東方化物脳 ~100%の脳が幻想入り~ 不定期更新 作:薬売り
零「ありがとう」
青蛾「うん?なにが?」
ありがとう……生きていてくれて、ありがとう。
それしか、言葉は見つからない。しかし、俺はその言葉を伝えようとはしなかった。
零「いや、なんでもないさ」
青蛾「……?」
青蛾は可愛く首を傾げ、不思議そうにポツンとこちらを見ている。
零「さて、みんなの所に行くか」
青蛾「大丈夫?」
零「平気、平気……よっこらせ」
しかし、瞬間に目眩。立ち眩みだ。
青蛾「え!?ちょ、ちょっと……」
視界がぼやけて、更に思考が出来ない。
今、自分がどういう状態かが、分からない。
青蛾「ど、どうしたのよ?」
段々と、霞みがかった視界がクリアになってくる。思考力も復活してきた。
そして、理解する。今、自分がどういう状態かを。
零「……ごめん」
青蛾は頬を赤くしている。まだ、妄想の中なのではないかと疑う程、俺は運が良い。
俺は、青蛾に抱き付きながら後ろに倒れたらしい。後ろは布団がある。
青蛾「その、どうしたの?」
零「立ち眩みが……」
青蛾「貴方にも立ち眩みはあるのね」
零「そりゃあるだろ」
失礼なことを言う奴だ。
許すまじ。
零「……」
青蛾の顔がこんなに近い。妄想の中にいた時よりも、ずっと近い。
青蛾は俺の顔から目をそらす。しかし、逃れようとはしない。
青蛾「……あの。立ち眩みはおさまった?」
俺をチラッと見ながら、そう問いかけてきた。
零「え?あ、あぁ…」
フッと我に返る。
あまりの恥ずかしさに、次はこちらが目をそらす。
何を考えているんだ俺は。早く紫と藍の所へ行かなければ。
理由は、まだアンダインが死んだとは限らないからだ。
アイツは確かに消滅したかのように崩れていったが、飽くまで俺の妄想の中。死んだと思い込ませているだけかもしれない。
だとすると、彼女らが危ない。彼女らはアンダインの調査に行ったらしい。
俺は、急いで戸を開けようと取っ手を持つ。が、それは勝手に開いたのだ。
紫「あら、もう起きていたのね」
零「え?……よかった、俺の考え過ぎか」
紫「なにが?」
零「いや、なんでもない」
紫は不思議そうな表情を浮かべつつ、調査の報告をした。
紫「結果から言うと、何かが分かる前に分からなくなったわ」
青蛾「どういうこと?」
紫「あの核、消滅のよ」
やはり、その場から消滅したか。
紫「しかも、消え方が気持ち悪くて……」
零「……」
紫「悪神が核を破って飛び出してきて、それは毛穴からウジ虫が蠢きながら出てきてたわ」
ユーベ・ナイトバグは関係しているかいないか、それはまだ判断できない。
同じ黄泉の者だということしか分からない。
紫「その際、『見るな!!』って叫んでた」
零「なるほど……」
紫「瞬間、地面から黒い手のような何かが、悪神を……多分黄泉に引っ張っていたわ」
零「何故黄泉と分かった?」
紫「生気のない殺気が、私を襲ったわ。正直、もう味わいたくはないわね」
紫は苦い顔をしながら、それを話した。
にしても、『生気のない殺気』か……思い当たるものがある。
神子の所にいた時に見たあの夢。あのウジ虫だらけの女性から、それを感じれた。
そして、ウジ虫という点で、奇妙な一致をしている。
興味深い。それと同時に怖い。
まるでトラウマをずっと見ているかのような、そんな恐怖が襲う。
零「この島は酷く穢れてしまったようだ。穢れをある程度除くには相当な時間が必要になる。50年ぐらいだろうか、それほどはかかる」
紫「そうね、この島は諦めましょう」
青蛾「それじゃあ……次は白馬村?信濃の」
そうだ、と頷いた。
信濃か……諏訪子や神奈子に顔を見せてやろう。
零「行くか……アイツら呼びに行くぞ」
青蛾「はーい」
紫「分かったわ」
アイツらを呼び、俺達は島から出てオホーツクの波に乗って蝦夷に向かう。
その際、潮の香りを嗅ぎながら、潰れる藍の背中を撫でた。