東方化物脳 ~100%の脳が幻想入り~ 不定期更新 作:薬売り
既に、もう都の外に居た。
夜風は強くなく、弱々しい。月明かりに照らされた八意永琳は、俺を見つめて嬉しそうな表情で、目から溢す。
永琳「久し振りね……本当に」
零「あぁ、久しぶりだな」
泣いている彼女に対し、俺は微笑む。
同時に近付き、彼女を思いっきり抱き締めた。強く……もっと強く……
永琳「……ごめんなさい…ごめんなさい…」
零「何で謝ってんのさ?君はなにも悪くない」
多分、別れた時の事を言っているのだろう。彼女は悪くない。何も悪くない。
俺だって、何か方法はあったはず。なのに、あんな自ら死を覚悟して行うような方法を選んだ。俺こそ、悪い。
零「永琳……会えて良かった。君に会えて……嬉しかったことしかない。なのに今まで、悲しい思いをさせてしまった」
永琳「ち、違う。確かに、悲しかったけど……でも、私達を守ってくれた」
あぁ、こんな俺を思ってくれていたのに、どうして悲しませてしまったのだろう。
胸が痛い。苦しみを感じる。だが同時に、長年味わえなかった温かみを感じる。香りを感じる。肌の触れ合いを感じる。
永琳「零……」
彼女は目を瞑り、唇をこちらに向けている。
薄紅色に潤ったその唇を、向けている。
零「今はダメだ」
永琳「え…」
零「あいつらがいる」
木の影に指を差す。
永琳「良いわよ。なんなら、見せつけましょ!!」
零「……フフ、変わらないな。そうだな…こんなに祝うべき日に、人目を気にしちゃあなにもできなく味気ない」
永琳は再び目を閉じた。
美しい顔立ちに、俺は惚れる。いや、昔から惚れている。
俺は、そのまま唇と唇を重ねた。
熱く、熱く重ねた唇は、懐かしい。
零「追っ手が来てもいいように、隠れるように住んだ方がいい」
永琳「貴方は?一緒に暮らしましょう?」
零「……ある程度一緒にいることはできる。だが何故か追われているんだ。俺も」
永琳「そ、そんな……」
零「安心しろ。定期的に帰ってくる」
『ナビゲーター』で人が入りにくい、そして見つかりにくい場所を探す。
あった。竹林だ。広範囲の竹林、所有者はいない。
零「おい、お前ら。こっちこい」
美鈴「き、気付いてたんですか」
青蛾「その上で見せてたの……」
輝夜「永琳があんなに笑ったの久しぶりに見た」
芳香「いいな~」
ン?芳香のいいな~はどういうことだ?
芳香「お花の蜜の味が分かってて」
蝶々の話かい!?
マイペースだよなぁ…。
永琳「羨ましいでしょ」
青蛾「全くよ!!」
零「落ち着け。取り合えず…俺に掴まれ」
美鈴「あーなるほど、ハイハイ」
美鈴、青蛾、芳香は直ぐに俺に掴まった。
対して、二人はポカンとしてる。
美鈴「え、どうしたんですか?」
輝夜「何してるの?」
美鈴「あぁ、そうだった。取り合えず、掴まっておいてください」
二人は不思議に思いながら俺を掴んだ。
永琳め、胸を当てやがって……いや、青蛾は対抗しなくていいから。
零「絶体離すなよ。『瞬間移動』」
刹那、視界が揺らいだ。
零「よし、着いた」
輝夜「え、えぇ!?」
零「五月蝿い」
そこは、もう竹林だった。
何本もの竹が並び、美しい。
零「『創造』」
瞬間、家が建った。
輝夜「すごい…」
零「だろ」
俺達はそのまま家に入った。
そして……
零「月が輝いている」
永琳「えぇ、そうね」
美鈴と輝夜。青蛾と芳香。俺と永琳がペアで寝る。
部屋の数には余裕があるので大丈夫。
永琳「その……今日ってどうする?」
零「え?どうするって?」
永琳「その、久しぶりにあった訳じゃない?だから…」
零「あぁ、なるほど」
永琳は顔を赤くしている。可愛い。
零「今日は熱くなりそうだ」
永琳「……」
零「なぁ、永琳」
永琳「どうしたの?」
やっと会えた。
やっと会えたんだ。愛するものに。
俺は、嬉しい気持ちも込め、言葉を発する。
零「月が綺麗だな」