人形にように動かない。ここからでは男が重なって傷の具合が見えない。

 アンちゃん、ナンシーちゃんはこちらをまっすぐに見つめている。倒れている男の様に紙が刺さって、血が滲んでいる。

 このままでは出血多量で死んでしまう。

 なら一刻も早く『血』を止めなくてはならない。

 紙を操り、傷口を覆えば簡単に出血を止めることができる。

 だけど、瞳は動けない、動けないでいた。

 アンちゃん、ナンシーちゃん――――二人が私を凝視する目は助けてなどと求めてはいなかった。

 今、彼女たちが瞳に向ける視線は、普段のような優しいモノではなく。

 そこにあるのは純粋な恐怖。

 わずかに唇が動いた。

 声を発声する器官にでもダメージがあったのか、はたまた声を発生するほどの体力がもう残っていないのかは定かではないが、しっかりと、確かに、確実に、私の耳に声は届いた―――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  『化け物』っと――――――――――

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 公園の中央に佇む瞳に急いで駆け寄り、発狂仕掛けの瞳を落ち着かせるためにしっかりと力強く抱きしめた。

 瞳の体に傷がないかを確かめ、この血は全て返り血であることがわかった。

 (間に合わなかった・・・・)

 ギリ、奥歯を噛み締める。

 なぜこの時期に瞳を一人にしたのか。

 なぜ奴らの誘いに乗ってしまったのか。

 なぜさっさと瞳と共に逃げなかったのか。

 なぜ父である私ではなく瞳がこんなにも苦しいめに会うのか。

 (なぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだ)

 後悔してももう遅い、目の前の光景が全てを物語っている。

 瞳は自らの原石としての本当の"力"を使ってしまったのだ。

 人を幸せにする"力"とは程遠い、人を傷つけてしまう"力"を。

 実際に超能力者を生み出したことのないジョン・オルブライドだが、超能力の能力分析、知識に関してはそこらの研究者に負ける気はなかった。

 だからこそ、超能力開発を行っていない瞳が能力を扱える事を知った時、世界に50人しか存在しない『原石』であることがすぐにわかった。

 私はすぐに行動に移した。

 瞳にはもうその力を使わないように言い付けた。

 組織にはバレないようにいろいろ手を回し、情報操作もした。

 独自で瞳の能力の研究を行い、危険がないか調べた。

 

 

 《一つ、紙しか操作できない

  二つ、紙に触れる事により操作ができる

  三つ、自由自在な形を作ることができる

  四つ、ただし三つ目は相性なのか作れないものもある

  五つ、紙の強度、切れ味を上げることができる》

 五つ目の項目の、後者(切れ味)はあくまで可能性の話。

 だが、紙の強度を上げたりすることは可能であると推測する。

  

 

 ここまで調べることができた。だが、()()()()()()()

 私は自分自身に憤怒した。

 娘を―――瞳を信用できない自分自身に憤怒した。

 ただ恐ろしかった。

 いつかその"力"により傷ついてしまうのではないか。

 だが、結果はどうだ?

 傷ついたのは私ではなく、瞳自身だった。

 私はただこうやって慰めることしかできない。

 後悔してももう遅い、これが現実―――――――"カチャ"

 「―――ッ!!?」

 いつも間に追いついていたのか、先ほどの30人が私たちを囲むように銃を構えていた。

 この状況をどう打開するか考えを巡らす。

 (どうする!?このままでは蜂の巣だ。なんとしても隙を見つけ瞳だけでも逃がさないと)

 だが、30人の包囲網の壁は厚い。簡単に隙など生まれるはずがなかった。

 すると、一人の男が包囲網から出て私に近づいてくる。

 その男には見覚えがあった。

 老人だ。私が現主任を務めるまで、主任の座をかたくなに守ってきた元主任であり――――――私の相棒でもあった男。

 

