「なんだろう、この教室は……」
「なんでしょうね、この広さ」
「これは本当に教室か……?」
「シャンデリアまであるのは教室は言えないよ」
「……すごすぎる」
去年は、はいったことのない階に来てAクラスの教室といえないようなものを見て全員が硬直する。
『皆さん進級おめでとうございます。私はこの二年A組の担任、高橋洋子です。よろしくお願いします』
教室内から女性の声が聞こえたのでそっと覗いて見てみると学年主任の高橋洋子教諭だった。
プラズマディスプレイの前に彼女が立っており、髪の後ろを団子状にまとめた凛々しく美しくスーツを着こなす知的なメガネの女性教諭。
そんな彼女に憧れを抱くのはどれほどいるだろうか。
みあは高橋教諭をみてからざっと教室内を見渡す。
つぐみも同様にしており、二人が思ったことは高級ホテル並のロビーの教室だということだ。
「まさに至れりつくせりですね」
「これはAクラスの生徒の性格というか倫理感というかよくないものにかえそうだよ」
みあとつぐみは教室内をみてひどく不愉快な感じになっていた。
まあ、いくらなんでもやりすぎな教室をみていいな~と思う感情はこの二人にはないだろう。
『では、はじめにクラス代表を紹介します。霧島翔子さん。前に来てください』
『…………はい』
高橋教諭に呼ばれた女生徒が凛とした雰囲気を漂わせながら歩いて教壇の前に立つ。
呼ばれた女生徒が霧島翔子だということがつぐみ達にはわかった。
綺麗な黒髪とすらっとした脚と容姿などを見て見とれるつぐみ。
「綺麗でいいなぁ……」
その呟きを聞いて明久はつぐみへと視線を向けていた。
明久の視線にはつぐみは気づいていないようである。
『…………霧島翔子です。よろしくお願いします』
顔色さえ変えずに淡々と自己紹介をする女生徒――霧島翔子。
その目はクラスメイト全員を見つめているわけではなく、同性の級友である女生徒だけを見ているように思える。
いや、特に見ているのは同じ黒髪に同じ容姿の少女だろう。
こんなのを見て誤解しない者はいないだろうと思われるほどだ。
理由を知らない人からすれば誤解もする。
「……ねぇ、康太」
「…………やつは同性愛者ではない」
「だよな、いくら見ているからってあれは決めている異性に誤解されないようにしているという理論になるだろうし」
明久の問いかけに康太はすぐさま答え、彰仁も理解しているのかうんうんと頷いている。
「兄様、そろそろいきませんか?」
「あ、そうだね」
みあがそう声をかけると明久は笑顔を見せて彼女の車椅子を押そうとするが、康太が割ってはいる。
「康太?」
「…………俺がやる」
「??? お願いしますね」
明久はきょとんとしていると康太はすぐに口を開いた。
不思議に思いながらもみあは康太に頼むことにした。
「じゃあ、僕はつぐみと手でもつなごうかな」
「ふえ!? にゃ、にゃにを言って」
と、ちゃかすように言うと顔を赤らめるつぐみ。
それを見た彰仁はあ~、暑いな~とつぶやいたとか。
こんなやりとりをしていたが、やっと教室にたどり着いた。
「これ、本当に教室なの?」
「教室というより、廃屋だよ」
「………これはかなりやばい」
「おいおい、どうなっているんだよ」
明久がぽつりとつぶやくとつぐみも難色を示し、康太と彰仁も嫌悪しているようだ。
「か、格差社会という言葉ですまないからね」
「ですね、これはその言葉ですむ状態ですらないですよ」
つぐみがドアを開けてみあは頷いたその瞬間だった。
「遅いぞ、このウジ虫――」
ドサっ
「ふえ……あたし……ウジ虫じゃない…もんっ」
みるみるうちに涙がたまり大粒の涙を浮かべるつぐみはカバンを落としてしまう。
「ひ、ひどいです!? わたしたちのどこがウジ虫なんですかぁ~っ!!?」
みあも涙を目に貯めており、いまにもこぼれそうである。
「雄二……オモテニデロ」
「…………ハナシガアル」
いつのまにか中にいたようで目がすわっている明久と康太に肩を強く掴まれる雄二。
彼の顔が青ざめるのに数分もいらなかった。
『天使を』
『小女神を』
『『泣かすとはどういう了見じゃあああああああぁぁっ!!?』』
更につぐみ・みあの親衛隊から雄二は袋叩きにあったのは言うまでもない。