東方化物脳 ~100%の脳が幻想入り~ 不定期更新 作:薬売り
椿が帰ってきて、彼女はそのまま台所へと向かった。
今のところ、彼女に殺気は感じられない。どうしたものか……
諏訪子「椿が生き返ったとき、あの子思いっきり私達を抱き締めて泣いていたの」
零「ふむ…」
疑わしい。何が、と言われれば分からないが、強いて言うならば彼女が偽物だと言うこと。いや、正確には半信半疑なのだ。彼女が本物と信じ込ませるために、そうやって抱き締めたのかもしれない。
視界ジャックをしたときも、もしものために言葉を隠していたのかもしれない。
例えば『料理』だって、他人から聞いたら今日の晩ごはんのことに聞こえる。しかし、実は俺を料理する。という意味かもしれない。
彼女がもし、俺を殺すために黄泉の世界から来た者なら、『ディア』をしても意味はないだろう。きっと俺の能力はバレている。今まで、色々な技を見せてきた。当然である。きっと何かしらの処置をするに違いない。
しかし、ならばどうするか?
椿「はーい、零様の好きな鰻ですよ」
零「ありがとうな」
俺の好物も、その俺流鰻の料理の手順も知っている。この料理のやり方は代々巫女に伝わっている。俺流というように、俺が考えた調理方だ。
簡単さ。鰻を開いて串で刺し、火で炙る……それを飯に乗せ、最後に秘伝のタレをかける。これで完成だ。
しかし、予想じゃそろそろ世間もやり始めるな。そんな気がする。
零「にしても、魚を捌くのは慣れたか?まだ魚屋に任せてないだろうな?」
椿「あ、あはは……」
零「ハァ……分かった。俺が後で教えてやる。生きた魚買ってくるから」
椿「まさか、〆るところからやるんですか……?」
零「当たり前だ」
椿「あーうー…」
諏訪子の真似をしてたらなった口癖も、彼女が苦手とするものも、質問する時に首をちょいと傾けるのも、すべて生前の彼女だ。
明らかに一致する。しかし、明らかに違う。
暗い。もっと明るかった。彼女の一番良いところは明るいところだ。
昔、彼女にそれを言ったら激しく喜んでいたのを鮮明に覚えている。そんな彼女が、こんなに悲しい目をするだろうか?否、あり得ない、余程の事がない限り……いや、あった。彼女には余程なんてもんじゃあない死があった。
だからと言って、生き返ったのならば明るくなれるのでは?とも一瞬思ったが、それは人による。
駄目だ、考えたら考える程分からなくなる。
椿「零様?お口に合いませんか?」
零「え、あ、いや、違う。考え事をしていたんだ」
椿「そうでしたか、てっきり……」
零「椿のご飯は俺の好物だ。合わない訳がない」
そう言って、つい昔のように頭を撫でてしまった。
椿「えへへ……」
零「ッ!?」
今、確信した。彼女は東風谷椿だ。間違いない。
頭を撫でたときの、声、笑顔、動作。すべてが東風谷椿だ。
だとしたら、そもそも何故、彼女は生き返ったのか?どうやって生き返ったのか?
分からない、どう考えても。
零「ごちそうさま、美味しかったよ」
椿「お粗末さまです」
零「お粗末なんかじゃあないさ!!旨かったぞ」
椿「えへへ、ありがとうございます」
一瞬、彼女の悲しい目は消え失せ、昔のように笑った。
そうだった。彼女はそういう人だった。人前では華奢な姿を見せ、女性から憧れの存在として目を向けられていた。が、諏訪子や神奈子、俺の前では甘えん坊になるのだ。いと美しう。
諏訪子や青蛾が羨ましそうに見ている?そんなに椿の頭を撫でたいのか?
椿「それでは、私は器を洗いに行きますので、おくつろぎ下さい」
零「手伝うか?」
椿「いえ、家事は私のお楽しみになので」
なら、お言葉に甘えさせていただくか。
俺は部屋に戻り、考えることにした。
布団の上に胡座をかき、正面に丸が座った。
義経「零さん、彼女は……」
零「椿は間違いなく、椿だ。あぁ、間違いない」
義経「そうですか…しかし……」
零「あぁ、丸の言いたいことも分かる」
どうやって生き返ったか?ということ。
先にも言ったが、彼女には生き返る身体がない。考えられるのは、『黄泉からの刺客』として現れた。
それなら無いことはないのだ。言い切れる理由は、ユナ・ネイティブを最初に殺した後、俺は奴を完全に燃やした。骨が溶ける程、熱く。
しかし、奴は再び目の前に現れたのだ。
それを考えると、彼女が目の前にいるのも納得がいく。
彼女の死は、決して忘れない。あの不幸を、忘れるわけにはいかないのだ。