東方化物脳 ~100%の脳が幻想入り~ 不定期更新   作:薬売り

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心の隙間の温かみ V 『排煙』

零「まさか、君の式が船に弱いとはね。意外だよ」

紫「ふふ、気にしないであげて。心配をしたら落ち込むから」

藍「う、うっぷ」

 

藍は海に真っ青な顔を向け、口から出しそうな顔をしている。それを見て、紫はニコニコ笑っている。鬼か?コイツは。

俺も海に体を向け、懐から煙管と少し湿った干し草を取りだし詰めた。

 

零「『熱の細胞』」

 

干し草に火がつき、零は吸った。

 

零「フーッ……」

紫「煙草は体に悪いのよ?」

零「よく知っているな。だが、俺の体はこんなもんじゃ弱らない」

紫「フフフ、それもそうね」

 

口と煙管から出る煙は海風に流れ、天高く昇る前に薄れていった。

それを見ていた芳香は何を思っているのか、ただただずっと見ていた。何も、喋らずに。

 

青蛾「どうしたの?芳香」

芳香「わからない」

青蛾「………?」

芳香「あの煙……焼かれた蟲に似てる」

 

焼かれた蟲…ユーベ・ナイトバグのことだろうか。零の『熱の細胞』で焼かれた奴のことを言っているのだろうか?

芳香は急にその場に座り、汗を大量に流している。

 

青蛾「芳香!?」

零「どうしたんだ?」

青蛾「芳香が急に!!」

芳香「う、うう……」

 

苦しそうな顔をして、目を瞑る。

零は芳香のこめかみを指で触れ、何を苦しんでいるのかを探す。重ねて『ディア』も行う。

 

零「………記憶がまた少し戻ったようだ」

青蛾「………」

芳香「うう、零…辛いよ……痛いよ……恐いよぉ………」

 

零は芳香の頭を撫で、子を愛でるように囁き安心させる。

痛いという感覚がある。それは死んでいるはずの芳香には無いはずの感情だ。ならば何故?もしかしたら……首だけだった時、彼女は生きていた?

分からない。もう、痛みは彼女を襲っていないらしい。ぐっすりと眠りについた。

 

零「…どうやら、彼女には自身も知らぬ真実があるようだ」

青蛾「真実?」

零「確実ではないが仮定がある。今はまだ言えないが」

 

紫も心配するように芳香の顔を覗く。藍の心配はしないくせにな。

零は藍の方へ行き、背中を擦った。

 

零「少し落ち着いたか?」

藍「あ、ありがとうございます……その…芳香さんが大変な状態なのに御心配を御掛けして申し訳ないです…」

 

分かりやすく落ち込む。本当だったんだな。

紫は、あ~あ、やってしまったよと呆れるような顔をした。鬼かよ、コイツ。

 

零「心配?まさか。君は強いんだから、心配する必要性がない。俺はただ、落ち着いたかどうかを聞いただけだ」

藍「え、あーその…慣れては来ました。あと、その、恐縮です」

 

恐縮ですの声が震えていた。絶対慣れてない。今にも吐きそうな顔をしている。

相変わらずの真っ青顔の藍に、背を向け芳香を部屋へ運ぶ。

 

藍「……おえ…」

紫「なにが慣れてきたよ」

藍「ス、スミマセン……う!!うう……」

 

藍の呻き声は一日中、オホーツクの海に響いていた。




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