 「"チェックメイト"だジョン・オルブライド博士」

 「・・・・・・・・・・・・・・今更皮肉のつもりか?なぜすぐに殺さない?」

 「君は少々勘違いをしている。私は君を殺そうなどと考えてはいない」

 「じゃぁー逃がしてくれるのか?」

 「それはありえないな」

 「では何故今更話すことがある?」

 「わからないかね?勧誘だよ」

 「勧誘?まさか、私がいまさら組織に願えるなどと考えているのか?」

 「正解だが、半分正解だ。君の娘・・・・瞳・オルブライド・粕谷を我が組織に勧誘したい」

 「なっ――!?、貴様は何を考えているぅ!?」

 「これは君のためでもある。娘を実験体としてではなく、同じ組織としての同胞としておもてなしすると言っているのだよ」

 「・・・・信じられるか、貴様の手口は私が誰よりも理解している」

 「―――――――――これはチャンスなのだよ?確かにこれまでの様に自由な生活は出来無くなるが、それなりの生活は保証しよう。なにより、学園都市を見返せるチャンスなのだぞ?」

 「あなたは自分で何を言っているか理解しているのか?確かに少し前までの私なら同じことを考えていただろう。だが、今の私は違う。瞳を見て私は分かってしまったのです」

 「?、何が分かったと言ううのかね?」

 「原石でさえこれほどの"力"を保有しているのだぞ?学園都市がそれ以上の"力"を保有していないはずがない」

 「……・・・・・」

 「これ以上実験を進めると・・・・・・潰されるぞ」

 「承知の上だ」

 「これは!!あんただけの問題じゃないっ!!いいか、100人の命が掛かっているんだぞ!?」

 「・・・・・承知の上だ」

 「では何故――――」

 「承知の上だと言っている!!!!!!!」

 「――――ッ!?」

 「いいか、よく聞け、我々はこの研究に誇りを持っている。この手足が引きちぎられようと我々は止まらない。それを貴様は学園都市に潰される?ふざけるな!!なんども言おう、承知の上だと!」

 「それは貴様の考えだ。他の者たちまで同じだと思うなよ」

 「・・・・・・・・・・それで、返事は?」

 「NO―――だ!!」

 「そうか・・・・・・・・・・残念だよ―――――――――『瞳・オルブライド・粕谷を確保』しろ、ジョン・オルブライド博士は『拘束しだいにどこかに閉じ込めておけ』」

 「さっさと私を殺しておくんだったと後悔しろ!!」

 懐のホルスターから拳銃を抜いた。

 「なぁにぃぃぃ!!!!!?」

 「お前が死ねば組織に首輪を繋がれた人達は解放される!!」

 照準を老人に向ける――――――そして

 

 

 "バン"

 

 銃声が鳴り響いた。 

 硝煙の匂いが鼻をくすぐる。

 放たれた弾丸はまっすぐにジョン・オルブライドの胸に吸い込まれていった。

 

 「がっは――――――――」

 

 口の中に鉄の味が広がった。

 「きさまぁ!?なぜ撃ったぁぁ!!?」

 「しかし、奴は銃口をあなたに・・・・・」

 「言い訳などいい、早く傷の手当をっ」

 

 "バン"

 

 ジョン・オルブライドを撃ったを男の眉間に弾丸が命中した。

 「!?」

 

 ジョン・オルブライドは鉛を胸にくらいながらしっかりとコチラに銃口を向けている。

 「勝手なこと・・・・・・・・ぬかすなぁ・・・・次は確実にあてる」

 「それが、君の答えなんだな・・・・」

 「何度も言わせるな。これが『答えだ』」

 「今ここで貴様が死んでも何も得られないぞ!」

 「分かっている。このまま組織に捕まれば、お互い命は助かるかもしれない・・・・・だがそれは死ぬのが先延ばしになるだけだ。私は・・・・・瞳には人間として生きて欲しかった。実験体などといったモルモットではなく、ただの人間として生きて欲しかったのだ。それが叶わないのなら―――――」

 

 銃口の照準が老人ではなく、後ろにへたり込むように座っている『瞳に向けられた』

 

 「ジョン!?何をする!!!?」

 「だから何度も言わせるなぁ!!これが私の『答えだ』」

 「ジョン、君は実の娘殺すというのかね!?」

 「そうだ、それこそ私が導き出した『答え』――――――人間として生きているうちに瞳を殺す」

 

 トリガーにかかった指に力が入り――――― 

 「――――!!、止めろ!!何でもいい!!止めるんだぁぁぁぁぁぁ!!!!きさまらぁ!発泡の許可する―――」

 

 放たれた弾丸はしっかりと瞳に命中した。 

 

 「撃てええええええええええええええええええええっ!!!」

 ”バンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン”

 30人から放たれた弾丸は遅れてジョン・オルブライドの体を蜂の巣に作り変えた。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 左目に衝撃が駆け抜けたと思った瞬間、体が宙を飛んでいた。

 何が起きたか思考がついていかなかった。

 ただ、わかったことは、左目を駆け抜ける激痛と―――――――――

 全身を穴だらけにされたお父さんの姿だった。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 できなかった。

 できなかった。

 できなかった。

 私が撃った弾丸は瞳の命を奪わずに左目に命中した。

 当たらなかったのではない、()()()()()()()()

 (これが『答え』か・・・・・・・すまない瞳、お前はこれから辛い日が増えるだろう・・・・死にたいと思うこともあるかもしれない、だが・・・・私はお前に生きて欲しい―――)

 口もとがほのかに微笑みながら――――ジョン・オルブライド自らの意識を手放した。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 「死んだか・・・・・・早く娘の方を回収しろ、死んではないにしても直撃を受けたのだ。脳に何かしらのダメージがあるかもしれない。遺体の方は証拠が残らないように処理しろ」

 「りょ、了解しました」

 「作業を急がせろ、時間をかけすぎた」

 

 そう指示し振り返った瞬間――――粕谷瞳を回収しようと近づいた5人が()()()()になっていた。 

 

 「なっ―――――」

 声が出なかった。目の前の光景が信じられなかった。

 (まさか、能力の暴走!?)

 放心状態になっていた思考、その間に一人、また一人とバラバラにされていく。

 (このままでは全滅だ・・・・・・・仕方ない)

 

 「発泡を許可する!だが、頭は狙うなよ。手足だけを撃ち抜け!」

 「「「「「了解」」」」」

 

 老人の判断は正しかった。だが、紙が散らばったこの場所にいる時点でもう手遅れだった。

 

 ほんの一瞬だった。紙が動いたと認識した瞬間には、私を含めた部下たちがバラバラになっていた。

 

 そして、老人が亡くなった事により、事実上『英国特務超能力機関』は壊滅した。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 「わたしが・・・・やったんだよね・・・・・・・・」

 さっきまでの嵐が嘘かのように、その中央で静かに佇んでいた。

 幼い瞳でも、この光景をもたらした原因を無意識のうちに理解した。

 

 (周りの人達も、友達も、お父さんも、()()()()()()()

 

 「――――――――――――――――――――――――!!」

 

 悲鳴だ。それに連動するかのように、瞳の日本人らしい『黒』の髪が、色が向け落ちたような『銀』に変色した。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 ―政府―

 

 

 『公園に転がっていた遺体の数、本人確認が一致した。今回の事件は他言無用だ』

 

 

 「子供はどうする?」

 

 

 『『あれ』は我々の手に余る――――上の決定によると森林地帯の廃墟の研究施設に隔離するらしい』

 

 

 「てっきり処分かと思ったんだがな」

 

 

 『"原石"に手を出せば学園都市が黙ってはいない、死体を処理するだけでもそれなりの情報が残る。それなら、手を出さずに、確実に自滅してくれる選択を取るほうが賢明ではないか?』

 

 

 「なるほどな、では、麻酔で眠らしている間に目的地に運んでおくよ、目的地の情報を頼む」

 

 ピッ

 

 「―――くれぐれもこれが隠密であることを忘れるなよ」

 

 

 「了解した」

 

 

 瞳を乗せたトラックはそのまま本人の意思とは関係なく、木々に消えていった。

 

 

 

   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  




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